NSユナイテッド海運 9110 東証P
NS United Kaiun Kaisha, Ltd.|鉄鋼原料・資源エネルギー・鋼材・産業基礎物資を運ぶ外航・内航海運会社。大型ばら積み船、鉱石専用船、LPG船、一般貨物船を展開する。
※2026年8月3日時点の情報
事業内容
2026年8月3日の時価総額は約2,287億円。 同日の終値は9,540円で、2026年3月期末の発行済株式総数 23,970,679株を基準に算出した。
NSユナイテッド海運は1950年4月1日設立。本社は東京都千代田区大手町、 代表取締役社長は山中一馬、決算期は3月、東証プライム市場に上場する。 2026年3月末の従業員数は単体261名、連結669名。 運航船腹は外航船130隻、内航船81隻で、 鉄鋼原料、資源・エネルギー、鋼材、産業基礎物資を中心とする海上輸送を展開する。
2026年3月期は売上高229,784百万円、営業利益20,529百万円、 経常利益21,046百万円、親会社株主に帰属する当期純利益24,095百万円。 2027年3月期第1四半期は売上高67,333百万円、営業利益7,324百万円、 経常利益7,201百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益6,111百万円。 最新の通期会社予想は売上高242,000百万円、営業利益26,500百万円、 経常利益25,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益25,000百万円。 2026年7月31日には日本郵船による1株10,600円の公開買付けに賛同する意見を公表し、 公開買付けは2026年11月から12月ごろの開始が予定されている。
外航海運事業|鉄鋼原料・資源エネルギー・不定期船・近海輸送
外航海運事業 業績推移
外部顧客への売上高とセグメント利益。全年度・全セグメントを共通縮尺で表示
単位:百万円(縦軸は1,000百万円=1.11px、全年度・全セグメント共通縮尺)
外航海運事業は、鉄鋼原料輸送、資源エネルギー輸送、不定期船輸送、近海水域輸送を束ねる主力セグメントである。 連結売上高に占める2026年3月期の外航海運事業の比率は約85.8%となる。
2023年3月期の売上高224,069百万円とセグメント利益 30,082百万円が5期間の最高値である。 その後は売上規模が縮小し、2024年3月期以降の利益率は1桁台で推移した。
2024年3月期は売上高が前期比19,733百万円減、 セグメント利益が11,426百万円減。 売上高の減少率より利益の減少率が大きく、採算の変動が表れた年度だった。
2025年3月期は売上高が216,152百万円まで回復した一方、 セグメント利益は16,277百万円へ低下した。 売上高の回復だけでは利益率の回復につながらなかった点が重要である。
2026年3月期は売上高が197,062百万円へ減少したが、 セグメント利益は15,489百万円を確保した。 利益率は前期の7.5%から7.9%へ上昇した。
2027年3月期第1四半期の外航海運事業は売上高59,129百万円、 セグメント利益6,898百万円。 前年同期は売上高46,872百万円、利益2,866百万円だった。
第1四半期の売上高は前年同期比で約26.2%増、 セグメント利益は約140.7%増。 利益率は約6.1%から約11.7%へ上昇した。
外航海運の収益は、長期輸送契約で一定の輸送量を確保する部分と、 市況に連動する運航部分が併存する。 短期的な増減を見る際は、輸送数量、運賃市況、燃料油価格、為替前提、船舶の稼働日数を分けて確認する必要がある。
鉄鋼原料輸送では、9万重量トンから20万重量トン級のばら積み船と、 25万重量トンから40万重量トン級の鉱石専用船を運航する。 主な貨物は鉄鉱石と原料炭である。
資源エネルギー輸送では、8万重量トンから10万重量トン級のばら積み船と大型LPG船を使用する。 石炭、穀物、工業塩、鉄鉱石、LPGなどを運ぶ。
不定期船サービスでは2万重量トンから6万重量トン級の船型を用い、 鋼材、肥料、石灰石、非鉄金属、塩、バイオマス燃料、穀物、セメントを輸送する。 貨物と港湾条件に応じた配船が採算を左右する。
近海水域サービスは8,000重量トンから19,000重量トン級の一般貨物船を中心とし、 鋼材、ドロマイト、バイオマス燃料、石膏、肥料を扱う。 中国・東南アジアを含む近海域での往復貨物の組み合わせが運航効率の焦点となる。
2026年3月末の外航船腹は130隻。 大型鉱石船、ばら積み船、LPG船、一般貨物船を組み合わせるため、 船型別の市況感応度と長期契約比率を一括ではなく個別に追う必要がある。
