6166 中村超硬

中村超硬 6166 東証G

NAKAMURA CHOUKOU CO.,LTD.|特殊精密機器、ダイヤモンドワイヤ製造装置、D-Next、ナノサイズゼオライトを軸に、硬脆材料加工と素材開発を展開する技術開発型企業。

※2026年6月29日時点の情報

事業内容

2026年6月29日の時価総額は約73億円。株価は666円。

中村超硬は大阪府堺市に本社を置く、特殊精密機器・特殊精密部品・工具・産業機器等の設計、製造、販売を手掛ける企業。創業は1954年10月、設立は1970年12月21日、決算期は3月、上場市場は東証グロース。2026年3月末時点の資本金は1,000万円、代表者は代表取締役会長の井上誠氏、代表取締役社長の井上紘章氏、従業員数は64名。

2026年3月期の連結業績は、売上高2,768百万円、営業損失163百万円、経常損失137百万円、親会社株主に帰属する当期純利益276百万円。営業段階では赤字だったが、日本ノズル株式会社の株式譲渡に伴う特別利益等により最終損益は黒字となり、純資産は1,098百万円、自己資本比率は63.9%へ改善した。2027年3月期は、化学繊維用紡糸ノズル事業の連結除外後の体制となり、売上高1,300百万円、営業損失160百万円、経常損失160百万円、親会社株主に帰属する当期純損失230百万円を見込む。

特殊精密機器事業

2022年3月期から2026年3月期までの売上高は923百万円、818百万円、716百万円、708百万円、742百万円。セグメント利益は115百万円、41百万円、12百万円の損失、29百万円、39百万円の損失。2026年3月期は売上高が小幅回復した一方、利益面は再び赤字となった。
特殊精密機器事業の売上高・セグメント利益推移(百万円)
2022/32023/32024/32025/32026/3 923 818 716 708 742 115 41 △12 29 △39 売上高利益

特殊精密機器事業は、中村超硬の原点に近い精密加工・精密部品領域である。

主な対象は、電子部品実装機に使用されるノズル、周辺部品、特殊精密工具、治具、産業機器向けの精密加工部品などである。

電子部品実装機用ノズルは、微細化する電子部品を高速かつ正確に吸着・搬送・実装するための重要部品であり、寸法精度、耐摩耗性、表面処理、材質選定が競争力を左右する。

中村超硬はダイヤモンドを用いた精密加工技術を蓄積してきた企業であり、硬い素材や脆い素材を高精度に加工する技術がこの事業の基盤になっている。

売上高は2022年3月期の923百万円から2025年3月期の708百万円まで減少したが、2026年3月期は742百万円へ小幅に回復した。

一方で、セグメント利益は2022年3月期の115百万円から低下し、2026年3月期は39百万円の損失となった。

この推移は、売上規模の回復だけでは固定費や開発費、製造コストを十分に吸収し切れていない可能性を示す。

電子部品実装機向け部品は、スマートフォン、自動車、産業機器、サーバー、通信機器などの電子機器生産と連動しやすい。

実装機メーカーや電子部品メーカーの設備投資サイクルが弱い局面では、受注の停滞や価格競争が利益を圧迫しやすい。

ただし、微細部品の実装難度が上がるほど、高精度ノズルや特殊部品に求められる品質要求は高くなる。

数量を追う量産部品だけでなく、顧客仕様に合わせた加工、少量多品種、試作対応、難加工材対応を組み合わせることで、汎用品との差別化余地がある。

2027年3月期以降は、化学繊維用紡糸ノズル事業が連結から外れた後の中核既存事業として、この事業の採算改善が重要になる。

売上高の絶対規模は大きくないが、精密加工技術はD-Nextや材料開発との接点もあり、グループの技術基盤として見る必要がある。

短期的には赤字幅の縮小、受注単価、外注費、歩留まり、稼働率が焦点になる。

中長期では、半導体、電子部品、パワー半導体、先端材料加工などの周辺需要をどこまで取り込めるかが収益性を左右する。

化学繊維用紡糸ノズル事業

2022年3月期から2026年3月期までの売上高は3,004百万円、2,258百万円、1,571百万円、1,680百万円、1,783百万円。セグメント利益は678百万円、377百万円、56百万円の損失、146百万円、51百万円。2026年3月期までは最大売上セグメントだったが、2026年3月31日付で日本ノズル株式会社を譲渡したため、2027年3月期以降は連結対象から外れる。
化学繊維用紡糸ノズル事業の売上高・セグメント利益推移(百万円)
2022/32023/32024/32025/32026/3 3,004 2,258 1,571 1,680 1,783 678 377 △56 146 51 売上高利益

