ツインバード 6897 東証S
TWINBIRD CORPORATION|調理・生活・空調・美容家電を展開する新潟県燕市の家電メーカー。独自のFPSC冷却技術を用いた超低温冷凍・保冷機器も手掛ける。
※2026年6月23日時点の情報
事業内容
2026年6月23日の時価総額は約60.1億円。同日の終値は551円で、前日比80円高のストップ高となった。発行済株式総数10,906,300株を基準に算出している。
1951年創業、1962年設立。本社は新潟県燕市、資本金は1億円、代表取締役社長は野水重明氏、決算期は2月。東京証券取引所スタンダード市場に上場し、家電製品事業とFPSC事業を展開する。商品企画、設計、試作、量産、品質管理、販売、修理までを一貫して扱い、燕三条地域の加工技術や協力会社ネットワークも製品開発に活用している。
2026年2月期は売上高89億98百万円、営業損失8億55百万円、経常損失8億96百万円、当期純損失12億18百万円。家庭用冷蔵庫・洗濯機の販売縮小、在庫評価損、在庫処分、事業構造改革費用などが業績を圧迫した。2027年2月期は売上高96億円、営業利益1億円、当期純利益45百万円と黒字転換を予想する。2026年6月19日にはジャパネットホールディングスが1株800円での公開買付け開始予定を公表したが、ツインバード取締役会の賛同が実施条件であり、両社間で合意された取引ではない。ツインバードは特別委員会と取締役会で検討を続けるとしている。
家電製品事業 – 調理・生活・空調・美容家電
家電製品事業の売上高推移(単位:百万円)
家電製品事業では、冷蔵庫、冷凍庫、電子冷温庫、洗濯機、掃除機、扇風機、サーキュレーター、空気清浄機、照明、美容家電などの生活家電を扱う。
調理家電では、全自動コーヒーメーカー、スチームオーブンレンジ、電子レンジ、オーブントースター、ホームベーカリー、炊飯器、電気ケトル、ミキサーなどを展開する。
販売先は家電量販店、ホームセンター、通信販売、電子商取引、自社オンラインストア、法人顧客などに分かれる。自社ブランド製品に加え、販売先の仕様に合わせた専用商品やプライベートブランド、ODM製品も供給する。
家電量販市場では、国内大手、海外メーカー、低価格家電メーカーが同じ売場で競争する。商品機能、価格、デザイン、在庫供給、販売員への訴求、広告、レビュー評価が販売数量を左右する。
ツインバードは従来、幅広い価格帯と商品群を扱ってきたが、近年は商品点数を絞り、1商品当たりの売上高と採算性を高める方向へ転換している。
2026年2月期は、エントリー価格帯の家庭用冷蔵庫と洗濯機で競争が激化した。販売数量の縮小に加え、期末に在庫評価損や在庫処分費用を計上し、事業利益が大きく悪化した。
2027年2月期は、家庭用冷蔵庫・洗濯機事業を縮小し、採算性を重視した商品構成へ移行する。売上規模を追うだけではなく、値上げ、原価低減、在庫圧縮、物流費削減を通じて粗利益を確保する方針である。
高付加価値家電・B2B事業 – 匠プレミアムと法人需要
家電製品事業のセグメント利益推移(単位:百万円)
高付加価値家電では、専門家の知識や動作を製品機能へ落とし込む「匠プレミアム」を展開する。価格競争ではなく、味、仕上がり、使用体験、開発背景を明確にすることで商品単価とブランド価値を高める戦略である。
全自動コーヒーメーカーは、コーヒー界の専門家である田口護氏の監修を受け、豆の計量、挽き、湯温、蒸らし、抽出を自動化する。ミルの動作や湯温を調整し、家庭でも再現性の高い抽出を行う製品として位置付けられている。
匠ブランジェトースターは、パン職人の火入れや温度管理を製品制御へ反映する。食パンだけでなく、クロワッサン、フランスパン、カレーパンなど、パンの種類に応じて加熱方法を変える。
美容家電では、美容室PEEK-A-BOOの福井達真氏と共同開発した匠クラフトドライヤーを投入した。家電量販店だけでなく、美容室を通じた販売チャネルを開拓し、業務現場での評価を一般消費者向けブランドへつなげる。
法人向けでは、ホテル、医療施設、介護施設などに小型冷蔵庫を供給する。客室や病室では、省スペース、静音性、保守対応、継続供給が重視され、一般家庭向け大型家電とは異なる競争条件になる。
住宅・リフォーム分野では浴室テレビなどを展開する。住宅設備会社や施工会社との取引では、設置性、防水性能、長期保守、モデル継続性が重要となる。
