キャンバス 4575東証G
事業内容
株式会社キャンバスは2000年1月18日設立、本社は静岡県沼津市大手町二丁目2番1号。代表者は河邊拓己、6月決算、東証グロース上場。事業内容は抗癌剤の研究開発であり、医薬品事業の単一セグメント。
2025年6月期は事業収益なし、営業損失1,109百万円、経常損失1,156百万円、当期純損失1,157百万円。2026年6月期第3四半期累計は事業収益なし、営業損失916百万円、経常損失873百万円、四半期純損失873百万円。2026年6月30日に公表された2026年6月期通期業績予想は、事業収益なし、営業損失1,258百万円、経常損失1,220百万円、当期純損失1,222百万円。
医薬品事業
医薬品事業は、抗がん剤候補化合物の創出、基礎研究、薬効薬理研究、臨床開発、提携パートナー獲得活動で構成される。
現時点で承認済み医薬品の販売収益はなく、収益化の主な可能性は、製薬企業等との提携契約、一時金、マイルストーン収入、ロイヤルティ、または自社開発による上市後収益である。
創薬バイオの収益構造として、研究開発費が先行し、事業収益は臨床試験データ、規制当局対応、導出交渉の成否に左右される。
そのため、通常の製造業やサービス業のように、売上高成長率や営業利益率だけで評価する企業ではない。
業績表上は赤字が継続するが、投資判断上は、主力パイプラインの臨床開発段階、試験デザイン、主要評価項目、規制当局との協議、提携交渉、資金調達余力が重要になる。
2026年6月期は、CBP501の欧州臨床第3相試験開始申請に伴う当局対応・規制対応及び準備費用が大きい。
研究開発費は2026年6月期会社予想で962百万円、うち臨床開発費736百万円が見込まれている。
事業収益は、提携契約やマイルストーン達成の予測が困難なため、現時点では計上を見込まない前提。
2025年6月期末の現金及び現金同等物は2,827百万円であり、2026年6月期第3四半期末は1,765百万円。
現預金の減少ペース、臨床試験費用、追加資金調達の有無、既存株主の希薄化リスクが、株価変動の中心論点となる。
医薬品事業の評価では、単年度の赤字幅だけでなく、開発ステージの進行に対して資金消費が妥当か、開発価値が資金調達コストを上回るかを確認する必要がある。
CBP501
CBP501は、キャンバス独自のコンセプトに基づいて創出された抗がん剤候補化合物。
公式パイプラインでは「免疫着火剤」と位置づけられている。
当初はG2チェックポイント阻害剤と呼称されていたが、臨床試験データの解析と追加研究により、がん微小環境、がん免疫、がん幹細胞などに関わる広範な作用が示され、免疫コールドながんを免疫ホットへ転換する作用が説明されている。
ニボルマブなど免疫系抗がん剤との併用により薬効を高める効果が期待され、シスプラチン、ニボルマブとの3剤併用で臨床開発が進められてきた。
公式の臨床開発パイプライン一覧では、CBP501はPh2終了、被験者登録完了、主要評価項目達成の段階に位置づけられている。
対象疾患は膵臓がん3次治療であり、膵臓がんはアンメットメディカルニーズが大きく、臨床データの評価が企業価値に直結しやすい領域。
2025年6月期決算短信では、CBP501について、提携パートナーに依存せず自社で新薬承認まで進める「創薬パイプライン型」開発を志向する一方、提携パートナーの確保も進める方針が示されている。
2026年6月期の会社予想では、欧州臨床第3相試験開始申請に伴う当局対応・規制対応及び準備費用が研究開発費の大半を占める。
これは、CBP501がキャンバスの費用構造と株価材料の中心にあることを意味する。
ただし、臨床第3相へ進む局面は、開発価値が大きくなる一方で、必要資金、試験期間、症例登録、規制当局対応、試験結果未達リスクも大きくなる。
CBP501の評価では、臨床試験の開始承認、試験設計、エンドポイント、登録ペース、提携先の有無、資金調達条件を継続して見る必要がある。
CBS9106
CBS9106は、キャンバス独自のスクリーニングから得られた可逆的XPO1阻害剤。
XPO1は核外輸送に関わる蛋白質であり、CBS9106はXPO1を可逆的に阻害し、細胞周期停止とアポトーシス誘導を狙う低分子抗がん剤候補である。
2014年12月には米国Stemline Therapeutics, Inc.に対し、開発・製造・商業化にかかる全世界の独占的権利を供与するライセンス契約が締結された。
公式ページでは、米国FDAの監督下で固形癌を対象とする臨床第1相試験が2022年2月に完了したとされる。