化学繊維用紡糸ノズル事業は、2026年3月期までの中村超硬における最大の売上セグメントだった。

この事業は連結子会社であった日本ノズル株式会社が担っていた。

化学繊維用紡糸ノズルは、合成繊維などを製造する際、ポリマーを微細な孔から押し出して繊維化する工程に使われる重要部品である。

ノズル孔の精度、耐摩耗性、耐食性、表面状態、長期安定性が繊維品質や生産効率に影響するため、単なる金属加工品ではなく、顧客の製造条件に合わせた精密部品としての性格が強い。

2022年3月期の売上高は3,004百万円、セグメント利益は678百万円で、当時のグループ収益を大きく支えていた。

その後、2023年3月期は売上高2,258百万円、セグメント利益377百万円へ減少し、2024年3月期は売上高1,571百万円、セグメント損失56百万円となった。

2025年3月期は売上高1,680百万円、セグメント利益146百万円へ回復し、2026年3月期も売上高1,783百万円、セグメント利益51百万円を計上した。

売上高は2024年3月期を底に回復したが、2022年3月期の高収益水準には戻っていない。

2026年3月期決算短信では、2026年3月31日付で日本ノズル株式会社を譲渡し、連結範囲から除外したことが示されている。

このため、2027年3月期以降の中村超硬は、過去の売上高の大部分を占めていたこの事業を連結業績に取り込まない体制となる。

会社予想の2027年3月期売上高が1,300百万円と、2026年3月期実績2,768百万円から大きく減少する主因はこの構造変化である。

投資判断では、2026年3月期以前の売上高・利益水準をそのまま継続前提で見るのではなく、事業売却後の継続事業ベースへ補正して評価する必要がある。

同時に、日本ノズル譲渡によって自己資本比率は大きく改善し、財務リスクは低下した。

ただし、安定収益源だった大型セグメントを失うため、今後は特殊精密機器、D-Next、マテリアルサイエンスで赤字をどこまで抑え、再成長事業を立ち上げられるかが焦点になる。

D-Next事業

2022年3月期から2026年3月期までの売上高は70百万円、170百万円、121百万円、244百万円、231百万円。セグメント損失は383百万円、162百万円、317百万円、92百万円、112百万円。売上は小規模ながら2025年3月期以降に水準を切り上げ、赤字幅は2022年3月期より縮小している。
D-Next事業の売上高・セグメント損益推移(百万円)
2022/32023/32024/32025/32026/3 70 170 121 244 231 △383 △162 △317 △92 △112 売上高損益

