4894 クオリプス

クオリプス(4894)個別銘柄分析 完全版

クオリプス 4894 東証G

Cuorips Inc.|ヒト同種iPS細胞由来心筋細胞シート「リハート」を中核に、重症心不全向け再生医療、細胞製造CDMO、大量細胞製造基盤、カテーテル治療及び体内再生因子誘導剤を開発する大阪大学発バイオ企業。

※2026年7月23日時点の情報

1.会社予想と実績

期初の通期会社予想と期末実績を比較。2027年3月期は売上高が非開示で、各段階損益はリハート®の売上高・売上原価を織り込まない暫定予想です。

達成率は、黒字・売上指標では「実績÷予想」、赤字予想では「予想損失の絶対額÷実績損失の絶対額」で計算し、100%以上を達成・超過と判定。棒グラフの赤字指標は損失額の絶対値で描画しているため、実績の棒が短いほど予想より良好です。レンジ予想はありません。2024年3月期の会社予想は非連結、実績は同年度から作成された連結数値であり、比較範囲が異なります。

2.達成・未達理由
2024年3月期売上高は未達、損失は大幅に予想を上回る
売上 10.7% 営業 205.8% 経常 198.7% 純利益 197.6% EPS 203.2%

売上高はCDMOサービスの計上が23百万円にとどまり、会社予想215百万円を大幅に下回りました。リハート®は研究開発段階で、製品売上はありませんでした。

一方、研究開発費総額788.9百万円に対し、共同研究開発パートナーからの受入額を控除した損益計上額は209.8百万円でした。研究開発の一部が申請対応・協議段階にとどまったこともあり、営業損失は予想1,210百万円から588百万円へ縮小しました。

2025年3月期売上高・損失ともに大幅達成
売上 875.0% 営業 203.9% 経常 187.2% 純利益 187.3% EPS 188.3%

CDMOサービスが伸び、売上高は予想20百万円に対して175百万円となりました。契約資産も153.8百万円増加しており、受託案件の進捗・収益認識が期初想定を大きく上回りました。

研究開発費総額は1,029.4百万円へ増えましたが、共同研究開発費受入額控除後の損益計上額は334.1百万円に抑えられ、売上総利益168.3百万円も損失縮小に寄与しました。為替差損36.6百万円などで経常損失は営業損失より悪化したものの、会社予想よりは大幅に良好でした。

2026年3月期全主要指標が未達
売上 35.9% 営業 82.8% 経常 85.9% 純利益 87.0% EPS 89.2%

CDMO中心の売上高は212百万円にとどまり、予想590百万円を378百万円下回りました。売上原価は82.0百万円へ増え、増収でも売上総利益は前期168.3百万円から130.4百万円へ減少しました。

承認申請・GCTP対応、米国開発、供給体制整備などにより販管費は1,211.6百万円へ増加。共同研究開発費受入額控除後の研究開発費は634.2百万円と前期比89.8%増となり、営業損失は予想より186百万円悪化しました。受取利息、外貨建てMMF運用益、為替差益など営業外収益52.7百万円が経常・純損失の下振れを一部緩和しました。

2027年3月期最新予想・実績未発表
売上 非開示 営業 △1,430百万円 経常 △1,400百万円 純利益 △1,390百万円 EPS △168.33円

期初予想はリハート®の価格未定を理由に、売上高と売上原価を織り込まず作成されました。2026年7月22日に保険償還価格53.2百万円、保険収載予定日2026年9月1日が示され、会社は業績影響を精査中です。現行予想は今後の修正を前提とする暫定値とみる必要があります。

3.事業セグメントの自信度

報告セグメントは「再生医療等製品事業」の単一セグメントです。以下では、決算資料に記載された主要パイプライン・事業領域を実質的な分析単位とし、原文コメントの変化から会社の自信度を推理しています。

国内リハート®(虚血性心疾患)

自信度推移:強気 → 非常に強気 → 非常に強気 → 非常に強気
2024年3月期強気
早期の製造販売承認申請を最優先事項として位置付けた上で経営資源を集中し、申請業務に対応いたしました。

