戸田工業 4100 東証スタンダード
創業200年超の老舗化学素材メーカー ─ 磁性粉末材料首位・機能性顔料・電子素材(MLCC誘電体材料)
事業内容 ─ 磁性粉末材料トップの老舗化学素材メーカー
戸田工業は1823年(文政6年)創業の老舗化学素材メーカー。広島県大竹市に本社を置き、磁器の絵付け・歴史的建造物などに欠かせない顔料である弁柄(ベンガラ)の製造業として創業し、2023年11月に創業200周年を迎えました。酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させ、磁性粉末材料、誘電体材料(チタン酸バリウム)、磁石材料、リチウムイオン電池正極材料などの先端化学素材を展開。事業セグメントは「機能性顔料」「電子素材」の2つで、TDK系列企業として位置付けられています。
主要事業セグメント
電子素材事業(主力)
2025年3月期の連結売上高構成比約74.9%、売上241億2,100万円。磁石材料(ボンド磁石材料)、誘電体材料(チタン酸バリウム、チタン酸バリウム分散体)、軟磁性材料(ソフトフェライト磁性粉、ソフト磁性メタル粉、フェライトコア)、電池材料(リチウムイオン二次電池正極材料)を展開。中期経営計画「Vision2026」では「成長事業」と位置付けられている。
誘電体材料(MLCC用チタン酸バリウム)
MLCC(積層セラミックコンデンサ)の誘電体材料として使用されるチタン酸バリウム・チタン酸バリウム分散体を製造。誘電体材料は需要旺盛で、2026年3月期上期は前年同期比で大きく伸長した。AIサーバー向けMLCC需要拡大の流れの中、素材供給側として連れ高物色対象に。
磁石材料(成長事業)
主な用途は自動車のモータやセンサ。自動車部品の小型化・軽量化ニーズによる需要拡大に対応するため、経営資源を投入している。Vision2026では「成長」カテゴリーとして位置付けられ、希土類磁性コンパウンドなど高機能磁石材料の事業拡大を推進中。
軟磁性材料(次世代事業)
ソフトフェライト磁性粉、ソフト磁性メタル粉、ソフト磁性コンパウンド、フェライトコアを展開。インダクター(コイル)やノイズ対策部品向け。Vision2026では「次世代」カテゴリーとして位置付けられ、2024年度に韓国の戸田マテリアルズ(TDMI)を持分法適用関連会社から子会社化することで事業強化を実施。
機能性顔料事業(再生・転換)
2025年3月期の連結売上高構成比約25%。各種顔料、環境関連材料、触媒等を展開。記録材やトナー用材料、復元中の首里城に使用するベンガラ色着色材料などを開発。Vision2026では「再生・転換」事業として位置付けられ、事業の合理化と収益を伴う事業の継続、産学官連携による次世代事業の早期事業化を推進中。需要好調と合理化活動の継続で安定利益が期待される。
不採算事業の整理
2024年5月にハイドロタルサイト事業の協業を解消。リチウムイオン電池(LIB)用前駆体材料生産会社の戸田アドバンストマテリアルズ(TAM)も清算を決定。経営資源を成長事業に集中させる事業ポートフォリオマネジメントの強化を推進している。LIB用材料はEV変調による状況変化で売上面での見直しが必要となっている。
直近5年の業績サマリー
2026年3月期は売上高280億4,000万円(前期比△11.4%減)の見通し。営業利益は黒字化を見込み、機能性顔料および電子素材の利益が順調に推移しています。2026年3月期第3四半期累計は営業利益7.9億円の黒字(前年同期は2億円の赤字)に浮上し、通期計画10億円に対する進捗率は79%に達しました。誘電体材料の需要旺盛さを背景に電子素材は伸長見込み。Vision2026の数値目標は2027年3月期に売上高385億円、営業利益率5%です。
| 項目(連結・百万円) | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 会社予想 |
2027年3月期 中計目標 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | ― | ― | ― | 31,651 | 28,500 △10.0% |
38,500 |