2027年3月期通期会社予想は営業利益26,500百万円で、 2026年3月期実績を5,971百万円上回る。 第1四半期の外航利益率が維持されるかが通期達成の主要な確認点となる。
日本郵船による公開買付け予定は資本関係と上場形態に関わる材料である。 公開買付け開始までの前提条件、開始時期、応募状況、上場廃止までの手続きは、 通常の海運市況分析とは別のイベント軸で管理する必要がある。
内航海運事業|鉄鋼製品・石灰石・セメント・製鉄原料の国内輸送
内航海運事業 業績推移
外部顧客への売上高とセグメント利益。全年度・全セグメントを共通縮尺で表示
単位:百万円(縦軸は1,000百万円=1.11px、全年度・全セグメント共通縮尺)
内航海運事業は、日本国内の製鉄所、発電所、セメント工場、港湾を結ぶ海上輸送を担う。 外航海運事業より売上規模は小さいが、5期間では増収・増益が継続した。
売上高は2022年3月期の23,722百万円から 2026年3月期の32,722百万円へ9,000百万円増加した。 4年間の増加率は約37.9%である。
セグメント利益は同期間に1,772百万円から 5,041百万円へ増加した。 利益額は約2.8倍となり、売上高を上回る速度で拡大した。
利益率は5期連続で上昇し、2026年3月期は15.4%。 外航海運事業の同年度利益率7.9%を上回った。
2026年3月期の連結売上高に占める内航海運事業の比率は約14.2%。 報告セグメント利益の合計に占める内航利益の比率は約24.6%で、 売上構成比以上の利益寄与となった。
2027年3月期第1四半期は売上高8,204百万円、 セグメント利益428百万円。 前年同期は売上高7,961百万円、利益895百万円だった。
第1四半期の売上高は前年同期比約3.1%増だった一方、 セグメント利益は約52.2%減。 利益率は約11.2%から約5.2%へ低下した。
通期5年の改善傾向と第1四半期の減益が同時に存在するため、 2027年3月期は数量増と採算低下を分けて検証する必要がある。 売上高だけでは内航事業の利益回復を判断できない。
主な貨物は鉄鋼製品、石灰石、セメント、製鉄用原料、スラグ、石炭、コークスである。 大量輸送に適した内航船を用い、国内産業の基礎物資を定期的に運ぶ。
内航輸送は顧客工場の操業計画や荷役設備と密接に結び付く。 配船効率、空船回航、港湾待機、定期修繕の日数が輸送量とコストに影響する。
2026年3月末の内航船腹は81隻。 船隊の更新では燃費改善、安全運航、船員確保、環境規制対応を同時に進める必要がある。
内航海運は外航市況の変動を完全に相殺する事業ではない。 ただし、国内の継続輸送を基礎とするため、外航とは異なる収益要因を持つ。
2027年3月期会社予想はセグメント別数値を開示していない。 第2四半期以降は、内航売上高の増加が再び利益増加へ結び付くか、 利益率が前期通期の15.4%へ接近するかを確認する。
投資判断では、外航の市況回復だけでなく、内航の採算改善が連結利益の質を高めているかが重要である。 内航利益の安定性と第1四半期減益の持続期間を並行して追う必要がある。
鉄鋼原料・資源エネルギー輸送|大型船とコンビネーション配船
鉄鋼原料輸送は、国内外の製鉄会社向けに鉄鉱石と原料炭を運ぶ。 ケープサイズ船と超大型鉱石専用船を中核とする。
9万重量トンから20万重量トン級のばら積み船は、 積出港と揚地の制約、航路距離、貨物数量に応じて配船される。 25万重量トンから40万重量トン級の鉱石専用船は大量輸送による効率性を追求する船型である。
日本製鉄が筆頭株主であることは、鉄鋼原料・鋼材輸送における顧客基盤を理解するうえで重要である。 一方、収益性は契約条件、船舶コスト、航海日数、荷役条件に左右されるため、 株主関係だけで採算を推定することはできない。
資源エネルギー輸送では、石炭、穀物、工業塩、鉄鉱石、LPGを対象とする。 固体ばら積み貨物と液化ガスでは、船型、荷役設備、安全管理、契約期間が異なる。
8万重量トンから10万重量トン級のばら積み船は、 パナマックス系の航路制約と荷量に対応する。 大型LPG船は液化石油ガスの安全輸送に特化する。
公式事業案内は、太平洋水域、大西洋水域、インド洋水域を組み合わせた輸送を掲げる。 往航と復航で異なる貨物を組み合わせるコンビネーション輸送は、 空船航海を抑え、運航効率を高めるための中核手法である。
鉄鋼原料と資源エネルギーは貨物量が大きく、1航海当たりの売上寄与も大きい。 その反面、船舶の不稼働、港湾混雑、荷役遅延が期間利益へ与える影響も大きくなりやすい。
