5018 MORESCO

MORESCO 5018 東証S

MORESCO Corporation|ダイカスト用離型剤、難燃性作動液、高真空ポンプ油などの特殊潤滑油を主力に、素材、ホットメルト接着剤、エネルギーデバイス材料を展開するスペシャリティ化学企業。

※2026年7月10日時点の情報

事業内容

2026年7月10日の時価総額は約225億円。終値2,320円と発行済株式総数9,696,500株から算出した時価総額は約224億96百万円となる。

1958年10月27日設立。本社は兵庫県神戸市中央区港島南町五丁目5番3号、代表取締役社長は両角元寿。決算期は2月末で、東京証券取引所スタンダード市場に上場する。特殊潤滑油、素材、ホットメルト接着剤、エネルギーデバイス材料を中心に、国内外の自動車、鉄鋼、工作機械、半導体、衛生用品メーカーへ製品を供給する。

2027年2月期第1四半期は、売上高9,306百万円、営業利益1,071百万円、経常利益1,117百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益731百万円。特殊潤滑油の増収、価格改定、製品構成の改善などにより、営業利益は前年同期比106.1%増となった。通期会社予想は売上高37,000百万円、営業利益2,400百万円で据え置かれている。

特殊潤滑油・合成潤滑油

業績推移サマリ:比較可能性を確保するため、2022年2月期から2024年2月期は特殊潤滑油と合成潤滑油を合算した。売上高は14,995百万円から20,238百万円へ増加し、5年間で約35%拡大した。2027年2月期第1四半期も前年同期比15.8%増と、全社増収をけん引している。

特殊潤滑油・合成潤滑油 売上高推移(単位:百万円)

14,995 16,808 17,584 19,697 20,238 2022/2 2023/2 2024/2 2025/2 2026/2

2025年2月期から旧合成潤滑油区分を特殊潤滑油へ統合。過年度も合算して表示。

特殊潤滑油はMORESCO最大の製品区分であり、2026年2月期売上高の約58%を占める。主要顧客は自動車部品、鉄鋼、工作機械、産業機械、真空装置、半導体関連メーカーである。

ダイカスト用離型剤は、溶融したアルミニウムやマグネシウムを金型から円滑に取り出すために使用する。離型性だけでなく、金型温度、冷却性、鋳肌品質、焼付き、鋳巣、金型寿命、サイクルタイムなど、顧客の生産条件に合わせた処方調整が求められる。

同社はダイカスト用離型剤を国内トップシェア製品として位置付けている。製品を販売するだけでなく、顧客工場で塗布量、希釈倍率、金型温度、鋳造不良の原因を確認し、使用条件まで提案する技術サービスを競争力としている。

自動車の電動化ではエンジン関連部品の需要減少が懸念される一方、バッテリーケース、モーターケース、車体構造部品など、アルミニウムを使用する大型ダイカスト部品の増加が新たな需要となる。

水-グリコール系難燃性作動液は、火災リスクが高い鉄鋼設備、鋳造設備、ダイカスト設備などで使用される。通常の鉱物油系作動油より燃えにくく、設備の安全操業に不可欠な消耗材である。

高真空ポンプ油は、半導体製造装置、電子部品、真空熱処理、研究設備などで使用される。低蒸気圧、酸化安定性、到達真空度、スラッジの少なさ、長寿命性能が採用を左右する。

合成潤滑油領域では、高温環境用潤滑油、ハードディスク表面潤滑剤、特殊グリース基油などを展開する。2026年2月期はデータセンター需要を背景に、ハードディスク表面潤滑剤の販売増加が業績を支えた。

第10次中期経営計画では、半導体製造装置向けPFASフリー潤滑剤の事業化、フュージョンエネルギー設備向け耐放射線性潤滑剤、廃油と再生油を利用する循環型製品の開発を進めている。

2027年2月期第1四半期の特殊潤滑油売上高は5,683百万円で、前年同期比15.8%増となった。価格改定だけでなく、国内外の自動車・産業用途における販売数量と製品構成が、今後の利益率を左右する。

素材

業績推移サマリ:素材売上高は2022年2月期の3,480百万円から2026年2月期の4,298百万円へ増加した。急成長型ではないが、5期連続で増収し、特殊潤滑油やホットメルト接着剤を補完する安定収益領域となっている。

