9417 スマートバリュー

スマートバリュー 9417 東証S

Smartvalue Co., Ltd.|モビリティIoTとGLION ARENA KOBEを核に、車両データ基盤、カーシェア、アリーナ・スポーツ・地域DXを展開。

※2026年6月25日時点の情報

事業内容

2026年6月25日の時価総額は約41.9億円。終値392円と発行済株式総数10,679,800株を基準に算出した。

1928年創業、1947年設立。本社は大阪府大阪市中央区安土町、代表者は取締役兼代表執行役社長の渋谷順氏、決算期は6月で、東証スタンダード市場に上場する。連結子会社にノースディテール、One Bright KOBE、ストークスなどを持ち、モビリティ・サービスとスマートベニューを現在の主要事業領域としている。2025年6月末に自治体向けクラウドサービス提供事業を譲渡し、従来のデジタルガバメント中心の事業構成から、車両IoTとアリーナを軸とする構成へ転換した。

2026年6月期第3四半期累計は、売上高4,220百万円、営業損失51百万円、経常損失716百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失858百万円。GLION ARENA KOBEの本格稼働によって売上高は前年同期比45.0%増加し、営業赤字は縮小した。一方、アリーナに関するリース会計上の利息費用や固定資産の減損損失が損益を圧迫した。通期会社予想は売上高5,936百万円、営業利益261百万円、経常損失634百万円、親会社株主に帰属する当期純損失789百万円としている。

モビリティ・サービス

2021年6月期から2025年6月期までの外部売上高は1,714百万円から1,103百万円へ縮小した一方、セグメント損益は276百万円の赤字から177百万円の黒字へ改善。2026年6月期第3四半期累計は売上高916百万円、セグメント利益186百万円となり、収益性の改善が続いている。
モビリティ・サービス業績推移(百万円) 売上高 1,714 1,556 1,555 1,462 1,103 損益 0 △276 233 288 194 177 2021/6 2022/6 2023/6 2024/6 2025/6

モビリティ・サービスは、車両に搭載したデバイスから位置情報、走行履歴、稼働状況、運転動態などを取得し、クラウド上で管理・活用する「クルマツナグプラットフォーム」を基盤とする。自動車会社、リース会社、レンタカー会社、カーシェア事業者、法人車両保有企業などを顧客対象としている。

カーシェア・レンタカー向けの「Kuruma Base」は、専用車載端末、管理画面、利用者向けスマートフォン機能、鍵の管理、予約・貸出業務を組み合わせる。対面での鍵の受け渡しを減らし、24時間の無人貸出や返却に対応できる点が中核機能となる。

法人車両管理サービス「CiEMS」は、車両の現在位置、運転日報、走行実績、安全運転、アルコールチェックなどを管理する。道路交通法対応だけでなく、保有車両の稼働率把握、事故抑止、運行管理業務の省力化に利用される。

車載機器や架装品を取り扱うビジネスソリューションも展開するため、クラウドソフトだけでなく、車両への機器導入、運用設計、保守を含む案件に対応できる。車両現場の業務理解とシステム実装を一体化しやすい構成である。

過去5期では売上規模が縮小しているが、低採算案件の見直し、月額課金収入の積み上げ、運用効率化によって利益水準は改善した。2026年6月期第3四半期累計では、モビリティ分野の月額継続収入と原価管理の改善が増収増益に寄与した。

今後の焦点は、Kuruma Baseの搭載台数拡大、CiEMSの契約車両数増加、既存顧客への追加機能販売である。契約車両数が積み上がれば、導入時の売上だけでなく、通信、クラウド利用料、保守から継続収入を得られる。

一方、車両IoTは通信会社、車両管理SaaS、自動車メーカー純正サービスとの競争が強い。汎用的な位置情報管理だけでは価格競争になりやすく、自動車流通、カーシェア、レンタカー運営の業務フローまで組み込めるかが差別化の鍵となる。

スマートベニュー

比較可能な2022年6月期から2025年6月期までに、売上高は461百万円から1,516百万円へ拡大。先行投資によってセグメント赤字が続いたが、2026年6月期第3四半期累計は売上高3,304百万円、セグメント損失0百万円まで改善し、営業段階では損益分岐点に接近している。
スマートベニュー業績推移(百万円) 売上高 461 369 641 1,516 区分前 損益 0 △89 △268 △271 △321 2021/6 2022/6 2023/6 2024/6 2025/6

