6966 三井ハイテック

三井ハイテック 6966 東証P

Mitsui High-tec, Inc.|精密金型を技術基盤に、半導体用リードフレームと電動車向けモーターコアを世界各地で量産する超精密加工メーカー。

※2026年6月26日時点の情報

事業内容

2026年6月26日の時価総額は約1,958億円。同日の株価終値992円と発行済株式総数197,334,325株を用いて算出した。株価は6月12日の2027年1月期第1四半期決算と通期業績予想の上方修正後に大きく変動しており、業績回復の持続性と中期経営計画の進捗が評価の焦点となる。

三井ハイテックは1949年1月創立、1957年4月設立。本社は福岡県北九州市八幡西区小嶺二丁目10番1号で、代表取締役社長は三井康誠氏。1月決算企業で、東京証券取引所プライム市場と福岡証券取引所に上場する。資本金は16,403.88百万円、2026年1月末の連結従業員数は5,343名。事業区分は金型・工作機械事業、電子部品事業、電機部品事業の3区分である。

2027年1月期第1四半期の連結業績は、売上高61,886百万円、営業利益4,433百万円、経常利益5,891百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益4,584百万円。前年同期比では売上高13.2%増、営業利益27.8%増となった。電子部品事業の需要回復と電機部品事業の堅調な販売を受け、会社は通期予想を売上高254,000百万円、営業利益14,500百万円、経常利益14,500百万円、当期純利益10,000百万円へ上方修正した。

金型・工作機械事業|全事業の精度を支える技術基盤

2022年1月期は当時別区分だった金型事業と工作機械事業を合算して比較した。売上高は10,720百万円から2026年1月期の10,247百万円へ推移し、4年間の年平均成長率は約マイナス1.1%。営業利益は765百万円から272百万円へ低下し、利益率は約7.1%から約2.7%へ縮小した。
金型・工作機械事業 売上高推移(百万円)
10,720 11,808 11,977 10,230 10,247 22/1 23/1 24/1 25/1 26/1

金型事業は、ICリードフレーム用金型とモーターコア用金型を中心とする。同社の量産事業は、高精度な金型を自社で設計・製作できることを出発点としており、この事業は単独の販売部門であると同時に、電子部品事業と電機部品事業の競争力を支える共通技術基盤でもある。

半導体用金型では、薄い金属材料に微細形状を連続して打ち抜く順送金型を扱う。金型の寸法精度、耐久性、刃先管理、プレス速度が量産歩留まりを左右するため、設計、部品加工、組み立て、試打ち、保守までの一貫した対応力が重要となる。

モーターコア用金型では、電磁鋼板を高速で打ち抜き、積層工程へつなげる。駆動モーターの高効率化にはコアの真円度、積層精度、材料損失の抑制が必要であり、金型精度だけでなく、プレス条件と積層方式を含む量産技術の蓄積が差別化要因となる。

工作機械事業は平面研削盤を中心に、金型部品や精密部品の仕上げ加工に用いる設備を展開する。金型部品を高精度に研削する設備を自社で持つことで、加工条件を金型設計へ還元しやすく、金型と工作機械の双方から精度向上を進められる。

2026年1月期は金型・工作機械事業の売上高が10,247百万円、営業利益が272百万円だった。売上高は前期比0.2%増と横ばいだったが、営業利益は17.1%減少した。設備負担や製品構成の変化が利益率に反映されやすく、受注量だけでなく採算性の確認が必要となる。

2027年1月期第1四半期は売上高3,067百万円、営業利益7百万円。売上高は前年同期比19.2%増加した一方、営業利益は70.5%減少している。増収がそのまま利益増へつながっていないため、立ち上げ費用、製品構成、稼働率の改善が短期的な注目点となる。

この事業の評価では、外販売上だけでなく、内製金型が電子部品と電機部品の量産速度、歩留まり、品質保証に与える効果を含めて見る必要がある。単独利益が小さくても、主力2事業の受注獲得と量産立ち上げを支える戦略的重要性は高い。