大型船の長期契約は輸送需要を固定化しやすいが、 契約価格の改定時期と燃料費調整条項によって利益感応度が変わる。 開示資料で契約残存期間や運賃改定の詳細が示されない場合、外部からの精密な利益予測には限界がある。
中期経営計画では、既存事業の深化としてインド・東南アジアを含む輸送需要の取り込みを掲げる。 地域別の荷動き拡大が船腹増強と結び付くかが中期的な確認点である。
環境対応では、メタノール二元燃料船など新燃料対応船への投資が示されている。 新造船投資は燃費と排出量を改善する一方、建造費、引渡時期、資金調達負担を伴う。
鉄鋼業では高炉原料だけでなく、還元鉄や鉄スクラップの海上輸送需要が中長期の焦点となる。 同社は中期計画で還元鉄・スクラップを新たな輸送対象として明記している。
エネルギー分野ではアンモニア、水素、液化CO2の輸送を成長候補に位置付ける。 これらは既存の石炭・LPG輸送とは船舶仕様とサプライチェーンが異なり、 実船投入と長期契約の獲得が事業化の確認点となる。
プロトレーダーが追うべき開示は、船隊計画、長期契約の獲得、 新造船の竣工、環境対応船の稼働、投資額、減価償却費、ネットDERである。 売上成長だけでなく、投下資本に対する利益とキャッシュフローを同時に確認する必要がある。
不定期船・近海水域サービス|多品種貨物と脱炭素輸送への展開
不定期船サービスは2万重量トンから6万重量トン級のばら積み船を使用する。 大型鉱石船より小回りの利く船型で、多品種の貨物と多様な港湾条件に対応する。
取扱貨物は鋼材、肥料、石灰石、非鉄金属、塩、バイオマス燃料、穀物、セメント。 同じ船型でも貨物ごとに積付け、荷役、船倉清掃、安全管理の条件が異なる。
鋼材輸送では1966年から培った輸送実績を公式サイトで示す。 製品鋼材は損傷防止と荷役品質が重要で、単純な重量輸送とは異なる運航ノウハウを要する。
バイオマス燃料や穀物は、乾燥状態、発熱、粉じん、荷役品質など貨物特有の管理が必要となる。 貨物構成の変化は輸送量だけでなく、運航コストと船舶回転率にも影響する。
近海水域サービスは8,000重量トンから19,000重量トン級の一般貨物船を中心とする。 主な対象地域は中国、東南アジア、日本を含む近海域である。
取扱貨物は鋼材、ドロマイト、バイオマス燃料、石膏、肥料。 工業原料と製品貨物を組み合わせ、往復航の積載率を高めることが採算管理の基本となる。
不定期船・近海輸送は、貨物ごとに契約期間と市況感応度が異なる。 鉄鋼原料の長期契約船と同じ前提で利益を推定せず、 船型別、航路別、貨物別に市況を確認する必要がある。
中期計画「FORWARD 2030 II」は、既存貨物の深掘りと新規貨物の開拓を並行する。 還元鉄、鉄スクラップ、液化CO2、アンモニア、水素は、 脱炭素化に伴う新たな海上輸送需要として位置付けられている。
2030年度までの投資計画は総額約3,000億円。 コア事業投資約2,150億円、環境対応投資約450億円、 人材・DX投資約100億円を掲げる。
新燃料対応船への投資はコア事業投資の内数として約1,650億円。 投資規模が大きいため、営業キャッシュフローだけでなく、 船舶売却、借入、資本効率、株主還元との配分が重要になる。
2030年度の温室効果ガス年間排出量は2019年度比25%削減、 2040年度は75%削減、2050年度はネットゼロを目標とする。 排出削減の進捗は船隊更新と運航効率の双方で確認する必要がある。
2027年3月期第1四半期時点では、連結通期予想が上方修正された一方、 配当予想は公開買付け予定を踏まえて0円へ修正された。 業績モメンタムと資本イベントを別々に評価する局面である。
公開買付け価格は1株10,600円。 公開買付けの開始は前提条件の充足後とされ、2026年11月から12月ごろが予定されている。 開始前は公式開示の更新を優先して確認する必要がある。
公開買付け成立後は上場廃止が予定されている。 したがって、通常の海運市況、決算進捗、中期投資に加え、 公開買付けの条件、日程、成立可能性、上場廃止手続きが株価形成の中心要因となる。
1.会社予想と実績
2022年3月期から2026年3月期は各期首の通期会社予想と通期実績を比較し、2027年3月期は第1四半期後の最新予想を掲載しています。
| 指標 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 会社予想 | 実績 | 達成率 | 会社予想 | 実績 | 達成率 | 会社予想 | 実績 | 達成率 | 会社予想 | 実績 | 達成率 | 会社予想 | 実績 | 達成率 | 会社予想 | 実績 | 達成率 | |
