6875 メガチップス

メガチップス 6875 東証P

MegaChips Corporation|システムLSIを中核に、顧客専用LSIであるASIC、汎用用途向けLSIであるASSP、通信モジュールを展開するファブレス半導体メーカー。
※2026年7月5日時点の情報

事業内容

2026年7月5日の時価総額は約2,051億円。2026年7月3日終値10,770円と、2026年3月期末の発行済株式数19,046,900株を基準にした概算値である。

メガチップスは1990年4月4日設立、本社は大阪市淀川区宮原1丁目1番1号 新大阪阪急ビル。代表者は代表取締役社長の肥川哲士氏、決算期は3月、上場市場は東京証券取引所プライム市場。事業内容は、独自のアナログ・デジタル技術をベースに、LSIの設計、開発から生産までトータルソリューションを提供すること。自社工場を持たず、国内外のファウンドリを活用するファブレスモデルを採る。

2026年3月期は売上高36,169百万円、営業損失174百万円、経常利益1百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9,284百万円。OA機器や産業機器分野の市場需要回復は鈍く、売上高は前期比14.5%減少し営業赤字となった一方、SiTime Corporation株式の一部売却による投資有価証券売却益15,150百万円を計上し、最終利益は前期比72.8%増となった。2027年3月期会社予想は、2026年5月20日時点の修正後で売上高42,000百万円、営業利益2,500百万円、経常利益2,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益33,000百万円。

単一事業セグメントと全社業績推移

メガチップスは単一の事業セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行われていない。2022年3月期から2026年3月期にかけて売上高は75,256百万円から36,169百万円へ減少し、営業損益は2022年3月期の7,030百万円の黒字から2026年3月期は174百万円の赤字となった。
単一事業セグメント 全社業績推移(単位:百万円)
85,000 62,500 40,000 17,500 △5,000 2022 2023 2024 2025 2026 75,256 70,722 57,942 42,326 36,169 7,030 6,029 5,483 2,190 △174 売上高営業損益
メガチップスは、決算短信上では単一事業セグメントとして開示されている。そのため、業績を読む際は、製品別セグメントの売上高ではなく、全社売上高、営業損益、開発テーマ、用途別需要、顧客分野の変化を組み合わせて判断する必要がある。

2026年3月期は、アミューズメント分野では底堅い需要が継続したものの、OA機器や産業機器分野では市場需要の回復が総じて鈍く、前期需要を下回った。営業損失174百万円には、投資有価証券売却益に伴う外形標準課税190百万円の影響が含まれ、これを除いた調整後の営業利益は16百万円とされている。

売上高は2022年3月期をピークに減少基調が続く。2022年3月期は売上高75,256百万円、営業利益7,030百万円であったが、2026年3月期は売上高36,169百万円、営業損失174百万円となった。売上規模の縮小に対して固定費、研究開発費、品質保証、開発体制をどのように維持するかが収益変動の中心になっている。

半導体市場全体では生成AIサーバー向けを中心に先端半導体需要が強い一方、同社の主戦場であるOA機器、産業機器、通信インフラ、アミューズメント、画像処理関連では用途ごとに需要回復の濃淡が出る。単一セグメント企業であるため、外部からは製品別採算が見えにくい。今後は、会社が中期経営方針で掲げるアミューズメント事業、ASIC事業、ASSP事業、新規事業の進捗を決算説明資料やIRコメントから継続確認する必要がある。

ASIC(顧客専用LSI)

ASICは、顧客の製品に合わせて機能、性能、品質を作り込む顧客専用LSIである。製品企画から量産検討段階まで、世界中のIPやファウンドリを活用し、企画、開発、製造、供給を一貫して支援する点が事業モデルの中心となる。
ASICは、メガチップスの中核製品群であり、顧客の最終製品に組み込まれる専用半導体である。

同社は、顧客が求める機能、性能、品質を実現するために、アナログ・デジタル技術、通信インターフェース技術、セキュリティ技術、画像処理技術を活用する。公式製品ページでは、世界中のIPやファウンドリを活用し、企画、開発、製造、供給を一貫してサポートするとされている。

ASICの特徴は、標準品を販売するだけではなく、顧客の製品設計段階から入り込む点にある。顧客の製品仕様、コスト制約、消費電力、パッケージ、量産時期、品質保証、長期供給まで関与するため、採用後は一定の継続性が生じやすい。

開発手法としては、システムコンサルティング、低消費電力設計、DFT、サブシステム活用、プロトタイプ検証、パッケージ設計、協調設計などが示されている。単なる設計受託ではなく、量産と供給を含むフルターンキー型の色彩が強い。