ODM・専用商品では、販売会社が持つ顧客データや販路と、ツインバードの商品設計・量産能力を組み合わせる。一般市場に同一商品を大量投入する方法と比べ、販売先が明確で在庫計画を立てやすい。
2027年2月期以降は、利益率の低い量販型商品を縮小し、専門家との共同開発、法人向け、専用商品、アフターサービスを重視する。事業構造改革後に家電製品事業を黒字へ戻せるかが最重要課題となる。
FPSC事業 – 小型・超低温のスターリング冷凍技術
FPSC事業の売上高推移(単位:百万円)
FPSCは「Free Piston Stirling Cooler」の略称で、フリー・ピストン・スターリング方式を利用した冷却装置である。冷媒ガスの圧縮と膨張を繰り返して低温を発生させる。
一般的なコンプレッサー式冷凍機と比べ、小型、軽量、高速冷却、精密な温度制御、低振動などを実現しやすい。用途に応じてマイナス20度からマイナス80度台を含む低温・超低温領域へ対応する。
医薬・バイオ分野では、ワクチン、医薬品、検体、試薬、細胞、研究材料などの保管・輸送に使われる。温度逸脱によって品質が損なわれる製品では、輸送中を含めた温度管理が重要になる。
ツインバードは新型コロナワクチン向け低温冷凍庫を約12,000台出荷した実績を持つ。短期間で生産、検査、出荷を拡大した経験は、医薬品のコールドチェーン案件を獲得する際の実績となる。
2024年10月には低温冷凍庫がWHOのPQS認証を取得した。医療インフラが十分でない地域を含め、国際機関や各国のワクチン保管需要へ対応するための条件となる。
計測・環境分野では、分析機器、センサー、計測装置の冷却や温度校正に使用される。半導体、電子部品、材料開発では、温度変化による性能や耐久性を評価するための冷却装置が必要となる。
化学・エネルギー分野では、ガス分析、液化、燃料関連研究などが対象となる。食品・物流分野では、冷凍食品、高付加価値食材、研究用サンプルの小口輸送などへの展開余地がある。
2026年2月期は米国顧客の在庫計画見直しや通商政策の影響を受け、売上高が減少した。案件単位の数量が大きく、顧客の調達時期がずれると年度業績へ与える影響も大きい。
FPSC成長戦略 – 医薬・バイオ輸送と産業用途
FPSC事業のセグメント利益推移(単位:百万円)
FPSC事業は、家庭用家電とは顧客、契約、製品寿命、販売方法が異なる。製薬会社、研究機関、医療機器会社、物流会社、計測機器会社などの要求仕様に合わせ、冷却モジュールや完成品を供給する。
法人案件では、評価試験、仕様決定、認証、量産承認までに時間を要する。一方、採用後は顧客製品へ組み込まれ、同一仕様が一定期間継続する可能性がある。
今後の重点製品として、マイナス80度級のポータブル小型冷凍ボックスを開発する。大型の据置型冷凍庫だけでなく、少量の医薬品や検体を個別に運ぶ輸送用途を狙う。
医薬品の個別化や治験、再生医療、細胞関連研究が拡大すると、少量かつ高価な試料を適温で運ぶ需要が増える。温度記録、電源、バッテリー、耐久性、輸送容器との統合が製品競争力を左右する。
FPSCはヘリウムを作動ガスとして利用し、一般的なフロン系冷媒とは異なる。冷媒規制や環境負荷低減への対応は、中長期的な採用理由になり得る。
冷却装置単体の販売だけでなく、電源、断熱容器、温度制御、遠隔監視、保守を組み合わせれば、顧客ごとの導入単価を高められる。
展示会や海外販売パートナーを通じ、医薬・バイオ、計測・環境、化学・エネルギー、食品・物流の案件を開拓する。ワクチン特需に代わる複数の継続案件を形成できるかが成長の条件となる。
2026年2月期のセグメント利益は19百万円であり、全社利益を支える規模には達していない。開発費、営業費、認証費を負担しながら、量産案件を増やして固定費を回収する必要がある。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年2月期 | 2023年2月期 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 2026年2月期 | 2027年2月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,869 | 10,930 -1,939 / -15.1% | 10,303 -627 / -5.7% | 10,056 -247 / -2.4% | 8,998 -1,058 / -10.5% | 9,600 +602 / +6.7% |
