3512 日本フエルト

日本フエルト 3512 東証S

NIPPON FELT CO., LTD.|製紙用フェルト、製紙用ワイヤー、シュープレス用ベルト、製紙用カンバス、工業用繊維製品、不動産賃貸を展開する製紙用具メーカー。

※2026年6月29日時点の情報

事業内容

2026年6月29日の時価総額は約172億円。

日本フエルト株式会社は1917年6月30日創立、本社は東京都北区赤羽西、代表者は取締役社長の矢崎荘太郎、決算期は3月31日。東京証券取引所スタンダード市場に上場し、紙・パルプ・スレート用その他工業用フェルト、各種繊維製品、工業用洗剤、産業用機器、不動産の運用および管理を事業内容とする。

2026年3月期は売上高9,398百万円、営業利益443百万円、経常利益747百万円、親会社株主に帰属する当期純利益560百万円。売上高は前期比3.1%減となったが、営業利益は前期比121.2%増、経常利益は前期比59.7%増、当期純利益は前期比30.3%増となり、フェルト事業の収益改善が全社営業利益の反発を支えた。

フェルト事業:抄紙用具と一般工業用フェルト製品

2026年3月期のフェルト事業売上高は8,773百万円。2023年3月期の9,802百万円をピークに3期連続で減収となった一方、主力セグメントとして連結売上高の大半を占める。
フェルト事業 売上高推移(百万円)
9,244 2022 9,802 2023 9,469 2024 9,085 2025 8,773 2026 9,946 8,629

フェルト事業は、抄紙用および一般工業用フェルト製品と付随商品の生産販売を担う中核セグメントである。

製紙用具では、ワイヤーパート、プレスパート、ドライパートの各工程に対応する製品を持つ。ワイヤーパートでは、濡れた紙料をワイヤー上で受け止め、水分を瞬時に除去し、紙層を形成する。

プレスパートでは、湿紙から多くの水を搾り取るために製紙用フェルトを用いる。日本フエルトは豊富なフェルト製品のラインアップを持ち、個々の製紙マシンや操業条件に合わせたオーダーメイド設計を行う。

シュープレス用ベルトは、従来のロールプレスよりも多くの水を搾り取るシュープレスに装着される筒状の樹脂ベルトである。省エネルギー、乾燥効率、紙品質の維持に関わる消耗部材として、製紙会社の操業効率に直結する。

ドライパートでは、カンバスを通じて湿紙をドライヤー表面に保持し、効率的な乾燥を支援する。製紙工程の前段から乾燥工程まで製品領域を持つ点が、単一工程向けの部材メーカーとの違いになる。

工業用繊維製品では、アルミ押出材用の耐熱フェルト、集塵機バグフィルター用原反、建材抄造用フェルト、防縮加工機用フェルト、転写捺染用フェルト、水処理用フェルトなどを扱う。製紙用フェルトで培ったニードル加工、耐熱、耐摩耗、クッション性、濾過機能を一般産業に応用する位置付けである。

フェルト事業:セグメント利益と採算

フェルト事業のセグメント利益は2025年3月期506百万円から2026年3月期736百万円へ改善。売上減少下でも利益水準が反発し、製造効率や製品構成の変化が投資判断上の焦点になる。
フェルト事業 セグメント利益推移(百万円)
992 2022 1,148 2023 804 2024 506 2025 736 2026 1,238 416

フェルト事業は製紙会社の操業稼働率、紙・板紙需要、顧客ごとの抄紙機条件、原材料価格、エネルギーコストの影響を受ける。

製品は単なる汎用品ではなく、紙種、抄紙機速度、搾水条件、乾燥条件、汚れ対策、耐久性、スタートアップ性に合わせて設計される。顧客設備に合わせた提案力が価格競争の緩衝材になる一方、顧客の設備投資や紙生産量が弱い局面では更新需要も鈍りやすい。

2026年3月期は売上高が減少したにもかかわらず、セグメント利益は前年から改善した。粗利率、固定費吸収、海外子会社の稼働、製品ミックス、採算改善策の継続性を追う必要がある。