素材 売上高推移(単位:百万円)

3,480 3,793 3,909 4,234 4,298 2022/2 2023/2 2024/2 2025/2 2026/2

素材部門では、流動パラフィン、石油スルホネート、スルホン酸塩などを製造・販売する。これらは化粧品、医薬品、樹脂、ゴム、金属加工、防錆剤、洗浄剤など、多様な製品の原料として使用される。

流動パラフィンは、高度に精製した無色透明の炭化水素油である。化粧品、医薬品、食品包装、樹脂加工、ゴム製品など、純度や安全性が重視される用途で使用される。

石油スルホネートは、乳化、防錆、分散などの機能を持ち、金属加工油、洗浄剤、防錆油、グリース、各種工業薬品の原料となる。

素材製品は顧客製品の配合に組み込まれるため、品質の再現性、供給安定性、不純物管理、長期的な仕様維持が重要となる。一度採用されると切り替えに評価期間を要し、継続取引につながりやすい。

一方、原油・ナフサ価格、為替、物流費、エネルギー価格が採算に影響する。原材料価格上昇を販売価格へ転嫁するまでの時間差が、四半期ごとの利益率を変動させる。

2026年2月期は販売価格の是正などにより増収となった。2027年2月期第1四半期の売上高は1,184百万円で、前年同期比1.9%増だった。

素材部門は全社売上高に占める比率が約12%であり、特殊潤滑油ほど成長寄与は大きくない。ただし、製品用途が分散しているため、自動車や衛生用品市場の変動を補完する役割を持つ。

ホットメルト接着剤

業績推移サマリ:売上高は2024年2月期に8,430百万円まで拡大した後、2025年2月期は8,332百万円、2026年2月期は7,720百万円へ減少した。2027年2月期第1四半期も前年同期比2.3%減で、製品構成と収益性の改善が主要課題となる。

ホットメルト接着剤 売上高推移(単位:百万円)

6,785 7,664 8,430 8,332 7,720 2022/2 2023/2 2024/2 2025/2 2026/2

ホットメルト接着剤は、加熱して溶融させ、冷却によって固化・接着する無溶剤型の接着剤である。乾燥工程を必要とせず、高速な生産ラインへ組み込みやすい。

主力製品の「モレスコメルト」は、大人用・子供用紙おむつ、女性用衛生用品、ペット用シーツなど、吸収性衛生材料の組み立てに使用される。

紙おむつでは、不織布、吸収体、伸縮材、フィルムなど性質の異なる材料を、高速ラインで安定して接着する必要がある。接着強度だけでなく、臭気、肌への安全性、塗工温度、使用量、柔軟性が評価項目となる。

衛生用品以外では、自動車内装、建材、断熱材、エアコンフィルター、ラベル、封筒、段ボール、包装、製本などへ用途を広げている。

少子化により国内の乳幼児用紙おむつ市場は縮小圧力を受ける一方、高齢化に伴う大人用紙おむつ、介護用品、ペット関連用品は中長期需要が見込まれる。

海外では衛生用品メーカーの設備投資や消費人口の増加が需要要因となる。中国、東南アジア、南アジアにおける現地生産と技術対応が、グローバル大手との競争で重要となる。

2026年2月期は衛生材料用途の販売減少により減収となった。2027年2月期第1四半期も売上高1,949百万円、前年同期比2.3%減であり、特殊潤滑油との業績差が広がっている。

第10次中期経営計画では、高付加価値製品への入れ替え、環境対応製品、使用量を削減できる高性能品の拡販を進める。

開発工程では、生成AIと蓄積データを利用して有望な配合候補を絞り込む「モレスコ・インフォマティクス」を導入し、処方開発の速度と成功率を高める方針である。

エネルギーデバイス材料

業績推移サマリ:売上規模は200百万円台にとどまり、2025年2月期に296百万円まで増加した後、2026年2月期は283百万円となった。全社業績への寄与は小さいが、ペロブスカイト太陽電池向け封止材など、次世代用途の事業化を担う。

エネルギーデバイス材料 売上高推移(単位:百万円)

