三菱重工業 7011 東証P
Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.|GTCC・原子力などのエネルギー、プラント・社会インフラ、冷熱・エンジン、防衛・航空・宇宙を横断する総合重工企業。
※2026年7月24日時点の情報
事業内容
2026年7月24日の時価総額は約13兆3,090億円。 同日の終値3,945円と、2026年3月期末の発行済株式総数 3,373,647,810株を基準に算出した。
三菱重工業は1950年7月7日設立。本社は東京都千代田区丸の内三丁目2番3号、 取締役社長は伊藤栄作、決算期は3月。東京証券取引所プライム市場のほか、 名古屋・札幌・福岡の各証券取引所に上場し、エネルギー、社会インフラ、 産業機械、航空、防衛、宇宙に事業領域を持つ。
2026年3月期の継続事業は、受注高7,653,600百万円、 売上収益4,974,168百万円、事業利益432,218百万円、 税引前利益474,694百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益 332,129百万円。2027年3月期会社予想は売上収益 5,400,000百万円、事業利益540,000百万円、 親会社の所有者に帰属する当期利益380,000百万円としている。
エナジー|GTCC・原子力・航空機用エンジン・コンプレッサ
エナジー 業績推移
外部顧客売上収益とセグメント利益。4セグメント・5期間を共通縮尺で表示
単位:百万円(縦軸は50,000百万円=10px、全グラフ共通)
エナジーの主要製品・サービスは、火力発電システムのGTCCとスチームパワー、原子力発電システム、風力発電システム、航空機用エンジン、コンプレッサ、舶用機械である。
2026年3月期の外部顧客売上収益は2,053,956百万円、セグメント利益は267,272百万円。4報告セグメントの中で売上収益、利益とも最大で、利益率は13.0%だった。
5期間では売上収益が2022年3月期の1,643,374百万円から約25.0%増加した一方、利益は約3.1倍となった。売上規模の拡大を上回る利益成長が確認できる。
大型ガスタービンではJ形・JAC形を中核にGTCC発電設備を展開する。新設機の受注は、建設後の部品供給、定期検査、性能改善、長期保守契約へつながるため、納入台数だけでなくサービス対象台数の積み上がりが収益構造を左右する。
2026年5月の2024事業計画推進状況では、GTCCを伸長事業に位置付け、1,000件超の改善で生産能力を3割増強するめどを付け、更なる能力増強を進める方針を示した。受注残の遂行能力とリードタイム短縮が重点となる。
データセンター向けの安定電源需要は、発電設備、冷却、エネルギーマネジメントを横断する案件機会として示されている。案件の採算を評価する際は、新設設備の利益だけでなく、運転期間中のアフターサービス収入を確認する必要がある。
原子力では軽水炉、原燃サイクル、新分野を対象とし、既設炉の再稼働・安全対策、保守、使用済燃料関連機器、新型炉開発を事業領域に含む。2024事業計画の推進資料では原子力も伸長事業に指定され、設計ツールの標準化や使用済燃料キャスクの製造能力向上を進める。
航空機用エンジンは国際共同開発、生産、補修・MROに関わる。完成品単体ではなく、担当部位の量産、スペアパーツ、整備需要の回復が売上と利益に影響する。
コンプレッサは石油・ガス、化学、LNG、CO2回収、水素関連などのプロセス設備に用いられる。大型回転機械の受注は案件規模が大きく、仕様変更、納期、資材価格、現地工事の管理が採算管理上の確認点となる。
脱炭素分野では、水素混焼・専焼対応ガスタービン、アンモニア燃焼、CO2回収、圧縮機を組み合わせる。天然ガス設備から低炭素燃料へ段階的に移行できる設計は、顧客の投資時期と燃料供給条件に左右される。
2026年3月期の全社受注高は7,653,600百万円で過去最高となり、エナジーを中心に受注が増加した。受注の増加が将来の売上とサービス収益へ転換する一方、前受金、運転資金、製造能力、サプライヤー供給力の管理も重要となる。
エナジーの継続確認項目は、GTCCの受注価格と納期、長期保守契約の拡大、原子力案件の進捗、コンプレッサの大型案件、水素・アンモニア関連の商用化、受注残消化時の利益率である。