ソリューション領域としては、画像処理向け、OA向け、5G・光通信向け、FA向け、EOL、FPGA・ASIC転換が掲げられている。FPGAからASICへの転換は、量産数量が見込める顧客にとって、原価低減、低消費電力化、供給期間の安定化につながる可能性がある。

2026年3月期の決算短信では、ASICにおいて、産業機器分野や通信インフラ分野を中心に中長期案件の獲得に向けた活動を推進したとされている。通信分野と画像処理分野の需要は底堅く推移したが、OA機器や産業機器では在庫調整の長期化により市場需要の回復が緩やかだった。

ASICは採用までの開発期間が長く、NRE的な開発収入と量産後の製品売上のタイミングがずれる。大型案件を獲得しても、売上・利益に反映されるまで時間差が出る。逆に、既存顧客向け製品が端境期に入ると、短期業績は大きく落ち込みやすい。

中期経営方針では、アミューズメント事業とASIC事業を柱として事業ポートフォリオを強化する方針が示されている。ASICは、同社の技術蓄積、顧客密着型開発、ファブレス調達網を最も活かしやすい領域である。

ASSP(汎用用途向けLSI)

ASSPは、通信、インターフェース、IoT用途を中心に、複数顧客へ展開できる汎用用途向けLSIである。Wi-Fi HaLow、Nessum、100BASE-T1 Ethernet PHY、100BASE-TX 2ch Ethernet PHYなどが製品群として示されている。
ASSPは、ASICよりも標準品に近い製品群であり、特定用途向けに横展開できる半導体である。

メガチップスのASSPページでは、社会インフラ、道路、水道、ガス、電力、産業、漁業、FAなど、幅広いDXを可能にする通信ソリューションを目指すとされている。デバイス単体だけでなく、顧客の要望に応じた通信モジュール形態でも提供する。

無線通信では、Wi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)対応トランシーバーSoCが中心となる。Wi-Fi HaLowは、長距離通信、低消費電力、大容量通信を特徴とするIoT向け通信技術であり、電池駆動機器、屋外センサー、監視、インフラ点検、スマートメーター、産業機器などで利用余地がある。

同社は、Morse Micro社製Wi-Fi HaLow ICの日本国内における製造販売パートナーとされている。自社技術だけでなく、海外半導体企業との協業を通じて国内顧客向けに製品化する点が、ファブレス企業としての柔軟性を示す。

有線通信では、Nessum、100BASE-T1 Ethernet PHY、100BASE-TX 2ch Ethernet PHYが掲載されている。NessumはIEEE 1901シリーズに対応し、既存配線の高速化にも対応可能とされている。100BASE-T1 Ethernet PHYは、一対のUTPケーブルで100Mbps通信を可能にし、省配線、小面積、軽量・低コストのワイヤハーネスを訴求する。

100BASE-TX 2ch Ethernet PHYは、2ポートEthernet通信を1チップで実現する製品であり、産業機器コントローラーの省面積化が用途となる。産業機器、FA、インフラ、通信機器では、長期供給、耐久性、認証対応、顧客サポートが重要になるため、単純なチップ性能だけでなく、量産後の供給継続力が競争力となる。

2026年3月期の決算短信では、ASSPについて、AI、IoT、5G、次世代通信の進展を背景に成長分野へのシフトを加速していると記載されている。通信分野では、長距離・低消費電力の無線通信技術を活用したLSI開発を進め、幅広い通信ソリューションの提供を進めている。

中期経営方針では、ASSP事業の収益化が課題として明記されている。ASSPは製品化後に複数顧客へ展開できれば利益率改善が期待できる一方、開発先行費用、採用までの時間、標準品競争の価格圧力が発生する。今後はWi-Fi HaLow、Nessum、Ethernet PHYの採用件数と量産規模が重要になる。

モジュールとファブレス生産モデル

モジュール事業は、半導体製品で磨いたコア技術を基に、顧客要望に応じたモジュール製品を提供する領域である。ファブレスモデルでは、自社工場を持たず、国内外のファウンドリやパートナー企業を活用して生産体制を構築する。
モジュールは、半導体チップを顧客が使いやすい形に変換する事業である。公式製品ページでは、同社およびパートナー企業の半導体製品のモジュール試作を行い、顧客が評価できる環境を整えるとされている。

モジュールサービスの特徴は、顧客の製品イメージや製品アイデアからコンセプト、モジュール仕様を検討し、製造までを一貫サポートする点である。半導体チップ単体を販売するよりも、顧客の開発負荷を下げ、評価、認証、量産移行を早める役割を持つ。