スマートベニューは、アリーナ、プロスポーツ、イベント、デジタル技術、周辺地域開発を組み合わせ、施設単体ではなく地域全体の来訪価値を高める事業領域である。中心施設は神戸港の新港第2突堤に開業したGLION ARENA KOBEで、連結子会社One Bright KOBEが運営する。

アリーナでは、興行主から得る施設利用料、イベント関連収入、飲食、物販、広告、スポンサー、VIP関連サービスなど、複数の収益機会がある。プロバスケットボールクラブの神戸ストークスもグループ内に持つため、ホームゲームの開催、チケット販売、スポンサー営業、ファンマーケティングを施設運営と連動できる。

GLION ARENA KOBEを含むTOTTEIは、三宮・元町に近い神戸ウォーターフロントに位置する。アリーナだけでなく、緑地、飲食、イベント空間を含めて年間を通じた来訪を促し、試合やコンサートがない日の集客も狙う。

開業初年度はTOTTEI全体で162万人を超える来訪者を記録した。大規模イベントの開催数、来場者単価、スポンサー契約、飲食・物販の利用率が売上高を左右するため、稼働日数だけでなく、施設内消費をどこまで引き上げられるかが重要となる。

ノースディテールのシステム開発力も同セグメントに組み込まれ、チケット、会員、データ活用、地域サービスなどのデジタル基盤を支える。来場者データを取得し、イベント告知、再来場促進、周辺店舗との連携に活用できれば、施設運営とITの相乗効果が生まれる。

2026年6月25日には、One Bright KOBEがオリックスとともに、TOTTEIへの空飛ぶクルマ離着陸場整備に向けた事業検討を開始した。兵庫県の事業に採択され、調査、デモフライト、制度・運用調整を段階的に進める計画だが、現時点では検討段階であり、収益化は確定していない。

2025年6月期までは開業準備費用や先行投資が先行した。2026年6月期はアリーナの通期稼働により営業段階の採算が改善する一方、建物・設備に関するリース債務が大きく、営業利益と経常利益の差が拡大している。

アリーナが高稼働を維持できれば売上規模は大きく伸びるが、固定費も大きい。興行スケジュール、イベント集客、神戸ストークスの観客動員、スポンサー継続率が中長期の利益水準を決める。

デジタルガバメント(旧事業・2025年6月末に一部譲渡)

2022年6月期から2025年6月期の売上高は1,788百万円、1,949百万円、1,711百万円、1,743百万円で推移し、毎期セグメント黒字を確保。自治体向けクラウドサービス提供事業は2025年6月30日付で譲渡され、2026年6月期から独立セグメントではなくなった。
旧デジタルガバメント業績推移(百万円) 売上高 1,733 1,788 1,949 1,711 1,743 損益 164 318 407 245 170 2021/6 2022/6 2023/6 2024/6 2025/6

旧デジタルガバメント事業は、地方自治体向けのウェブサイト、オンライン手続き、情報発信、防災・防犯情報など、行政と住民をデジタルで接続するサービスを提供してきた。自治体との継続契約が中心で、グループの安定収益を支える役割を担っていた。

2021年6月期の数値は旧セグメント区分でスマートベニュー関連を含むため、2022年6月期以降との単純比較には注意が必要である。比較可能な2022年6月期以降は売上高17億円から19億円程度で推移し、セグメント利益を継続的に確保した。

同事業は利益を生んでいた一方、自治体向けクラウド市場の競争、調達手続き、個別対応の負担などを抱えていた。スマートバリューは事業ポートフォリオをモビリティとスマートベニューへ集中するため、2025年6月30日付で自治体向けクラウドサービス提供事業を譲渡した。

2025年6月期の親会社株主に帰属する当期純利益916百万円には、当該事業譲渡に伴う特別利益が寄与している。この利益は継続的な営業収益ではなく、2026年6月期には反動が生じる。

譲渡によって安定収益源が減る一方、経営資源を成長領域へ振り向けやすくなった。今後はモビリティとアリーナ事業が、旧デジタルガバメントの利益を補いながら連結利益を拡大できるかが評価の中心となる。

