6085 アーキテクツ・スタジオ・ジャパン

銘柄紹介
セグメント区分は、2024年3月期までの単一「ASJ建築家ネットワーク事業」から、2025年3月期~2026年2月期の「住まい関連事業・暮らし関連事業・投資関連事業」を経て、2027年2月期第1四半期から「建築家提案事業・環境関連事業・海外・IT事業」へ刷新されました。会社は、グループ会社売却等に伴う経営管理体制の見直しにより、新区分での前期比較情報を実務上作成困難として開示していないため、現行セグメントのグラフは最新四半期のみを掲載しています。

建築家提案事業

建築家提案事業 業績推移
売上高・セクター利益を同一軸で表示 / 利益率は年度ラベル下に表示
売上高利益損失

事業内容

約3,000名の登録建築家と全国の工務店・建設会社を結ぶプラットフォームを基盤に、住宅、別荘、商業施設、集合住宅などの設計・施工を支援する事業です。建築家がプランと概算コストを提示するPLANNING COURSE、過去の建築図面を活用するPROTO BANK、建築家展・相談会などを組み合わせ、加盟スタジオの集客・受注を支援します。2026年度からは環境商材も利用できる契約形態へ見直し、縮小したスタジオ網を再構築してロイヤリティや案件収益の安定化を目指しています。

環境関連事業

環境関連事業 業績推移
売上高・セクター利益を同一軸で表示 / 利益率は年度ラベル下に表示
売上高利益損失

事業内容

建築家プラットフォームを販路・提案基盤として、建築と環境課題を結び付ける4つのソリューションを展開します。亜臨界水反応技術で有機系廃棄物を資源化する「ALIN」、低コスト・低エネルギーで大空間をつくるコルゲートarchitecture、既存窓の断熱・省エネを狙うSEAG FILM、抗菌・防カビ・防臭や清掃負担軽減につなげるプラチナプレミアコートが柱です。施設・物流・住宅等の具体案件を開拓し、紹介料、機器・商材販売、導入支援などを収益化する方針です。

海外・IT事業

海外・IT事業 業績推移
売上高・セクター利益を同一軸で表示 / 利益率は年度ラベル下に表示
売上高利益損失

事業内容

建築家ネットワークで蓄積した提案ノウハウをデジタル化・海外展開する事業です。ニュージーランドのホームビルダー向けにPROTO BANKのマーケティングを進めるほか、ソフトウェア開発を内製化し、構想から商品化までの速度向上を狙います。2026年にはカナダ・トロントのPERMITS AI INC.を子会社化し、AI分野や新規開発案件の事業化を推進しています。足元は投資先行で短期の業績貢献を見込まない一方、建築家プラットフォームの海外・IT化を将来の収益柱へ育てる位置付けです。

直近5期業績サマリー

業績項目2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年2月期2027年2月期 通期予想
売上高
(百万円)
737.2
553.9
△183.4 / △24.9%
592.9
+39 / +7%
897.5
+304.6 / +51.4%
659
△238.5 / △26.6%
1,332
+673 / +102.1%
営業損益
(百万円)
△260.9
△349
△88.2 / △33.8%
△216.5
+132.5 / +38%
△96.6
+119.9 / +55.4%
△559
△462.4 / △478.6%
48
+607 / +108.6%
経常損益
(百万円)
△318.6
△352.8
△34.2 / △10.7%
△236.2
+116.6 / +33%
△93
+143.2 / +60.6%
△550.7
△457.7 / △492.2%
38
+588.7 / +106.9%
当期純利益
(百万円)
△348.7
△427.8
△79.1 / △22.7%
△361.4
+66.4 / +15.5%
△79.9
+281.5 / +77.9%
△600.5
△520.6 / △651.5%
38
+638.5 / +106.3%
EPS
(円)
△5.55
△5.82
△0.27 / △4.8%
△4.9
+0.91 / +15.7%
△0.88
+4.02 / +82%
△5.32
△4.43 / △502.3%
0.66
+5.98 / +112.4%
一株配当金
(円)
0
0
±0 / 算定不可
0
±0 / 算定不可
0
±0 / 算定不可
0
±0 / 算定不可
0
±0 / 算定不可
純資産
(百万円)
586.9
159.1
△427.8 / △72.9%
63.3
△95.8 / △60.2%
235.2
+172 / +271.9%
△223.2
△458.4 / △194.9%
営業CF
(百万円)
△211.1
△319.2
△108.1 / △51.2%
△204.2
+115 / +36%
△84.2
+120 / +58.7%
△656.2
△571.9 / △678.8%
投資CF
(百万円)
△18.3
△51.6
△33.3 / △181.9%
△90.7
△39.1 / △75.8%
△46.7
+44 / +48.5%
515.9
+562.6 / +1,204.9%
財務CF
(百万円)
492.2
△13.3
△505.6 / △102.7%
245
+258.4 / +1,938.2%
77.9
△167.2 / △68.2%
109.8
+31.9 / +40.9%
フリーCF
(百万円)
△229.4
△370.8
△141.4 / △61.6%
△294.9
+75.8 / +20.5%
△130.9
+164 / +55.6%
△140.3
△9.4 / △7.1%