承認申請を最優先に据え、経営資源を集中する姿勢が明確でした。

2025年3月期非常に強気
2025年4月に厚生労働省に対し、再生医療等製品製造販売承認申請を行いました。

計画を実行段階へ進め、承認取得が具体的な経営課題になりました。

2026年3月期非常に強気
2026年3月に厚生労働省から…条件及び期限付き製造販売承認を取得いたしました。

最大の薬事リスクを一段越え、研究開発企業から商業化企業へ移行しました。

2027年3月期見通し非常に強気
2026年秋頃にリハート®の薬価収載を予定しており、下期より販売が開始される見込みです。

その後、保険償還価格53.2百万円と9月1日の収載予定が示され、販売開始の確度はさらに上がりました。

判断非常に強気

承認、価格決定、販売開始予定まで進展。残る主要不確実性は、初期症例数、医療機関導入、製造原価と供給能力です。

海外向け心筋細胞シート

自信度推移:中立 → 強気 → 非常に強気 → 強気
2024年3月期中立
現地研究機関と研究開発計画について協議いたしました。

米国拠点は確保したものの、研究計画の協議段階でした。

2025年3月期強気
2024年12月には、スタンフォード大学心臓胸部外科と共同研究開発契約を締結いたしました。

相手先と実験計画が具体化し、海外開発の実行力が上がりました。

2026年3月期非常に強気
First-in-Human試験の計画概要を含めた今後の方針について概ね合意を得ることができ

FDAとのpre-IND協議で方向性が概ね合意され、IND申請準備へ進みました。

2027年3月期見通し強気
欧州の規制当局との相談準備を開始いたします。

米国継続に加えて欧州へ範囲を広げる一方、臨床開始前で費用先行です。

判断強気

規制当局との対話は前進していますが、海外売上までの距離は長く、2027年3月期は収益より研究開発費への影響が中心です。

拡張型心疾患(国内)

自信度推移:中立 → 強気 → 弱気 → 弱気
2024年3月期中立
被験者のリクルートを進めました。

臨床試験開始前の患者募集段階でした。

2025年3月期強気
大阪大学で医師主導治験が開始され、2症例の被験者に移植が行われました。

治験開始と実投与で明確な進展がありました。

2026年3月期弱気
個別の原文コメントなし

主な研究開発項目から個別記載が外れ、優先度低下が示唆されます。

2027年3月期見通し弱気
個別の原文コメントなし

翌期の研究開発方針にも明示されず、国内リハート・海外開発に資源が集中しています。

判断弱気

2025年3月期の治験進展後に説明が消えました。中止を意味しませんが、会社の発信上は優先順位が下がっています。

カテーテル

自信度推移:強気 → 中立 → 中立 → 弱気
2024年3月期強気
2025年の治験開始に向け、非臨床試験等を進めてまいります。

治験開始時期を示す具体的な計画がありました。

2025年3月期中立
朝日インテック株式会社との共同研究開発では、大動物実験を行いました。

非臨床は進んだものの、当初示した2025年の治験開始には至りませんでした。

2026年3月期中立
引き続き朝日インテック株式会社との共同研究開発を進めております。

進捗表現が一般化し、具体的なマイルストーンが弱まりました。

2027年3月期見通し弱気
非臨床試験実施に向けた準備を進めております。

2024年時点の治験開始目標から後ずれし、なお非臨床準備段階です。

判断弱気

共同開発は継続していますが、時間軸は明確に後退。短期業績への寄与より研究開発費の発生が中心です。

体内再生因子誘導剤

自信度推移:強気 → 中立 → 強気 → 強気
2024年3月期強気
製造の工業化へ向けた合成法の開発にめどが立ち

探索段階から製造可能性へ一歩進んだ表現でした。

2025年3月期中立
大阪大学と肝硬変・肝切除等を対象とする共同研究を継続しております。

継続研究の説明にとどまり、新規マイルストーンは限定的でした。

2026年3月期強気
治療において有望なオプションとなることを示しています。

研究論文の発表により、科学的な裏付けが一段強まりました。

2027年3月期見通し強気
現在、海外製薬会社1社と導出・協業に向けた協議を行っております。

初めて具体的な導出候補が示され、収益化の選択肢が見え始めました。

判断強気

導出協議は前向きな変化ですが、契約締結・一時金は未確定。最新業績予想には収益を織り込まない前提で見るのが妥当です。

CDMO・VMaCS

自信度推移:中立 → 強気 → 中立 → 強気
2024年3月期中立
売上高については、製造開発受託サービス(CDMOサービス)に係る売上を計上いたしました。

初期売上は23百万円で、事業規模はまだ小さな段階でした。

2025年3月期強気
売上高175,205千円(前年同期比658.4%増)