2025年6月期決算短信では、2025年6月にCBS9106のすべての権利がキャンバスへ返還されたことが記載されている。
これにより、CBS9106は外部提携先による開発から、キャンバスが今後の開発方針を検討する状態に戻った。
権利返還は、将来の自由度を高める面がある一方、追加基礎研究、開発継続、再導出、提携先探索にかかるコストと時間を再び自社側で判断する必要がある。
現時点ではCBP501が最先行パイプラインであり、CBS9106は次相臨床試験の計画や開発方針を見極める段階。
低分子抗がん剤としての作用機序は明確だが、事業価値は追加研究成果、再提携の可能性、資金配分の優先順位に左右される。
投資判断上は、CBS9106単独で短期収益を想定するより、CBP501後のパイプライン価値、導出候補、知財資産として確認する位置づけになる。
後続パイプラインと創薬研究
キャンバスはCBP501とCBS9106に加え、後続化合物としてCBT005、CBP-A08、IDO/TDO阻害剤、AIを利用した創薬研究などを開示している。
研究開発ページでは、基礎研究、薬効薬理研究、臨床開発の各機能が説明されており、新規抗癌剤候補化合物の探索、候補化合物の最適化、作用メカニズム解析が基礎研究の中核業務とされている。
自社本社屋に簡易動物試験施設を持つ点も説明され、薬効薬理研究の機動性が特徴として示されている。
臨床開発担当は、政府当局、CRO、臨床試験薬、試験担当医師、医療機関との対応を担い、臨床試験の遂行を支える。
後続パイプラインは、主力であるCBP501に開発リスクが集中することを緩和する意味を持つ。
一方で、前臨床または探索・最適化段階の候補が多いため、短期の売上や利益には直結しにくい。
創薬ベンチャーでは、後続パイプラインの存在は中長期のオプション価値として評価されるが、資金制約が強い場合は主力候補へ経営資源を集中する必要がある。
したがって、キャンバスの後続パイプラインは、研究成果の蓄積、共同研究、早期アライアンス、知財形成の観点で見るべき領域。
CBP501の開発が進めば企業価値の中心は臨床後期へ移るが、後続化合物が育つことで、単一パイプライン依存の評価から複数パイプライン型への転換余地が生まれる。
ただし、研究開発費の増加と資金調達リスクを伴うため、後続パイプラインの拡充は財務余力とのバランスが重要となる。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 | 2026年6月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 (百万円) |
108 | ―事業収益なし | ―事業収益なし | ―事業収益なし | ―事業収益なし | ―事業収益なし |
| 営業損益 (百万円) |
△547 | △846△299百万円赤字拡大 | △965△119百万円赤字拡大 | △1,262△297百万円赤字拡大 | △1,109+153百万円赤字縮小 | △1,258△149百万円赤字拡大 |
| 経常損益 (百万円) |
△555 | △854△299百万円赤字拡大 | △1,283△429百万円赤字拡大 | △1,208+75百万円赤字縮小 | △1,156+52百万円赤字縮小 | △1,220△64百万円赤字拡大 |
| 当期純利益 (百万円) |
△531 | △855△324百万円赤字拡大 | △1,244△389百万円赤字拡大 | △1,209+35百万円赤字縮小 | △1,157+52百万円赤字縮小 | △1,222△65百万円赤字拡大 |
| EPS (円) |
△26.94最新株式数で再計算 | △43.37△16.43円悪化 | △63.10△19.73円悪化 | △61.33+1.78円改善 | △58.69+2.64円改善 | △61.99△3.30円悪化 |
| PER (倍) |
赤字 | 赤字 | 赤字 | 赤字 | 赤字 | 赤字 |
| PBR (倍) |
15.83 | 47.16 | 10.15 | 4.25 | 6.84 | ― |
| BPS (円) |
22.17最新株式数で再計算 | 12.68△9.49円△42.8% | 98.00+85.32円+672.8% | 118.70+20.70円+21.1% | 149.29+30.59円+25.8% | ― |
| 純資産 (百万円) |
437 | 250△187百万円△42.8% | 1,932+1,682百万円+672.8% | 2,340+408百万円+21.1% | 2,943+603百万円+25.8% | ― |