製紙用具は消耗部材の性格を持つため、製紙機械本体よりも更新頻度が高い。景気循環に連動する面はあるが、既存設備の操業を止めないための保守・更新需要が一定の下支えになる。

不動産賃貸事業:本社ビル・土地建物の活用

不動産賃貸事業の売上高は2022年3月期596百万円から2026年3月期625百万円へ緩やかに増加。連結売上高に占める比率は小さいが、利益率の高い安定収益源である。
不動産賃貸事業 売上高推移(百万円)
596 2022 598 2023 614 2024 614 2025 625 2026 629 591

不動産賃貸事業は、本社ビルを活用したテナント事業、駐車場賃貸事業、介護施設事業者向けおよび不動産事業者向けの土地・建物貸与で構成される。

同事業は製紙用具市場の数量変動から独立した収益源であり、景気循環や紙需要の影響を直接受けにくい。製造業としてのフェルト事業が原材料費、エネルギー費、設備稼働率の影響を受けるのに対し、不動産賃貸は契約ベースの収入が中心になる。

2026年3月期の売上高は625百万円で、過去5期では緩やかな右肩上がりで推移した。連結売上高に占める金額は小さいが、収益の安定化と資産活用の観点で重要度が高い。

不動産賃貸事業:セグメント利益の安定性

不動産賃貸事業のセグメント利益は2024年3月期365百万円、2025年3月期367百万円、2026年3月期360百万円。高い利益水準を維持し、全社営業利益の下支えとなる。
不動産賃貸事業 セグメント利益推移(百万円)
306 2022 340 2023 365 2024 367 2025 360 2026 375 298

不動産賃貸事業のセグメント利益は、フェルト事業の利益変動を補完する役割を持つ。2026年3月期の同事業利益360百万円は、全社営業利益443百万円と比較しても大きい。

ただし、セグメント利益の単純合計から全社費用などの調整額が控除されるため、不動産賃貸の利益がそのまま連結営業利益に残るわけではない。

投資判断では、製造業としての本業回復と、不動産収益の安定性を分けて見る必要がある。不動産賃貸は下支え、本業のフェルト事業は利益成長の振れ幅を作る領域である。

直近5年業績サマリー

業績項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期
会社予想
売上高
(百万円)
9,839 10,399
+560 / +5.7%
10,082
△317 / △3.0%
9,699
△383 / △3.8%
9,398
△301 / △3.1%
9,400
営業損益
(百万円)
629 824
+195 / +31.0%
468
△356 / △43.1%
200
△268 / △57.3%
443
+243 / +121.2%
250
△193 / △43.6%
経常損益
(百万円)
829 1,055
+226 / +27.3%
663
△392 / △37.1%
468
△195 / △29.5%
747
+279 / +59.7%
600
△147 / △19.7%
当期純利益
(百万円)
499 750
+251 / +50.3%
487
△263 / △35.0%
429
△58 / △11.8%
560
+131 / +30.3%
500
△60 / △10.7%
EPS
(円)
27.21 40.89
+13.68 / +50.3%
26.55
△14.34 / △35.1%
23.39
△3.16 / △11.9%
30.53
+7.14 / +30.5%
28.85
△1.68 / △5.5%
PER
(倍)
19.04 10.10 16.42 20.56 28.43 32.58
PBR
(倍)
0.56 0.43 0.40 0.44 0.71 0.77
BPS
(円)
927.97 970.94
+42.97 / +4.6%
1,086.41
+115.47 / +11.9%
1,103.58
+17.17 / +1.6%
1,222.05
+118.47 / +10.7%
純資産
(百万円)
17,394 18,213
+819 / +4.7%
20,366
+2,153 / +11.8%
20,719
+353 / +1.7%
22,903
+2,184 / +10.5%
営業CF
(百万円)
1,281 1,062 611 1,063 692
投資CF
(百万円)
△251 △562 △934 △753 △520
財務CF
(百万円)
△431 △262 △1,327 △623 △684
現金及び現金同等物
(百万円)
4,758 5,029 3,392 3,107 2,591
売上高、営業損益、経常損益、当期純利益、純資産、キャッシュ・フロー、現金及び現金同等物は決算短信の連結数値。EPS、BPS、PER、PBRは、発行済株式総数の変化を踏まえ、最新の発行済株式総数18,342,089株を基準に再計算。過去5期のPER・PBRはユーザー提供の各期末終値(2022年3月期518円、2023年3月期413円、2024年3月期436円、2025年3月期481円、2026年3月期868円)を使用。会社予想列のPERは2026年6月29日終値940円と会社予想EPS28.85円、PBRは2026年6月29日終値940円と2026年3月期再計算BPSを使用。