プラント・インフラ|製鉄機械・商船・交通・化学プラント・環境設備
プラント・インフラ 業績推移
外部顧客売上収益とセグメント利益。4セグメント・5期間を共通縮尺で表示
単位:百万円(縦軸は50,000百万円=10px、全グラフ共通)
プラント・インフラの主要製品・サービスは、製鉄機械、商船、交通システム、化学プラント、環境設備、紙工機械、ITS、試験装置である。
2026年3月期の外部顧客売上収益は814,757百万円、セグメント利益は84,106百万円、利益率は10.3%だった。
売上収益は2022年3月期の616,983百万円から約32.1%増加した。利益は23,601百万円から約3.6倍となり、利益率改善が売上成長を上回った。
製鉄機械は圧延設備、プロセスライン、制御・デジタル化、保守・改造を含む長期案件型の事業である。鉄鋼各社の設備投資、電動化、高級鋼需要、環境対応投資が案件形成に影響する。
環境設備では廃棄物処理・ごみ焼却発電を扱う。新設だけでなく、長期運転支援、改修、部品交換を伴うため、受注後の遂行とライフサイクルサービスが収益の安定性に関係する。
交通システムではAGT・APM、都市交通システム、空港内交通などを展開する。車両、軌道、信号、運行管理、保守を統合する案件では、建設工程、現地規格、システム試験が採算を左右する。
化学プラントは肥料、化学、エネルギー転換関連などのエンジニアリングを含む。大型EPC案件は受注時採算だけでなく、設計変更、資材価格、現地工事の進捗、為替の影響を受ける。
商船・舶用分野は高付加価値船、フェリー、船舶設計、舶用機械などを対象とする。量的な建造競争より、環境規制対応、燃料転換、省エネ、運航効率の提案力が重要となる。
2024事業計画推進状況では、プラント・インフラをレジリエンス基盤領域に位置付け、収益力向上と事業間シナジー創出を重点施策とした。単独事業の売上成長だけでなく、共通技術・調達・人材の横断利用が対象となる。
セグメント利益率は2022年3月期の3.8%、2023年3月期の5.1%、2024年3月期の5.6%、2025年3月期の7.4%、2026年3月期の10.3%と上昇した。
利益率上昇の持続性を見るには、工事進捗による売上計上、採算改善、サービス比率、案件ミックス、一過性損益の有無を決算説明資料で継続確認する必要がある。
プラント・インフラの確認項目は、製鉄・環境・交通の受注残、EPC案件の追加費用、商船・舶用の製品構成、長期保守収入、10%台の利益率を維持できるかである。
物流・冷熱・ドライブシステム|冷熱・エンジン・ターボチャージャ
物流・冷熱・ドライブシステム 業績推移
外部顧客売上収益とセグメント利益。4セグメント・5期間を共通縮尺で表示
単位:百万円(縦軸は50,000百万円=10px、全グラフ共通)
物流・冷熱・ドライブシステムの主要製品・サービスは、冷熱製品、エンジン、ターボチャージャ、カーエアコンである。
三菱ロジスネクスト及びその子会社・関連会社に係る物流機器事業は、2026年3月期に非継続事業へ分類された。2025年3月期と2026年3月期の数値は当該事業を除く修正再表示値である。
このため、2022年3月期から2024年3月期までの売上収益と、2025年3月期以降の売上収益には事業構成の断絶がある。グラフ上の減収を需要減少だけで解釈することはできない。
2026年3月期の外部顧客売上収益は624,860百万円、セグメント利益は33,066百万円、利益率は5.3%だった。
2025年3月期の修正再表示値は売上収益636,609百万円、利益20,480百万円、利益率3.2%。2026年3月期は減収ながら増益となり、利益率が改善した。
冷熱製品は業務用・家庭用空調、冷凍・冷蔵、ヒートポンプなどを含む。地域別需要、エネルギー効率規制、冷媒規制、原材料、流通在庫、季節性が業績に影響する。
データセンター関連では、電源だけでなく冷却・熱マネジメントの需要が拡大領域として示されている。冷熱機器単体と、発電・制御を含むシステム提案の双方が事業機会となる。
エンジンは分散型発電、産業用・舶用などの用途を持つ。非常用・常用電源、コージェネレーション、地域分散電源では、燃費、排出規制、燃料多様性、保守網が競争軸となる。