| 売上高 (百万円) | 146,000 | 195,941 | 134.2% | 190,000 | 250,825 | 132.0% | 179,000 | 233,100 | 130.2% | 201,000 | 247,408 | 123.1% | 201,000 | 229,784 | 114.3% | 242,000 | — | 最新予想 |
| 営業利益 (百万円) | 10,600 | 26,711 | 252.0% | 21,000 | 32,487 | 154.7% | 14,700 | 21,601 | 146.9% | 18,000 | 20,224 | 112.4% | 13,000 | 20,529 | 157.9% | 26,500 | — | 最新予想 |
| 経常利益 (百万円) | 8,900 | 26,606 | 298.9% | 20,000 | 33,444 | 167.2% | 13,200 | 22,185 | 168.1% | 15,000 | 19,015 | 126.8% | 10,000 | 21,046 | 210.5% | 25,300 | — | 最新予想 |
| 親会社株主帰属純利益 (百万円) | 8,000 | 23,582 | 294.8% | 17,800 | 27,603 | 155.1% | 11,000 | 17,986 | 163.5% | 14,000 | 18,621 | 133.0% | 14,000 | 24,095 | 172.1% | 25,000 | — | 最新予想 |
| EPS(1株当たり当期純利益) (円) | 339.46 | 1,000.67 | 294.8% | 755.31 | 1,171.29 | 155.1% | 466.77 | 763.20 | 163.5% | 594.08 | 790.18 | 133.0% | 594.09 | 1,022.46 | 172.1% | 1,060.87 | — | 最新予想 |
達成率=実績÷会社予想×100。2022年3月期の期首予想は2021年3月期決算短信から補完。予想はすべて単一値です。
2.達成・未達理由
世界的な荷動き増加、港湾滞船と新造船供給の少なさでドライバルク市況が急騰。内航輸送量も多くの貨物で計画を上回り、円相場も会社前提の1ドル105円より円安の111.50円となったため、燃料高を吸収して大幅超過しました。
長期契約の安定収益、上期の堅調なドライバルク市況、高水準のVLGC市況、円安が寄与。下期に市況が軟化したものの、実績為替134.67円は期首前提120円を大きく上回り、全指標が予想を超過しました。
長期契約収益に加え、下期のドライバルク市況回復、VLGCの高水準、円安が押し上げました。内航貨物の弱さや過年度法人税計上はあったものの、実績為替143.67円が期首前提130円を上回り、全指標を達成しました。
上期のケープ・中小型船市況、円安、新造船稼働による内航増収増益、計画済みの老齢船売却益が寄与。下期の市況低迷と外貨建て費用増を吸収し、実績為替152.83円が期首前提140円を上回ったことも超過要因となりました。
大型船・中小型船・VLGC市況が総じて堅調で、内航も効率運航により増収増益。実績為替150.33円が期首前提140円より円安となり、老齢船売却益も加わりました。燃料価格は前提とほぼ同水準で、利益予想を大きく超過しました。
Q1の外航海運が堅調な市況と円安で増収増益となり、会社は通期予想を上方修正しました。最新予想は期初比で売上5.2%、営業利益14.7%、経常利益15.5%、純利益・EPS8.2%の引き上げです。
3.事業セグメントの自信度
決算短信で変化した表現を事業セグメント別・年度別に原文のまま掲載し、会社の自信度を推理しています。
外航海運事業
ドライバルク市況は10月にはBDI(バルチック・ドライ・インデックス)が5,600を超え、約13年ぶりの高水準を記録しました。
市況急騰と船隊整備効果で収益確信が最も強い局面。
ドライバルク市況につきましては、当期前半は堅調に推移したものの、ゼロコロナ政策による中国経済の停滞や、新型コロナウイルス感染症に対する港湾の検疫体制が緩和され滞船の解消につながったことを背景に、船腹需給が緩み、当期後半は各船型において下落基調となりました。
最高益は維持したが、市況の転調を明確に警戒。
外航海運市況につきましては、当期前半は中国経済の停滞や新型コロナウイルス感染症に対する港湾規制による滞船の解消等を受け、各船型において下落基調となりましたが、当期後半は南米積み鉄鉱石・穀物の好調な出荷に加え、パナマ運河・スエズ運河の通航に混乱が生じたこともあり、市況は上昇しました。