電子部品事業|半導体用リードフレームの量産

売上高は2022年1月期の59,144百万円から2026年1月期の59,567百万円へ推移。2023年1月期に70,041百万円でピークを付けた後、半導体市況の調整を受け、2026年1月期の営業利益は4,046百万円、営業利益率は約6.8%となった。
電子部品事業 売上高推移(百万円)
59,144 70,041 56,675 55,393 59,567 22/1 23/1 24/1 25/1 26/1

電子部品事業の主力は半導体用ICリードフレームである。リードフレームは半導体チップを支持し、チップ内部と外部回路を電気的につなぐ金属部品で、パッケージの小型化、薄型化、高密度化に対応する微細加工が求められる。

同社は精密金型を用いるスタンピング方式と、化学的に金属を除去するエッチング方式を扱う。量産性に優れるスタンピングと、複雑な微細形状に対応しやすいエッチングを使い分けることで、パッケージ構造や生産数量に応じた製品提案が可能となる。

製造工程では、材料選定、金型設計、プレス加工、表面処理、検査までの管理が必要になる。リードフレームの表面状態やめっき品質はワイヤーボンディング、はんだ接合、封止後の信頼性に直結するため、加工精度だけでなく工程全体の品質保証が参入障壁となる。

2026年1月期の用途構成は車載向け37%、民生向け48%、情報端末向け15%だった。車載半導体は長期信頼性が重視され、民生・情報端末は需要変動と製品サイクルの影響を受けやすい。用途分散はあるものの、半導体在庫調整局面では稼働率が低下しやすい。

2022年1月期から2023年1月期にかけて売上高と利益が大きく伸びた後、2024年1月期以降は市況調整によって収益性が低下した。売上高の底堅さに対し営業利益の振れが大きく、製品価格、稼働率、材料費、為替の影響を受ける事業構造が表れている。

2027年1月期第1四半期は売上高17,912百万円、営業利益1,670百万円。前年同期比では売上高26.6%増、営業利益86.5%増となり、車載・民生向け製品の需要増加と円安が寄与した。営業利益率は約9.3%まで回復している。

中期経営計画では2028年1月期の電子部品事業売上高70,000百万円、営業利益7,000百万円を目標とする。既存半導体市場の回復だけに依存せず、車載・パワー半導体向けなど高信頼性分野で製品構成を改善できるかが、利益率10%目標の達成を左右する。

投資判断では、四半期売上高の回復に加え、受注の継続性、工場稼働率、用途別構成、営業利益率を確認する必要がある。需要回復が一過性でなく、年間を通じて利益率改善へつながるかが再評価の条件となる。

電機部品事業|電動車向けモーターコア

売上高は2022年1月期の75,482百万円から2026年1月期の154,649百万円へ拡大し、4年間の年平均成長率は約19.6%。主力事業として連結成長をけん引した一方、営業利益率は約12.0%から約6.4%へ低下した。
電機部品事業 売上高推移(百万円)
75,482 100,184 133,882 155,182 154,649 22/1 23/1 24/1 25/1 26/1

電機部品事業は、電動車の駆動用・発電用モーターに使われるモーターコアを量産する。モーターコアは薄い電磁鋼板を打ち抜いて積層した部品で、ローターとステーターの形状精度、積層精度、材料の磁気特性がモーター効率と出力特性に影響する。

同社は金型の設計・製作からプレス加工、積層、結束までを一貫して手掛ける。代表技術のMACシステムは、電磁鋼板の打ち抜きから積層・結束までを金型内で連続処理する生産方式で、高速量産と品質の安定化を両立させる。

顧客のモーター設計に合わせて金型を開発し、量産工場へ展開するため、受注から本格量産までの期間は長い。量産開始後は自動車の車種計画、生産台数、モデルライフの影響を受ける一方、品質認定を経た継続供給案件になりやすい。

2026年1月期の用途構成はHEV向け83%、BEV向け4%、その他13%だった。BEV専業ではなく、ハイブリッド車を中心に複数の電動車方式へ供給している点は、地域ごとに異なる電動化速度への対応力につながる。