中期経営計画

中期経営計画(2023年度から2025年度)

中期経営計画では、「伝統の継承と新たな挑戦の融合で豊かな未来を創造します」という企業理念に基づき、中核事業の深耕と成長に加え、既存の概念の枠にとらわれない事業展開を推進する方針を掲げている。

2025年度達成目標 フェルト事業 不動産賃貸事業 合計
売上高 102.5億円以上 6.6億円以上 109.1億円以上
営業利益 4.3億円以上 3.7億円以上 8.0億円以上

取り組み姿勢では、抄紙用具事業について、紙パルプ業界のエッセンシャル・カンパニーとしてフェルトのシェア向上、ワイヤーおよびシュープレス用ベルトの拡販を中心に活躍の場を広げる方針を示している。

産業資材事業では、集塵フィルターなどのクリーン技術で生活環境の保全に貢献する方針。不動産事業では、ニーズに応じた賃貸物件の開発を継続して地域社会に貢献する方針である。

2026年3月期実績は連結売上高93.98億円、営業利益4.43億円であり、中期計画の合計売上高109.1億円以上、営業利益8.0億円以上には届いていない。次の焦点は、フェルト事業の売上回復、不動産賃貸の利益維持、2027年3月期会社予想で示された営業利益250百万円の保守性である。

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競合他社

① Valmet Oyj(VALMT.HE)

株価は約21.3ユーロ、時価総額は約3.95十億ユーロ、円換算では約7,280億円規模。日本フエルトより大きいグローバル製紙・パルプ関連設備企業であり、製紙機械、サービス、オートメーション、フローコントロールまで幅広い。

2025年通期は売上高が約52億ユーロ、Comparable EBITAが620百万ユーロ、Comparable EBITAマージンが11.9%。大型設備、消耗部材、保守サービスの複合モデルを持ち、単なる消耗部材メーカーではない。

競合領域はPaper machine clothing、forming fabrics、press felts、shoe press belts、dryer fabrics、filter fabrics。日本フエルトの製紙用フェルト、シュープレス用ベルト、製紙用カンバスと製品領域が重なる。Valmetはフルラインのグローバルサプライヤーであり、製紙機械本体や技術サービスと組み合わせた提案力が競争上の強みになる。

② Albany International Corp.(AIN)

株価は76.29ドル、時価総額は約21.78億ドル、円換算では約3,525億円規模。米国上場のMachine ClothingとEngineered Compositesを持つ先端材料企業である。

2026年第1四半期は売上高311.3百万ドル、純利益15.3百万ドル、調整後EBITDA48.2百万ドル。Machine Clothingは製紙工程向けのファブリックとベルトを扱い、紙の形成、脱水、機械効率の改善に関わる。

日本フエルトとの競合点は、製紙会社向けのMachine Clothing、紙形成用ファブリック、脱水・乾燥工程の消耗部材である。Albanyはグローバルに顧客基盤を持ち、Heimbach Groupの取得により欧州・アジアの生産拠点と技術基盤を強化している。

③ イチカワ株式会社(3513)

株価は3,070円、時価総額は約154億円。日本フエルトと同じく国内の抄紙用具メーカーであり、比較対象として最も近い上場企業である。

イチカワは抄紙用フエルト、抄紙用ベルト、工業用製品を展開する。抄紙用フエルトでは搾水性、平滑性、走行性が重要機能であり、プレスパートで紙の品質や操業効率に影響する。

