6336 石井表記

石井表記 6336 東証S

ISHII HYOKI CO., LTD.|プリント基板・半導体パッケージ基板向け製造装置、車載・産業機器向け操作パネル、電子部品実装、機能性材料を塗布するインクジェット装置を展開する製造業者。

※2026年6月26日時点の情報

事業内容

2026年6月26日の時価総額は約156億円。同日の株価終値1,911円と、発行済株式総数8,176,452株を用いて算出した。

石井表記は1963年4月創業、1973年4月設立。本社は広島県福山市神辺町旭丘5番地で、代表取締役会長は石井峯夫氏、代表取締役社長は山本晋宏氏。資本金は300百万円、決算期は1月、東京証券取引所スタンダード市場に上場する。シルク印刷・スイッチパネル、プリント基板製造装置、インクジェット装置の製造販売を主要事業とする。

2027年1月期第1四半期の連結業績は、売上高4,049百万円、営業利益367百万円、経常利益376百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益266百万円。前年同期比では売上高12.3%増、営業利益98.8%増、経常利益94.1%増、四半期純利益63.8%増となった。AI関連向けパッケージ基板需要、高機能材料向けめっき設備、生産消耗品が電子機器部品製造装置事業を牽引した。通期会社予想は売上高16,666百万円、営業利益1,155百万円、経常利益1,206百万円、親会社株主に帰属する当期純利益945百万円で据え置かれている。

電子機器部品製造装置事業|AI向けパッケージ基板と高機能材料設備

売上高は2022年1月期の4,626百万円から2026年1月期の4,876百万円へ増加。2026年1月期は営業利益806百万円、営業利益率約16.5%となり、AI関連向けパッケージ基板設備、高機能材料向けめっき設備、生産消耗品が増収増益を支えた。
電子機器部品製造装置事業・業績推移(各系列は独立スケール、単位:百万円)
売上高 営業利益
4,626 5,522 4,649 4,577 4,876 915 956 646 647 806 2022/1 2023/1 2024/1 2025/1 2026/1

電子機器部品製造装置事業は、プリント基板、半導体パッケージ基板、電子デバイス、液晶パネルなどの製造工程で使用される装置を開発・製造する。

プリント基板分野では、研磨装置、酸洗浄装置、ジェットスクラブ研磨装置、ウェット処理装置、ハーフエッチングライン、めっき装置などを提供する。基板表面の粗化、洗浄、異物除去、銅厚調整、回路形成前処理など、製造歩留まりと微細配線品質に直結する工程を対象としている。

長年蓄積した研磨・洗浄・表面処理技術を基盤に、装置本体だけでなく研磨材や生産消耗品を供給する。装置納入後も顧客工場の稼働率に連動した消耗品・保守需要が発生するため、新規設備投資だけに依存しない収益機会を持つ。

2026年1月期は、スマートフォンやパソコン向けプリント基板設備投資が停滞する一方、AI関連向けパッケージ基板の設備投資、高機能材料向けめっき設備、生産消耗品が増加した。液晶関連では新規装置需要が弱かったものの、生産消耗品の販売が下支えした。

2027年1月期第1四半期は売上高1,273百万円、営業利益279百万円となり、前年同期比で売上高38.5%増、営業利益217.2%増となった。AI関連向けパッケージ基板需要に伴う関連設備、高機能材料向けめっき設備、生産消耗品の増加が寄与した。

会社はAI関連向けパッケージ基板に対し、より高精度な研磨を実現する研磨材の改良と研磨機の開発を進めている。高機能材料向けめっき設備についても顧客ニーズに沿った製品開発とラインアップ拡充を進め、販売実績を積み上げている。

フレキシブル基板向けでは電解銅めっきや薬液処理設備、自動車分野では部品加工装置も展開する。基板の微細化、半導体パッケージの高密度化、新材料の採用が進むほど、研磨精度、膜厚均一性、薬液制御、異物管理に対する要求が高まる。

ディスプレイ及び電子部品事業|車載加飾・操作パネル・電子部品実装

売上高は2023年1月期の12,688百万円をピークに2025年1月期は10,233百万円まで減少し、2026年1月期は10,764百万円へ回復。営業利益は2023年1月期の1,060百万円から2025年1月期に260百万円まで低下した後、2026年1月期は334百万円となった。
ディスプレイ及び電子部品事業・業績推移(各系列は独立スケール、単位:百万円)
売上高 営業利益
9,787 12,688 12,068 10,233 10,764 855 1,060 934 260 334 2022/1 2023/1 2024/1 2025/1 2026/1