売上高は5年間でほぼ倍増したが、2026年1月期は154,649百万円と前期比0.3%減、営業利益は9,821百万円と18.5%減少した。海外拠点を含む能力増強に伴う減価償却費、立ち上げ費用、稼働率のばらつきが利益率を押し下げている。

2026年1月期には欧州の電動車市場減速を受け、固定資産の減損損失3,951百万円と欧州事業損失2,591百万円を特別損失として計上した。需要の長期成長だけでなく、地域別の販売速度と設備投資回収の時間差が損益を大きく左右する。

2027年1月期第1四半期は売上高43,114百万円、営業利益3,564百万円。前年同期比では売上高8.7%増、営業利益22.0%増となり、営業利益率は約8.3%へ改善した。通期でこの収益性を維持できるかが重要となる。

中期経営計画の2028年1月期目標は売上高190,000百万円、営業利益10,000百万円。売上成長に対して利益目標は抑制的で、当面は大型投資の回収と安定稼働を優先する計画と読める。数量拡大だけでなく、案件別採算と海外拠点の利益率改善が株価評価の鍵になる。

直近5年業績サマリー

単位は売上高、各利益、純資産、キャッシュ・フロー、現金及び現金同等物が百万円、EPS・BPSが円、PER・PBRが倍。2027年1月期会社予想は2026年6月12日公表の修正値を反映している。

業績項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期 2026年1月期 2027年1月期
会社予想
売上高 139,429 174,615
+35,186 / +25.2%
195,881
+21,266 / +12.2%
214,890
+19,009 / +9.7%
218,329
+3,439 / +1.6%
254,000
+35,671 / +16.3%
営業損益 14,959 22,586
+7,627 / +51.0%
18,119
△4,467 / △19.8%
16,017
△2,102 / △11.6%
12,651
△3,366 / △21.0%
14,500
+1,849 / +14.6%
経常損益 15,672 22,669
+6,997 / +44.6%
21,733
△936 / △4.1%
16,943
△4,790 / △22.0%
13,815
△3,128 / △18.5%
14,500
+685 / +5.0%
当期純利益 11,778 17,581
+5,803 / +49.3%
15,545
△2,036 / △11.6%
12,219
△3,326 / △21.4%
3,151
△9,068 / △74.2%
10,000
+6,849 / +217.3%
EPS 64.45円 96.20円
+31.75円 / +49.3%
85.06円
△11.14円 / △11.6%
66.86円
△18.20円 / △21.4%
17.24円
△49.62円 / △74.2%
54.72円
+37.48円 / +217.3%
PER 25.85倍 14.10倍 16.19倍 13.58倍 43.15倍 18.13倍
PBR 4.98倍 3.09倍 2.60倍 1.51倍 1.20倍
BPS 334.44円 439.44円
+105.00円 / +31.4%
528.77円
+89.34円 / +20.3%
601.83円
+73.06円 / +13.8%
619.71円
+17.88円 / +3.0%
純資産 61,383 80,607
+19,224 / +31.3%
96,993
+16,386 / +20.3%
110,327
+13,334 / +13.7%
113,614
+3,287 / +3.0%
営業CF 18,129 22,082
+3,953 / +21.8%
31,676
+9,594 / +43.4%
24,368
△7,308 / △23.1%
24,135
△233 / △1.0%
投資CF -17,743 -19,593
△1,850 / △10.4%
-36,394
△16,801 / △85.8%
-26,512
+9,882 / +27.2%
-28,773
△2,261 / △8.5%
財務CF 12,469 -665
△13,134 / △105.3%
8,833
+9,498 / +1428.3%
11,073
+2,240 / +25.4%
7,117
△3,956 / △35.7%
現金及び現金同等物 31,140 33,883
+2,743 / +8.8%
39,192
+5,309 / +15.7%
49,604
+10,412 / +26.6%
52,742
+3,138 / +6.3%
2024年8月1日付で普通株式1株につき5株の株式分割を実施している。比較可能性を確保するため、EPSとBPSは各期の利益・自己資本を2026年6月26日時点の発行済株式総数から自己株式を除いた182,749,385株で除して再計算した。PERとPBRも再計算後のEPS・BPSを使用した。過去5期の株価は、提供された各決算期末の調整後終値1,666円、1,356円、1,377円、908円、744円を採用。2027年1月期予想PERは2026年6月26日終値992円を会社予想EPS54.72円で除して算出した。会社予想列の純資産、BPS、PBR、各キャッシュ・フロー、現金及び現金同等物は未公表のため空欄とした。