| 営業損益 | 719 | 40 -679 / -94.4% | 113 +73 / +182.5% | 4 -109 / -96.5% | -855 -859 / 赤字転落 | 100 +955 / 黒字転換 |
| 経常損益 | 610 | 143 -467 / -76.6% | 166 +23 / +16.1% | 42 -124 / -74.7% | -896 -938 / 赤字転落 | 75 +971 / 黒字転換 |
| 当期純利益 | 419 | 69 -350 / -83.5% | 108 +39 / +56.5% | -101 -209 / 赤字転落 | -1,218 -1,117 / 赤字拡大 | 45 +1,263 / 黒字転換 |
| EPS | 38.45円 | 6.40円 -32.05円 | 9.92円 +3.52円 | -9.33円 -19.25円 | -111.71円 -102.38円 | 4.13円 黒字転換 |
| PER | 36.41倍 期末株価1,400円 | 103.45倍 期末株価662円 | 53.64倍 期末株価532円 | – 当期純損失 | – 当期純損失 | 133.54倍 終値551円基準 |
| PBR | 1.75倍 | 0.87倍 | 0.71倍 | 0.71倍 | 0.71倍 | – 予想BPS未公表 |
| BPS | 797.79円 | 760.68円 -37.11円 / -4.7% | 750.87円 -9.81円 / -1.3% | 710.00円 -40.87円 / -5.4% | 602.14円 -107.86円 / -15.2% | – 予想未公表 |
| 純資産 | 8,701 | 8,296 -405 / -4.7% | 8,189 -107 / -1.3% | 7,743 -446 / -5.4% | 6,567 -1,176 / -15.2% | – |
| 営業CF | 1,517 | 118 -1,399 | 463 +345 | -213 -676 | 738 +951 | – |
| 投資CF | -524 | -489 +35 | -293 +196 | -391 -98 | -226 +165 | – |
| 財務CF | -1,985 | -135 +1,850 | -164 -29 | 365 +529 | -70 -435 | – |
| 現金及び現金同等物 | 1,009 | 541 -468 / -46.4% | 495 -46 / -8.5% | 255 -240 / -48.5% | 697 +442 / +173.3% | – |
2022年2月期と2023年2月期は連結、2024年2月期以降は非連結。2023年2月期から収益認識に関する会計基準を適用しているため、売上高の単純比較には注意が必要。
EPS・BPS・PER・PBRは比較条件をそろえるため、最新の発行済株式総数10,906,300株を使用して再計算した。期末株価は2022年2月期から順に1,400円、662円、532円、505円、428円を使用。2027年2月期予想PERは2026年6月23日終値551円を基準としている。
2026年2月期決算短信では、継続企業の前提に関する重要な注記は記載されていない。
中期経営計画
前中期計画は未達 – B2B・FPSCへの転換と2027年2月期黒字化
2023年から2025年を対象とした中期経営計画では、最終年度となる2026年2月期に売上高150億円、営業利益8億円を目標としていた。
実績は売上高89億98百万円、営業損失8億55百万円となり、目標を大幅に下回った。円安、原材料・物流費の上昇、個人消費の回復遅れ、商品点数削減による売上減少、開発期間の長期化、家庭用冷蔵庫・洗濯機の競争激化などが影響した。
2026年6月23日時点で、2026年2月期以降を対象とする独立した数値目標型の新中期経営計画は確認できない。現在は2027年2月期業績予想と事業構造改革方針が実質的な経営目標となる。