237 209 200 296 283 2022/2 2023/2 2024/2 2025/2 2026/2

エネルギーデバイス材料部門では、有機デバイス向け封止材、ガス・水蒸気透過度測定装置、太陽電池関連材料などを展開する。

有機EL、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池などの有機デバイスは、水分や酸素によって性能が低下しやすい。封止材には高い遮断性能、接着性、耐久性、低温硬化性が求められる。

MORESCOは、材料そのものに加えて、水蒸気やガスの透過度を測定する装置・評価技術を持つ。封止材の開発と評価を一体で行える点が、顧客との共同開発で強みとなる。

第10次中期経営計画では、ペロブスカイト太陽電池向け封止材の高性能化を次世代事業の一つとして掲げる。

ペロブスカイト太陽電池は軽量性や柔軟性を生かした用途が期待される一方、長期耐久性、水分遮断、量産工程、コストなどの課題が残る。

2027年2月期第1四半期の売上高は92百万円で、前年同期比6.8%減だった。開発テーマの将来性と、現在の売上規模は分けて評価する必要がある。

事業価値を高めるには、研究開発段階の材料を顧客評価、量産採用、継続受注へ移行させることが必要となる。採用時期が顧客の開発日程に左右されやすく、業績の立ち上がりには時間を要する可能性がある。

その他事業・海外展開・新規研究領域

業績推移サマリ:その他売上高は2022年2月期の1,802百万円から2026年2月期の2,332百万円へ増加した。2026年2月期は前年同期比28.6%増となり、分析・測定、排水処理、海外子会社の周辺事業などが全社成長を補完した。

その他 売上高推移(単位:百万円)

1,802 1,859 1,764 1,814 2,332 2022/2 2023/2 2024/2 2025/2 2026/2

2022年2月期はその他と賃貸ビル事業を合算。

その他事業には、分析・測定サービス、排水処理設備、関連会社・子会社が扱う周辺製品などが含まれる。

排水処理では、工場から排出される油分や化学物質を処理する設備・薬剤・保守サービスを提供する。環境規制の強化や水資源管理の高度化が需要要因となる。

分析・測定分野では、潤滑油や機能性材料で蓄積した評価技術を利用し、顧客の研究開発、品質管理、トラブル解析を支援する。

海外では中国、タイ、インドネシア、マレーシア、インド、米国、メキシコなどに製造・販売拠点を持つ。日系自動車・部品メーカーの海外工場へ、国内と同等品質の製品と技術サービスを提供する。

2026年2月期の海外売上高比率は41.9%、2027年2月期第1四半期は39.0%だった。国内需要だけでなく、アジアと北米の自動車生産、設備投資、為替が業績へ影響する。