2026年2月期は決算期変更により11か月決算。EPSは2025年4月の1株→3株、2026年4月の1株→10株の株式分割を遡及反映した比較値です。2026年2月期は訂正後数値を優先し、最新会社予想が開示されていない純資産・キャッシュフロー項目は「-」としています。

1.会社予想と実績

2022年3月期・2024年3月期は期首の数値予想が未定だったため、その年度に初めて公表された数値予想を使用。それ以外は期首の通期会社予想と通期実績を比較し、2027年2月期は最新会社予想を掲載しています。

2024年3月期の初回数値予想は2024年3月12日公表で期末直前のため、予想精度の評価には時間差バイアスがあります。2026年2月期は決算期変更により実績が11か月で、初期予想は変更前の2026年3月期12か月を対象としていました。EPSは株式分割後の共通基準へ換算しています。
売上高営業利益経常利益親会社株主帰属純利益EPS
売上高の会社予想と実績売上高会社予想と通期実績(2027/2は最新会社予想)会社予想実績01,0002,0003,0004,000967737.22022/3達成率 76.2%1,166553.92023/3達成率 47.5%592592.92024/3達成率 100.1%1,534897.52025/3達成率 58.5%3,0016592026/2達成率 22.0%1,3322027/2最新会社予想単位:百万円
赤=実績が予想以上、青=予想未達、黄=最新会社予想。赤字予想は「損失が予想より縮小したか」を100%基準に換算しています。
営業利益の会社予想と実績営業利益会社予想と通期実績(2027/2は最新会社予想)会社予想実績-1,000-625-25012550023△260.92022/3達成率 -1134.2%123△3492023/3達成率 -283.8%△230△216.52024/3達成率 105.9%81△96.62025/3達成率 -119.3%386△5592026/2達成率 -144.8%482027/2最新会社予想単位:百万円
赤=実績が予想以上、青=予想未達、黄=最新会社予想。赤字予想は「損失が予想より縮小したか」を100%基準に換算しています。
経常利益の会社予想と実績経常利益会社予想と通期実績(2027/2は最新会社予想)会社予想実績-1,000-625-250125500△34△318.62022/3達成率 -737.1%120△352.82023/3達成率 -294.0%△247△236.22024/3達成率 104.4%77△932025/3達成率 -120.8%382△550.72026/2達成率 -144.2%382027/2最新会社予想単位:百万円
赤=実績が予想以上、青=予想未達、黄=最新会社予想。赤字予想は「損失が予想より縮小したか」を100%基準に換算しています。
純利益の会社予想と実績純利益会社予想と通期実績(2027/2は最新会社予想)会社予想実績-1,000-625-250125500△55△348.72022/3達成率 -434.0%86△427.82023/3達成率 -497.4%△335△361.42024/3達成率 92.1%48△79.92025/3達成率 -166.5%240△600.52026/2達成率 -250.2%382027/2最新会社予想単位:百万円
赤=実績が予想以上、青=予想未達、黄=最新会社予想。赤字予想は「損失が予想より縮小したか」を100%基準に換算しています。
EPSの会社予想と実績EPS会社予想と通期実績(2027/2は最新会社予想)会社予想実績-10-50510△0.88△5.552022/3達成率 -427.6%1.38△5.822023/3達成率 -421.3%△5.87△4.92024/3達成率 116.5%0.65△0.882025/3達成率 -135.6%7.4△5.322026/2達成率 -71.8%0.662027/2最新会社予想単位:円
赤=実績が予想以上、青=予想未達、黄=最新会社予想。赤字予想は「損失が予想より縮小したか」を100%基準に換算しています。
指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年2月期2027年2月期
会社予想実績達成率会社予想実績達成率会社予想実績達成率会社予想実績達成率会社予想実績達成率会社予想実績達成率
売上高
(百万円)
967737.276.2%1,166553.947.5%592592.9100.1%1,534897.558.5%3,00165922.0%1,332最新予想
営業利益
(百万円)
23△260.9-1134.2%123△349-283.8%△230△216.5105.9%81△96.6-119.3%386△559-144.8%48最新予想
経常利益
(百万円)
△34△318.6-737.1%120△352.8-294.0%△247△236.2104.4%77△93-120.8%382△550.7-144.2%38最新予想
親会社株主帰属純利益
(百万円)
△55△348.7-434.0%86△427.8-497.4%△335△361.492.1%48△79.9-166.5%240△600.5-250.2%38最新予想
EPS(1株当たり当期純利益)
(円)
△0.88△5.55-427.6%1.38△5.82-421.3%△5.87△4.9116.5%0.65△0.88-135.6%7.4△5.32-71.8%0.66最新予想