第一の方針は、売上規模より利益を重視する事業運営である。家庭用冷蔵庫・洗濯機を縮小し、高付加価値家電、法人向け商品、ODM・専用商品、FPSCへ人員と開発資源を移す。
第二の方針は、B2B販売の拡大である。ホテル・医療施設向け小型冷蔵庫、美容室向けドライヤー、住宅設備向け浴室テレビ、販売会社向け専用商品など、導入先と需要が明確な案件を増やす。
第三の方針は、FPSCの成長事業化である。医薬・バイオ向けのマイナス80度級ポータブル冷凍ボックス、ワクチン保管機器、計測・環境機器向け冷却モジュールの案件獲得を進める。
第四の方針は、低コスト運営への転換である。組織・人員体制の適正化、在庫削減、物流費削減、会議・資料作成の削減、AI利用、新基幹システムによる業務効率化を進める。
電子商取引では、自社EC基盤、会員データ、修理、消耗品、買い替え提案を連携させ、購入後を含む顧客生涯価値の向上を目指す。商品販売だけでなく、継続的な顧客接点を収益へつなげられるかが重要となる。
ジャパネットホールディングスは、ツインバードの商品開発・製造力と、ジャパネットの顧客接点、販売、広告、物流、アフターサービスを組み合わせるシナジーを提示している。ただし、公開買付けはツインバード取締役会の賛同を条件とする提案段階であり、経営計画へ織り込まれた確定事項ではない。
IR情報へ競合他社
① 山善<8051>
2026年6月23日終値は1,783円、時価総額は約1,699億円。工作機械・産業機器を扱う専門商社であると同時に、家庭機器事業で幅広い生活家電を販売する。
2026年3月期の連結業績は、売上高5,418億85百万円、営業利益120億41百万円、親会社株主に帰属する当期純利益93億30百万円。営業利益は前期比26.3%増加した。
ツインバードと直接競合する家庭機器事業の売上高は1,015億60百万円で、ツインバードの全社売上高を大きく上回る。
炊飯器、電子レンジ、オーブントースター、電気ケトル、コーヒーメーカー、冷蔵庫、冷凍庫、冷温庫、扇風機、サーキュレーター、加湿器、除湿機、掃除機などを展開する。
調理家電、生活家電、季節家電のほぼ全領域でツインバードと商品が重なる。家電量販店、ホームセンター、ECサイトでは、手頃な価格と幅広い品ぞろえを前面に競争する。
山善は調達規模、販売網、商品数、在庫供給力で優位に立つ。複数の商品カテゴリーを一括して小売店へ提案できるため、売場確保でも競争力を持つ。
ツインバードには、価格や商品数で正面から競うのではなく、匠プレミアム、燕三条の開発背景、修理対応、法人向け専用商品など、比較されにくい価値を明確にする必要がある。
② 象印マホービン<7965>
2026年6月23日終値は1,398円、時価総額は約1,015億円。炊飯器、電気ポット、調理家電、生活用品を中心とする家電メーカーである。
2026年11月期第1四半期は、売上高303億84百万円、営業利益43億33百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益27億60百万円。売上高は前年同期比4.7%増、営業利益は同28.3%増となった。
2026年11月期通期は、売上高925億円、営業利益66億円を予想している。調理家電メーカーとして、ツインバードより大きい売上規模と利益基盤を持つ。
炊飯ジャー、電気ポット、電気ケトル、オーブンレンジ、オーブントースター、コーヒーメーカー、ホットプレート、調理鍋などでツインバードと競合する。
象印マホービンは、加熱、保温、圧力制御、炊飯に関する長期の技術蓄積と高いブランド認知を持つ。消費者が調理結果と耐久性を重視する製品では、ブランド信頼性が購入判断へ直結しやすい。
「STAN.」などでは、機能だけでなくデザインと生活空間への適合を訴求する。ツインバードの匠プレミアムや感動シンプルと、付加価値型調理家電の顧客層が重なる。
ツインバードが対抗するには、専門家の動作を再現する制御、少量多品種の開発力、法人向けカスタマイズ、燕三条の加工技術など、象印とは異なる購入理由を作る必要がある。
③ バルミューダ<6612>
2026年6月23日終値は593円、時価総額は約50.6億円。ツインバードと企業規模が近く、プレミアム家電市場における事業ポジションが最も近い競合となる。