直近5年業績サマリー

業績項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期 2026年6月期
会社予想
売上高 3,446 3,805 +359 / +10.4% 3,873 +68 / +1.8% 3,814 △59 / △1.5% 4,361 +547 / +14.3% 5,936 +1,575 / +36.1%
営業損益 △605 △15 +590 / 赤字縮小 △74 △59 / 赤字拡大 △308 △234 / 赤字拡大 △440 △132 / 赤字拡大 261 +701 / 黒字転換
経常損益 △580 8 +588 / 黒字転換 △75 △83 / 赤字転落 △312 △237 / 赤字拡大 △733 △421 / 赤字拡大 △634 +99 / 赤字縮小
当期純利益 △1,407 1 +1,408 / 黒字転換 △48 △49 / 赤字転落 △348 △300 / 赤字拡大 916 +1,264 / 黒字転換 △789 △1,705 / 赤字転落
EPS △131.78円 0.10円 +131.88円 / 黒字転換 △4.54円 △4.64円 / 赤字転落 △32.67円 △28.13円 / 赤字拡大 85.78円 +118.45円 / 黒字転換 △73.88円 △159.66円 / 赤字転落
PER 4,974.02倍 4.81倍
PBR 3.59倍 2.52倍 2.02倍 2.50倍 1.73倍
BPS 198.22円 199.82円 +1.60円 / +0.8% 198.60円 △1.22円 / △0.6% 158.15円 △40.45円 / △20.4% 238.11円 +79.96円 / +50.6%
純資産 2,117 2,451 +334 / +15.8% 2,441 △10 / △0.4% 2,158 △283 / △11.6% 2,998 +840 / +38.9%
営業CF △938 596 +1,534 / プラス転換 △21 △617 / マイナス転換 26 +47 / プラス転換 463 +437 / +1,680.8%
投資CF △236 △1,175 △939 / 支出増加 △54 +1,121 / 支出減少 354 +408 / プラス転換 890 +536 / +151.4%
財務CF △77 1,271 +1,348 / プラス転換 △148 △1,419 / マイナス転換 106 +254 / プラス転換 1,045 +939 / +885.8%
現金及び現金同等物 770 1,463 +693 / +90.0% 1,239 △224 / △15.3% 1,726 +487 / +39.3% 4,126 +2,400 / +139.0%

単位は百万円。EPS・BPSは円、PER・PBRは倍。

2023年6月期までの増資等による株式数変化を踏まえ、EPS、BPS、PER、PBRは2026年3月末時点の発行済株式総数10,679,800株を統一分母として再計算した。自己株式控除前の株式数を使用しているため、会社開示の一株指標や情報ベンダーの数値と異なる。

PER・PBRの株価は各6月期末の終値712円、503円、401円、396円、413円を使用。2024年6月期は期末日が日曜日のため、2024年6月28日の終値を使用した。

赤字・黒字の転換期やキャッシュ・フローの符号が変化した期は、増減率ではなく状態を表示した。2022年6月期のPERは当期純利益が約1百万円と小さいため、極端に高い数値となっている。

2025年6月期の最終利益には自治体向けクラウドサービス提供事業の譲渡益が含まれる。2026年6月期会社予想は期末株価と期末自己資本の予想値がないため、PBRとBPSを空欄とした。

中期経営計画

中期経営計画「Moonshot Vision 2028」ローリング版

2025年8月に公表したローリング版では、モビリティ・サービスとスマートベニューへの事業集中を進め、2028年6月期に売上高8,576百万円、営業利益1,144百万円、経常利益302百万円、親会社株主に帰属する当期純利益76百万円を目標とした。

計画数値 2026年6月期
当初計画
2027年6月期
計画
2028年6月期
計画
売上高 7,421 7,999 8,576
営業利益 910 958 1,144
経常利益 20 89 302
当期純利益 △68 △69 76

ただし、2026年6月期の最新会社予想は売上高5,936百万円、営業利益261百万円、経常損失634百万円、当期純損失789百万円へ引き下げられている。当初計画との差は大きく、計画値をそのまま進捗評価に使用できない。

モビリティ戦略

モビリティでは、月額継続収入を示すMRRの拡大を重視する。当初計画ではMRRを2026年6月期60百万円、2027年6月期68百万円、2028年6月期75百万円へ引き上げる方針を示した。

Kuruma Baseの導入台数、CiEMSの契約車両数、顧客当たり利用機能数を増やし、通信料、クラウド利用料、保守収入を積み上げる。大手自動車関連企業との協業を通じ、個別受託ではなく標準化したプラットフォームの横展開を狙う。

スマートベニュー戦略

スマートベニューでは、GLION ARENA KOBEの稼働率向上、興行の誘致、神戸ストークスの観客動員、スポンサー、VIP、飲食、物販を組み合わせ、来場者一人当たりの収益を高める。