CDMO中心の売上が急増し、収益源として存在感が高まりました。

2026年3月期中立
「新技術導入促進枠」として採択されました。

設備面は前進した一方、売上高は予想590百万円に対し212百万円で、案件収益化の確度は低下しました。

2027年3月期見通し強気
パイロットプラントがまもなく本格稼働いたします。

2026年度からプロセス開発受託開始を掲げ、受託範囲の拡大を進めています。

判断強気寄りの中立

設備・受託体制への自信は強い一方、過去の売上予想精度は低い状態です。案件の検収・マイルストーン時期が達成条件です。

Longevity・細胞培養上清

自信度推移:中立 → 中立 → 弱気 → 弱気
2024年3月期中立
安定した収益獲得を目的として、細胞培養上清液の販売等を行う子会社を設立し、販売先の開拓を進めました。

収益化を意識した事業でしたが、販売額は明示されませんでした。

2025年3月期中立
細胞培養上清液の研究を開始しました。

販売開拓から科学的分析・研究へ軸足が移り、短期収益化は後退しました。

2026年3月期弱気
個別の原文コメントなし

主要事業の説明から外れ、経営上の優先度は低下したと推定します。

2027年3月期見通し弱気
個別の原文コメントなし

翌期方針にも収益計画が示されていません。

判断弱気

事業継続の可能性はあるものの、会社説明上の存在感が低下。最新予想の達成を左右する主要因ではありません。

4.最新予想信頼度
判定:現行予想の信頼度は「低め」。ただし損失予想を上回る可能性は「やや高い」。

2027年3月期の期初予想は、リハート®の価格未定を理由に売上高・売上原価を除外した費用ベースの暫定値です。2026年7月22日に保険償還価格53.2百万円、9月1日の保険収載予定が示されたため、今後の業績予想修正が前提となります。現行数値を最終目標として信頼することは難しい一方、リハート®の粗利益がプラスなら損失縮小方向に働きます。

売上高予想非開示リハート売上・原価を除外
営業利益予想△1,430百万円
純利益予想△1,390百万円
保険償還価格53.2百万円 / 1回
保険収載予定9月1日2026年
年度内の供給・算定件数単純な売上総額扱い
5件266百万円会社予想ではない参考値
10件532百万円売上原価・時期を未反映
20件1,064百万円医療機関導入・供給能力が条件

達成できると判断する理由

  • 期初の損益予想はリハート®売上をゼロ、売上原価もゼロとしており、販売開始後の粗利益がプラスなら現行損失を改善します。
  • 保険償還価格53.2百万円と9月1日の収載予定が決まり、期初最大の不確実性だった価格と販売開始時期が具体化しました。
  • 営業損失予想は前期実績より349百万円悪化する前提で、海外研究、供給体制、パイロットプラント等の費用増を相当程度見込んでいます。
  • 2026年3月期末の現金及び現金同等物は3,900百万円あり、短期の研究開発・立ち上げ費用を賄う財務余力があります。
  • 体内再生因子誘導剤の導出協議、CDMO受託開始など、予想に明示的に織り込まれていない上振れ要素があります。

達成できないと判断する理由

  • 2026年3月期は売上予想を378百万円下回り、営業損失も186百万円悪化しました。受託売上と研究開発費の予測精度には課題があります。
  • 価格が決まっても、症例選定、医療機関の準備、製造・品質試験、手術日程に時間を要し、年度内の売上件数はまだ読めません。
  • 条件及び期限付き承認に伴う全例調査、供給体制整備、販売後対応の費用が想定を超える可能性があります。
  • 米国IND準備、欧州規制相談、カテーテル非臨床、VMaCS設備稼働が同時進行し、研究開発費・人件費が予想以上に増えるリスクがあります。
  • 今後の予想修正で売上と原価が追加される際、販売数量だけでなく製造原価や立ち上げ費用も反映されるため、現行予想より目標が厳しくなる可能性があります。

収益計上・利益偏重を見る際の注意点

リハート®は2026年9月1日の保険収載後に販売開始予定で、2027年3月期の売上は年度後半寄りになりやすい構造です。ただし、製品出荷・移植日程・医療機関導入に左右されるため、月次・四半期で均等に計上される事業ではありません。