ディスプレイ及び電子部品事業は、加飾印刷とエレクトロニクス技術を組み合わせ、車載機器、工作機械、産業用機械、情報端末などの操作部分を構成する製品を供給する。

主な製品はGOP液晶システム、照光スイッチ、タッチセンサースイッチ、スイッチパネル、シルク印刷製品、ラベル、アルマイト銘板、加飾フィルム、フィルム成形品、プリント基板実装品、精密板金部品である。

スイッチパネルでは、加飾印刷、タッチセンサー、照光機能、液晶表示器、板金ケース、樹脂ケースを組み合わせたユニット製品まで対応する。顧客製品の外観、操作性、表示、電子回路を一体で設計・製造できる。

シルク印刷では、データ作成、製版、印刷、各種加工まで一貫して対応する。ポリエステル、アクリル、ポリカーボネートなど複数材料を扱い、ステルス印刷、エンボス加工、可変表示印刷、ポッティング、モールドプリントなどの加飾加工も展開する。

プリント基板・部品実装では、硬質基板、フレキシブル基板、電極シートなどへの実装に対応する。自動実装ラインを2ライン保有し、小ロットから大ロットまで扱うほか、実装後は全数画像検査機による検査を行う。

国内に加え、フィリピンのJPN,INC.と中国の上海賽路客電子有限公司を連結子会社として展開する。海外拠点を活用した電子部品実装や印刷製品の供給が売上規模を支える一方、現地需要、材料価格、為替、稼働率によって利益が変動する。

2026年1月期は、自動車向け印刷製品、工作機械及び産業用機械向け操作パネルで顧客の生産調整が続いた。JPN,INC.は材料価格上昇の影響を受けた一方、上海賽路客電子有限公司は主要顧客からの受注増加により増収増益となった。

2027年1月期第1四半期は売上高2,773百万円、営業利益88百万円。売上高は前年同期比3.4%増加したが、営業利益は8.7%減少した。自動車向け印刷製品の生産調整、JPN,INC.の減収と材料価格上昇、中国経済停滞の影響が利益面に表れた。

会社は中国子会社の取引関係を活用した中国での車載部品販売、日本国内における印刷製品の新規顧客開拓、少量の電子部品実装案件の国内移管を進めている。中国子会社の量産効率を高めながら、国内外で意匠性の高い車載部品の採用拡大を目指す。

インクジェット事業|機能性材料の成膜・ダイレクトパターニング

インクジェット事業単独の売上高・営業利益は開示されておらず、電子機器部品製造装置セグメントに含まれる。同セグメントの売上高は直近5期で4,577百万円から5,522百万円の範囲で推移している。
インクジェット事業を含む電子機器部品製造装置セグメント売上高(単位:百万円)
4,626 5,522 4,649 4,577 4,876 2022/1 2023/1 2024/1 2025/1 2026/1

インクジェット事業は、液体材料を必要な位置へ必要量だけ吐出し、全面塗布、部分塗布、機能性薄膜形成、ダイレクトパターニングを行う装置を展開する。

大型ディスプレイの製造工程で使用される配向膜塗布装置に量産実績を持つ。配向膜材料をインクジェット方式で塗布することで、材料使用効率と生産性の向上を図る。

製品群には全面・部分コーティングモデル、パターニングモデルがあり、小型基板から大型基板まで対応する。量産装置だけでなく、研究開発・条件検討向けのテスト機も提案できる。

顧客が保有する材料の吐出性、塗布状態、膜厚均一性、パターン形成などを確認する評価サービスも提供する。装置導入前に材料とヘッドの組み合わせを検証し、量産条件の設計につなげる。

装置の開発、製造、評価、納入、アフターサービスまで一貫した技術支援体制を持つ。インクジェット棟には評価・検証環境と、小型から大型までの塗布装置を組み立てられるクリーンルームが設置されている。