ターボチャージャは自動車生産台数、内燃機関車の需要、ハイブリッド化、顧客別機種構成、価格改定、生産拠点の稼働率に影響される量産事業である。
カーエアコンは車両電動化に伴う熱管理要求の変化を受ける。電動車では車室空調に加え、電池・パワーエレクトロニクスの温度管理が重要となる。
物流機器事業の非継続化後は、残存事業の資本効率と利益率を独立して追う必要がある。売却に伴うキャッシュインと、継続事業の設備投資・研究開発の配分も確認対象となる。
継続確認項目は、冷熱の地域別需要と採算、データセンター冷却案件、エンジンの分散電源需要、ターボチャージャの数量・価格、非継続事業除外後の利益率推移である。
航空・防衛・宇宙|民間航空機・防衛装備・艦艇・宇宙機器
航空・防衛・宇宙 業績推移
外部顧客売上収益とセグメント利益。4セグメント・5期間を共通縮尺で表示
単位:百万円(縦軸は50,000百万円=10px、全グラフ共通)
航空・防衛・宇宙の主要製品・サービスは、民間航空機、防衛航空機、飛しょう体、艦艇、魚雷などの特殊機械、特殊車両、宇宙機器である。
2026年3月期の外部顧客売上収益は1,392,898百万円、セグメント利益は151,505百万円、利益率は10.9%だった。
売上収益は2022年3月期の604,549百万円から約2.3倍、利益は24,032百万円から約6.3倍となった。4セグメントの中で5年間の増収率・増益率が最も大きい。
防衛では航空機、ミサイル、艦艇・潜水艦、特殊車両、水中装備など複数領域を持つ。政府予算と長期契約、契約単価の見直し、生産能力増強、サプライチェーン確保が売上と採算に直結する。
2024事業計画推進状況では防衛を伸長事業に位置付け、名古屋地区の新工場、IT・AIを用いた生産性向上、飛しょう体のリードタイム短縮、ロボット・自動搬送・自動検査の導入を示した。
増産局面では、受注残の増加だけでなく、部品調達、品質保証、熟練人材、試験設備、納入スケジュールの能力が重要となる。追加費用や納期遅延が発生すれば利益率に影響する。
民間航空機は国際共同生産の機体構造、部品、エンジン関連などを含む。航空旅客需要の回復に伴う生産レート、顧客メーカーの工程、品質・納期、為替が業績に影響する。
艦艇・潜水艦は建造期間が長く、就役後の保守・改修も含む。案件ごとの原価管理と、造船所の生産能力・技能維持が長期収益を左右する。
宇宙ではH3ロケット、打上げサービス、宇宙機器を展開する。打上げ頻度、成功実績、官需・商業衛星の受注、製造と射場運用の安定性が事業規模の確認点となる。
2026年5月の計画推進資料は、カウンタードローン、極超音速、無人機、衛星、通信ネットワークなどを領域拡大の例に挙げた。既存の設計・制御・製造技術を横断利用する方針である。
防衛・宇宙は政策・予算の影響が大きく、受注から売上計上までの期間も長い。四半期単位の変動より、受注残、契約採算、進捗率、生産能力の増強状況を重視する必要がある。
継続確認項目は、防衛受注残の消化、利益率、飛しょう体・艦艇の増産能力、民間航空機の生産レート、H3の打上げ頻度、次世代防衛・宇宙案件の事業化である。
1.会社予想と実績
2022年3月期から2026年3月期は、各期首に公表された通期会社予想と通期実績を比較。2027年3月期は最新の通期会社予想を掲載しています。
| 指標 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 予想 | 実績 | 達成率 | 予想 | 実績 | 達成率 | 予想 | 実績 | 達成率 | 予想 | 実績 | 達成率 | 予想 | 実績 | 達成率 | 予想 | 実績 | 達成率 | |
| 売上高(売上収益) (百万円) |
3,750,000 | 3,860,283 | 102.9% | 3,900,000 | 4,202,797 | 107.8% | 4,300,000 | 4,657,147 | 108.3% | 4,900,000 | 5,027,176 | 102.6% | 5,400,000 | 4,974,168 | 92.1%単純比較 | 5,400,000 | — | 最新予想 |
| 営業利益(事業利益) (百万円) |