中期経営計画

2026年1月期から2028年1月期の中期経営計画と2026年3月修正

同社は2025年3月に3カ年の中期経営計画を公表し、2026年3月に最終年度目標を修正した。修正理由は、電動車市場、とくにBEVの成長速度が当初想定を下回ったことと、既存半導体市場の回復が遅れたことである。

2028年1月期 売上高263,000百万円
2028年1月期 営業利益15,000百万円
営業利益率5.7%
ROE8.0%以上
ROIC5.0%以上
3カ年設備投資96,000百万円

基本方針は、超精密加工技術を軸に、成長市場へ供給能力を先行配置しながら資本効率を改善することにある。金型・工作機械事業はグループの技術基盤を強化し、電子部品事業は半導体市況回復と高付加価値製品で安定収益を確保し、電機部品事業は電動車向けモーターコアの世界供給体制を拡張する。

電機部品事業ではHEV、BEV、PHEV、MHEV、FCEVを含む電動車全般を対象とし、金型、プレス、積層技術とグローバル生産拠点を組み合わせる。2028年1月期の事業目標は売上高190,000百万円、営業利益10,000百万円で、3カ年設備投資の大半に当たる78,000百万円を配分する計画である。

電子部品事業の2028年1月期目標は売上高70,000百万円、営業利益7,000百万円、営業利益率10.0%。車載・パワー半導体分野の需要獲得と、既存設備の稼働率改善による利益回復を狙う。金型・工作機械事業の修正目標は売上高12,000百万円、営業利益1,000百万円で、主力2事業の量産立ち上げを支える技術供給機能を担う。

2027年1月期の修正会社予想は売上高254,000百万円、営業利益14,500百万円で、中期経営計画最終年度目標に近い水準まで引き上げられた。ただし、想定為替レートは1米ドル153円であり、増収効果には為替影響も含まれる。中東情勢悪化に伴う資材価格上昇も減益要因として明記されているため、売上達成だけでなく利益率とキャッシュ・フローの確認が必要となる。

競合他社

① サンコール(5985)|モーターコア・電動化部品

2026年6月26日終値:1,800円
時価総額:約613億円
市場:東証スタンダード

サンコールは自動車用ばね、精密機能部品、通信関連部品を展開し、電動化領域ではモーターコア、ステーターコア、バスバー、バスリングなどを扱う。三井ハイテックとは、電動車向けモーター周辺部品と精密プレス加工で競合する。

モーターコアでは電磁鋼板のプレス・積層技術が共通の競争領域となる。サンコールは自動車部品で蓄積した材料加工と量産品質を基盤に電動化製品を拡大しており、顧客基盤と既存自動車部品の組み合わせが特徴である。

2026年3月期の連結業績は売上高52,223百万円、営業利益7,125百万円、親会社株主に帰属する当期純利益6,209百万円。HDD用サスペンション事業の生産・販売終了により売上高は前期比18.3%減少したが、データセンター向け光通信部品の需要増加と事業整理費用の反動により営業利益は107.0%増加した。

自動車関連製品の売上高は28,986百万円で前期比2.4%増。三井ハイテックとの比較では、サンコールは自動車部品群の幅が広く、モーターコア専業度は低い。一方、電動化部品の横展開により顧客当たりの採用品目を増やせる点が競争上の強みとなる。