製品面では、Wi-Fi HaLow対応モジュールが掲載されている。モジュール製品は、各種規制に則った試験に合格した量産品として提供されるほか、評価用モジュールも用意される。通信チップを顧客がすぐ評価できる状態で提供することは、採用拡大の入口になりやすい。

ファブレスモデルは、メガチップスの事業構造を理解するうえで重要である。同社は自社工場を持たず、製造を国内外の専門会社に委託する。これにより、顧客の要望や製品性能に合わせて、世界中から最適な設備や生産技術を選べる。

ファブレスモデルの利点は、重い設備投資を抑え、研究開発、マーケティング、設計、顧客対応に経営資源を集中できる点である。一方で、ファウンドリの生産能力、先端プロセスの確保、外注コスト、為替、地政学リスクの影響を受けやすい。

メガチップスは、LSI知識とアプリケーション知識を融合し、顧客課題を解決するシステムLSIを生み出すことを事業コンセプトとしている。設計資産、IP活用、生産プロセス提案、物理設計、システム設計、技術トレンドに基づく付加機能提案、コスト優位への代替手法提案が事業モデルに含まれる。

2026年3月期は本業収益が弱かったが、同社はSiTime Corporation株式の売却益や保有有価証券を背景に、財務余力を持つ。今後は、手元資金と投資有価証券の価値を、ASIC、ASSP、モジュール、新規事業の成長投資へどう振り向けるかが重要になる。

直近5年業績サマリー

業績項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期
会社予想・直近指標
売上高
百万円
75,256 70,722△6.0% 57,942△18.1% 42,326△27.0% 36,169△14.5% 42,000+16.1%
営業損益
百万円
7,030 6,029△14.2% 5,483△9.1% 2,190△60.1% △174赤字転落 2,500黒字転換
経常損益
百万円
7,857 7,311△6.9% 3,456△52.7% 2,608△24.5% 1△100.0% 2,000+1,999百万円
当期純利益
百万円
27,544 7,086△74.3% 4,486△36.7% 5,371+19.7% 9,284+72.8% 33,000+255.5%
EPS
円・最新発行済株式数で再計算
1,446.11円 372.03円 235.52円 281.99円 487.43円 1,732.57円
PER
2.61倍 8.79倍 16.45倍 15.55倍 15.61倍 6.22倍2026年7月3日終値10,770円基準
PBR
1.07倍 0.84倍 0.72倍 0.71倍 0.78倍 1.10倍2026年3月期BPSと7月3日終値基準
BPS
円・最新発行済株式数で再計算
3,540.10円 3,913.24円 5,390.54円 6,207.89円 9,747.89円
純資産
百万円
67,428 74,535+10.5% 102,673+37.8% 118,241+15.2% 185,667+57.0%
営業CF
百万円
△195 1,241+1,436 8,160+6,919 △3,726△11,886 5,297+9,023
投資CF
百万円
20,018 △5,520△25,538 214+5,734 3,590+3,376 10,067+6,477
財務CF
百万円
△16,534 △1,738+14,796 △5,392△3,654 △7,511△2,119 △18,014△10,503
現金及び現金同等物
百万円
25,769 20,717△19.6% 25,160+21.4% 17,547△30.3% 15,321△12.7%

中期経営計画

中期経営方針 2026年5月14日更新

メガチップスは、中期経営計画の名称ではなく「中期経営方針」として、2026年5月14日更新の方針を公表している。中長期の経営期間では、事業戦略と財務戦略を両輪として推進し、事業収益力の強化と自己資本の適正化を図り、企業価値向上を目指すとしている。

事業戦略では、アミューズメント事業とASIC事業を柱として事業ポートフォリオを強化するとともに、ASSP事業の収益化、次世代を担う新たな事業の育成に注力する方針である。2026年度より業績を成長軌道に乗せることを掲げている。

中長期目標は、売上規模800億円の到達、事業収益として営業利益100億円の創出、事業収益力として営業利益率10%以上の達成である。2026年3月期実績は売上高361億円、営業損失1億円であり、この目標に対しては売上規模の再拡大と営業利益率の回復が大きな課題となる。

2027年3月期の修正後会社予想は、売上高420億円、営業利益25億円、経常利益20億円、親会社株主に帰属する当期純利益330億円。最終利益にはSiTime Corporation株式売却益の影響が大きく含まれるため、本業の回復を見るうえでは営業利益25億円の達成度が焦点となる。

財務戦略では、SiTime Corporation株式の価値や売却による資金をどのように成長投資、株主還元、自己資本の適正化に振り向けるかが重要になる。事業戦略面では、ASIC案件の獲得、ASSP製品の量産採用、モジュール製品の横展開、新規事業の収益化が中期目標達成の鍵となる。