達成率は、黒字・正数予想では実績÷予想、赤字予想では「損失が予想より縮小した場合に100%超」となるよう換算しています。レンジ予想はなく、中央値の適用対象はありません。

2.達成・未達理由
2022年3月期全5指標が未達
売上 76.2%営業利益 -1134.2%経常利益 -737.1%純利益 -434.0%EPS -427.6%

最初の数値予想では、緊急事態宣言解除後のイベント再開と、延期されていた設計・工事請負契約の成約を見込みました。しかし第4四半期にオミクロン株でイベント中止・延期が再発し、アカデミー会員獲得と契約件数が低迷。資材高騰で別荘・ホテル等の計画見合わせも発生し、PROTO BANK Stationの浸透も計画を下回りました。株式交付費や減損・訴訟和解金も経常・純利益を押し下げました。

2023年3月期全5指標が未達
売上 47.5%営業利益 -283.8%経常利益 -294.0%純利益 -497.4%EPS -421.3%

建設資材高騰で見積調整が長期化し、プロデュース案件では延期・中止・規模縮小が発生。イベント来場からアカデミー会員、PLANNING COURSE、工事請負・設計契約への転換が伸びず、PROTO BANKの加盟件数やALIN関連の顧客紹介契約も計画を大きく下回りました。売上の大幅下振れに加え、ソフトウェア・展示場の減損と原状回復費用が純損失を拡大しました。

2024年3月期5指標中4指標を達成
売上 100.1%営業利益 105.9%経常利益 104.4%純利益 92.1%EPS 116.5%

期首予想は未定で、初めて数値予想を出したのは2024年3月12日と期末直前でした。売上はほぼ予想通り、販管費削減により営業・経常損失は予想より縮小。一方、実際の特別損失は減損や原状回復費用など127.1百万円となり、予想時に織り込んだ特別損失を上回ったため、親会社株主帰属純損失は予想より悪化しました。

2025年3月期全5指標が未達
売上 58.5%営業利益 -119.3%経常利益 -120.8%純利益 -166.5%EPS -135.6%

初期計画は3セグメント化による収益構造転換を前提としましたが、資本業務提携した3社の収益が当期連結に反映されず、新株予約権の行使遅延で事業資金調達も後ずれ。「暮らし関連事業」の立ち上げ準備にも想定以上の時間を要し、売上計上が翌期へずれ込みました。ALINの追加費用、固定資産減損36.3百万円、訴訟損失引当金61.6百万円も利益未達の要因です。