D-Next事業は、ダイヤモンドワイヤ製造装置や周辺技術を中心とする事業である。

中村超硬は、過去に太陽電池用シリコンウエハの切断向けダイヤモンドワイヤで大きく成長した経緯を持つ。

現在のD-Next事業は、難削材・硬脆材料の切断に関わる技術を、装置やプロセスの形で展開する領域として位置付けられる。

会社の事業紹介では、パワー半導体向け、難削材向け、ダイヤモンドワイヤ製造装置が示されている。

硬脆材料の切断では、切断速度、切断面品質、カーフロス、ワイヤ寿命、歩留まり、総加工コストが顧客の評価軸になる。

SiC、サファイア、セラミックス、化合物半導体材料などでは、従来の加工方法では加工負荷やコストが大きくなりやすい。

ダイヤモンドワイヤを使う加工は、こうした難加工材の切断プロセスにおいて重要な技術領域である。

2022年3月期の売上高は70百万円にとどまり、セグメント損失は383百万円だった。

2023年3月期は売上高170百万円、セグメント損失162百万円となり、赤字幅は縮小した。

2024年3月期は売上高121百万円、セグメント損失317百万円となり、再び損失が拡大した。

2025年3月期は売上高244百万円、セグメント損失92百万円となり、売上高は5年内で最も高い水準となった。

2026年3月期は売上高231百万円、セグメント損失112百万円で、売上は横ばい圏ながら赤字が継続した。

この事業は、現時点では収益貢献よりも将来用途の開拓色が強い。

ただし、化学繊維用紡糸ノズル事業が連結から外れた後は、成長候補としての重要度が上がる。

パワー半導体材料や難削材の加工需要は、EV、産業機器、電力制御、データセンター向け電源などの投資動向と関係しやすい。

中村超硬にとっては、単に装置を販売するだけでなく、ワイヤ、加工条件、顧客材料、量産歩留まりまで踏み込めるかが収益化の鍵になる。

競争相手には、半導体製造装置、精密切断装置、ダイヤモンド工具、ワイヤソーを持つ企業が存在する。

規模の大きい装置メーカーに対して、技術特化型の開発提案や特定材料向けの加工ノウハウで差別化できるかが重要である。

マテリアルサイエンス事業

2022年3月期から2026年3月期までの売上高は42百万円、76百万円、5百万円、10百万円、13百万円。セグメント損失は142百万円、137百万円、156百万円、96百万円、83百万円。売上はまだ小さいが、2026年6月には子会社Zeo Nextが芝浦工業大学と希薄レアアースイオン回収技術の共同研究を開始した。
マテリアルサイエンス事業の売上高・セグメント損益推移(百万円)
2022/32023/32024/32025/32026/3 42 76 5 10 13 △142 △137 △156 △96 △83 売上高損益

マテリアルサイエンス事業は、子会社Zeo Next株式会社を中心に、ナノサイズゼオライトを活用する事業領域である。

ゼオライトは多孔質材料であり、吸着、分離、イオン交換などの特性を持つ。

中村超硬グループは、東京大学および大阪公立大学との長年の共同研究を通じて培ってきたナノサイズゼオライト技術を事業化に向けて展開している。

2026年6月26日には、Zeo Nextが芝浦工業大学工学部の新井剛研究室と、希薄なレアアースイオンの回収技術に関する共同研究を開始すると発表した。

この共同研究では、分離後の浸出液に残存する希薄なレアアースイオンを対象に、ナノサイズゼオライトを用いたポリッシュ工程、すなわち高度精製・回収プロセスの技術開発に取り組む。

レアアースはEVモーターなどに使われるネオジム磁石と関係が深く、資源の安定確保と国内循環システムの構築が課題となっている。

Zeo Nextは、堺市内で「堺レアアース回収実証センター(仮称)」の設立を計画している。

同実証センターでは、EVモーターから回収された磁石材料に由来する処理液を対象に、希薄レアアースの回収実証に取り組む予定とされている。

2026年3月期時点で、この事業の売上高は13百万円にとどまり、セグメント損失は83百万円である。

したがって、現段階では業績寄与よりも、研究開発・実証・用途開拓の段階にある事業と見るべきである。

ただし、2022年3月期から2026年3月期まで損失は続くものの、2024年3月期の156百万円の損失から、2025年3月期は96百万円、2026年3月期は83百万円へ縮小している。

売上高の絶対額は小さいため、量産案件や実証案件の採用状況が今後の評価を大きく左右する。

レアアース回収は、資源循環、都市鉱山、サプライチェーン強靭化、EVリサイクルといった政策テーマと重なりやすい。

しかし、共同研究開始のお知らせでは、2027年3月期の業績に与える影響は軽微と明記されている。

株価材料として短期的に注目されやすい一方、収益化までの時間軸、実証成果、商用案件、採算性、処理量の拡大可否を慎重に確認する必要がある。

この事業の魅力は、既存の精密加工とは異なる材料・資源循環領域へ展開できる点にある。

一方で、研究開発型の小規模事業であるため、売上計上の継続性、顧客獲得、設備投資負担、外部研究機関との連携成果がリスクにもなる。

直近5年業績サマリー

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期
会社予想
売上高
(百万円)
4,038 3,322
△716 / △17.7%
2,413
△909 / △27.4%
2,640
+227 / +9.4%
2,768
+128 / +4.8%
1,300
△1,468 / △53.0%
営業損益
(百万円)
311 33
△278 / △89.4%
△532
△565 / 赤字転落
7
+539 / 黒字転換
△163
△170 / 赤字転落
△160
+3 / 赤字縮小
経常損益
(百万円)
338 65
△273 / △80.8%
△553
△618 / 赤字転落
△21
+532 / 赤字縮小
△137
△116 / 赤字拡大
△160
△23 / 赤字拡大
当期純利益
(百万円)
△257 △124
+133 / 赤字縮小
144
+268 / 黒字転換
△32
△176 / 赤字転落
276
+308 / 黒字転換
△230
△506 / 赤字転落
EPS
(円)
△23.32 △11.25
+12.07
13.07
+24.32
△2.90
△15.97
25.04
+27.94
△20.87
△45.91
PER
(倍)
25.87 31.43
PBR
(倍)
9.70 10.33 4.42 4.56 7.94
BPS
(円)
74.95 63.61
△11.34
76.40
+12.79
73.50
△2.90
99.18
+25.68
純資産
(百万円)
840 714
△126 / △15.0%
854
+140 / +19.6%
819
△35 / △4.1%
1,098
+279 / +34.1%
営業CF
(百万円)
175 △81
△256
642
+723
123
△519
394
+271
投資CF
(百万円)
△520 △470
+50
△1,771
△1,301
△45
+1,726
1,669
+1,714
財務CF
(百万円)
228 △378
△606
609
+987
△263
△872
△2,298
△2,035
現金及び現金同等物
(百万円)
2,931 1,999
△932 / △31.8%
1,495
△504 / △25.2%
1,308
△187 / △12.5%
1,083
△225 / △17.2%
EPS、PER、PBR、BPSは、発行済株式総数から自己株式1株を控除した11,020,899株を基準に再計算。2022年3月期と2023年3月期の自己株式は0株だが、比較可能性を重視して同一株式数で算出。期末株価はユーザー提供の2022年3月末727円、2023年3月末657円、2024年3月末338円、2025年3月末335円、2026年3月末787円を使用。赤字EPSの期のPERは算出しない。