前半弱・後半回復で方向感は中立。
ケープ型撒積船(18万重量トン型)市況は、当期前半は鉄鉱石の堅調な出荷や西アフリカ積みボーキサイトの輸送需要が船腹需給を引き締めたことを受けて高水準で推移した一方、当期後半は主要積地における天候不順の影響などを受けて、一時は主要5航路平均用船料が日建て1万ドルを下回る水準まで低迷しました。
前半の強さと後半の落ち込みが併存。
ケープ型撒積船(18万重量トン型)市況は、ブラジルおよび豪州の主要港からの鉄鉱石の堅調な出荷や西アフリカからのボーキサイト輸送需要を背景に、前期末の落ち込みから回復基調をたどりました。
主要貨物の荷動きと低い船腹供給で回復に自信。
このように総じて堅調な市況に加え、為替レートが前年同期比円安で推移したこともあり、増収増益となりました。
Q1実績を受け通期利益予想を二桁上方修正。
Q1は大型船・中小型船・VLGCがそろって堅調で、円安も追い風。外航比率が約9割のため、最新予想達成の中心ドライバーです。
内航海運事業
タンカーにつきましては、LNG輸送、LPG輸送ともに、感染症拡大により減退していた需要が下期から回復に転じ、輸送量は当初の見通しを上回りました。
鉄鋼原料・セメント・電力も多くが計画超過。
LNG輸送では新規航路における海上輸送の本格化が輸送量増加に寄与した一方で、LPG輸送は国内需要の減退に伴い輸送量が伸び悩みました。
貨物ごとに強弱が分かれた局面。
セメント関連貨物は内需の低迷及び大幅減産の影響を受け、また電力関連貨物は石炭火力発電所の稼働率低下等を背景に、共に輸送量は当初の計画を下回りました。
鋼材・セメント・電力・タンカーの需要が弱い。
このような状況下、新造船の稼働による効果などもあり、前年同期比で増収増益となりました。
需要弱含みを新造船と効率運航で補完。
このような状況下、効率運航に努めたこともあり、内航海運事業の業績は前年同期比で増収増益となりました。
電力・LNGの一部需要と効率化が寄与。
以上の結果、内航海運事業全体では、一部貨物の輸送需要低迷や燃料費の増加等の影響を受け、前年同期比で増収減益となりました。
売上は増えたが、燃料費と需要低迷で採算悪化。
Q1は増収減益。鋼材・バイオマスは底堅い一方、セメント・電力・LNG・LPGの弱さと燃料費増が重く、全社利益への寄与は限定的です。
4.最新予想信頼度
最新予想は売上高2,420億円、営業利益265億円、経常利益253億円、親会社株主帰属純利益250億円、EPS1,060.87円。Q1後に全指標が上方修正され、営業利益率はQ1実績10.9%に対して通期計画も11.0%です。
Q1進捗率は季節性、市況変動、船舶売却益の計上時期を調整していない単純進捗率です。
達成できると判断する理由
- Q1の営業利益・経常利益は最新通期予想の27.6%・28.5%まで進み、営業利益率も通期計画とほぼ同水準です。
- 外航海運は大型船・中小型船・VLGCがそろって堅調で、円安も寄与。売上の約9割を占める主力事業が増収増益です。
- ブラジル・西アフリカの鉄鉱石・ボーキサイト荷動き、シマンドゥ鉱山の出荷拡大期待、低い新造船供給が大型船需要を下支えします。
- 2022年3月期から2026年3月期まで、期首会社予想に対して5指標すべてを毎期達成しており、予想設定には保守性が見られます。
- Q1実績を確認した後に通期予想を上方修正しており、足元の市況と為替を最新前提へ織り込んでいます。
達成できないと判断する理由
- 上方修正で余裕幅は縮小。営業利益は期初予想比14.7%引き上げられ、Q1並みの利益率を通期で維持する必要があります。
- Q1燃料油価格は1トン655ドルで、会社の上期前提610ドル・下期前提630ドルを上回っています。燃料費高止まりは採算を圧迫します。
- 内航海運はQ1に増収減益。セメント・電力・LNG・LPGの需要低迷と燃料費増が続けば、全社利益の下押し要因になります。
- 米国通商政策、中国経済、中東情勢、運河通航、貨物の出荷時期、新造船竣工量によりドライバルク市況は短期間で大きく変動します。
- 為替前提は上期160.17円、下期155円。想定以上の円高は外航収益の円換算額を押し下げます。
収益計上時期を見る際の注意点
会社資料には四半期ごとの明確な利益偏重の説明はありません。海運収益は市況、航海日数、貨物出荷、為替、燃料価格で変動し、単純な四半期均等進捗にはなりません。
また、過去年度は計画した老齢船の売却益が純利益を押し上げています。船舶売却益は計上時期が偏るため、Q1純利益の24.4%進捗だけで通期を判断しないことが重要です。
最終判断