| 営業CF (百万円) |
△688 | △719△31百万円悪化 | △1,398△679百万円悪化 | △1,280+118百万円改善 | △771+509百万円改善 | ― |
| 投資CF (百万円) |
― | 0 | ― | ― | 0 | ― |
| 財務CF (百万円) |
728 | 282△446百万円△61.3% | 2,272+1,990百万円+705.7% | 1,538△734百万円△32.3% | 1,748+210百万円+13.7% | ― |
| 現金及び現金同等物 (百万円) |
1,154 | 737△417百万円△36.1% | 1,617+880百万円+119.4% | 1,888+271百万円+16.8% | 2,827+939百万円+49.7% | ― |
中期経営計画
事業計画及び成長可能性資料に基づく方針
キャンバスは一般的な売上高・営業利益目標を掲げる中期経営計画ではなく、創薬パイプラインの開発進捗、提携、承認取得を通じて企業価値の最大化を図る事業計画及び成長可能性資料を開示している。
2025年8月版の資料では、複数の創薬事業モデルを使い分ける方針が示されている。
CBP501は自社で承認まで開発する創薬パイプライン型開発を想定しつつ、適応や地域などの部分的導出、アライアンスも選択肢にできる状況とされる。
CBS9106は前臨床段階で導出された創薬基盤技術型開発の実績を持つが、2025年6月に全権利返還を受け、今後は追加基礎研究の成果等を踏まえて開発方針を検討する。
CBT005など後続パイプライン候補も基礎研究の成果として生み出されており、それぞれの特性に応じた開発・提携方針が論点となる。
2026年6月期会社予想では、欧州臨床第3相試験開始申請に伴う当局対応・規制対応及び準備費用が先行し、営業損失1,258百万円、当期純損失1,222百万円を見込む。
数値目標としては、短期の黒字化よりも、CBP501の臨床後期開発、規制当局対応、提携交渉、必要資金の確保が中心課題となる。
競合他社
2026年7月3日15:30時点の時価総額は約785.50億円、株価は約2,680円。
2026年12月期第1四半期は売上高3百万円、営業損失420百万円、経常損失413百万円、四半期純損失414百万円。
主力は腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシンであり、2026年6月に日本で製造販売承認を取得した。
キャンバスとの競合軸は、がん治療薬開発、臨床試験、承認・販売までの事業化、製薬会社との提携獲得、投資家による創薬バイオ評価。
技術アプローチは腫瘍溶解ウイルスと免疫着火剤で異なるが、難治がん領域の創薬バイオとして比較されやすい。
オンコリスは承認取得で先行しているため、キャンバスにとっては競合であると同時に、国内がん創薬バイオの事業化モデルとして参照される企業である。
2026年7月3日15:30時点の時価総額は約61.81億円、株価は約80円。
2026年8月期中間期は事業収益なし、研究開発費510百万円、販売費及び一般管理費152百万円、営業損失662百万円、経常損失632百万円、中間純損失633百万円。
主力パイプラインはrogocekib / CTX-712で、CLK阻害薬として米国で臨床第1/2相試験中。
キャンバスとの競合軸は、低分子抗がん剤、臨床開発段階、海外臨床試験、導出候補、製薬会社との提携、研究開発資金の確保。
キャンバスのCBP501とChordiaのrogocekibは作用機序が異なるが、製品販売前の創薬バイオとして、試験進捗とデータで企業価値が評価される点が共通する。
ChordiaはRNA制御異常ストレスに着目した低分子創薬であり、XPO1阻害剤CBS9106を持つキャンバスとは、低分子抗がん剤の新規性でも比較される。
2026年7月3日15:30時点の時価総額は約18.92億円、株価は約223円。
2026年3月期は事業収益なし、営業損失1,495百万円、経常損失1,514百万円、当期純損失1,517百万円。
主なパイプラインはDFP-10917、DFP-14323、DFP-17729、DFP-11207、DFP-14927、DFP-10825。
特にDFP-17729は末期膵臓がんを対象としており、キャンバスのCBP501と膵臓がん領域で直接比較されやすい。