150,000 | 160,240 | 106.8% | 200,000 | 193,324 | 96.7% | 300,000 | 282,541 | 94.2% | 350,000 | 383,198 | 109.5% | 420,000 | 432,218 | 102.9%単純比較 | 540,000 | — | 最新予想 |
| 経常利益相当(税引前利益) (百万円) |
130,000 | 173,684 | 133.6% | 190,000 | 191,126 | 100.6% | 290,000 | 315,187 | 108.7% | 330,000 | 374,531 | 113.5% | 400,000 | 474,694 | 118.7%単純比較 | 530,000 | — | 最新予想 |
| 親会社株主帰属純利益 (百万円) |
90,000 | 113,541 | 126.2% | 120,000 | 130,451 | 108.7% | 190,000 | 222,023 | 116.9% | 230,000 | 245,447 | 106.7% | 260,000 | 332,129 | 127.7% | 380,000 | — | 最新予想 |
| EPS(基本的1株当たり利益) (円) |
26.77 | 33.82 | 126.3% | 35.75 | 38.84 | 108.7% | 56.56 | 66.07 | 116.8% | 68.43 | 73.04 | 106.7% | 77.43 | 98.86 | 127.7% | 113.09 | — | 最新予想 |
達成率=実績÷会社予想×100。予想はすべて単一値で、レンジ予想はありません。EPSは2024年4月1日の1株→10株の株式分割を遡及反映し、2024年3月期以前の予想・実績を10分の1に調整しています。
2.達成・未達理由
材料費・輸送費上昇、半導体不足、民間航空機の回復遅れがあった一方、固定費削減、売上増加、収益改善策で吸収。GTCC・原子力・物流冷熱ドライブの増収も寄与し、利益指標は期首予想を大幅に上回りました。
物流・冷熱・ドライブシステムを中心に全セグメントで増収となり、売上・税引前利益・純利益は達成。反面、エナジーの利益減少、資材・エネルギー価格上昇や一時費用が重く、事業利益は3.3%未達でした。
全セグメントの増収、工事採算改善、サービス拡大、価格適正化、円安が押し上げ要因。海外の一部工事損失と航空エンジン関連の一時費用で事業利益は届かなかったものの、円安などもあり税引前利益・純利益は予想を上回りました。
エナジー、プラント・インフラ、航空・防衛・宇宙が増収増益。売上増、利益率改善、円安、前年度一時費用の反動、土地売却益が寄与し、すべての主要指標が期首予想を上回りました。
GTCC、防衛・宇宙の売上拡大と、GTCC・原子力・製鉄機械・防衛宇宙の利益伸長で、利益指標は超過。火力工事損失、のれん減損、前年の土地売却益反動を吸収しました。売上の見かけ上の未達は、期初予想が三菱ロジスネクストを含む一方、実績の売上・事業利益・税引前利益は同事業を除く継続事業表示であることが主因です。
受注残13.2兆円を基盤に、エナジーと航空・防衛・宇宙を中心とする増収、利益率改善、前期の減損反動を織り込む計画です。事業利益率10.0%を目指すため、売上達成だけでなく案件採算と生産能力の確保が重要です。
3.事業セグメントの自信度
各年度の決算説明で変化した表現を、事業セグメント別・年度別に原文のまま掲載し、数値推移と合わせて会社の自信度を推理しています。2026年4月の組織再編後、「物流・冷熱・ドライブシステム」は「インダストリアル・ソリューション」に改称されています。
エナジー
GTCCへの需要は底堅く推移
GTCC・原子力が増収を牽引。
事業利益は、エナジーセグメントが減少したものの
売上は伸びたが利益は弱含み。
継続的な新設受注とアフターサービスにより高操業。増産に対応、人員を増強中
GTCCの高操業と原子力拡大が鮮明。
GTCCは主に米州、中東で受注が大幅に増加。売上増に加え、採算改善等により増益
需要と採算の両面が改善。
GTCC、原子力、製鉄機械、防衛・宇宙が事業利益を大きく伸ばした
受注残拡大と利益成長を同時に実現。
GTCC、原子力は、好調な受注を受け増収
売上2.2兆円・利益3,400億円を計画。
GTCC・原子力の厚い受注残とサービス比率が収益の可視性を高めています。2027年3月期は売上2.2兆円、事業利益3,400億円を計画。