2026年2月期全5指標が未達
売上 22.0%営業利益 -144.8%経常利益 -144.2%純利益 -250.2%EPS -71.8%

各セグメントで予定プロジェクトが進まず、前期に約290百万円を計上したALIN関連売上が当期は確保できず、住まい関連でも受注額・スタジオロイヤリティが大きく減少しました。管理部門の退職を補う外部委託費などで販管費も高止まり。買収子会社の期待効果を実現できず4社を売却し、関係会社株式売却損126.95百万円、減損45.98百万円、調査委員会費18.58百万円なども純損失を拡大しました。なお初期予想は2026年3月までの12か月を対象としていたのに対し、実績は決算期変更後の11か月です。

2027年2月期最新会社予想・通期実績は未確定
売上 単純進捗 6.1%営業利益 Q1△179.5→通期48経常利益 Q1△178.6→通期38純利益 Q1△179.6→通期38EPS Q1△1.57→通期0.66

第1四半期は、新セグメント体制への移行初期で建築家提案事業・環境関連事業の受注に遅れが出ました。会社は「当期中に十分挽回できる数量」と判断し、2027年2月期の売上1,332百万円、営業利益48百万円などの通期予想を据え置いています。

売上進捗6.1%はQ1実績÷通期予想の単純進捗率です。損失から通期黒字を目指す利益指標は単純進捗率が意味を持ちにくいため、必要な黒字転換幅を併記しています。

3.事業セグメントの自信度

セグメント再編をそのまま反映し、各区分が存在した年度だけを掲載しています。原文コメントは各年度の自信度カード内にのみ掲載しています。

ASJ建築家ネットワーク事業(旧・単一セグメント)

自信度推移:中立 → 弱気 → 弱気
2022年3月期中立
スタジオ加盟件数、設計契約及び請負契約の増加を図ります。

施策への意欲は強い一方、コロナ・資材高と契約低迷を受け、実績面の裏付けは弱い。

2023年3月期弱気
現時点で業績予想を合理的に行うことは困難であるため、連結業績予想は未定といたします。

建設資材高騰と経営体制変更を理由に数値予想を出せず、慎重姿勢が明確。

2024年3月期弱気
従来のASJ建築家ネットワーク事業のみの単一セグメントでの事業展開は限界を迎えていた

単一事業モデルの限界を会社自身が明示し、翌期から3セグメントへ転換。

住まい関連事業

自信度推移:強気 → 弱気
2025年3月期強気
「住まい関連事業」の新たな事業ネットワークを構築・拡大させて参ります。

共同購買、リフォーム、海外展開まで広げる計画で成長施策は積極的。

2026年2月期弱気
従来型のASJ建築家ネットワークモデルには成長モデルを探る限界があり

受注・ロイヤリティ減、加盟増施策の不発、海外子会社も受注ゼロで自信度が低下。

暮らし関連事業

自信度推移:強気 → 弱気
2025年3月期強気
50万人規模の会員登録を目指して、暮らし関連事業の主たる事業として参ります。

家具・アート・食品等へ対象を広げ、大規模会員基盤を掲げた拡張志向。

2026年2月期弱気
いずれも期待した効果を実現することはできませんでした。

店舗開業遅延と買収子会社シナジー不発を会社が明記し、構想との差が顕在化。

投資関連事業

自信度推移:中立 → 弱気
2025年3月期中立
今後はALINプロジェクトについては機器設置工事等には関与せずに、主要設備機器販売手数料収入及びプロジェクト紹介斡旋手数料収入を計上することになります。

ALIN等に収益期待はあるが、成約時期とプロジェクト進捗への依存が大きい。

2026年2月期弱気
当連結会計期間においては実現できませんでした。

不動産・投資案件が計画通り収益化せず、ALINも当期実績を確保できなかった。

建築家提案事業(現行)

自信度推移:中立~やや強気
2027年2月期 Q1中立~やや強気
今後、継続して契約スタジオ数の修復を図り、事業利益の拡大、安定化を図ってまいります。

Q1は赤字だが、契約形態の見直しとスタジオ数回復を明確な再建策として提示。

最新判断中立~やや強気

スタジオ数回復とサービス一体化の方向性は明確。ただしQ1売上68.6百万円・セグメント損失29.95百万円で、実績による検証はこれからです。

環境関連事業(現行)