外航海運市況が会社想定を大きく下回らず、下期為替が1ドル155円前後を維持し、燃料費上昇を運賃・効率運航で吸収できれば、最新予想は達成可能性がやや高いと判断します。特に営業・経常利益はQ1時点で進捗が良好です。一方、燃料高と外航市況の急落が同時に起きた場合は、上方修正後の利益予想が未達となるリスクがあります。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022/3 実績 |
2023/3 実績 |
2024/3 実績 |
2025/3 実績 |
2026/3 実績 |
2027/3 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 195,941 | 250,825+54,884 / +28.0% | 233,100-17,725 / -7.1% | 247,408+14,308 / +6.1% | 229,784-17,624 / -7.1% | 242,000+12,216 / +5.3% |
| 営業損益 | 26,711 | 32,487+5,776 / +21.6% | 21,601-10,886 / -33.5% | 20,224-1,377 / -6.4% | 20,529+305 / +1.5% | 26,500+5,971 / +29.1% |
| 経常損益 | 26,606 | 33,444+6,838 / +25.7% | 22,185-11,259 / -33.7% | 19,015-3,170 / -14.3% | 21,046+2,031 / +10.7% | 25,300+4,254 / +20.2% |
| 当期純利益 | 23,582 | 27,603+4,021 / +17.1% | 17,986-9,617 / -34.8% | 18,621+635 / +3.5% | 24,095+5,474 / +29.4% | 25,000+905 / +3.8% |
| EPS | 983.79 | 1,151.53+167.75 / +17.1% | 750.33-401.20 / -34.8% | 776.82+26.49 / +3.5% | 1,005.19+228.36 / +29.4% | 1,042.94+37.75 / +3.8% |
| PER | 4.28 | 3.57 | 6.14 | 5.16 | 7.25 | 9.15 |
| PBR | 0.85 | 0.72 | 0.74 | 0.59 | 0.93 | - |
| BPS | 4,930.57 | 5,732.21+801.65 / +16.3% | 6,240.29+508.08 / +8.9% | 6,789.04+548.75 / +8.8% | 7,809.54+1,020.50 / +15.0% | - |
| 純資産 | 118,189 | 137,405+19,216 / +16.3% | 149,584+12,179 / +8.9% | 162,738+13,154 / +8.8% | 187,200+24,462 / +15.0% | - |
| 営業CF | 32,881 | 42,930+10,049 / +30.6% | 31,015-11,915 / -27.8% | 34,851+3,836 / +12.4% | 35,422+571 / +1.6% | - |
| 投資CF | 139 | -1,958-2,097 / 支出転換 | -13,059-11,101 / 支出拡大 567.0% | -8,246+4,813 / 支出縮小 36.9% | 1,997+10,243 / 収入転換 | - |
| 財務CF | -29,915 | -32,392-2,477 / 支出拡大 8.3% | -12,067+20,325 / 支出縮小 62.7% | -17,811-5,744 / 支出拡大 47.6% | -28,188-10,377 / 支出拡大 58.3% | - |
| 現金及び現金同等物 | 31,215 | 40,264+9,049 / +29.0% | 47,069+6,805 / +16.9% | 55,784+8,715 / +18.5% | 65,625+9,841 / +17.6% | - |
中期経営計画
FORWARD 2030 II|2024年度から2027年度
数値目標
「FORWARD 2030 II」は2024年度から2027年度を対象とする。 2027年度の営業利益目標は200億円、 ROE目標は10%、財務規律はNet DER1.0倍以下。 2030年度もROE10%以上とNet DER1.0倍以下を維持する方針である。