中期経営方針へ

競合他社

1 ルネサス エレクトロニクス 6723
時価総額は約9.0兆円。株価は2026年7月3日終値で4,820円。

ルネサス エレクトロニクスは、マイコン、SoC、アナログ半導体、パワー半導体、通信・接続関連半導体を展開する日本最大級の半導体メーカーである。車載、産業、インフラ、IoT、民生機器まで製品領域が広く、メガチップスと比べて製品ポートフォリオと顧客基盤が大きい。

メガチップスとの競合は、組込み向けSoC、ASICおよびIP関連サービス、アナログ・ミックスドシグナルLSI、通信・接続用半導体、画像・映像・表示・インターフェース関連半導体で発生する。顧客が専用ASICではなく、標準マイコン、SoC、通信IC、パワーICを組み合わせて製品を設計する場合、ルネサス製品がメガチップスの受注機会を代替する可能性がある。

2025年12月期の業績は、売上収益1兆3,212億円、IFRS営業利益2,012億円、Non-GAAP営業利益3,869億円。会計上は減損等の影響により親会社所有者帰属損失を計上したが、Non-GAAPベースでは高い利益水準を維持している。

ルネサスは標準品とソフトウェア、開発環境、評価ボード、リファレンスデザインを組み合わせて広い顧客層に提案できる。メガチップスのASICフルターンキー型モデルとは異なるが、顧客の製品開発を半導体から包括的に支援する点で強力な競合となる。
2 ソシオネクスト 6526
時価総額は約5,173億円。株価は2026年7月3日終値で2,874円。

ソシオネクストは、カスタムSoC、ASIC、システム設計、量産支援を主力とするファブレス半導体企業である。「Solution SoC」を掲げ、顧客の製品開発初期段階から参画し、システム設計、SoC設計、量産、品質管理までを一貫して支援する。

メガチップスとの競合関係は非常に直接的である。両社とも、顧客専用LSI、ASIC、カスタムSoC、開発段階の収入、量産移行後の製品売上を重要な収益源としている。特に、車載、産業機器、通信インフラ、データセンター、ネットワーク、スマートデバイス向けのASIC案件で比較対象になりやすい。

2026年3月期の業績は、売上高2,008億34百万円、営業利益123億54百万円、経常利益117億56百万円、親会社株主に帰属する当期純利益87億33百万円。売上高は増加したが、NRE売上の減少や新規量産製品の利益率低下により大幅減益となった。

ソシオネクストは、高度なカスタムSoC案件や大規模SoC案件に強く、メガチップスはアミューズメント、通信ASSP、特定顧客向けLSIで特徴を持つ。顧客の製品開発段階から入り込む点が共通しており、案件単位で競合する可能性が高い。
3 ザインエレクトロニクス 6769
時価総額は約139億円。株価は2026年7月3日終値で1,124円。

ザインエレクトロニクスは、ミックスドシグナルLSI、高速インターフェースLSI、画像処理LSI、カメラ関連製品、AI・IoTソリューションを展開するファブレス半導体企業である。企業規模はメガチップスより小さいが、画像処理、映像伝送、インターフェース、OA、アミューズメント、車載カメラ、産業機器向けLSIで競合性が高い。

主な製品・サービスは、V-by-One HS、LVDS、USB関連インターフェース、高速インターフェースLSI、画像信号処理LSI、カメラ開発キット、光通信関連チップセット、無線通信モジュールなど。メガチップスの画像処理LSI、通信LSI、OA・アミューズメント向けASICと用途が重なる。

2025年12月期の業績は、売上高46億39百万円、営業損失3億42百万円、経常損失4億03百万円、親会社株主に帰属する当期純損失3億34百万円。研究開発費の増加もあり営業赤字となった。

ザインエレクトロニクスは、メガチップスと比較すると企業規模や供給力では限定的だが、高速インターフェース、画像・映像処理、カメラ関連ASSPでは局地的に強い。顧客が専用ASICではなく既存ASSPを採用する場合、同社製品が競争相手となる。

強みと将来性

顧客密着型ASIC、ファブレス柔軟性、財務余力
メガチップスの強みは、システムLSIに関する技術知識と、顧客の最終製品・アプリケーション知識を組み合わせられる点である。公式ページでは、LSI知識とアプリケーション知識を融合し、顧客の課題解決や競争力向上に貢献するシステムLSIを生み出しているとされている。