2026年12月期第1四半期は、売上高17億75百万円、営業損失2億67百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失2億84百万円。売上高は前年同期比18.7%減少したが、各段階の損失は前年同期から縮小した。
2026年12月期通期は、売上高105億円、営業利益30百万円を予想する。ツインバードと同様に、売上規模の回復と黒字定着が経営課題となる。
「BALMUDA The Toaster」と匠ブランジェトースター、「BALMUDA The Brew」と全自動コーヒーメーカー、「BALMUDA The Range」とスチームオーブンレンジが直接競合する。
電気ケトル、扇風機、サーキュレーター、加湿器、掃除機、炊飯器などでも商品領域が重なる。
両社とも単純な低価格競争を避け、デザイン、使用体験、開発ストーリー、専門性を付加することで高い販売価格を実現しようとしている。
バルミューダはデザイン、広告表現、ブランド発信力に強みを持つ。ツインバードは専門家との共同開発、燕三条の製造背景、自社工場、修理、長期使用、FPSC技術を差別化要素として強化する必要がある。
強みと将来性
燕三条の開発・製造基盤とFPSCを併せ持つ事業構造
ツインバードの第一の強みは、商品企画、設計、試作、量産、品質管理、販売、修理までを一貫して扱える点にある。
新潟県燕三条地域には、金属加工、樹脂成形、表面処理、金型、部品加工などの企業が集積する。自社だけで全工程を抱えず、地域企業の専門技術を組み合わせて商品化できる。
大手メーカーが採算上扱いにくい小規模市場や、法人ごとに仕様が異なる製品でも、企画と生産条件を調整して対応できる可能性がある。
第二の強みは、専門家の技能を家電の制御へ変換する開発方法である。全自動コーヒーメーカー、匠ブランジェトースター、匠クラフトドライヤーでは、専門家の動作や判断を温度、時間、風量、速度などへ置き換えている。
単に高級な素材や外観を使うのではなく、使用結果の違いを製品価値として説明できる。価格比較を受けやすい家電市場で、競合製品と異なる選択理由を作りやすい。
第三の強みは、自社ブランドとODM・専用商品の双方を扱える点である。自社ブランドで技術や商品企画力を示しながら、販売会社や法人顧客の販路に合わせた商品も供給できる。
ホテル、医療施設、美容室、住宅設備、通信販売などのB2B・B2B2C市場を開拓できれば、家電量販店の店頭価格競争への依存を下げられる。
第四の強みは、一般家電メーカーとしては珍しいFPSC技術を保有する点である。小型、軽量、高速冷却、精密温度制御、超低温対応という特性は、家庭用家電とは異なる産業市場へ参入する基盤になる。
約12,000台のワクチン用低温冷凍庫出荷とWHOのPQS認証は、医薬品コールドチェーンで求められる品質と供給実績を示す。
ワクチン特需終了後の売上規模は小さいものの、医薬・バイオ、再生医療、検体輸送、計測機器、半導体、環境分析など、複数市場へ技術を横展開できる。
第五の強みは、2026年2月期に大幅な最終赤字を計上した後も、自己資本比率66.1%を維持している点である。財務余力を使い、事業構造改革と成長製品の開発を同時に進める余地が残る。
2027年2月期は営業黒字への転換を予想する。家庭用冷蔵庫・洗濯機の縮小によって一時的に売上高が減少しても、在庫処分と不採算販売を減らし、粗利益率を改善できれば利益体質は変わる。
ジャパネットホールディングスの提案が成立する場合、ツインバードの商品開発・製造力と、ジャパネットの顧客データ、販売、番組制作、物流、修理網を組み合わせる余地がある。
ただし、公開買付けは条件付きの提案であり、成立を前提とした企業価値評価はできない。単独での黒字化能力と、資本関係が変化した場合の成長余地を分けて評価する必要がある。
弱みとリスク要因
連続赤字、家電市場の価格競争、FPSC案件変動、TOBの不確実性
最大の弱みは、売上高の減少と利益悪化が同時に進んでいる点である。売上高は2022年2月期の128億69百万円から2026年2月期の89億98百万円まで縮小した。
当期純損益は2025年2月期に1億1百万円の損失、2026年2月期に12億18百万円の損失となり、2期連続で最終赤字を計上した。