自信度推移:強気
2027年2月期 Q1強気
営業が本格化する秋以降に売上と収益の確保が期待できる状況であります。

ALIN、コルゲート、SEAG、プラチナプレミアコートで具体案件・引き合いを挙げており、会社の期待度は高い。

最新判断強気

具体商談と秋以降の収益化を明言している点は強気。ただしQ1は11.4百万円売上に対し23.94百万円のセグメント損失で、案件の成約・売上計上が最大の検証ポイントです。

海外・IT事業(現行)

自信度推移:短期は弱気/長期は強気
2027年2月期 Q1弱気(短期)
当面は業績貢献は見込んでおらず、投資先行になる事業部門ではありますが

短期収益への期待を明確に抑え、PERMITS AI等を将来の柱として育成する段階。

最新判断弱気(短期)

会社自身が当面の業績貢献を見込まないと明示。Q1のセグメント損失72.79百万円も大きく、通期達成への短期寄与は期待しにくい一方、AI・海外開発は長期オプションです。

4.最新予想信頼度
信頼度:低め ― 達成には秋以降の急回復が必要

2027年2月期会社予想は売上高1,332百万円、営業利益48百万円、経常利益38百万円、親会社株主帰属純利益38百万円。第1四半期時点で会社は予想を据え置き、「受注の遅れは当期中に十分挽回できる数量」と説明しています。一方、Q1売上の単純進捗は6.1%にとどまり、利益も大幅赤字のため、予想達成には残り9か月で大きな収益転換が必要です。

通期売上予想1,332百万円
Q1売上80.8百万円
売上単純進捗6.1%
残り売上必要額1,251.2百万円
Q1純資産△402.8百万円

達成できると判断できる条件

  • 会社が説明する建築家提案・環境関連の受注遅れが、Q2以降に契約・売上計上へ転化すること。
  • ALIN、コルゲートarchitecture、SEAG、プラチナプレミアコートの具体案件が、会社の想定どおり秋以降に収益化すること。
  • 建築家提案事業のスタジオ契約見直しとネットワーク再構築が、ロイヤリティ・案件収益の回復につながること。
  • 残り9か月で売上約1,251.2百万円を確保し、営業損益をQ1累計△179.5百万円から通期+48百万円まで約227.5百万円改善できること。

達成できない可能性を高める要因

  • Q1売上の単純進捗が6.1%と低く、環境関連も本格営業前で、案件成約・検収時期の遅れに影響されやすいこと。
  • 海外・IT事業は会社自身が「当面は業績貢献は見込んでおらず、投資先行」としており、短期の穴埋め役になりにくいこと。
  • 住宅着工減、建設コスト・金利上昇が続き、建築家提案事業の需要回復に外部環境の逆風があること。
  • Q1末純資産は△402.8百万円で、継続企業の前提に関する重要な不確実性が記載されており、資金・固定費面の余裕が小さいこと。

収益計上時期の見方

過去の開示では工事請負契約等が3月に増え第4四半期へ売上が集中する傾向が説明されており、最新Q1でも環境関連は「秋以降」の売上・収益確保を見込んでいます。そのためQ1を4倍する単純年率換算は適切ではありません。ただし、現行3セグメントへ刷新された直後で過去の季節性をそのまま適用できず、後半偏重だけで進捗の低さを正当化することもできません。

総合判断

現時点では「達成可能性はあるが、信頼度は低め」と判断します。売上では残り約1,251.2百万円、営業利益ではQ1から約227.5百万円、経常利益では約216.6百万円、純利益では約217.6百万円の改善が必要です。環境案件の秋以降の収益化とスタジオ網再建が同時に進めば達成余地がありますが、受注遅延が続く、環境案件の検収が後ずれする、固定費負担が下がらない場合は未達リスクが高いと見ます。

MID-TERM MANAGEMENT PLAN ANALYSIS

6085|アーキテクツ・スタジオ・ジャパン

最新中期経営計画「フェニックス」分析|2027年2月期〜2030年2月期

中期経営計画 フェニックス 公表:2026年6月5日 東証グロース 6085 調査基準:2026年8月26日
ASJの新中計は、前経営体制で進めた「暮らし関連」「投資関連」への事業多角化を大幅に見直し、 約3,000名の建築家ネットワークを中心に「建築家提案」「環境関連」「海外・IT」の3事業へ再構築する計画です。 2030年2月期には売上高47.31億円、営業利益10.50億円を目指しており、 特に環境関連事業の急拡大が計画達成を左右する構造になっています。
2030年2月期 売上高目標 47.31億円 2026年2月期実績 6.59億円から約7.2倍
2030年2月期 営業利益目標 10.50億円 2026年2月期 ▲5.59億円から黒字転換・拡大
2030年2月期 営業利益率 約22.2% 営業利益÷売上高による計算値
STUDIO運営会社目標 150社 現状67社からネットワークを再拡大