中期経営計画

2027年3月期は事業ポートフォリオ転換後の赤字予想

中村超硬のIRページには中期経営計画の掲載ページがあるが、2026年6月29日時点で確認できる主な数値計画は2026年3月期決算短信に記載された2027年3月期の連結業績予想である。

2027年3月期は、日本ノズル株式会社の譲渡により化学繊維用紡糸ノズル事業が連結対象から外れる初年度となる。会社予想は売上高1,300百万円、営業損失160百万円、経常損失160百万円、親会社株主に帰属する当期純損失230百万円、1株当たり当期純損失20.87円。

2027年3月期 売上高1,300百万円
2027年3月期 営業損益△160百万円
2027年3月期 経常損益△160百万円
2027年3月期 当期純損益△230百万円

基本方針は、財務改善後の継続事業を軸に、特殊精密機器、D-Next、マテリアルサイエンスの収益化を進めることにある。2026年3月期は自己資本比率が63.9%へ改善した一方、営業損益は赤字であり、継続事業の黒字化が最優先課題となる。

D-Nextではパワー半導体や難削材向けダイヤモンドワイヤ製造装置、マテリアルサイエンスではナノサイズゼオライトとレアアース回収技術が成長テーマとなる。ただし、芝浦工業大学との共同研究については、2027年3月期の業績影響は軽微と会社が明記しているため、短期業績よりも技術実証と商用化の進捗を追う局面である。

IR情報へ

競合他社

① ディスコ(6146)

時価総額は約8兆6,299億円、株価は79,550円。半導体ウェーハや電子部品向けの切断、研削、研磨装置と加工ツールを展開する精密加工装置メーカーである。

2026年3月期は売上高4,368.89億円、営業利益1,849.89億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,355.21億円。営業利益率は42.3%と高く、生成AIや高性能半導体向けの精密加工需要を背景に強い収益力を持つ。

中村超硬とは、硬脆材料、半導体材料、電子部品材料を高精度に切断・加工する領域で競合する。ディスコは装置、ブレード、ホイール、プロセス技術を広範囲に持ち、顧客の量産ラインで採用される力が強い。中村超硬のD-Nextやダイヤモンドワイヤ製造装置は、特定材料や特定加工プロセスで差別化を狙う構図になる。

② 旭ダイヤモンド工業(6140)

時価総額は約594億円、株価は1,227円。ダイヤモンド工具を主力とし、半導体、電子部品、輸送機器、機械、石材、建設など幅広い加工分野に製品を供給する。

2026年3月期は売上高419.83億円、営業利益24.03億円。2027年3月期は売上高440億円、営業利益37億円を見込む。ダイヤモンド工具・精密加工工具メーカーとして、収益改善を進めている。

中村超硬とは、ダイヤモンドワイヤ、硬脆材料加工、精密工具の領域で競合する。旭ダイヤモンド工業は「エコメップ」などダイヤモンドワイヤ関連製品や、ウエハ加工用ホイールなどを持ち、材料加工の現場で顧客の加工品質、歩留まり、コストをめぐって比較対象になりやすい。

③ タカトリ(6338)

時価総額は約88億円、株価は1,635円。電子機器、繊維機器、医療機器を展開し、半導体・電子部品向けの切断装置や加工装置を持つ。

2026年9月期第2四半期累計は売上高27.33億円、営業損失0.91億円。装置メーカーとして、受注タイミングや検収時期によって四半期業績が大きく変動しやすい。

中村超硬とは、SiC、サファイア、化合物半導体、電子材料などの難削材切断装置で競合する。タカトリはマルチワイヤソー、シングルワイヤソーなどの装置を持ち、顧客の材料加工プロセスに入り込む点でD-Next事業と比較対象になる。