2026年3月期の営業利益は205億29百万円で、 2027年度目標の200億円を上回った。 ただし単年度の達成だけでなく、船舶投資後もROEと財務規律を維持できるかが計画評価の中心となる。
基本方針
基本方針は、コア事業の深化、新たな成長領域の確立、環境対応、 人的資本・DX、資本効率を一体で進めることにある。 鉄鋼原料、資源エネルギー、不定期船、近海・内航の既存基盤を維持しながら、 脱炭素化に伴う新規貨物を取り込む。
コア事業では、インド・東南アジアを含む輸送需要の獲得、 顧客との長期関係、船型別の効率運航を重視する。 メタノール二元燃料船などの新燃料対応船を導入し、 既存顧客の排出削減要請に対応する。
新たな成長領域として、還元鉄、鉄スクラップ、液化CO2、 アンモニア、水素の海上輸送を掲げる。 実際の利益寄与を判断するには、実証段階と商用契約段階を区別し、 船舶発注、長期契約、運航開始の開示を確認する必要がある。
投資・資本配分
2030年度までの投資総額は約3,000億円。 コア事業投資約2,150億円、 環境対応投資約450億円、 人材・DX投資約100億円を計画する。 新燃料対応船への約1,650億円はコア事業投資の内数である。
資金配分では営業キャッシュフロー約2,000億円、 財務キャッシュフロー・資産活用約1,000億円を想定し、 株主還元に約300億円を充てる枠組みを示す。 配当性向は30%を基本とする。
温室効果ガスの年間排出量は2019年度比で、 2030年度25%削減、2040年度75%削減、 2050年度ネットゼロを目標とする。 2030年度の排出量目標は150万トンである。
2026年8月3日時点の資本イベント
2026年7月31日、同社は日本郵船による公開買付けに賛同する意見を公表した。 公開買付け価格は1株10,600円、 買付予定数は11,379,482株、 買付予定数の下限は3,524,375株。
公開買付けは2026年11月から12月ごろの開始が予定され、 成立後は上場廃止が予定されている。 2027年3月期の配当予想は第1四半期決算時点で0円へ修正された。
中期経営計画は公式サイトに掲載されているが、 今後の資本構成、株主還元、上場形態は公開買付けの進行と合わせて確認する必要がある。 海運事業の業績進捗と公開買付け手続きは別の評価軸となる。
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競合他社
① 日本郵船(9101)
日本郵船は定期船、物流、自動車、ドライバルク、エネルギー、その他事業を展開する総合海運企業である。 NSユナイテッド海運との直接競合は、鉄鉱石、石炭、穀物を中心とするドライバルク輸送と、 LNG・LPGを含むエネルギー輸送である。
ドライバルク事業では、鉄鉱石、石炭、穀物、木材チップなどを輸送する。 大型ばら積み船から中小型船まで船型を組み合わせ、 世界各地の資源会社、鉄鋼会社、電力会社向けにサービスを提供する。
NSユナイテッド海運の鉄鋼原料輸送と比較すると、 日本郵船は船隊規模、海外営業網、貨物ポートフォリオ、資本力で大きい。 NSユナイテッド海運は日本製鉄グループとの関係と鉄鋼原料・鋼材輸送の専門性が対抗軸となる。
2026年3月期の連結売上高は2兆4,236億89百万円、 営業利益は1,386億1百万円、 経常利益は2,111億35百万円、 親会社株主に帰属する当期純利益は2,117億50百万円。
売上高は前期比6.4%減、 営業利益は34.3%減、 経常利益は57.0%減、 当期純利益は55.7%減だった。 自己資本比率は59.1%。
日本郵船の収益はコンテナ船、物流、自動車船、エネルギー、ドライバルクへ分散している。 NSユナイテッド海運は外航ばら積み船の比重が高く、 ドライバルク市況と鉄鋼関連輸送の影響が相対的に大きい。
2026年7月31日に公表された公開買付けでは、日本郵船がNSユナイテッド海運の株式取得を予定する。 日本郵船は競合企業であると同時に、公開買付け成立後の親会社候補となる。
公開買付け後は、船隊、営業網、顧客基盤、脱炭素投資での連携が論点となる。 ただし具体的な統合効果や事業再編は、今後の公式開示に明記された範囲で判断する必要がある。
② 商船三井(9104)
商船三井はドライバルク、エネルギー、自動車船、コンテナ船、物流、不動産などを展開する。 NSユナイテッド海運とは、鉄鉱石、石炭、穀物、木材チップなどのばら積み輸送で競合する。
ドライバルク部門は大型鉱石船、ケープサイズ、パナマックス、ハンディサイズなどの船型を運航する。 鉄鋼原料、電力用石炭、穀物、バイオマス燃料など、 NSユナイテッド海運の外航海運事業と重なる貨物が多い。