① 会社が掲げる目標業績数字

年度 2026/2期 実績 2027/2期 計画 2028/2期 計画 2029/2期 計画 2030/2期 計画
売上高 659百万円 1,334百万円 2,215百万円 3,383百万円 4,731百万円
売上総利益 339百万円 758百万円 1,001百万円 1,593百万円 2,250百万円
販売管理費 898百万円 710百万円 900百万円 1,050百万円 1,200百万円
営業利益 ▲559百万円 48百万円 101百万円 543百万円 1,050百万円
数値面のポイント: 2026年2月期の売上高659百万円から2030年2月期4,731百万円への増収計画は、 4年間の単純計算で年平均約63.7%の売上成長に相当します。 2030年2月期は売上総利益2,250百万円に対し販管費1,200百万円とし、 営業利益1,050百万円を確保する構造です。

事業別の売上計画

事業・サービス 2027/2期 2028/2期 2029/2期 2030/2期
建築家提案:NT事業本部 380百万円 470百万円 500百万円 520百万円
建築家提案:PD事業本部 150百万円 190百万円 200百万円 210百万円
コルゲートarchitecture 303百万円 1,002百万円 1,500百万円 2,001百万円
新技術(床・窓コート) 351百万円 303百万円 503百万円 900百万円
ALIN 100百万円 200百万円 600百万円 1,000百万円
海外・IT事業 50百万円 50百万円 80百万円 100百万円
計画構造の分析: 2030年2月期の環境関連事業は、コルゲートarchitecture 20.01億円、 床・窓コート9億円、ALIN 10億円の合計約39.01億円。 全社売上47.31億円の約82%を占める計画です。 したがって、この中計は「既存の建築家事業の回復」以上に、 環境関連商材を短期間で全国展開できるかが最大の業績ドライバーと考えられます。

② 目標達成へのロードマップ

1

建築家提案事業の再構築

ASJの原点である建築家ネットワークと加盟工務店のSTUDIO網を再生し、 安定収益基盤を作り直します。

  • 複数に分かれていた加盟ルートを一本化
  • PLANNING COURSE、PROTO BANK、環境商材等を加盟工務店が横断利用できる仕組みに変更
  • STUDIO運営会社数を67社から2030年2月期150社へ回復
  • 住宅市場縮小を踏まえ、首都圏を中心としたラグジュアリー住宅市場を重点化
  • PROTO BANKへAI機能を組み込み、建築家住宅のDXを進める
2

環境関連事業を最大の成長エンジンへ

建築家・工務店ネットワークに環境技術を載せることで、 既存プラットフォームをBtoB市場にも展開します。

  • 亜臨界水処理「ALIN」を自治体・食品・産廃・セメント等へ展開
  • コルゲートarchitectureを低コスト・省人化建築として全国展開
  • SEAGシールによる窓の省エネ市場開拓
  • プラチナプレミアコートによる清掃・メンテナンス省力化市場開拓
  • 環境事業の社内営業要員を従来3名から10名体制へ拡充
3

海外・IT/AIの事業化

カナダのPermits AIと既存のPROTO BANKを軸に、 建築設計・許認可プロセスのAI化と海外市場開拓を進めます。

  • Permits AIを完全子会社化しAI都市設計プラットフォームを共同開発
  • 設計・用途地域・法規確認等をAIで支援するワークフローを構築
  • ニュージーランドでPROTO BANKの展開を推進
  • 将来的に都市シミュレーションや地理空間データを組み合わせる
  • 現段階では収益規模を抑え、開発進捗に応じて計画を修正する方針

STUDIO再拡大のKPI

年度 現状 2027/2期 2028/2期 2029/2期 2030/2期
STUDIO運営会社数 67社 85社 110社 135社 150社

環境関連事業の販売網拡大

KPI 2027/2期 2028/2期 2029/2期 2030/2期
代理店数 5社 10社 15社 20社
環境関連事業売上高 754百万円 1,505百万円 2,603百万円 3,901百万円