プラント・インフラ
製鉄機械および機械システムは受注、売上ともに好調
赤字局面から収益回復。
製鉄機械は過去2年間に受注残を大きく伸ばしており、受注した工事の確実な遂行により、売上と利益が増加
受注残の収益化に自信。
エンジニアリングは工事の順調な進捗とプロジェクト採算の改善により増収増益
進捗と採算がともに改善。
製鉄機械は売上増、採算改善等により増収増益
製鉄機械が柱として定着。
GTCC、原子力、製鉄機械、防衛・宇宙が事業利益を大きく伸ばした
製鉄機械が全社増益の主要因。
製鉄機械を中心に過去3年間で積み上げた受注工事を確実に遂行
受注減を見込む一方、売上・利益は増加。
製鉄機械を中心に積み上がった工事を遂行する局面。2027年3月期は売上9,500億円、事業利益900億円を見込みます。
物流・冷熱・ドライブシステム → インダストリアル・ソリューション
物流機器・冷熱・エンジンの売上は、コロナ前(2019年度)を上回り、事業規模拡大に向けて着実に進捗
回復は進んだが供給制約が残存。
物流機器、冷熱、エンジンの売上は、昨年度に引き続き堅調に推移
価格適正化で利益率改善を計画。
物流機器、冷熱及びエンジンは、価格適正化、為替円安の影響により増収増益
価格効果が利益に波及。
物流機器は販売台数の減少等により減収減益
冷熱は強い一方、物流機器とターボチャージャが減益。
旧三菱ロジスネクスト株式会社及びその子会社・関連会社に係る事業については、非継続事業に分類しております。
事業売却・再編で比較基準が大きく変化。
エンジン、冷熱は販売台数の増加を見込む
新セグメントで事業利益300億円の黒字転換を計画。
三菱ロジスネクスト除外後の再基準化局面です。エンジン・冷熱の台数増で黒字転換を計画する一方、実績ベースはまだ不安定です。
航空・防衛・宇宙
国際線旅客需要の回復には時間を要する
防衛は底堅いが民間航空機は回復途上。
防衛は、防衛力整備計画に基づき今後5年間に防衛予算が増加することにともない、23年度は主に飛昇体で受注増の見通し
政策追い風を明確に織り込む。
防衛・宇宙は、スタンド・オフ防衛能力に関する案件をはじめ、複数の大型案件を受注し大幅に伸長
大型案件で受注が急拡大。
防衛・宇宙は、艦艇と宇宙の受注が伸長。順調な工事の進捗、採算改善により増収増益
受注だけでなく採算も改善。
売上は防衛航空機・飛昇体を中心に増加
売上・利益が大きく伸長し、受注残も高水準。
防衛・宇宙の受注は前年度対比で減少するも、高水準を維持。売上は防衛航空機・飛昇体を中心に増加
受注正常化後も売上成長を継続。
防衛・宇宙の大型受注が複数年度の売上へ転化する段階。2027年3月期は売上1.5兆円、事業利益1,700億円を計画。
4.最新予想信頼度
会社予想は売上収益5兆4,000億円、事業利益5,400億円、税引前利益5,300億円、親会社帰属純利益3,800億円、EPS113.09円。受注残13.2兆円が売上の可視性を支える一方、事業利益は前期比25%増、利益率は8.7%から10.0%への上昇を計画しており、採算改善の要求水準は高めです。
達成できると判断する理由
- 受注残13.2兆円は年間売上予想の約2.4倍。GTCC、原子力、防衛・宇宙、製鉄機械の長期案件が売上の下支えになります。
- 2026年3月期はML除外後の継続事業でも事業利益4,322億円、税引前利益4,746億円まで伸長し、期初予想との単純比較では利益指標を上回りました。
- エナジーは売上2.2兆円・事業利益3,400億円、防衛等は売上1.5兆円・事業利益1,700億円を計画。伸長セグメントの受注残と採算改善が全社増益の中心です。
- 過去5期で親会社帰属純利益とEPSは毎期、売上は比較可能な4期すべて期首予想を達成。利益予想には一定の保守性が見られます。
- 前期に計上した電源システムソリューションののれん減損などの反動も増益要因です。
達成できないと判断する理由
- 事業利益率10.0%は前期8.7%から1.3ポイントの改善が必要。売上が達成しても、原価悪化や工程遅延で利益だけ未達となる可能性があります。
- 過去には海外工事損失、火力工事損失、航空エンジン関連費用、のれん減損が発生。大型長期案件は見積原価の変動に敏感です。