インクジェット方式は版やマスクを使用しないため、多品種少量生産、設計変更、材料使用量削減への対応余地がある。一方、材料粘度、乾燥条件、ノズル安定性、吐出精度、膜厚均一性の管理が装置性能を左右する。

会社は液晶以外の電子デバイス、車載関連分野への展開を進めている。顧客ニーズに沿った試作機を販売し、その評価結果を量産機受注へつなげる方針である。

インクジェット事業の業績は独立した報告セグメントとして開示されていないため、単独の売上規模や採算は外部から確認できない。投資判断では、電子機器部品製造装置セグメントの受注、売上高、利益率と、液晶以外の用途における量産採用実績を確認する必要がある。

直近5年業績サマリー

業績項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期 2027年1月期
会社予想
売上高
(百万円)
14,423 18,222
+3,799 / +26.3%
16,729
-1,493 / -8.2%
14,821
-1,908 / -11.4%
15,651
+830 / +5.6%
16,666
+1,015 / +6.5%
営業損益
(百万円)
1,770 2,015
+245 / +13.8%
1,580
-435 / -21.6%
907
-673 / -42.6%
1,140
+233 / +25.7%
1,155
+15 / +1.3%
経常損益
(百万円)
1,731 2,016
+285 / +16.5%
1,721
-295 / -14.6%
1,109
-612 / -35.6%
1,184
+75 / +6.8%
1,206
+22 / +1.9%
当期純利益
(百万円)
1,490 1,639
+149 / +10.0%
1,101
-538 / -32.8%
788
-313 / -28.4%
890
+102 / +12.9%
945
+55 / +6.2%
EPS
(円)
186.53 205.19
+18.66 / +10.0%
137.83
-67.35 / -32.8%
98.65
-39.18 / -28.4%
111.42
+12.77 / +12.9%
118.31
+6.89 / +6.2%
PER
(倍)
4.05 3.30 5.19 5.21 6.62 16.15
PBR
(倍)
1.10 0.73 0.66 0.42 0.55
BPS
(円)
683.92 929.17
+245.25 / +35.9%
1,087.41
+158.24 / +17.0%
1,219.11
+131.70 / +12.1%
1,332.53
+113.42 / +9.3%
純資産
(百万円)
5,463 7,422
+1,959 / +35.9%
8,686
+1,264 / +17.0%
9,738
+1,052 / +12.1%
10,644
+906 / +9.3%
営業CF
(百万円)
1,675 1,747
+72 / +4.3%
561
-1,186 / -67.9%
2,292
+1,731 / +308.6%
1,300
-992 / -43.3%
投資CF
(百万円)
-390 -1,118
-728 / 支出増
-1,412
-294 / 支出増
-626
+786 / 支出減
183
+809 / 黒字転換
財務CF
(百万円)
-1,131 -681
+450 / 改善
122
+803 / 黒字転換
-1,785
-1,907 / 赤字転換
-939
+846 / 改善
現金及び現金同等物
(百万円)
2,694 2,792
+98 / +3.6%
2,226
-566 / -20.3%
2,329
+103 / +4.6%
2,961
+632 / +27.1%
売上高、各利益、純資産、キャッシュ・フローは各期の連結決算短信に記載された数値。EPS、BPS、PER、PBRは、2027年1月期第1四半期末の自己株式控除後株式数7,987,817株を全期間へ適用して再計算した。過去5期のPER・PBRには、2022年1月期755円、2023年1月期677円、2024年1月期716円、2025年1月期514円、2026年1月期738円の期末株価を使用。2026年1月31日は非営業日のため、2026年1月30日の終値を使用した。2027年1月期予想PERは2026年6月26日終値1,911円と再計算後の予想EPS118.31円から算出。会社予想BPSが開示されていないため、予想PBRは記載していない。端数処理により会社開示の1株指標と差異が生じる。

中期経営計画

独立した中期経営計画は未公表|ROE向上と成長分野への研究開発

2026年6月26日時点で、計画期間、売上高、営業利益、ROEなどの中期数値目標を体系的に定めた独立した中期経営計画は公表されていない。会社は中期経営計画など将来的な経営戦略の開示を課題として認識し、開示に向けた検討を継続している。

2027年1月期予想売上高 16,666百万円
2027年1月期予想営業利益 1,155百万円
2027年1月期予想純利益 945百万円
連結配当性向 30%以上を目安