北米ではMORESCO USAとCROSS TECHNOLOGIESの事業統合を進め、営業、研究開発、製造、管理業務の重複を減らすことで収益基盤の強化を図る。

新規事業では、ナノエマルジョン技術の事業化、オートファジー活性化薬の開発、ライフサイエンス領域の研究を進めている。

研究開発基盤の強化に向け、新たな研究センターを建設しており、2027年3月頃の運用開始を目指している。

新規研究領域は既存事業より不確実性が高い。研究成果、知的財産、外部パートナー、顧客評価を、収益を伴う事業へ転換できるかが長期的な評価軸となる。

直近5年業績サマリー

業績項目 2022/2
実績
2023/2
実績
2024/2
実績
2025/2
実績
2026/2
実績
2027/2
会社予想
売上高
百万円
27,300 30,333 +3,033 / +11.1% 31,886 +1,553 / +5.1% 34,374 +2,488 / +7.8% 34,871 +497 / +1.4% 37,000 +2,129 / +6.1%
営業損益
百万円
1,434 523 -911 / -63.5% 1,225 +702 / +134.2% 1,391 +166 / +13.6% 2,367 +976 / +70.2% 2,400 +33 / +1.4%
経常損益
百万円
2,011 1,046 -965 / -48.0% 1,826 +780 / +74.6% 1,821 -5 / -0.3% 2,704 +883 / +48.5% 2,700 -4 / -0.2%
当期純利益
百万円
1,808 615 -1,193 / -66.0% 1,283 +668 / +108.6% 1,013 -270 / -21.0% 1,525 +512 / +50.5% 1,550 +25 / +1.6%
EPS
円・最新株式数で再計算
186.46 63.42 -123.03 / -66.0% 132.32 +68.89 / +108.6% 104.47 -27.85 / -21.0% 157.27 +52.80 / +50.5% 159.85 +2.58 / +1.6%
PER
5.97 18.12 10.43 11.38 13.81 14.51
PBR
0.60 0.60 0.66 0.53 0.90
BPS
円・最新株式数で再計算
1,852.42 1,911.31 +58.89 / +3.2% 2,075.59 +164.29 / +8.6% 2,236.37 +160.78 / +7.7% 2,421.18 +184.81 / +8.3%
純資産
百万円
20,551 21,240 +689 / +3.4% 23,122 +1,882 / +8.9% 25,009 +1,887 / +8.2% 26,883 +1,874 / +7.5%
営業CF
百万円
2,333 515 -1,818 2,934 +2,419 2,751 -183 2,982 +231
投資CF
百万円
603 -1,172 -1,775 -4,250 -3,078 -1,214 +3,036 -729 +485
財務CF
百万円
-2,937 1,227 +4,164 2,819 +1,592 -1,677 -4,496 -1,027 +650
現金及び現金同等物
百万円
3,654 4,186 +532 / +14.6% 5,566 +1,380 / +33.0% 5,508 -58 / -1.0% 6,914 +1,406 / +25.5%

業績数値は各期の連結決算短信に基づく。2024年2月期の営業CFと投資CFは、2024年5月28日公表の訂正後数値である営業CF2,934百万円、投資CF-4,250百万円を使用した。

EPSとBPSは、各期の親会社株主帰属利益および親会社株主に帰属する自己資本を、2026年7月10日時点の発行済株式総数9,696,500株で除して再計算した参考値である。自己株式は控除せず、全期間の計算条件を統一しているため、会社開示の1株当たり指標とは異なる。

過去5期のPERは、ユーザー提供の期末終値である2022年2月期1,113円、2023年2月期1,149円、2024年2月期1,380円、2025年2月期1,189円、2026年2月期2,172円を再計算EPSで除した。

過去5期のPBRは、各期末終値を再計算BPSで除した。2027年2月期予想PERは、2026年7月10日終値2,320円と再計算予想EPS159.85円を使用した。会社による期末純資産予想がないため、予想PBRとBPSは空欄とした。

増減額と増減率は表示単位への丸め前の数値と決算短信記載率を基準としており、表示数値同士の単純計算と一致しない場合がある。

中期経営計画

第10次中期経営計画(2024年度から2026年度)

第10次中期経営計画は、「持続可能な社会の実現」と「事業の付加価値の向上」の両立を基本テーマとする。対象期間は2024年度から2026年度で、最終年度は2027年2月期となる。

基本方針は、サステナビリティ経営の推進、製品ポートフォリオの高度化、次世代事業の創出、業務プロセスの革新、資本収益性の向上の5項目である。

最終年度の数値目標は、売上高38,000百万円、営業利益2,700百万円、営業利益率7.1%、経常利益3,000百万円、ROE8%程度、配当性向30%以上、MORESCO Green SX製品売上比率40%。

2027年2月期の会社予想は、売上高37,000百万円、営業利益2,400百万円、営業利益率約6.5%、経常利益2,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,550百万円、年間配当55円。

中期計画目標に対して、売上高は1,000百万円、営業利益と経常利益はそれぞれ300百万円下回る計画となっている。配当性向は32.6%予想で、中期計画が掲げる30%以上を上回る。

2027年2月期第1四半期は、売上高9,306百万円、営業利益1,071百万円、経常利益1,117百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益731百万円。通期予想に対する進捗率は、売上高約25.2%、営業利益約44.6%、経常利益約41.4%、純利益約47.2%となる。

特殊潤滑油とホットメルト接着剤では、販売数量の拡大だけでなく、高付加価値製品への入れ替え、価格改定、環境対応製品の拡販によって利益率を高める方針である。

EV関連では、バッテリーケース、モーターケース、車体構造部品、大型一体鋳造など、アルミダイカスト部品の大型化に対応する離型剤と加工用潤滑剤を拡販する。

半導体・真空関連では、高真空ポンプ油、ハードディスク表面潤滑剤、半導体製造装置向けPFASフリー潤滑剤を成長製品として育成する。

新規分野では、フュージョンエネルギー設備向け耐放射線性潤滑剤、ペロブスカイト太陽電池向け封止材、ナノエマルジョン技術、オートファジー活性化薬などの事業化を進める。