CDMO売上も案件の進捗、検収、契約資産の振替時期により変動します。2026年7月23日時点で2027年3月期の四半期実績は未公表のため進捗率は掲載していません。今後掲載する場合も、販売開始時期を考慮しない単純進捗率にすぎない点に注意が必要です。

最終判断

現行の営業損失1,430百万円、純損失1,390百万円を上回る可能性はやや高いと判断します。条件は、9月の販売開始が予定どおり進み、少数でも年度内に売上計上され、製造・販売後調査・海外開発費が予算内に収まることです。一方、現行予想は売上高と売上原価を欠くため、数値自体の信頼度は低く、会社が価格決定後に公表する修正予想を確認して再判定する必要があります。

事業内容

2026年7月23日の時価総額は約404億円。 同日の終値4,885円と、2026年3月期末の発行済株式総数8,273,376株を基準に算出した。リハートの保険収載了承を受け、同日はストップ高水準で取引を終えた。

クオリプスは2017年3月21日設立。本社は大阪府大阪市北区中之島4丁目3番51号 Nakanoshima Qross 8F O-Nexus内。代表取締役社長は草薙尊之、決算期は3月、上場市場は東京証券取引所グロース市場。2026年3月31日時点の社員数は51名で、国内子会社クオリプスヘルスケアサイエンスと米国子会社iReheart Inc.を有する。

2026年3月期連結業績は、売上高212百万円、営業損失1,081百万円、経常損失1,028百万円、親会社株主に帰属する当期純損失1,022百万円。売上高は前期比21.2%増となった一方、販売費及び一般管理費に計上した研究開発費は634百万円で前期比89.8%増となり、営業赤字は拡大した。2026年3月にはリハートが条件及び期限付き製造販売承認を取得し、2026年7月には保険償還価格が具体化したため、事業局面は研究開発中心から承認後商業化へ移行している。

単一セグメントの業績推移|売上成長より研究開発投資が先行

セグメント業績推移: クオリプスは再生医療等製品事業のみの単一セグメントである。売上高は2022年3月期の13百万円から2026年3月期の212百万円へ拡大した。一方、営業損失は373百万円から1,081百万円へ拡大し、承認申請、海外開発、製造体制、パイプライン開発への先行投資が継続している。

会社は再生医療等製品事業のみを報告セグメントとしており、製品別又はサービス別のセグメント損益は開示していない。

したがって、売上高と営業損益の推移は会社全体の単一セグメント業績として読む必要がある。

2022年3月期の売上高は13百万円、営業損失は373百万円だった。

2023年3月期は売上高38百万円、営業損失450百万円となり、売上高は増えたが損失も拡大した。

2024年3月期は連結財務諸表の作成初年度で、売上高23百万円、営業損失588百万円だった。

2025年3月期はCDMO関連の共同研究開発収入等により売上高175百万円へ増加した。

同年度の営業損失は590百万円で、売上高の拡大に対して赤字幅はほぼ横ばいだった。

2026年3月期は売上高212百万円へ増えたが、営業損失は1,081百万円へ拡大した。

研究開発費総額は970百万円で、共同研究開発費受入額を控除した634百万円が販売費及び一般管理費に計上された。

営業損失拡大の中心は、リハート承認対応、海外開発、追加パイプライン、製造及び品質管理体制への投資である。

売上の中心は、リハート販売前までは製造開発受託サービスと共同研究開発に関連する収入である。

2026年3月期末の現金及び現金同等物は3,900百万円で、営業キャッシュ・フローは1,059百万円の支出だった。

営業キャッシュ・フローの赤字が続くため、商業化初期の売上立ち上がりと資金消費速度の比較が重要となる。

財務キャッシュ・フローは204百万円の収入で、新株予約権行使による株式発行収入が主因だった。

発行済株式総数は2024年3月期末7,968,116株、2025年3月期末8,109,116株、2026年3月期末8,273,376株へ増加している。

株式数の増加は研究開発資金の確保に寄与する一方、1株当たり価値の計算では希薄化要因となる。

2027年3月期会社予想では、売上高は薬価未定を理由に期初時点で非開示とされた。

同予想は営業損失1,430百万円、経常損失1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純損失1,390百万円である。