資本コストや株価を意識した経営では、ROE向上、IR活動拡充、株主還元充実を通じてPBRの向上を目指す。2026年1月期のROEは8.7%で、会社がCAPMにより推定した株主資本コスト10.1%を下回った。会社はROEを構成する要素の中で売上高純利益率の振れ幅が大きく、収益性強化を最重要課題と認識している。

収益性向上策では、中国子会社の取引関係を生かした中国での車載部品販売、日本国内における印刷製品の新規顧客開拓、少量の電子部品実装案件の国内移管を進める。2025年1月期以降はデバイス事業本部の5営業所を閉鎖し、固定経費削減、営業管理事務の集約、人員削減を実施した。

研究開発では、意匠性の高い車載部品を国内メーカーに加えて中国・インドへ販売する活動、インクジェット塗布技術の液晶以外への展開、AI関連向けパッケージ基板用研磨材と研磨装置の開発、高機能材料向けめっき設備のラインアップ拡充を進める。

資産効率では、統廃合後に遊休資産となった旧営業所を売却し、タームローン314百万円を早期返済した。今後も遊休資産処分と適正在庫の維持を検討する。財務健全性を維持しながら株主還元を進め、成長投資では有利子負債の活用も検討する。

株主還元では、2027年1月期から連結配当性向30%以上を目安として安定配当を実施する方針へ変更した。2027年1月期の年間配当予想は36円、予想配当性向は30.4%。2026年1月期には164,800株、99百万円の自己株式を取得した。

2027年1月期会社予想は増収増益だが、営業利益は前期比1.3%増にとどまる。販売費及び一般管理費や人件費、修繕費などの増加を見込むため、AI関連設備の売上拡大だけでなく、デバイス事業の採算改善と固定費削減の進捗が利益計画達成の重要条件となる。

競合他社

① SCREENホールディングス(7735)

2026年6月26日終値:16,535円
時価総額:約3兆1,542億円
主な競合領域:プリント基板・パッケージ基板製造装置、直接描画・検査、半導体製造装置、ディスプレイ製造装置

SCREENホールディングスは、半導体製造装置、グラフィックアーツ機器、ディスプレイ製造装置、プリント基板関連機器を展開する。研究開発費、海外販売網、製造能力、顧客基盤の規模では石井表記を大きく上回る。

2026年3月期の連結売上高は約6,057億円、営業利益は約1,225億円。前期比では減収減益となったものの、高い利益水準を維持した。2027年3月期は売上高7,250億円、営業利益1,500億円を計画している。

プリント基板分野では、直接描画装置、ソルダーレジスト露光装置、検査装置などを展開する。石井表記の研磨、洗浄、ウェット処理、めっき装置とは工程が完全には一致しないが、プリント基板・パッケージ基板メーカーの設備投資予算を巡って競合する。

先端パッケージ分野では、露光、洗浄、検査、表面処理、搬送を含む複数工程の生産性と歩留まりが重要となる。SCREENは幅広い装置群とグローバルなサービス体制を持ち、大規模顧客のライン構築に対応できる。

石井表記は企業規模で劣る一方、研磨・洗浄・めっきなど特定工程における顧客別設計、消耗品供給、小回りの利く開発対応が差別化要因となる。大手が標準装置を展開する市場で、材料や基板構造に応じた専用設備を提案できるかが競争力を左右する。

② 上村工業(4966)

2026年6月26日終値:26,930円
時価総額:約4,874億円
主な競合領域:めっき装置、表面処理薬品、薬液管理、半導体ウェハー・パッケージ基板向け表面処理

上村工業は、表面処理用資材、表面処理用機械、めっき加工を展開する。薬品、装置、加工、分析・管理を組み合わせられる点が特徴で、めっき装置を手掛ける石井表記に対して直接性の高い競合となる。

2026年3月期の連結売上高は91,784百万円、営業利益21,327百万円、経常利益22,085百万円。前期比では売上高9.5%増、営業利益13.3%増、経常利益10.2%増となった。

主力の表面処理用資材事業は売上高77,661百万円、セグメント利益20,428百万円。生成AI用サーバー向けを中心に、半導体パッケージ基板用めっき薬品の需要が好調に推移した。