環境対応では、廃油と再生油を活用した循環型製品、使用量を削減できる高性能接着剤、環境負荷低減への貢献度が高いMORESCO Green SX製品の構成比拡大を進める。

研究開発と業務改革では、生成AIと蓄積データを用いた材料探索、製造設備の故障予測、DXによる業務効率化を進める。新研究センターは2027年3月頃の稼働を目指している。

投資判断では、特殊潤滑油の利益成長、ホットメルト接着剤の採算改善、中期計画目標との差、MGS製品売上比率、新研究センターの投資効果、新規材料の量産採用を継続的に確認する必要がある。

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競合他社

① 出光興産(5019)

2026年7月10日:株価1,240円、時価総額約1兆5,168億円

出光興産は、燃料油、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源などを展開する総合エネルギー企業である。

MORESCOとの直接的な競合は、高機能材事業に含まれる工業用潤滑油領域である。油圧作動油、工作機械油、ギヤ油、コンプレッサー油、真空ポンプ油、切削油、熱処理油、さび止め油、グリースなどを展開する。

真空ポンプ油では、半導体製造装置、電子部品、真空熱処理、研究設備向けに競合する。低蒸気圧、酸化安定性、油寿命、真空到達性能、装置メーカーの採用実績が競争軸となる。

切削油・金属加工油では、自動車部品、工作機械、軸受、鉄鋼、非鉄金属、精密加工の顧客を取り合う。

出光興産は、原油・基油の調達から製造・販売までの一貫体制、国内外の販売網、大口顧客への供給力を持つ。MORESCOは用途特化型の処方、ニッチ製品、顧客設備へ入り込む技術対応で差別化する。

2026年3月期の連結業績は、売上高8兆1,059億円、営業利益2,122億円、経常利益2,296億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,719億円。

高機能材セグメントは売上高5,032億円、セグメント利益334億円。潤滑油以外の事業を含むが、海外の潤滑油販売が利益に寄与した。

企業規模、原材料調達、販売網では出光興産が大きく上回る。一方、ダイカスト用離型剤、水-グリコール系難燃性作動液など、用途を絞った製品ではMORESCOの専門性が競争力となる。

② FUCHS SE(FPE3)

2026年7月10日:優先株参考価格39.13ユーロ、円換算時価総額約8,767億円

FUCHSはドイツに本社を置く、潤滑油・機能性流体の世界的大手である。自動車、機械、金属加工、鉄鋼、鉱業、航空、食品、医療、風力発電などへ特殊潤滑油を供給する。

競合3社の中ではMORESCOとの製品重複が最も広い。ダイカスト用離型剤、プランジャー潤滑剤、難燃性作動液、切削・成形油、工業用潤滑油、合成潤滑油で直接競合する。

FUCHSは「LUBRODAL」ブランドで、ダイカスト用離型剤、プランジャー潤滑剤、ラドルコーティング、エジェクター潤滑剤、焼付き防止剤、鍛造用潤滑剤などを展開する。

ダイカスト工程では、離型性、金型への付着性、冷却性、鋳肌品質、焼付き防止、金型寿命、少量塗布、サイクルタイム、臭気、排水負荷を競う。

難燃性作動液では、「RENOSAFE」などを通じ、水-グリコール系、合成エステル系の製品を供給する。鉄鋼、鋳造、鉱山、発電、高温設備でMORESCOと競合する。

2026年第1四半期は、売上高9億34百万ユーロ、EBIT1億25百万ユーロ、EBITマージン13.4%、税引後利益89百万ユーロ。売上高は前年同期比1%増、EBITは16%増となった。

2025年通期は売上高約36億ユーロ、EBIT4億35百万ユーロ。特殊潤滑油専業としてMORESCOを大幅に上回る事業規模、研究開発費、製品数、グローバル供給網を持つ。

MORESCOは、国内高シェア製品、日系自動車部品メーカーとの共同開発、顧客別の処方変更、アジアの現地工場への迅速な対応で対抗する。

③ H.B. Fuller Company(NYSE:FUL)