② エノモト(6928)|リードフレーム・精密金型

2026年6月26日終値:3,165円
時価総額:約217億円
市場:東証スタンダード

エノモトは半導体用リードフレーム、オプトデバイス用リードフレーム、コネクター用部品を製造する。精密金型の設計・製作、プレス、めっき、樹脂成形、組み立てまでを一貫して行い、三井ハイテックの電子部品事業と直接競合する。

パワー半導体向けリードフレームやクリップボンディング対応部品は、車載電動化と省電力機器の成長を取り込む分野である。微細加工精度、材料利用率、表面処理品質、量産歩留まりが主要な競争軸となる。

2026年3月期の連結業績は売上高30,415百万円、営業利益1,650百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,231百万円。前年同期比で売上高13.2%増、営業利益166.8%増、純利益174.9%増となった。

製品別売上高はパワー半導体用リードフレーム10,152百万円、オプト用リードフレーム5,190百万円、コネクター用部品14,411百万円。三井ハイテックより企業規模は小さいが、半導体・電子部品への集中度が高く、製品構成改善が利益に反映されやすい。

③ 黒田精工(7726)|モーターコア金型・積層システム

2026年6月26日終値:1,445円
時価総額:約83億円
市場:東証スタンダード

黒田精工は精密金型、モーターコア、ボールねじ、ゲージ、工作機械を展開する。モーターコア分野ではFASTEC、Glue FASTEC、LASER FASTEC、MAGPREXなどの積層・接合技術を持ち、三井ハイテックのMACシステムと競合する。

金型設計からコアの量産、接着・溶接を含む積層方式まで提供する点で、競合3社の中では三井ハイテックの電機部品事業に最も近い。モーターの高回転化、薄板化、低損失化に対応する精密加工技術が競争軸となる。

2026年3月期の連結業績は売上高19,501百万円、営業利益32百万円、親会社株主に帰属する当期純損失96百万円。売上高は前期比12.8%増加したが、営業利益は89.5%減少した。

金型システム事業の売上高は9,139百万円で前期比20.8%増となった一方、低採算設備の構成、減価償却負担、ドイツ子会社の損失が収益を圧迫した。三井ハイテックと同様に、電動化需要の拡大局面でも大型投資と量産立ち上げの採算管理が重要となる。

強みと将来性

金型から量産までの一貫体制と、電動化・半導体の二つの成長軸

最大の強みは、超精密金型を自社で設計・製作し、その金型を使った高速プレス、積層、表面処理、検査までを量産工程として統合している点にある。金型だけ、加工だけを担う企業に比べ、製品設計と生産条件を同時に最適化しやすい。

モーターコアではMACシステムを核に、打ち抜きから積層・結束までを連続化する。顧客のモーター仕様に合わせた金型開発と、量産拠点への工程移管を一体で行えるため、大型案件の初期設計段階から関与しやすい。

リードフレームでは、スタンピングとエッチングの双方に対応し、プレス後のめっきや品質保証まで担う。半導体パッケージの微細化、車載信頼性、パワー半導体の高電流化など、用途ごとに異なる要求へ製法を組み合わせられる。

事業ポートフォリオは、電動車向けモーターコアと半導体用リードフレームの二本柱である。両事業は同じ精密金型・プレス技術を共有する一方、需要サイクルは完全には一致しないため、技術資産を共用しながら市場を分散できる。

電機部品事業の売上高は2022年1月期75,482百万円から2026年1月期154,649百万円へ拡大した。短期間で生産能力を増やし、世界各地へ供給網を築いた実績は、電動化案件の受注と量産立ち上げを実行できる能力を示す。

HEV向けが主力であることも重要である。世界の電動化はBEVだけでなく、HEV、PHEV、MHEVなど地域ごとに異なる経路で進む。同社は複数方式の駆動・発電用コアへ対応するため、特定の電動車方式だけに依存しない。

2027年1月期第1四半期は電子部品と電機部品がともに増収増益となった。電子部品の営業利益率は約9.3%、電機部品は約8.3%まで改善し、前期に低下した連結収益性が回復する初動を示している。