表面処理用機械事業は売上高8,406百万円、セグメント利益862百万円。売上高は減少したが、付加価値の高い半導体ウェハー用めっき装置の販売により、セグメント利益は48.0%増加した。

上村工業は装置単体ではなく、めっき薬品、前処理薬品、浴管理技術、プロセス条件を一体で提案できる。薬液と設備を同時に最適化する提案力は、石井表記に対する大きな競争優位となる。

石井表記は研磨、洗浄、めっき、エッチングなど周辺工程を含む設備設計と、生産消耗品の供給に強みを持つ。AI向けパッケージ基板や高機能材料で、顧客固有の材料・基板構造へ迅速に対応できるかが競争の焦点となる。

③ タツモ(6266)

2026年6月26日終値:4,530円
時価総額:約672億円
主な競合領域:洗浄・表面処理装置、塗布・現像装置、半導体後工程、先端パッケージ、機能性材料塗布

タツモは、半導体製造装置、FPD製造装置、クリーン搬送システム、精密金型・樹脂成形品を展開する。半導体ウェハーや先端パッケージ向けの洗浄、塗布、現像、表面処理、接合・剥離などで石井表記と競合する。

2026年12月期第1四半期の連結業績は、売上高5,967百万円、営業利益86百万円、経常利益186百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益111百万円。前年同期比では売上高20.6%減、営業利益92.9%減となった。

表面処理用機械事業は、洗浄、エッチング、めっき、回路形成などの工程を対象とする。先端パッケージやパネルレベルパッケージでは、微細配線形成、均一塗布、洗浄、搬送の精度が重要となる。

タツモは塗布・現像装置、ボンディング・デボンディング装置、搬送システムなど、半導体後工程の複数装置を展開する。石井表記の研磨・ウェット処理装置だけでなく、インクジェットによる機能性材料塗布とも競合領域を持つ。

2026年12月期通期では売上高35,500百万円、営業利益3,600百万円を計画している。企業規模はSCREENホールディングスや上村工業より小さいが、石井表記より大きく、半導体後工程への研究開発投資と海外展開を進めている。

石井表記は装置規模では劣るものの、プリント基板研磨で蓄積した表面処理技術、消耗品、顧客別設計、インクジェット評価サービスを組み合わせられる。両社の競争では、量産実績、処理精度、スループット、保守対応、材料メーカーとの連携が重要となる。

強みと将来性

研磨・洗浄・塗布・印刷を横断する技術基盤とAIパッケージ基板需要

石井表記の強みは、プリント基板製造装置、加飾・機能印刷、電子部品実装、インクジェット塗布という異なる技術をグループ内に持つ点である。

電子機器部品製造装置事業では、研磨、洗浄、薬液処理、エッチング、めっきなど、基板表面の品質を決める複数工程へ装置を供給する。装置本体だけでなく、研磨材や生産消耗品を継続販売できるため、顧客設備の稼働が収益機会につながる。

2026年1月期と2027年1月期第1四半期には、AI関連向けパッケージ基板需要が実際の売上高と利益へ寄与した。高機能材料向けめっき設備、生産消耗品、関連装置が増加し、電子機器部品製造装置事業の利益率が改善している。

AIサーバー向け半導体では、パッケージ基板の多層化、微細化、大型化が進み、表面平坦性、異物管理、銅厚均一性、密着性に対する要求が高まる。石井表記が研磨材と研磨機を同時に改良できれば、装置とプロセス条件を一体で提案できる。

高機能材料向けめっき設備では、既に顧客ニーズに沿った製品を開発し、販売実績を上げている。単発案件で終わらず、装置ラインアップと採用顧客を広げられるかが中期成長の鍵となる。

デバイス事業では、外観を形成する印刷・加飾技術と、スイッチ、タッチセンサー、液晶表示器、電子基板、ケースを組み合わせられる。車載や産業機器ではデザインと操作機能の一体化が進んでおり、単純な印刷品より付加価値の高いユニット製品を提案できる。

国内、フィリピン、中国に製造拠点を持ち、案件の数量、コスト、納期、品質要求に応じて生産を配分できる。少量案件の国内移管と中国子会社の量産効率向上を進める方針は、グループ全体の採算改善につながる余地がある。