リハート売上高と売上原価を織り込まない期初予想であるため、薬価と販売開始後の症例数が判明した段階で予想修正が想定される。

投資判断では、承認取得そのものより、薬価、供給量、医療機関導入、症例登録、製造原価及び市販後調査費用が利益モデルを左右する。

リハート|iPS細胞由来心筋細胞シートの承認後商業化

事業進捗サマリ: リハートは2026年3月に、標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全を対象として、条件及び期限付き製造販売承認を取得した。2026年7月には保険償還価格が具体化し、製造販売後調査と供給体制を伴う上市段階へ進んだ。

リハートはヒト同種iPS細胞由来心筋細胞をシート状に加工した再生医療等製品である。

対象は、薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全である。

製品は心臓表面に直接貼付して使用する。

会社は、シートから分泌されるサイトカイン等の作用により心筋の状態が改善し、心不全症状、心機能及び運動耐容能の改善が期待されるとしている。

研究開発は大阪大学を中心とするアカデミア連携から始まった。

2008年以降、iPS細胞を用いた重症心疾患治療の基礎及び前臨床研究が進められた。

医師主導治験は2020年1月に1例目の移植が行われ、2023年3月までに予定した8例の移植が完了した。

2025年4月に厚生労働省へ製造販売承認申請を行った。

2025年10月には希少疾病用再生医療等製品の指定を受けた。

2026年3月に条件及び期限付き製造販売承認を取得した。

条件及び期限付き承認では、承認後も有効性及び安全性に関するデータ収集が事業運営の中心となる。

上市後は製造販売後調査の設計、患者登録、手術施設の選定、医師教育、製品輸送及び品質保証が必要となる。

再生医療等製品は一般医薬品と異なり、製造ロット、細胞品質、保存、輸送、手術日程を連動させる必要がある。

供給体制の安定性は売上高だけでなく、症例実施可能数を直接制約する。

保険償還価格は1症例当たり売上の基準となるが、会社売上高は実施症例数、出荷時点、返品条件及び原価計上方法に左右される。

2026年7月22日に公表された保険償還価格は53,200,000円である。

高額製品であるため、医療機関の導入手続き、患者選定、施設要件、支払及び請求実務の整備が普及速度を左右する。

承認対象が重症かつ既存治療で効果不十分な患者に限定されるため、対象患者母数と実施可能施設数の見極めが必要である。

売上成長の初期段階では、年間症例数の増加が株価材料として最も直接的に評価される。

同時に、製造原価、販売費、市販後調査費用を含む1症例当たり採算の開示が利益評価に重要となる。

本承認への移行には追加データが必要であり、承認条件の履行状況は中長期の製品価値を左右する。

国内で得られる市販後データは、海外申請、適応拡大及び医療経済性の説明にも利用される可能性がある。

リハートはクオリプスの最初の承認製品であり、会社全体の製造、薬事、販売及び医療機関ネットワークを構築する基盤となる。

CDMO・CLiC-1・VMaCS|細胞製造基盤の外販と量産化

事業進捗サマリ: リハートの自社製造で蓄積した細胞培養、分化誘導、品質管理及び製剤化の知見を、CDMO・コンサルティングサービスへ展開する。CLiC-1と中之島クロスのパイロットプラント、VMaCSを通じて大量細胞製造の受託基盤を構築している。