TOTTEIをアリーナ単独の施設ではなく、神戸ウォーターフロントの交流拠点として運営する。来場者データとIT基盤を活用し、イベント前後の回遊、周辺事業者との連携、地域サービスを実装する方針である。

計画達成を左右する論点

営業段階ではアリーナ開業による改善が進む一方、リース会計上の利息負担により経常損益と最終損益が大きく悪化している。営業利益の拡大だけでなく、金融費用を吸収できるキャッシュ創出力と自己資本の回復が必要になる。

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競合他社

① ソラコム(147A)

時価総額:約457.4億円 株価:1,000円 東証グロース

2026年3月期の連結売上高は12,423百万円、営業利益は871百万円。前期比では売上高38.1%増、営業利益32.7%増となった。通信回線、IoTプラットフォーム、デバイス、クラウド連携から得るリカーリング収益は9,296百万円まで拡大している。

主力の「SORACOM」は、IoT通信、デバイス管理、クラウド接続、データ収集を一体的に提供する。連結子会社キャリオットが提供する「Cariot」は、車両位置、走行履歴、運転日報、アルコールチェック、車両台帳などを管理する車両管理クラウドである。

スマートバリューのクルマツナグプラットフォーム、CiEMSとは、車載データの収集、通信、位置情報、法人車両管理の領域で競合する。ソラコムは通信基盤、クラウド接続、海外展開、顧客数の規模で優位性を持つ。

スマートバリューは、カーシェア、レンタカー、自動車関連企業の個別業務に合わせた端末、運用、システム構築まで扱う点で差別化する。汎用IoT基盤ではソラコムが強く、車両貸出業務の深い実装ではスマートバリューが対抗する構図となる。

② ぴあ(4337)

時価総額:約372.3億円 株価:2,376円 東証プライム

2026年3月期の連結売上高は55,330百万円、営業利益4,311百万円、経常利益4,345百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,317百万円。チケット販売、イベント、施設運営、コンテンツ関連事業を全国規模で展開する。

「ぴあアリーナMM」や「豊洲PIT」などの施設運営実績を持ち、興行主とのネットワーク、チケット販売基盤、会員データ、イベント制作を組み合わせられる。アリーナの稼働率、興行誘致、チケット販売、来場者データ活用でスマートバリューと競合する。

ぴあは全国規模のチケット流通と多数の興行主との接点を持つため、イベント調達力と販売力が強い。施設単体の運営だけでなく、チケット販売段階から需要を把握できる点も優位性となる。

スマートバリューはGLION ARENA KOBE、神戸ストークス、TOTTEIを一体運営し、神戸ウォーターフロントの地域開発と結び付ける。全国型のイベント流通ではぴあが上回る一方、特定地域で施設、スポーツクラブ、IT、地域回遊を統合する点がスマートバリューの差別化要素となる。

③ Will Smart(175A)

時価総額:約13.0億円 株価:604円 東証グロース

2026年12月期第1四半期は売上高206百万円、営業損失51百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失54百万円。2026年12月期通期では売上高1,150百万円、営業利益50百万円、当期純利益40百万円を予想している。

モビリティシステム「Will-MoBi」を中心に、カーシェア、レンタカー、車両予約、スマートフォンによる解錠、車載IoT、地域交通DXを提供する。Kuruma Baseやクルマツナグプラットフォームと競合範囲が近い。

両社とも、車載機器とクラウドを接続し、無人貸出や車両管理を実現する。顧客がカーシェア、レンタカー、地域交通のシステムを選定する場面では直接比較されやすい。

Will Smartは交通事業者や地域モビリティのシステム開発に強みを持つ。スマートバリューは自動車関連企業との取引実績、継続課金型サービス、車載機器の導入・運用まで含む体制で対抗する。

Will Smartは企業規模が小さく、業績変動と財務基盤に注意が必要だが、モビリティDXへの集中度は高い。スマートバリューにとっては、価格、導入速度、機能の標準化で競争圧力となる。

強みと将来性

車両IoTと大型アリーナを同一グループで事業化する独自性

スマートバリューの最大の特徴は、モビリティIoTと大型アリーナ運営という性格の異なる事業を、社会インフラと地域DXの観点から組み合わせている点にある。単純なソフトウェア会社でも、施設運営会社でもない。

モビリティでは、車載端末、通信、クラウド、スマートフォン、鍵管理、運用支援までを扱う。顧客の業務に入り込みやすく、システム導入後は車両台数に応じた月額収入へつながる。