2026年2月期には家庭用冷蔵庫・洗濯機の販売縮小に加え、在庫評価損3億56百万円、在庫処分に関する費用60百万円などが原価を押し上げた。
家電製品はモデル更新が速く、販売が計画を下回ると旧製品の値下げや評価損が発生する。在庫量、発売時期、販売予測の誤差が利益へ直結する。
家庭用家電市場では、国内大手、海外大手、低価格メーカー、EC専業ブランドが競合する。ツインバードより大きい調達規模と広告予算を持つ企業に対し、価格だけで競争すると採算を維持しにくい。
円安は海外で生産・調達する製品や部品の原価を上昇させる。価格改定が遅れたり、販売数量を守るために値上げを抑えたりすると、粗利益率が低下する。
不採算商品を縮小する構造改革は利益改善に必要である一方、商品数の減少によって小売店の売場や取引規模が縮小する可能性がある。
B2Bへの転換では、法人営業、案件管理、仕様調整、品質保証、長期保守が必要となる。既存の一般消費者向け販売組織から、短期間で収益性の高い法人事業へ転換できる保証はない。
FPSC事業は独自性を持つが、2026年2月期の売上高は3億88百万円、セグメント利益は19百万円にとどまる。現時点では、家電製品事業の赤字を補える規模ではない。
FPSCは顧客ごとの大型案件に左右されやすい。米国顧客の在庫調整、通商政策、認証の遅延、顧客製品の開発延期が発生すると、売上計上時期が翌年度へずれる可能性がある。
医薬・バイオ機器では、温度逸脱や故障が顧客の高価な医薬品・検体へ損害を与える。製品責任、品質保証、保守部品、輸送中の電源管理など、一般家電より高い信頼性が要求される。
2027年2月期の当期純利益予想は45百万円にすぎず、売上高や原価が計画からわずかに下振れるだけで再び赤字となる可能性がある。
2026年6月23日終値551円を再計算後の予想EPS4.13円で割った予想PERは約133.5倍となる。小幅な黒字回復に対して、株価は業績以外の材料を強く織り込んでいる。
ジャパネットホールディングスが公表した公開買付価格は1株800円だが、ツインバード取締役会の賛同が前提条件となる。ツインバードが反対した場合、または2026年10月30日までに意見表明を行わない場合、提案は取り下げられ、公開買付けは実施されない。
ツインバードは、ジャパネットによる公表は両社で合意されたものではなく、現時点で賛否を表明するものではないとしている。公開買付価格800円での取得が確定したと判断することはできない。
公開買付けへの期待で株価が上昇した後、提案撤回、条件変更、反対意見などが公表された場合、需給主導で株価が急落する可能性がある。反対に賛同が公表された場合は、買付価格、応募条件、上場廃止予定を改めて確認する必要がある。
発行規模と時価総額が小さく、平常時の売買高も限定される。材料発表時には買い注文や売り注文が一方向へ偏り、希望する価格で売買できない流動性リスクがある。
出典
- 株式会社ツインバード 公式サイト
- 株式会社ツインバード 会社概要
- 株式会社ツインバード FPSC事業
- 株式会社ツインバード IR情報
- 株式会社ツインバード 決算説明動画・資料
- 株式会社ツインバード 2026年2月期決算短信
- 株式会社ツインバード 2026年2月期通期決算説明資料
- 株式会社ツインバード 統合報告書2025
- 株式会社ジャパネットホールディングスによる当社株式に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ
- 株式会社山善 決算短信・決算説明資料
- 象印マホービン株式会社 決算短信
- バルミューダ株式会社 IRライブラリ
本ページは、企業が公表した決算短信、有価証券報告書、統合報告書、決算説明資料、適時開示、商品・サービス情報などを基に作成したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。公開買付けは条件付きの開始予定であり、実施、成立、買付価格での売却機会を保証するものではありません。業績予想、事業計画、株価指標は、需要、原価、為替、在庫、顧客動向、公開買付けの検討結果その他の条件によって変動します。投資判断は最新の開示資料を確認したうえで、自身の責任において行ってください。

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