CDMOサービスは、再生医療等製品の製造プロセス開発及び製造受託を対象とする。

クオリプスは自社製品の研究開発を通じて、iPS細胞の培養、心筋細胞への分化誘導、純化、シート化及び品質評価の工程を蓄積してきた。

これらの工程は、再生医療製品の開発企業が外部委託を必要とする領域と重なる。

千里研究開発センター内のCLiC-1は、自社研究施設を兼ねる商業用細胞培養加工施設である。

CLiC-1は2020年8月に稼働した。

2021年9月に特定細胞加工物製造許可を取得した。

2025年4月には再生医療等製品製造業許可を取得した。

この許可はリハートの商業製造体制とCDMO事業の基盤となる。

CDMO売上はリハート販売前の主要売上源となってきた。

ただし、受託契約は案件ごとの開発段階、マイルストーン及び検収条件によって売上計上時期が変動する。

単年度売上高だけでは受注残、契約総額及び継続性を判断しにくい。

VMaCSは、次世代再生医療モダリティの開発と実用化を可能にする細胞大量製造バリューチェーン構築を目的とする。

製造装置、容器、工程資材、品質管理及び物流を含む複数企業の連携を前提としている。

多能性幹細胞由来製品では、長期間かつ多数の工程を安定して大量処理する技術が必要である。

製造工程の自動化と閉鎖化は、作業者依存、汚染リスク及びロット間ばらつきの低減に関係する。

中之島クロスのパイロットプラントは、再生・細胞医療・遺伝子治療製造設備投資支援事業補助金を活用して建設された。

会社は2026年度から、VMaCS参加企業とのMACSプロジェクトとしてプロセス開発受託を開始する方針を示している。

パイロットプラントは自社製品専用設備ではなく、複数モダリティの工程開発を想定する。

細胞シート、オルガノイド、細胞塊、細胞外小胞等への応用が想定されている。

CDMO事業の競争力は、設備面積よりも、実際の受託案件、製造成功率、品質試験、規制対応及び顧客の臨床進捗で評価される。

自社製品と外部受託を同じ設備で扱う場合、製造スケジュールとキャパシティ配分が重要となる。

リハートの需要増加は設備稼働率を高める一方、外部受託の余力を圧迫する可能性がある。

逆に、CDMO受注の増加は固定費吸収に寄与し、自社製品の製造原価低下につながる可能性がある。

投資判断では、受託件数、契約期間、売上総利益率、設備稼働率及び追加設備投資額の開示が重要となる。

海外・カテーテル・YSシリーズ|承認製品の次を担う研究開発

事業進捗サマリ: 米国向け心筋細胞製品、低侵襲カテーテル治療、体内再生因子誘導剤を次期成長候補として開発する。2026年3月期には米国FDAとのpre-IND会議を実施し、First-in-Human試験を含む開発方針について概ね合意した。

海外展開では、既存の心筋細胞シートを米国向けに改良した製品と、新しいコンセプトのiPS細胞由来製品を開発している。

米国子会社iReheart Inc.は、研究開発、事業化及び将来のパートナー探索を担う現地拠点である。

2024年12月にスタンフォード大学心臓胸部外科と共同研究開発契約を締結した。

共同研究では心筋梗塞ブタへの移植を含む動物実験を進めている。

2026年3月期にはFDAとの治験許可申請前相談会議を実施した。

品質、前臨床及び臨床の全般について開発計画を協議した。

会社はFirst-in-Human試験の計画概要を含む今後の方針について概ね合意を得たとしている。

次の主要マイルストーンはIND申請及び米国臨床試験開始である。

欧州についても規制当局との相談準備を開始する方針が示されている。

海外開発は市場規模拡大の余地がある一方、試験費用、製造技術移管、規制対応及び現地提携の負担が大きい。

カテーテル製品は、開胸手術を伴う心筋細胞シートより軽度の心筋症を対象とする構想である。

朝日インテックのカテーテル技術とクオリプスのiPS細胞由来心筋細胞を組み合わせる。

血管内アプローチにより心筋細胞を心臓へ移植する治療技術を目指す。

経皮的冠動脈インターベンションと併用し、新たな開胸侵襲を加えずに心機能回復を高めることを想定している。

2026年3月期は共同研究を継続し、会社は非臨床試験実施に向けた準備を進める方針を示した。

体内再生因子誘導剤はオキシム誘導体YS-1301を中心とする化合物パイプラインである。

低用量投与によりHGF、VEGF、SDF-1、HMGB1等の体内再生因子を誘導する薬理作用を想定する。

細胞保護、抗線維化、抗炎症及び血管新生を通じた組織再生を研究している。

対象候補は肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎、閉塞性動脈硬化症、慢性腎不全及び慢性閉塞性肺疾患等である。