| 営業損益 | ― | ― | ― | △268 | 1,000 黒字転換 |
営業利益率5% |
| 経常損益 | ― | ― | ― | △468 | △300 赤字縮小 |
― |
| 当期純損益 | ― | ― | ― | △1,300 | △700 赤字縮小 |
― |
| EPS(一株利益) | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| 決算発表時株価 (参考) |
― | ― | ― | 1,066円 | 1,588円 | ― |
| PBR | ― | ― | ― | 0.40倍 | 0.58倍 | ― |
| PSR | ― | ― | ― | 0.32倍 | 0.52倍 | ― |
本ページに掲載している業績数値は、各社が公表する決算短信を一次情報として作成しています。 数値は決算短信発表時点のものであり、将来的に修正される可能性があります。 業績予想は会社発表時点のものであり、実績と異なる場合があります。 PER・PBR・PSRは決算発表日の終値で算出した参考値です。 正確な情報は各社公式IRサイトを必ずご確認ください。
業績のポイント
2025年3月期は売上高+20.7%増収(316億51百万円)も最終赤字13億円を計上。2026年3月期は売上高△10.0%減の285億円見込みだが、営業利益は黒字転換10億円を計画。事業構造改革による合理化効果と成長事業(磁石材料・誘電体材料)の伸長が業績回復ドライバー。第3四半期累計で営業利益7.9億円(前年同期2億円赤字)と黒字浮上し、通期計画達成は視界に入る。中期経営計画Vision2026の数値目標は2027年3月期売上高385億円・営業利益率5%。AIサーバー向けMLCC需要拡大により誘電体材料事業のさらなる成長期待。
中期経営計画「Vision2026」
同社は2024年5月15日策定の中期経営計画「Vision2026」で、2024年度(2025年3月期)から2026年度(2027年3月期)までの3カ年を実行期間として設定。マテリアリティで定めた2030年度(2031年3月期)のありたい姿の達成を目指し、事業ポートフォリオマネジメントを強化、選択と集中を加速します。
2027年3月期数値目標(最終年度)
- 売上高:385億円
- 営業利益率:5%(営業利益約19.25億円相当)
- その他経営目標数値:ROE、自己資本比率、運転資本回転期間
事業カテゴリー区分
- 成長事業:磁石材料、誘電体材料(順調に業績伸長中)
- 次世代事業:軟磁性材料(韓国TDMIを子会社化)
- 再生・転換事業:機能性顔料(合理化と収益を伴う事業の継続、産学官連携による次世代事業の早期事業化)
事業戦略
- 電子素材事業:高い信頼性を有する素材の開発と川下展開、M&Aにより強化した事業のさらなる成長で事業の拡大を推進
- 機能性顔料事業:事業の合理化と収益を伴う事業の継続、産学官連携による次世代事業の早期事業化により事業構造の転換
- 不採算事業の整理:ハイドロタルサイト事業の協業解消、LIB用前駆体材料生産子会社(TAM)の清算決定
財務戦略
- 営業利益率・ROE・自己資本比率・運転資本回転期間を経営目標数値として定める
- 財務基盤の安定と資本効率を意識した事業運営
人財戦略
- 技術立社を支える人材開発として、主要部門のサクセションプランを強化
- 女性およびマイノリティのキャリア開発、DX推進を加速する人材育成
- 多様性と独創性のある職場を実現し、人的資本の最大化を図る
強みと注目点
① 磁性粉末材料で国内首位
磁性粉末材料で国内トップシェアを保有。アナログ向けから縮小しデジタル用にシフトする中、現在は自動車・家電のモータ・センサー向け磁石材料、5G・データセンター・電子部品向け軟磁性材料を主軸に展開。長年蓄積した微粒子合成技術と磁性材料技術が競争優位の源泉。
② MLCC誘電体材料の成長事業
誘電体材料(チタン酸バリウム)はMLCC用として中期経営計画の成長事業と位置付け。AIサーバー向けMLCC需要拡大の流れで、誘電体材料の需要は旺盛に推移しており、2026年3月期上期は前年同期比で大きく伸長した。素材供給側として安定的な収益拡大が期待される。