競合領域は、製紙会社向けのフェルト、シュープレス用ベルト、トランスファー用ベルト、工業用フエルトである。日本フエルトがワイヤー、フェルト、ベルト、カンバスを含めて製紙工程の広い範囲を持つのに対し、イチカワはプレスパート周辺での高機能製品と海外展開が比較対象になる。

強みと将来性

製紙工程を横断する製品群と不動産収益の下支え

日本フエルトの最大の強みは、製紙工程のワイヤーパート、プレスパート、ドライパートの3パートすべてに製品を提供できる国内での独自性にある。

製紙用フェルトだけでなく、製紙用ワイヤー、シュープレス用ベルト、製紙用カンバスを持つため、製紙会社の操業課題に対して工程横断で接点を持てる。単一製品だけを売るメーカーよりも、顧客設備や操業条件に関する情報蓄積が深くなりやすい。

抄紙機は高速で連続稼働する設備であり、消耗部材の品質は紙品質、搾水効率、乾燥効率、エネルギー消費、操業安定性に直結する。製品の性能差が顧客の歩留まりや電力・蒸気コストに影響するため、価格だけでなく技術サポートや製品寿命が評価される市場である。

将来性は、国内紙需要の大きな伸びよりも、既存顧客の操業効率改善、省エネルギー、環境対応、製紙工程の安定化にある。紙・板紙メーカーが設備を効率化するほど、搾水性、乾燥性、耐久性を持つ消耗部材の提案価値は高まりやすい。

不動産賃貸事業の存在も投資上の下支えである。2026年3月期の不動産賃貸事業利益は360百万円で、フェルト事業の利益変動を部分的に吸収する。製造業のボラティリティを不動産収益が緩和する収益構造は、同業比較で注目できる。

財務面では、2026年3月期の自己資本比率は79.9%、純資産は22,903百万円。時価総額約172億円に対して純資産が厚く、PBRは1倍未満の水準にある。資本効率の改善、株主還元、低PBR是正への取り組みが市場評価の変化につながる余地がある。

弱みとリスク要因

紙需要の成熟、売上減少、フェルト事業の採算変動

最大のリスクは、国内の紙・パルプ市場が成熟していることである。日本フエルトの主力は製紙会社向けの消耗部材であり、顧客の紙生産量、設備稼働率、設備投資、海外移転、品種転換の影響を受ける。

フェルト事業の売上高は2023年3月期9,802百万円をピークに、2024年3月期9,469百万円、2025年3月期9,085百万円、2026年3月期8,773百万円へ低下した。2026年3月期は利益が反発したが、売上高の減少トレンドが続く場合、固定費吸収力や将来の成長期待は弱くなりやすい。

製紙用具は顧客の操業条件に合わせた技術提案型の製品であり、品質不具合や納期遅延が顧客操業に影響する。高い技術力が参入障壁である一方、品質保証、設備更新、人材継承、研究開発投資を継続できなければ競争力が低下する。

海外競合はValmetやAlbany Internationalのように、製紙機械、サービス、消耗部材、技術支援を組み合わせる企業が存在する。大型顧客や海外顧客では、フルライン提案力やグローバル拠点網が競争条件になり、日本フエルト単独の規模では不利になる場面がある。

不動産賃貸事業は安定収益源だが、成長率は高くない。不動産賃貸の利益が全社を支える局面では、逆に本業の利益成長が乏しいと評価される可能性もある。

2027年3月期会社予想は、売上高9,400百万円、営業利益250百万円、経常利益600百万円、当期純利益500百万円。営業利益は2026年3月期比で43.6%減を見込む。2026年3月期の利益改善が一過性か、採算改善の持続なのかを次期四半期ごとに確認する必要がある。

出典

本ページは公開情報およびユーザー提供情報をもとに作成した銘柄分析であり、特定の有価証券の売買を推奨するものではありません。業績予想、PER、PBR、時価総額、競合比較は情報基準日時点の前提を含み、株価や為替、会社開示の更新により変動します。投資判断は最新の適時開示、決算短信、有価証券報告書、株価情報を確認のうえ自己責任で行ってください。

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