大阪大学との肝硬変及び肝切除に関する共同研究を継続している。

会社は共同研究成果を基に製薬企業への導出活動を進め、海外製薬会社1社と導出又は協業に向けた協議を行っている。

導出が成立した場合、契約一時金、開発マイルストーン及びロイヤルティが収益源となる可能性がある。

ただし、導出条件、対象地域、権利範囲及び開発費負担は開示されるまで評価できない。

各パイプラインはリハートより早期段階であり、当面は研究開発費の増加要因となる。

国内商業化のキャッシュ創出が海外及び次世代パイプライン投資を支えられるかが中期的な財務課題となる。

直近5年業績サマリー

単位:百万円、EPS・BPSは円、PER・PBRは倍。2022年3月期及び2023年3月期は単体、2024年3月期以降は連結。EPS・BPSは2026年3月期末発行済株式総数8,273,376株を基準に再計算。2023年3月期以前は上場前のためPER・PBRを算出していない。赤字期のPERは算出していない。
業績項目 2022/3
単体
2023/3
単体
2024/3
連結
2025/3
連結
2026/3
連結
2027/3
会社予想
売上高 13 38+25 / +175.1% 23-15 / -39.5% 175+152 / +658.4% 212+37 / +21.2%
営業損益 -373 -450-77 / 赤字拡大20.6% -588-138 / 赤字拡大30.7% -590-2 / 赤字拡大0.3% -1,081-491 / 赤字拡大83.2% -1,430-349 / 赤字拡大32.3%
経常損益 -373 -450-77 / 赤字拡大20.6% -627-177 / 赤字拡大39.3% -642-15 / 赤字拡大2.4% -1,028-386 / 赤字拡大60.1% -1,400-372 / 赤字拡大36.2%
当期純利益 -375 -452-77 / 赤字拡大20.5% -632-180 / 赤字拡大39.8% -644-12 / 赤字拡大1.9% -1,022-378 / 赤字拡大58.7% -1,390-368 / 赤字拡大36.0%
EPS -45.37円 -54.64円-9.28円 / 赤字拡大20.4% -76.41円-21.77円 / 赤字拡大39.8% -77.88円-1.47円 / 赤字拡大1.9% -123.61円-45.72円 / 赤字拡大58.7% -168.01円-44.40円 / 赤字拡大35.9%
PER
PBR 5.11倍 12.43倍 12.16倍
BPS 470.85円 417.44円-53.42円 / -11.3% 723.26円+305.82円 / +73.3% 668.37円-54.88円 / -7.6% 576.46円-91.91円 / -13.8%
純資産 3,895 3,453-442 / -11.3% 5,983+2,530 / +73.3% 5,529-454 / -7.6% 4,769-760 / -13.7%
営業CF -220 -401-181 / 支出拡大82.3% -451-50 / 支出拡大12.5% -812-361 / 支出拡大80.0% -1,059-247 / 支出拡大30.4%
投資CF -28 -8+20 / 支出縮小71.4% -34-26 / 支出拡大325.0% -119-85 / 支出拡大250.0% -34+85 / 支出縮小71.4%
財務CF 48 10-38 / -79.2% 3,125+3,115 / +31150.0% 145-2,980 / -95.4% 204+59 / +40.7%
現金及び現金同等物 3,341 2,941-400 / -12.0% 5,582+2,641 / +89.8% 4,793-789 / -14.1% 3,900-893 / -18.6%

中期経営計画

専用の中期経営計画は未公表|承認後商業化と研究開発方針を確認

2026年7月23日時点で、「中期経営計画」「中期経営方針」又は「中長期戦略」と題する専用資料は確認できない。代替として、2026年3月期決算短信の2027年3月期予想、IR資料、製品情報及びVMaCSの事業方針を中期的な経営目標として読む。

2027年3月期売上高非開示
営業損失予想1,430百万円
経常損失予想1,400百万円
当期純損失予想1,390百万円
数値目標

2027年3月期の期初会社予想は、リハートの薬価が未定だったため売上高を非開示とし、売上高及び売上原価を織り込まずに各段階損益を見積もった。営業損失1,430百万円、経常損失1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純損失1,390百万円を予想する。2026年7月に保険償還価格が具体化したため、会社は売上高等を算定した段階で業績予想を修正する方針である。

基本方針

第一の方針は、リハートの製造販売後調査、供給体制、医療機関導入及び販売開始を確実に進めることである。第二の方針は、国内承認で得た製造、品質、薬事及び臨床データを米国及び欧州開発へ展開することである。第三の方針は、CDMOとVMaCSを通じて大量細胞製造の産業基盤を構築し、自社製品と外部受託の双方に利用することである。

事業戦略

海外向け心筋細胞製品ではスタンフォード大学との共同研究を継続し、米国IND申請と臨床試験開始に向けた準備を進める。欧州では規制当局との相談準備を開始する。カテーテル治療では朝日インテックとの共同研究を継続し、非臨床試験実施に向けた準備を進める。体内再生因子誘導剤では大学との共同研究を継続し、製薬企業への導出活動を進める。中之島クロスのパイロットプラントとVMaCSでは、大量培養システムの実用化及びプロセス開発受託を推進する。

IR情報へ

競合他社

① サンバイオ(4592)