③ 創業200年超の老舗で技術蓄積
1823年創業の創業200年超の老舗化学素材メーカー。磁器の絵付け用顔料である弁柄から始まり、酸化鉄微粒子合成技術を深化させて高機能素材ビジネスへ事業領域を拡大してきた。希土類磁性コンパウンド、誘電体材料、軟磁性材料など多様な高機能素材技術を保有。
④ TDK系列のグループポジション
TDK系列企業として位置付けられており、TDKグループのMLCCビジネスとの事業シナジーが期待できる。グループ内サプライチェーンの一角を担い、TDKの電子部品事業拡大と歩調を合わせた成長が見込める。
⑤ 事業構造改革の進捗
不採算事業の整理(ハイドロタルサイト協業解消、LIB前駆体生産子会社の清算)と成長事業(磁石・誘電体・軟磁性材料)への経営資源集中を推進中。2025年3月期の最終赤字から、2026年3月期は営業黒字化の見込みで、業績回復軌道が明確化している。
弱み・リスク要因
有価証券報告書および中期経営計画資料から判明している同社の事業上の課題・リスクは以下のとおりです。
① 2025年3月期は最終赤字13億円計上
2025年3月期は売上高+20.7%増収にもかかわらず、営業損失2.68億円、最終損失13億円を計上。リチウムイオン電池正極材料市況の悪化、構造改革に伴う一過性費用などが赤字要因となった。業績ボラティリティが大きい構造で、市況悪化局面での損益振幅が課題。
② LIB用材料事業のEV市況低迷
同社が中期経営計画Vision2026で成長の一つの原動力と見ていたリチウムイオン電池(LIB)用材料は、EV変調で状況が変化。売上面での見直しが必要となっている。LIB前駆体材料生産子会社(戸田アドバンストマテリアルズ)の清算を決定し、事業整理を進めている状況。
③ 営業利益率の低さ
2024年3月期の営業利益率はわずか0.4%、2025年3月期は赤字に転落。中期経営計画では2027年3月期に営業利益率5%を目標としているが、現状からは大幅な改善が必要。原価低減・諸経費削減の継続効果がどこまで利益率改善に結実するかが目標達成の鍵。
④ 第3四半期累計の進捗率低迷
2026年3月期第3四半期累計の連結営業利益は7.9億円と黒字浮上したものの、通期計画10億円に対する進捗率79.0%は5年平均の117.0%を下回る水準。第4四半期での業績達成が必要だが、若干計画下振れリスクが残存する。
⑤ 中期経営計画目標達成のハードル
2027年3月期売上高385億円目標に対し、2026年3月期会社予想は285億円。最終年度に+35%の売上拡大が必要。LIB用材料の売上面見直しが必要な中、磁石材料・誘電体材料・軟磁性材料の3本柱でこの拡大幅を確保できるかが課題。
⑥ 配当ゼロの株主還元
2026年3月期の期末配当予想は0円。業績回復途上のため配当の余裕がなく、株主還元面では弱さがある。Vision2026で配当に関する明示的な目標は示されておらず、業績回復が本格化するまで配当再開の見通しは不透明。
- 戸田工業株式会社「中期経営計画『Vision2026』における取組みの詳細について」(2024年6月6日開示)
- 戸田工業株式会社「中期経営計画『Vision2026』の策定に関するお知らせ」(2024年5月15日開示)
- 戸田工業株式会社「2026年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」(2025年11月11日開示)
- 戸田工業株式会社「2026年3月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年2月9日開示)
- 戸田工業株式会社「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 戸田工業株式会社 有価証券報告書
- 戸田工業株式会社 2025年度上期決算事業報告会資料
本ページは投資情報の提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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