2026年7月9日:株価55.10米ドル、円換算時価総額約4,927億円

H.B. Fullerは米国に本社を置く世界最大級の接着剤専業企業である。衛生材、包装、ラベル、製本、紙加工、木工、自動車、建設、電子、医療向けに接着剤、シーラント、機能性材料を提供する。

MORESCOとの直接的な競合は、紙おむつ、成人失禁用品、女性用衛生用品、ペット用品などの吸収性衛生材向けホットメルト接着剤である。

衛生用品では、構造接着、吸収体コア、伸縮材の固定、不織布接着、低温塗工、材料使用量の削減、臭気、安全性、ライン速度などを競う。

包装分野では、ケース・カートン封緘、段ボール、食品・飲料包装、ラベル、製本、紙加工向けホットメルトで競合する。

H.B. Fullerは、世界規模の研究開発、製造拠点、衛生用品メーカーとの取引、買収を通じた製品ポートフォリオの拡大を強みとする。

2026年度第2四半期は、売上高9億50百万米ドル、純利益68百万米ドル、調整後EBITDA1億81百万米ドル、調整後EBITDAマージン19.1%、調整後希薄化後EPS1.41米ドル。

売上高は前年同期比5.8%増、調整後EBITDAは9%増、調整後EPSは19%増となった。2026年度通期の調整後EBITDA見通しは6億50百万から6億75百万米ドルである。

MORESCOは、日本・中国・東南アジアの衛生用品メーカーとの関係、用途別の迅速な処方変更、現地生産、少量使用で性能を発揮する製品によって差別化を図る必要がある。

強みと将来性

ニッチ製品の高シェアと顧客設備へ入り込む処方技術

MORESCOの強みは、総合化学企業のような規模ではなく、特定の工程で不可欠となる特殊材料を深く掘り下げている点にある。

ダイカスト用離型剤、水-グリコール系難燃性作動液、高真空ポンプ油、流動パラフィン、石油スルホネート、紙おむつ用ホットメルト接着剤など、複数の高シェア製品を持つ。

特殊潤滑油は、一般的なエンジン油のように規格品を大量販売する事業とは異なる。顧客設備、材料、温度、圧力、加工速度、不良原因に合わせて処方と使用条件を調整する。

製品性能が顧客の歩留まり、設備停止時間、金型寿命、製品外観、作業環境へ直結するため、価格だけで簡単に代替されにくい。

顧客が潤滑剤や接着剤を変更する場合、品質評価、生産試験、設備条件の再設定が必要となる。採用後の継続性と技術サービスが、安定受注につながる。

ダイカスト用離型剤では、EV化による内燃機関部品の減少だけでなく、バッテリーケース、モーターケース、車体構造部品、大型一体鋳造の増加を成長機会として取り込める。

高真空ポンプ油とPFASフリー潤滑剤は、半導体製造装置、検査装置、真空設備の高度化と関連する。装置内の清浄性、低蒸発、長寿命への要求が高まるほど、専門的な材料設計の重要性が増す。

ハードディスク表面潤滑剤は、クラウド、生成AI、データセンターのデータ保存需要と関係する。記録密度の高度化に伴い、極薄膜で安定した潤滑性能を維持する技術が求められる。

フュージョンエネルギー設備向け耐放射線性潤滑剤は、放射線環境で性能を維持する特殊材料である。市場形成には時間を要する可能性があるが、既存の高機能潤滑技術を新用途へ展開する開発テーマとなる。

ペロブスカイト太陽電池向け封止材では、接着剤、バリア材料、透過度測定の技術を組み合わせられる。材料と評価技術を一体で提案できる点は、単品材料メーカーとの差別化要因となる。

海外売上高比率は4割前後であり、中国、東南アジア、インド、北米へ製造・販売拠点を展開する。日系顧客が海外へ生産を移した場合も、現地で同一品質と技術支援を提供できる。

2026年2月期は売上高が1.4%増にとどまる一方、営業利益は70.2%増となった。価格改定、製品構成、原材料費、コスト管理の改善により、売上成長を上回る利益成長を実現した。

2027年2月期第1四半期も営業利益率は約11.5%となり、前年同期の約6.1%から上昇した。営業利益の通期予想進捗率は約44.6%で、収益改善の継続性が注目される。