株価1,005円
時価総額約784.5億円
基準2026年7月22日

サンバイオは成人骨髄由来間葉系幹細胞を加工した再生細胞薬SB623を開発し、日本では「アクーゴ脳内移植用注」の商業化を進める。

対象疾患はクオリプスの心不全と異なるが、再生医療等製品の承認後製造、品質管理、薬価、流通、医療機関導入及び使用成績調査という事業化工程が近い。

アクーゴは慢性期外傷性脳損傷に伴う運動麻痺を対象とし、細胞を脳内に投与する。

リハートはiPS細胞由来心筋細胞シートを心臓表面に貼付するため、細胞種、疾患及び投与手技は異なる。

両社に共通する競争要素は、製造ロットの安定性、品質試験、専門医療機関への導入、患者登録、術者教育及び市販後データである。

2027年1月期第1四半期は営業損失953百万円、経常損失779百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失836百万円だった。

売上本格化前の研究開発及び商業化準備段階で赤字が継続している。

アクーゴの販売開始後は、薬価収載、在庫、流通、医療機関導入及び症例実施速度が業績評価の中心となる。

クオリプスにとって、サンバイオは同一疾患の製品競合ではなく、承認後商業化モデルの比較対象である。

製品発売初期の症例数、売上原価、販売費及び市販後調査費の開示は、リハートの収益モデルを評価する際の先行事例となる。

② Heartseed(219A)

株価1,614円
時価総額約369.5億円
基準2026年7月22日

Heartseedは慶應義塾大学発のバイオ企業で、他家iPS細胞由来の純化心室筋細胞を微小組織化した心筋球を用いる心筋再生医療を開発する。

主力開発品HS-001は重症心不全患者の心筋内へ心筋球を移植し、心機能改善を目指す。

クオリプスとはiPS細胞由来心筋細胞、重症心不全、心筋再生医療という中核領域が重なる。

Heartseedは心筋球を心筋内に移植するのに対し、クオリプスはシートを心臓表面に貼付する。

競争点は有効性、安全性、不整脈リスク、手技侵襲、医療機関導入難易度、投与細胞数、細胞生着、製造コスト及び薬価である。

2026年12月期第1四半期は売上高465百万円、営業損失75百万円だった。

主力製品は承認前の開発段階で、臨床試験データの取りまとめと次段階の試験準備を進めている。

クオリプスは条件及び期限付き承認で先行し、Heartseedは心筋球と独自投与手技で追随する構図となる。

両社が同じ重症心不全領域で承認及び保険収載に進めば、対象患者、医療機関、専門医ネットワーク及び提携先が重なる可能性が高い。

Heartseedは3社の中で最も直接的な製品競合であり、臨床データと手技の比較が企業価値を左右する。

③ ヘリオス(4593)

株価254円
時価総額約352.4億円
基準2026年7月22日

ヘリオスはiPSC再生医薬品と体性幹細胞再生医薬品を複数展開する再生医療企業である。

iPS細胞由来製品では網膜、肝臓、免疫細胞等を研究し、体性幹細胞領域ではHLCM051を含むパイプラインを有する。

クオリプスのリハートと同一疾患で直接競合する企業ではない。

競合はiPS細胞株、分化誘導、大量培養、細胞純化、保存、輸送、品質試験、商業生産設備及び研究開発人材の獲得で発生する。

クオリプスは心臓領域に集中し承認製品を得たのに対し、ヘリオスは複数臓器及び複数細胞種のプラットフォーム型である。

2026年12月期第1四半期は売上収益8百万円、営業損失1,130百万円だった。

売上収益は限定的で、研究開発費及び事業開発費が先行している。

複数パイプラインを維持するため、資金調達、提携、開発優先順位及び臨床試験進捗が重要となる。

細胞製造プラットフォームの広さではヘリオス、心筋再生医療の承認先行ではクオリプスが異なる強みを持つ。

両社は細胞製造、品質管理、規制対応、提携先獲得及び資本市場での研究開発資金調達を巡る比較対象となる。

出典

本ページは公開情報を基に作成した企業分析であり、特定の有価証券の売買を推奨または勧誘するものではありません。業績予想、株価、時価総額、投資指標、製品承認、保険償還価格、販売開始時期及び研究開発計画は変更される可能性があります。投資判断は最新の適時開示、決算資料及び製品情報を確認したうえで、自身の責任で行ってください。

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