ASICでは、顧客の製品企画から量産検討段階まで入り込み、設計資産、IP、ファウンドリ、パッケージ、品質保証、長期供給まで関与する。顧客が一度専用LSIを採用すると、製品ライフサイクルの途中で半導体を切り替える難度が高く、量産期間中は継続的な売上につながりやすい。

ファブレスモデルも強みである。自社工場を持たないため、重い製造設備投資を抱えず、研究開発、マーケティング、顧客対応、設計に経営資源を集中できる。製品ごとに最適なファウンドリやIPを選べるため、顧客仕様に合わせた柔軟な提案がしやすい。

ASSPとモジュールでは、Wi-Fi HaLow、Nessum、Ethernet PHYなど、通信・IoT領域で横展開可能な製品群を持つ。ASICは顧客別の個別案件になりやすいが、ASSPが複数顧客へ採用されれば、開発費の回収効率が高まり、営業利益率改善につながる可能性がある。

財務面では、SiTime Corporation株式の売却益と保有投資有価証券の評価額が企業価値に大きな影響を与えている。2026年3月期末の純資産は185,667百万円となり、前期末から大きく増加した。2027年3月期会社予想でも、SiTime株式売却に伴う投資有価証券売却益が織り込まれている。

将来性の焦点は、財務余力を本業成長へどう転換するかである。中期経営方針では、売上規模800億円、営業利益100億円、営業利益率10%以上を掲げる。現在の売上水準から見ると高い目標だが、アミューズメント事業とASIC事業の回復、ASSPの収益化、新規事業の育成が進めば、営業利益の再拡大余地はある。

株価面では、2026年3月期末株価7,610円から2026年7月3日終値10,770円まで大きく上昇している。市場は、SiTime株式売却益、自己株式取得、財務余力、次期以降の利益水準を織り込み始めている。今後は、本業営業利益が中期目標へ向けてどの程度回復するかが、評価継続の条件になる。

弱みとリスク要因

本業収益の低下、単一セグメントの見えにくさ、投資有価証券依存
最大の弱みは、本業収益が足元で大きく低下している点である。2022年3月期に75,256百万円あった売上高は、2026年3月期に36,169百万円まで減少した。営業利益も7,030百万円から174百万円の営業損失へ落ち込んでいる。

2026年3月期は、アミューズメント分野の底堅さはあったが、OA機器や産業機器分野の需要回復が鈍かった。メガチップスは顧客製品の開発・量産サイクルに深く組み込まれるため、顧客側の製品端境期、在庫調整、需要減少が短期業績に直撃しやすい。

単一事業セグメントであることも、投資判断上の難点である。ASIC、ASSP、モジュール、アミューズメント、OA、産業機器、通信インフラなど、用途別の収益構造を外部から細かく把握しにくい。どの製品群が利益を生んでいるか、どの開発テーマが赤字要因かが見えにくいため、決算説明資料や会社コメントを補完して読む必要がある。

2026年3月期の最終利益9,284百万円は、SiTime Corporation株式の一部売却による投資有価証券売却益15,150百万円が大きく寄与している。2027年3月期予想でも、投資有価証券売却益約480億円を織り込む形で純利益33,000百万円が見込まれている。これは株主資本の増加や還元原資にはなるが、本業の稼ぐ力とは別に評価する必要がある。

投資有価証券の評価額もリスクになる。2026年3月期末はSiTime株式の株価上昇により投資有価証券が大きく増加したが、保有株式の市場価格が下落すれば、純資産、自己資本、PBR評価、売却益の見通しに影響する。株式市場の変動が財務指標へ反映されやすい。

ファブレスモデルには、柔軟性と同時に外部委託リスクがある。ファウンドリの生産能力、ウェーハ価格、パッケージ・テスト工程、為替、地政学、輸出規制、調達先の品質問題が発生した場合、納期や原価に影響する。自社工場を持たないため、製造キャパシティの優先順位やコスト交渉力は外部パートナーとの関係に左右される。

競合面では、ルネサスが標準品とソリューションで包括的に競合し、ソシオネクストがASIC・カスタムSoCで直接競合し、ザインエレクトロニクスが画像・インターフェースASSPで局地的に競合する。メガチップスは、顧客密着型開発と特定用途の技術で差別化できなければ、価格、開発費、量産規模、供給力で大手に押されるリスクがある。

出典

本ページは、企業が公表する決算短信、公式IR資料、公式事業ページ、提供された期末株価情報をもとに作成した分析情報であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載情報は作成時点の確認内容に基づくものであり、将来の業績、株価、配当、企業価値を保証するものではありません。投資判断は必ず最新の会社公表資料、取引所開示、各種リスク情報を確認したうえで行ってください。

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