MORESCO Green SX製品、リサイクル油、PFAS代替、低使用量接着剤などは、顧客の環境負荷低減と同社の高付加価値化を同時に進める施策である。

新研究センター、生成AIを利用した材料探索、製造DXが研究開発期間と試作回数を削減できれば、売上規模が小さい同社でも複数のニッチ市場へ効率的に製品を投入できる。

将来性を評価する中心指標は、特殊潤滑油の数量と利益率、PFASフリー製品の採用、ホットメルト接着剤の収益回復、MGS製品比率、新規材料の量産化となる。

弱みとリスク要因

景気敏感市場への依存と製品別の成長格差

最大のリスクは、自動車、鉄鋼、工作機械、半導体設備など、景気変動と設備投資の影響を受ける顧客業界への依存である。

特殊潤滑油は消耗材であるため継続需要を持つが、自動車生産や工場稼働率が低下すれば、使用量も減少する。

電気自動車への移行は、ダイカスト部品の大型化という機会をもたらす一方、エンジン、変速機、燃料系部品向けの加工油・潤滑油需要を減少させる可能性がある。

大型一体鋳造が普及しても、採用する自動車メーカー、車種、製造方式、金型技術によって離型剤需要は変動する。新需要が既存需要の減少を上回る保証はない。

ホットメルト接着剤は、2024年2月期をピークに2期連続で減収した。2027年2月期第1四半期も前年同期を下回っており、特殊潤滑油との成長格差が明確になっている。

国内の乳幼児用紙おむつ市場は出生数減少の影響を受ける。大人用紙おむつ、ペット用品、海外衛生材、包装用途で減少分を補えるかが課題となる。

ホットメルト接着剤ではH.B. Fullerなどの世界的大手と競争する。研究開発費、製品数、海外拠点、大口顧客への提案力では規模の差がある。

特殊潤滑油ではFUCHS、出光興産など、製品幅とグローバル供給力を持つ企業が競合する。競合による値下げ、類似製品の投入、技術者の増員は、MORESCOの採算や市場シェアを圧迫する可能性がある。

原油、石油化学原料、樹脂、添加剤、エネルギー、物流費の上昇は製造原価を押し上げる。販売価格への転嫁が遅れれば、売上高が増えても利益率が低下する。

海外売上高比率が4割前後に達しているため、円、人民元、米ドル、東南アジア通貨の変動が円換算売上高と利益へ影響する。

中国の景気減速、自動車市場の価格競争、日中関係、米国の関税政策、中東情勢などは、顧客の生産計画、原材料価格、物流へ影響する。

海外子会社では、現地人材、品質管理、在庫、売掛金、法規制、税制、環境規制を管理する必要がある。事業買収や拠点統合が計画通りの相乗効果を生まない可能性もある。

PFAS規制は代替製品の需要機会となる一方、既存材料の使用制限、評価試験、顧客認証、量産設備の変更を伴う。代替技術の事業化が遅れれば、既存製品の販売減少が先行する可能性がある。

エネルギーデバイス材料とライフサイエンスは、研究開発段階のテーマを含む。技術的な成功、顧客採用、市場形成、規制承認、量産化の時期は確定していない。

ペロブスカイト太陽電池向け材料は成長テーマとして注目されやすいが、2026年2月期のエネルギーデバイス材料売上高は283百万円で、全社売上高に占める比率は1%未満である。

新研究センターは研究開発力を高める一方、建設費、設備費、減価償却費、人件費が先行する。新製品の売上が計画より遅れた場合、投資回収期間が長期化する。

2027年2月期の会社予想は営業利益2,400百万円で、第1四半期の進捗率は高い。ただし、原材料、為替、季節性、顧客の生産計画によって、四半期利益を単純に通期換算することはできない。

2026年7月9日の第1四半期決算発表後は株価変動が大きくなっている。時価総額が比較的小さいため、決算進捗、材料、出来高、需給によって株価が大幅に変動する可能性がある。

出典

本ページは、各社が公表した決算短信、決算説明資料、公式サイト、中期経営計画等を基に作成した情報提供資料であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。業績予想、研究開発、将来性に関する記述は、資料公表時点の情報と前提に基づくものであり、実際の結果とは異なる可能性があります。株価、時価総額、PER、PBR等は基準日時点の数値であり、その後の株価変動、株式数の変化、業績修正等により変動します。投資判断は最新の適時開示と公式IR資料を確認した上で行ってください。

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