エネルギー分野ではLNG船、タンカー、海洋事業を展開する。 NSユナイテッド海運のLPG・資源エネルギー輸送と比較すると、 商船三井は液化ガスと海洋インフラを含む事業領域が広い。
2026年3月期の連結売上高は1兆8,250億98百万円、 営業利益は1,270億2百万円、 経常利益は1,758億39百万円、 親会社株主に帰属する当期純利益は2,132億60百万円。
売上高は前期比2.8%増だった一方、 営業利益は15.8%減、 経常利益は58.1%減、 当期純利益は49.9%減。 自己資本比率は48.2%だった。
商船三井は事業規模と船種の分散で、特定のばら積み貨物への依存を抑える構造を持つ。 NSユナイテッド海運は規模では劣るが、 鉄鋼原料と産業基礎物資に集中した顧客対応が競争力となる。
両社の競争軸は、長期契約の獲得、船舶の燃費性能、 荷役品質、安全運航、世界各地での配船力、脱炭素対応船の投入時期である。 新燃料船への投資余力も中長期の差となる。
比較では連結利益の大きさだけでなく、 ドライバルク部門の利益率、船隊更新投資、ネット有利子負債、 営業キャッシュフローを同じ期間で確認する必要がある。
③ 川崎汽船(9107)
川崎汽船はドライバルク、エネルギー資源、自動車船、物流、コンテナ船持分法事業などを展開する。 NSユナイテッド海運とは鉄鋼原料、石炭、穀物、LNG、原油・LPG輸送で競合する。
ドライバルク事業は鉄鉱石船、石炭船、穀物船などを運航する。 大型船による鉄鋼原料輸送はNSユナイテッド海運のケープサイズ・鉱石専用船事業と直接重なる。
エネルギー資源輸送ではLNG船、油槽船、LPG船、電力炭船を扱う。 川崎汽船はドライバルクとエネルギーの両方で船種を広く持ち、 顧客業種も鉄鋼、電力、エネルギーへ分散する。
2026年3月期の連結売上高は1兆183億円、 営業利益は841億円、 経常利益は1,091億円、 親会社株主に帰属する当期純利益は1,329億円。
営業利益は前期比18.2%減、 経常利益は64.6%減、 当期純利益は56.5%減だった。 収益規模はNSユナイテッド海運を上回るが、前期比では大幅な減益となった。
2026年3月期のドライバルクセグメントは売上高2,927億円、 セグメント利益109億円。 エネルギー資源セグメントは売上高1,006億円、 セグメント利益96億円だった。
NSユナイテッド海運の2026年3月期外航海運事業は売上高1,970億62百万円、 セグメント利益154億89百万円。 区分方法が異なるため単純比較はできないが、鉄鋼原料輸送の採算を見る参考となる。
競争軸は大型船の長期契約、顧客専用船、燃費性能、船隊規模、 グローバルな配船網、LNG・LPGなど専門船の運航力である。 NSユナイテッド海運は鉄鋼系貨物への集中と内航補完が特徴となる。
川崎汽船との比較では、ドライバルク利益だけでなく、 コンテナ船持分法損益を除いた基礎収益、船舶投資、 環境対応船の発注、資本還元を分けて確認する必要がある。
出典
- NSユナイテッド海運 公式サイト
- NSユナイテッド海運 会社概要
- NSユナイテッド海運 事業案内
- NSユナイテッド海運 外航海運事業
- NSユナイテッド海運 鉄鋼原料輸送サービス
- NSユナイテッド海運 資源エネルギー輸送サービス
- NSユナイテッド海運 不定期船サービス
- NSユナイテッド海運 近海水域サービス
- NSユナイテッド海運 IR情報
- NSユナイテッド海運 決算短信
- NSユナイテッド海運 2026年3月期決算短信
- NSユナイテッド海運 2027年3月期第1四半期決算短信
- NSユナイテッド海運 中期経営計画
- NSユナイテッド海運 FORWARD 2030 II
- NSユナイテッド海運 日本郵船による公開買付けへの賛同意見
- 日本郵船 2026年3月期決算短信
- 日本郵船 ドライバルク事業
- 日本郵船 エネルギー事業
- 商船三井 2026年3月期決算資料
- 商船三井 ドライバルク事業
- 川崎汽船 決算情報
- 川崎汽船 ドライバルク事業
- 川崎汽船 セグメント情報
本ページは公開情報を基に作成した企業分析であり、特定の有価証券の売買を推奨または勧誘するものではありません。 業績予想、株価、時価総額、投資指標、船隊構成、競争環境、公開買付けの条件および日程は変動する可能性があります。 投資判断は最新の開示資料を確認したうえで、自身の責任で行ってください。

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