- GTCCと防衛の高い受注残を消化するため、生産設備・人員・サプライチェーンの増強が必要で、能力制約が売上計上を後ろ倒しにするリスクがあります。
- 業績見通しは中東情勢の影響を含んでおらず、地政学、物流費、資材価格、米国通商政策などが下振れ要因です。
- 為替前提は1ドル150円・1ユーロ180円。想定以上の円高は円換算売上・利益を押し下げます。
収益計上時期を見る際の注意点
GTCC、原子力、防衛・宇宙、製鉄機械は複数年度にわたる大型案件が多く、売上・利益は工事進捗、検収、引渡し、採算見直しの時期で四半期ごとに振れます。防衛案件も大型受注が直ちに全額売上となるのではなく、受注残から段階的に収益化されます。
前受金の入金先行はキャッシュ・フローを押し上げますが、同時期の売上・利益計上を意味しません。最新の四半期実績は未発表のため進捗率は掲載していません。将来掲載する場合も、季節性や案件進捗を調整しない単純進捗率である点に注意が必要です。
最終判断
GTCC・原子力・防衛宇宙・製鉄機械の受注残を計画どおり消化し、火力工事などの追加損失を抑え、為替が会社前提から大きく円高に振れなければ、売上・純利益は達成可能性が高く、事業利益も達成圏内と判断します。一方、工事採算悪化や生産能力制約が発生した場合は、売上より先に事業利益が未達となるリスクがあります。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022/3 実績 | 2023/3 実績 | 2024/3 実績 | 2025/3 実績 | 2026/3 実績 | 2027/3 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,860,283 | 4,202,797+342,514 / +8.9% | 4,657,147+454,350 / +10.8% | 4,361,127-296,020 / -6.4% | 4,974,168+613,041 / +14.1% | 5,400,000+425,832 / +8.6% |
| 営業損益 | 160,240 | 193,324+33,084 / +20.6% | 282,541+89,217 / +46.1% | 354,965+72,424 / +25.6% | 432,218+77,253 / +21.8% | 540,000+107,782 / +24.9% |
| 経常損益 | 173,684 | 191,126+17,442 / +10.0% | 315,187+124,061 / +64.9% | 352,073+36,886 / +11.7% | 474,694+122,621 / +34.8% | 530,000+55,306 / +11.7% |
| 当期純利益 | 113,541 | 130,451+16,910 / +14.9% | 222,023+91,572 / +70.2% | 245,447+23,424 / +10.6% | 332,129+86,682 / +35.3% | 380,000+47,871 / +14.4% |
| EPS | 33.66 | 38.67+5.01 / +14.9% | 65.81+27.14 / +70.2% | 72.75+6.94 / +10.6% | 98.45+25.69 / +35.3% | 112.64+14.19 / +14.4% |
| PER | 11.94 | 12.61 | 22.01 | 34.72 | 42.90 | 35.02 |
| PBR | 0.86 | 0.94 | 2.18 | 3.63 | 4.61 | - |
| BPS | 467.33 | 516.05+48.72 / +10.4% | 665.34+149.29 / +28.9% | 695.60+30.26 / +4.5% | 915.50+219.90 / +31.6% | - |
| 純資産 | 1,576,611 | 1,740,974+164,363 / +10.4% | 2,244,620+503,646 / +28.9% | 2,346,702+102,082 / +4.5% | 3,088,566+741,864 / +31.6% | - |