キャンバスとの競合軸は、膵臓がん治療薬候補、抗がん剤候補の導出・提携、海外臨床開発、臨床データ、資金調達力。
Delta-Fly Pharmaは複数パイプライン型でリスク分散を図る一方、キャンバスはCBP501を中心とする少数重点型に近い。
したがって、比較ではパイプライン数だけでなく、最先行候補の臨床段階、資金残高、追加調達条件、症例登録状況が重要となる。
強みと将来性
キャンバスの最大の強みは、CBP501が臨床第2相を終了し、主要評価項目達成まで開示されている点。
創薬バイオの中でも、探索・前臨床段階にとどまる企業と比べ、臨床データを用いた交渉や評価が可能な段階にある。
CBP501は免疫着火剤として、免疫コールドながんを免疫ホットへ転換する作用が説明されており、免疫チェックポイント阻害剤との併用戦略を取りやすい。
膵臓がんは治療選択肢が限られ、アンメットメディカルニーズが大きい。
この領域で明確な臨床的意義を示せれば、導出、共同開発、承認申請、上市後市場のいずれにおいても企業価値への影響は大きい。
また、CBP501の開発で得た知見が、後続パイプラインや次世代CBPプロジェクトへ波及する可能性もある。
研究開発ページで示されているように、キャンバスは基礎研究、薬効薬理研究、臨床開発のサイクルを自社で回す体制を持つ。
臨床試験から得られるデータを作用メカニズム解析へ戻し、次の候補化合物創出につなげる構造は、単発のライセンス導入企業とは異なる。
財務面では2025年6月期末時点で純資産2,943百万円、自己資本比率95.4%と、借入依存度が低い状態だった。
ただし2026年6月期第3四半期末の現金及び現金同等物は1,765百万円まで減少しており、臨床後期開発を続けるには資金戦略が不可欠。
将来性は、CBP501の欧州臨床第3相試験開始申請、規制当局対応、提携交渉、資金調達条件、後続パイプラインの進展が同時に整うかで大きく変わる。
バイオ株としては、赤字継続そのものよりも、赤字を上回る開発価値を市場が確認できる開示があるかが評価の分岐点となる。
弱みとリスク要因
最大の弱みは、承認済み医薬品の販売収益がなく、2022年6月期以降は事業収益を計上していないこと。
直近5期はすべて当期純損失であり、研究開発費が先行する構造が続いている。
2026年6月期会社予想では、営業損失1,258百万円、当期純損失1,222百万円が見込まれる。
欧州臨床第3相試験開始申請に伴う当局対応・規制対応及び準備費用が先行するため、短期的な損益改善は見込みにくい。
現金及び現金同等物は2025年6月期末の2,827百万円から、2026年6月期第3四半期末に1,765百万円へ減少している。
臨床第3相へ進む場合、試験費用はさらに大きくなる可能性がある。
自社開発を続けるほどパイプライン価値は高まり得るが、その分だけ資金消費と追加調達リスクも高まる。
資金調達が新株式や新株予約権中心になれば、既存株主の希薄化が株価の重荷になる。
CBP501への依存度が高い点もリスク。
臨床試験の開始承認が遅れる、症例登録が進まない、主要評価項目を満たさない、規制当局との協議が想定どおり進まない場合、企業価値への影響は大きい。
CBS9106は権利返還により自由度が高まった一方、開発方針を再設計する段階に戻ったため、短期的な収益貢献は見込みにくい。
後続パイプラインも研究段階のものが中心で、CBP501に続く明確な臨床後期候補が育つまでには時間と資金が必要。
バイオベンチャー特有の二値的なイベントリスク、すなわち好材料で株価が急騰し、悪材料で急落する構造も強い。
投資判断では、臨床進捗の見出しだけでなく、試験設計、現金残高、月次資金消費、提携交渉の実現可能性、希薄化の規模をセットで確認する必要がある。
出典
- 株式会社キャンバス 公式サイト
- 株式会社キャンバス 企業概要
- 株式会社キャンバス 創薬
- 株式会社キャンバス 研究開発
- 株式会社キャンバス 臨床開発パイプライン一覧
- 株式会社キャンバス CBP501 免疫着火剤
- 株式会社キャンバス CBS9106 可逆的XPO1阻害剤
- 株式会社キャンバス IR情報
- 株式会社キャンバス 決算短信
- 株式会社キャンバス 適時開示資料
- 株式会社キャンバス 事業計画及び成長可能性に関するご説明資料
- オンコリスバイオファーマ IR情報
- Chordia Therapeutics 投資家情報
- Delta-Fly Pharma 決算短信

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