インクジェット事業は、大型ディスプレイ向け配向膜塗布装置の量産実績を持つ。機能性材料の全面・部分塗布、ダイレクトパターニング、吐出評価まで提供でき、液晶以外の電子デバイスや車載用途への展開を進めている。

財務面では、2026年1月期末の純資産は10,644百万円、自己資本比率は66.9%。2027年1月期第1四半期末には純資産10,842百万円、自己資本比率68.8%となった。借入金圧縮と利益蓄積により財務余力が高まっている。

会社は遊休資産売却、在庫圧縮、固定費削減、自己株式取得、配当性向30%以上を組み合わせ、資本効率改善を進める。株主資本コストを上回るROEを継続的に確保できれば、利益成長だけでなく市場評価の改善余地も生じる。

将来性を判断する主要指標は、AI関連向けパッケージ基板装置の受注継続、高機能材料向けめっき設備の採用拡大、消耗品売上の増加、デバイス事業の営業利益率、インクジェット装置の液晶以外での量産採用となる。

弱みとリスク要因

設備投資循環、海外子会社の採算、資本コストを下回るROE

電子機器部品製造装置事業は、プリント基板、半導体パッケージ基板、液晶パネルメーカーの設備投資動向に左右される。装置の検収時期や大型案件の有無によって、四半期ごとの売上高と利益が大きく変動しやすい。

AI関連向けパッケージ基板需要は成長要因だが、設備投資が短期間に集中した後は顧客の能力増強が一巡する可能性がある。半導体・基板メーカーの投資延期、在庫調整、技術方式変更が発生すれば、受注と装置売上が下振れする。

液晶関連分野では大幅な需要回復が確認されておらず、新規装置需要は低調である。生産消耗品は既存工場の稼働率上昇による恩恵を受けるが、液晶パネル工場の閉鎖や設備統合が進めば、長期的な需要縮小につながる。

ディスプレイ及び電子部品事業は連結売上高の過半を占める一方、2026年1月期の営業利益率は約3.1%にとどまった。2023年1月期の営業利益1,060百万円から2025年1月期には260百万円まで低下しており、売上規模に対して採算変動が大きい。

自動車向け印刷製品、工作機械、産業用機械向け操作パネルは、顧客の生産調整による影響を受ける。車載案件では採用までの期間が長く、量産開始後も完成車メーカーや部品メーカーの生産計画に左右される。

フィリピンのJPN,INC.では、顧客の生産調整と材料価格上昇により2027年1月期第1四半期に営業損失となった。海外子会社では賃金、材料費、物流費、為替、現地税制、顧客構成の変化が利益率へ影響する。

中国では現地経済の停滞と為替リスクが指摘されている。中国子会社の売上規模が大きいため、主要顧客の受注減少、中国国内の設備投資停滞、現地通貨の変動が連結業績へ及ぼす影響も大きい。

インクジェット事業は単独の売上高・利益が開示されていない。液晶以外の分野へ試作機を販売しているが、量産機の受注規模、採算、継続性を外部から個別に評価しにくい。

SCREENホールディングス、上村工業、タツモなどの競合は、石井表記を上回る研究開発費、販売網、サービス拠点、製品ラインアップを持つ。特に上村工業はめっき薬品と装置を一体で提供でき、材料・プロセスを含む提案で優位に立つ。

2026年1月期のROEは8.7%で、会社が推定する株主資本コスト10.1%を下回った。純資産の増加に対して利益成長が追い付かなければ、ROEは低位にとどまり、資本効率改善の評価を得にくい。

2027年1月期会社予想は売上高6.5%増に対し、営業利益は1.3%増にとどまる。人件費、修繕費、販売費及び一般管理費の増加を見込んでおり、増収がそのまま営業増益へ結び付かない計画となっている。

2026年1月期の営業キャッシュ・フローは1,300百万円で、前期比43.3%減少した。売上債権や棚卸資産が増加する局面では利益と現金収支が乖離するため、受注増加時ほど運転資金の管理が重要となる。

2026年6月26日終値1,911円を2027年1月期予想EPS118.31円で除した予想PERは約16.15倍。過去5期の期末PERと比較すると評価水準が上昇しており、AI関連設備の受注鈍化や利益計画未達が生じた場合は、利益下振れと評価倍率低下が同時に発生する可能性がある。

出典

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