| 営業CF | 285,563 | 80,888-204,675 / -71.7% | 331,186+250,298 / +309.4% | 530,459+199,273 / +60.2% | 942,619+412,160 / +77.7% | - |
| 投資CF | 16,306 | -45,575-61,881 / -379.5% | -131,048-85,473 / -187.5% | -187,714-56,666 / -43.2% | -49,175+138,539 / +73.8% | - |
| 財務CF | -255,774 | -18,902+236,872 / +92.6% | -158,903-140,001 / -740.7% | -114,123+44,780 / +28.2% | -274,553-160,430 / -140.6% | - |
| 現金及び現金同等物 | 314,257 | 347,663+33,406 / +10.6% | 431,287+83,624 / +24.1% | 657,816+226,529 / +52.5% | 1,334,874+677,058 / +102.9% | - |
中期経営計画
2024事業計画(FY2024からFY2026)と2026年5月推進状況
2024事業計画は、事業利益4,500億円以上、事業利益率 8%以上、ROE12%以上をFY2026目標として開始した。 2026年5月の推進状況では、FY2026見通しを事業利益5,400億円、 事業利益率10%、ROE12%とした。
数値目標と資金配分
当初計画のFY2026売上目標は5.7兆円以上で、最新見通しは 5.4兆円。一方、事業利益と利益率は当初目標を上回る見通しである。 FY2024からFY2026のキャッシュイン見通しは当初の1.5兆円から 2.6兆円へ増加し、投資は1.2兆円、 株主還元は0.3兆円を見込む。
基本方針
経営方針は、高利益体質と成長投資の好循環を形成することにある。 Innovative Total Optimization(ITO)を掲げ、事業ごとのバリューチェーンを 縦方向に最適化し、技術・人材・調達・デジタル・AIなどの共通基盤を横方向に共有する。
縦の全体最適では、業務プロセスのスリム化、開発のスピードアップ、 リードタイム短縮、製造自動化を進める。横の全体最適では、経験知・技術・ITの横通し、 組織横断タスクフォース、内製化、集中購買、リソースの相互活用を対象とする。
事業戦略
GTCC、原子力、防衛を伸長事業として、ファクトリーイノベーションセンターを軸に 生産能力、設備、人材、サプライチェーンを増強する。GTCCでは改善活動とコアパーツ設備増強、 防衛では飛しょう体の生産プロセス短縮と新工場、原子力では設計標準化とキャスク増産を進める。
領域拡大の例として、データセンター向け発電・冷却、カウンタードローン、無人機、 極超音速、エッジデータセンター、水素製造、CO2回収、次世代原子力、衛星などを示す。 既存製品の単純な販売拡大ではなく、共通技術を組み合わせた新しいシステム案件を対象とする。
2026年3月期末の受注残は13兆円超。計画の達成判断では、 受注残を計画どおり売上へ転換できるか、利益率を維持できるか、 設備投資と運転資金を管理しながらキャッシュを創出できるかが主要な確認点となる。
次期中期事業計画の数値目標と財務戦略は今後具体化する方針である。 現時点ではFY2026の高利益体質と、FY2027以降の成長投資・領域拡大への接続を追う段階にある。
2024事業計画推進状況資料へ競合他社
① Siemens Energy AG(XETRA:ENR)
Siemens Energyはガスタービン、蒸気タービン、発電機、送配電設備、産業用回転機械、電化・自動化、風力発電、保守サービスを展開するエネルギー技術企業である。
三菱重工業との直接競合の中心はGas ServicesとTransformation of Industryで、大型・中型ガスタービン、GTCC、蒸気タービン、発電設備サービス、産業用コンプレッサ、水素・Power-to-Xが重なる。
大型GTCCではSiemens EnergyのHL-classと、三菱重工業のJ形・JAC形が北米、欧州、中東、アジアの案件で競合する。評価軸は発電効率、出力、起動時間、燃料柔軟性、納期、ライフサイクルコスト、長期保守条件である。