強みと将来性

難加工材に対する精密加工技術と、レアアース回収へ展開する材料技術

中村超硬の強みは、ダイヤモンドを活用した硬脆材料加工、特殊精密部品、ダイヤモンドワイヤ製造装置、ナノサイズゼオライトという複数の技術領域を持つ点にある。

単一の量産部品メーカーではなく、加工技術、装置技術、材料技術を組み合わせているため、特定材料や特定顧客の課題に入り込める余地がある。

電子部品実装機用ノズルなどの特殊精密機器事業では、微細化・高密度化が進む電子部品市場に対し、高精度部品を供給する基盤がある。

D-Nextでは、パワー半導体や難削材向けのダイヤモンドワイヤ製造装置を掲げており、SiCなど加工難度の高い材料市場と接点を持つ。

マテリアルサイエンス事業では、ナノサイズゼオライトを使った分離・回収技術を進めている。

特に2026年6月の芝浦工業大学との共同研究開始は、レアアース資源循環という政策性の高いテーマと接続する材料である。

レアアースはEVモーターなどに使われるネオジム磁石と関係し、国内循環システムやサプライチェーン強靭化の観点から注目されやすい。

中村超硬は、東京大学および大阪公立大学との共同研究を通じて培ってきたナノサイズゼオライト技術を背景に、低濃度レアアースイオンの高効率回収技術に取り組む。

この領域が事業化すれば、従来の精密加工会社という評価に加え、資源循環・都市鉱山・レアアースリサイクル企業としての評価軸が加わる可能性がある。

また、2026年3月期には日本ノズル譲渡によって自己資本比率が63.9%まで改善しており、財務面では過去よりも身軽な状態になった。

ただし、財務改善そのものは収益力改善を意味しない。今後は継続事業の赤字縮小、D-Nextの受注拡大、マテリアルサイエンスの実証進展が同時に求められる。

短期の業績インパクトよりも、中長期の技術実証、共同研究先、行政・研究機関・リサイクル事業者との連携、実証センター計画の進展を追う銘柄である。

弱みとリスク要因

最大売上セグメント喪失後の収益基盤と、研究開発テーマの商用化リスク

最大のリスクは、2026年3月期まで売上の大部分を占めていた化学繊維用紡糸ノズル事業が連結対象から外れたことである。

2026年3月期の同事業は売上高1,783百万円、セグメント利益51百万円を計上していた。

これが2027年3月期以降の連結業績に含まれないため、売上規模は大きく縮小する。

会社予想でも、2027年3月期の売上高は1,300百万円、営業損失160百万円、親会社株主に帰属する当期純損失230百万円となっている。

したがって、過去5年の連結売上高を単純に平均して企業価値を評価すると、継続事業の実態を見誤る可能性がある。

特殊精密機器事業は一定の売上を持つが、2026年3月期はセグメント損失39百万円であり、継続事業の柱として十分な利益を稼げていない。

D-Next事業も、2026年3月期は売上高231百万円、セグメント損失112百万円で、赤字が続いている。

マテリアルサイエンス事業はテーマ性が強い一方、2026年3月期の売上高は13百万円、セグメント損失は83百万円で、商用化前の段階である。

レアアース回収に関する共同研究は注目材料だが、会社は2027年3月期の業績への影響は軽微と明記している。

実証、量産、顧客獲得、採算性、処理量拡大のいずれかで遅れが出れば、期待先行の株価形成が反転するリスクがある。

また、半導体・電子部品・難削材加工分野では、ディスコ、旭ダイヤモンド工業、タカトリなど、規模や製品ラインアップで優位な競合が存在する。

中村超硬は時価総額が小さく、テーマ性が株価に反映されやすい一方、受注や業績が想定より弱い場合の下振れも大きくなりやすい。

財務改善後も、営業赤字が続けば現金残高の減少、研究開発費の負担、追加資金調達リスクが再び意識される。

投資判断では、材料ニュースの強さだけでなく、継続事業ベースの売上高、営業損益、受注残、実証案件の商用化時期を確認する必要がある。

出典

本記事は公開情報をもとに作成したものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載情報は作成時点の内容であり、将来変更される可能性があります。投資判断は必ず各社の公式開示資料を確認し、自己責任で行ってください。

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