2026年1月期末の現金及び現金同等物は52,742百万円、営業キャッシュ・フローは24,135百万円。大型設備投資を続けながらも営業キャッシュ・フローを確保しており、中期経営計画の投資を支える財務基盤がある。

2027年1月期会社予想は6月に上方修正され、売上高254,000百万円、営業利益14,500百万円となった。旺盛な需要と為替効果が背景で、計画どおり進めば2028年1月期中期目標に早期接近する。

将来性を判断する中心指標は、モーターコアの販売数量だけではなく、海外工場の稼働率、電機部品の営業利益率、電子部品の回復持続性、投資後のROICである。売上規模の拡大を資本効率の改善へ変換できれば、成長企業から収益性を伴う量産プラットフォーム企業へ評価が進む余地がある。

弱み・リスク要因

大型投資の回収期間、電動車需要の地域差、利益率の変動

最大の弱みは、売上成長に先行して大規模な設備投資が必要になる点である。中期経営計画の3カ年設備投資は96,000百万円で、そのうち電機部品事業に78,000百万円を配分する。需要が計画を下回ると、減価償却費と固定費が利益率を圧迫する。

電機部品事業は5年間で売上高を大きく伸ばしたが、営業利益率は2022年1月期の約12.0%から2026年1月期の約6.4%へ低下した。数量成長と利益成長が一致しておらず、価格、製品構成、立ち上げ費用、海外工場稼働率の影響を受けやすい。

欧州では電動車市場の減速により、2026年1月期に固定資産の減損損失3,951百万円と欧州事業損失2,591百万円を計上した。市場の長期拡大が見込まれても、地域別・車種別の立ち上がり時期がずれると投資回収は遅れる。

2026年1月期の親会社株主に帰属する当期純利益は3,151百万円と前期比74.2%減少した。営業利益の低下に加え特別損失が純利益を押し下げており、設備価値の見直しや拠点再編が発生するとEPSの変動が大きくなる。

電子部品事業は半導体市況の影響を受ける。車載、民生、情報端末へ用途分散しているが、在庫調整が広がる局面では注文減少と稼働率低下が同時に起こりやすい。2023年1月期の高収益から2024年1月期以降に利益が落ちた実績が循環性を示している。

材料費も重要な変動要因である。電磁鋼板、銅系材料、めっき材料、エネルギー価格が上昇した場合、販売価格への転嫁には時間差が生じる。2027年1月期予想の上方修正でも、中東情勢悪化に伴う資材価格上昇が減益要因として挙げられている。

為替は海外売上と海外生産の双方に影響する。修正予想の想定為替レートは1米ドル153円で、円安は円換算売上を押し上げる一方、輸入材料、設備、現地費用には逆方向の影響もある。為替効果を除いた実質的な数量・採算改善を確認する必要がある。

競争面では、モーターコアで黒田精工やサンコール、リードフレームでエノモトなどが技術開発と能力増強を進める。顧客は複数調達や内製化を選択できるため、金型技術だけでなく、価格、供給地域、立ち上げ速度、品質保証を継続して改善する必要がある。

株価は2026年6月12日の決算発表後、6月17日に1,358円まで上昇した後、6月26日は992円で取引を終えた。短期間の値幅が大きく、業績上方修正を織り込む局面でも需給による変動が拡大しやすい。

中期経営計画最終年度の営業利益率目標は5.7%で、売上成長に比べ利益率目標は高くない。大型投資の回収局面では、売上高の達成よりも営業利益率、ROIC、フリーキャッシュ・フローが株主価値を左右する。

出典

本ページは公開情報を基に作成した企業分析であり、特定の有価証券の売買を推奨するものではない。掲載数値は資料公表時点の情報で、会計方針の変更、株式分割、業績予想の修正などにより比較条件が変わる場合がある。投資判断は最新の適時開示、決算資料、有価証券報告書を確認したうえで自己責任で行うこと。

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