特にKuruma Baseは、予約管理だけでなく、車両の解錠、貸出、返却を含む現場業務をデジタル化する。顧客側で一度運用が定着すると、端末交換やシステム移行の負担が生じるため、継続契約につながりやすい。

スマートベニューでは、GLION ARENA KOBEという実物資産の運営権、神戸ストークス、TOTTEIの地域空間をグループ内に持つ。外部施設へシステムを販売するだけでなく、自社グループの現場でサービスを実装し、改善できる。

アリーナ、チーム、チケット、スポンサー、飲食、物販、来場者データを横断できれば、単一収益源への依存を下げられる。イベント開催日の施設利用料だけでなく、日常的な地域来訪、ファン会員、企業協賛から収益を得る余地がある。

開業初年度にTOTTEIが162万人を超える来訪者を集めたことは、立地と施設の集客力を示す。今後は来場者数を維持しながら、一人当たりの飲食・物販・サービス利用額を増やすことが利益拡大につながる。

2026年6月期第3四半期累計では、スマートベニューのセグメント損失がほぼ解消した。開業前の先行投資段階から、稼働収益を確認する段階へ移ったことは重要な変化である。

空飛ぶクルマの離着陸場構想は現時点で検討段階だが、TOTTEIを新たな交通結節点へ発展させる可能性を持つ。神戸空港、関西圏、瀬戸内地域との移動サービスが実用化されれば、アリーナ来場以外の利用目的も生まれる。

旧デジタルガバメント事業の譲渡によって、経営資源を成長分野へ集中する方針は明確になった。モビリティの継続課金収入と、アリーナの高い売上成長が両立すれば、売上規模と営業利益の改善余地は大きい。

株式市場では時価総額が小さいため、アリーナの黒字定着、経常赤字の縮小、自己資本の回復が確認される局面では評価が大きく変化する可能性がある。ただし、営業利益だけでなく、利息負担を含む最終損益とキャッシュ・フローを確認する必要がある。

弱み・リスク要因

アリーナ投資に伴う高い固定費、リース負債、自己資本の低下

最大のリスクは、GLION ARENA KOBEに関連する固定費と金融負担の大きさである。2025年6月期末の総資産は24,903百万円へ急増し、純資産は2,998百万円、自己資本比率は10.2%まで低下した。

2026年6月期第3四半期末には純資産1,766百万円、自己資本1,413百万円、自己資本比率6.2%となった。四半期純損失と自己株式取得などが財務余力を圧迫している。

アリーナの営業損益が改善しても、リース会計上の利息費用が経常損益を押し下げる。2026年6月期会社予想は営業利益261百万円に対し、経常損失634百万円であり、営業段階と経常段階の差が大きい。

大型施設は人件費、設備保守、警備、清掃、光熱費などの固定費が発生する。イベント数や来場者数が想定を下回っても費用を短期間で削減しにくい。

アリーナの収益は、人気アーティストの公演、スポーツ興行、スポンサー需要、消費者の余暇支出に左右される。景気悪化、感染症、災害、交通障害などでイベントが中止されれば、売上高への影響が大きい。

神戸ストークスの成績、リーグ区分、観客動員も重要である。チームへの関心が低下すれば、チケット、物販、スポンサー、アリーナ稼働率に連鎖的な影響が出る。

旧デジタルガバメント事業の譲渡によって、比較的安定して黒字を計上していた収益源を失った。2025年6月期の事業譲渡益は一時的であり、2026年6月期以降はモビリティとスマートベニューだけで継続利益を作る必要がある。

モビリティ事業は黒字を維持しているが、過去5期の売上規模は縮小した。大手通信会社、車両管理SaaS、自動車メーカー、リース会社が同市場へ参入しており、価格と機能の競争が続く。

顧客ごとの個別開発が増えると、売上高が増加しても開発人員と保守負担が膨らみやすい。標準製品の導入比率、月額継続収入、顧客当たり採算を確認する必要がある。

2026年6月期の最新会社予想は、中期経営計画の当初値を大幅に下回る。計画の前提が早期に変化したため、2027年6月期以降の目標についても、次回のローリングで見直される可能性がある。

自己資本が薄い状態で追加損失や減損が発生した場合、資本調達、資産売却、投資計画の見直しが必要になる可能性がある。アリーナの集客成長だけでなく、営業キャッシュ・フロー、現預金、リース債務、自己資本の推移が重要な監視項目となる。

出典

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