2026年度上期は受注高353.58億ユーロ、売上高199.69億ユーロ、特別項目前利益23.23億ユーロ、純利益15.81億ユーロ、受注残1,540億ユーロ。
Gas Servicesは受注高176.20億ユーロ、売上高65.75億ユーロ、特別項目前利益10.67億ユーロ、利益率16%だった。
新設ガスタービンの受注は将来の長期保守、部品、改造、デジタルサービスを伴う。三菱重工業にとっては、本体シェアだけでなくサービス対象台数と保守契約残高の競争が重要となる。
産業用コンプレッサ、水素対応ガスタービン、電解装置、Power-to-Xを組み合わせる提案でも競合する。一方、送電網機器と風力発電はSiemens Energyの事業範囲が広く、三菱重工業との競合は隣接領域を含む。
② IHI(7013)
IHIは資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械、航空・宇宙・防衛の4分野を展開する総合重工企業である。
三菱重工業との競合範囲は、民間・防衛航空エンジン、MRO、防衛・宇宙、アンモニア燃焼、原子力関連機器、コンプレッサ、ターボチャージャに及ぶ。
2026年3月期は受注高1兆9,547億円、売上収益1兆6,434億円、営業利益1,655億円、親会社株主帰属利益1,609億円。
航空・宇宙・防衛は売上収益6,517億円、営業利益1,124億円で、IHIの利益中核となった。三菱重工業とは航空エンジン部品、MRO、防衛推進、宇宙システムで重複する。
航空エンジンでは同じ国際共同開発プログラムに参加しながら、担当部位、量産能力、補修能力、次世代プログラムで競争する。案件によって競合と協業が併存する。
アンモニア燃焼ではIHIがガスタービン、ボイラー、船舶用エンジンで技術開発を進める。三菱重工業の水素・アンモニア燃焼、GTCC、既設設備改造と方式・顧客獲得を競う。
原子力と大型回転機械でも領域が重なるが、三菱重工業がプラント全体を担う案件ではIHIが機器・配管の供給者となる場合がある。競争関係だけでなく供給関係を含めて評価する必要がある。
③ 川崎重工業(7012)
川崎重工業は航空宇宙システム、鉄道車両、エネルギーソリューション&マリン、精密機械・ロボット、パワースポーツ&エンジンを展開する総合重工企業である。
三菱重工業とは防衛航空機、潜水艦・船舶、中小型ガスタービン、ガスエンジン、液化水素サプライチェーン、都市交通、産業自動化で競合する。
2026年3月期は受注高2兆7,391億円、売上収益2兆3,112億円、事業利益1,451億円、親会社株主帰属利益1,081億円。
航空宇宙システムは売上収益6,136億円、事業利益624億円。P-1、C-2、ヘリコプター、民間航空機構造などを展開し、三菱重工業とは将来航空機、無人機、国際共同開発、生産能力で競う。
潜水艦は直接競合度が高い。両社は防衛省向け建造、次世代技術、静粛性、推進・蓄電池、維持修理、造船所の能力と技能維持を競う。
エネルギー分野では、川崎重工業が中小型ガスタービン、ガスエンジン、コージェネレーション、液化水素の製造・貯蔵・輸送に強みを持つ。三菱重工業の大型GTCC、圧縮機、発電・CO2回収との競争と補完の両面がある。
都市交通では川崎重工業の鉄道車両と、三菱重工業のAGT・APMが方式選定段階で競合する。産業自動化ではロボット本体より、搬送・工場システム全体の案件で重なりが大きい。
出典
- 三菱重工 公式サイト
- 三菱重工 企業概要
- 三菱重工 事業領域
- 三菱重工 製品・サービス
- 三菱重工 IR情報
- 三菱重工 決算短信・決算説明会
- 三菱重工 中期経営計画
- 三菱重工 2024事業計画推進状況(2026年5月27日)
- Siemens Energy Investor Relations
- IHI 株主・投資家情報
- 川崎重工業 IR情報
本ページは公開情報を基に作成した企業分析であり、特定の有価証券の売買を推奨または勧誘するものではありません。 業績予想、株価、時価総額、投資指標、製品構成、競争環境は変動する可能性があります。 投資判断は最新の開示資料を確認したうえで、自身の責任で行ってください。

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