財務基盤強化策

中計では事業成長だけでなく財務基盤の立て直しも重要テーマとされています。 具体策として、①事業シナジーのある企業との資本・業務提携、 ②旧経営陣関連子会社の売却等による整理、③リストラクチャリング、 ④新規事業を促進する人材配置・採用、⑤販管費の見直し・圧縮、 ⑥金融機関との関係強化を掲げています。

③ 目標達成上の主なリスク

中期経営計画では「事業遂行上の重要なリスクと対応方針」を明示しています。 特に資金調達、継続企業の前提、環境関連の新規商材の販売進捗は、 中計の実現可能性を見るうえで重要度が高い項目です。
リスク 可能性 / 時期 影響度 会社の主な対応
収益構造・STUDIO新規加盟 低 / 不明 建設会社へのリクルート活動を継続し、新規加盟を促進
加盟建設会社の経営悪化・離脱 中 / 不明 SVによる加盟会社の企画・運営支援を強化
小規模組織・人材確保 低 / 中長期 従業員の質向上、処遇・労務面の対応
情報システム障害 低 / 中長期 基幹システムの障害防止策を実施
継続企業の前提に関する重要な不確実性 低 / 中長期 有価証券報告書に記載した改善策を実施
資金調達 高 / 中長期 中計達成、資本・業務提携等を通じた財務体質改善
環境関連の新規商材 低 / 中長期 代理店・提携先・加盟建設会社との情報共有と販売方法の改善
M&A投資 低 / 中長期 事業計画検証、デューデリジェンス、投資後モニタリングを徹底

達成可能性を見るうえでの注目点

  • 環境事業への依存度が非常に高い: 2030年2月期売上の約82%を環境関連事業が担う設計であり、 コルゲート、ALIN、床・窓コートの案件獲得が想定通り進むことが大前提です。
  • STUDIO網の回復が既存事業と環境事業の双方に効く: STUDIOを67社から150社へ増やすことは、従来の建築家住宅だけでなく、 環境商材の販売チャネル拡大にも利用する計画です。
  • 収益性改善幅が大きい: 2026年2月期の営業損失5.59億円から2030年2月期営業利益10.50億円への転換を目指しており、 売上成長と同時に固定費・販管費コントロールを成功させる必要があります。
  • 資金繰りが事業成長より先に重要になる可能性: 会社自身が資金調達リスクの顕在化可能性を「高」、影響度を「大」としています。 成長投資を継続するには資本・業務提携や金融機関との関係強化が重要です。

直近進捗の確認

項目 2027/2期 中計 最新会社予想 2027/2期 1Q実績
売上高 1,334百万円 1,332百万円 80百万円
営業利益 48百万円 48百万円 ▲179百万円
2026年7月15日発表の2027年2月期第1四半期時点でも、 通期の営業利益48百万円という黒字化予想は据え置かれています。 一方、1Q売上高は80百万円で、最新通期売上予想1,332百万円に対する単純進捗率は約6.0%。 建築家提案事業や環境関連事業で案件の受注時期が後ろ倒しとなっているため、 第2四半期以降、とりわけ環境関連事業の案件が実際に売上計上へ移行するかが短期的な確認ポイントです。
総括: 「フェニックス」は、過去のM&A中心の多角化路線から離れ、 ASJ本来の建築家ネットワークを土台に環境技術とAIを組み合わせる再建・成長計画です。 2030年2月期の営業利益10.5億円という目標は大きなアップサイドを示す一方、 売上高を4年間で約7.2倍へ拡大する非常に高い成長前提を置いています。 そのため、評価の中心は「環境関連事業の受注実績」「STUDIO加盟数」「資金調達・財務改善」 の3点を継続的に確認することになります。
主出典:アーキテクツ・スタジオ・ジャパン株式会社 「事業計画及び成長可能性に関する事項/中期経営計画フェニックス」 (2026年6月5日公表)、2027年2月期第1四半期決算短信。 金額は原則として会社開示資料記載の百万円単位を使用。 営業利益率・構成比・成長率は開示数値を基に算出しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました