4107 伊勢化学工業

伊勢化学工業 4107 東証S

ISE CHEMICALS CORPORATION|ヨウ素・ヨウ素化合物、天然ガス、ニッケル・コバルト系金属化合物を製造販売する資源・化学メーカー。国内と米国にヨウ素生産拠点を持ち、医療、電子材料、農業、工業用途へ供給する。

※2026年6月26日時点の情報

事業内容

2026年6月26日の時価総額は約2,252億円。同日の株価終値4,385円と、株式分割後の発行済株式総数51,351,350株を用いて算出した。米国の油田かん水からヨウ素を抽出・商業化する権利の取得が公表され、株価は前日比700円高のストップ高となった。

伊勢化学工業は1927年3月6日創立。本社は東京都中央区京橋一丁目3番1号で、代表取締役兼社長執行役員は粕谷俊郎氏。12月決算企業で、東京証券取引所スタンダード市場に上場する。主要事業はヨウ素・ヨウ素化合物の製造、ニッケル・コバルト化合物の製造、地下かん水から採取する天然ガスの販売である。2025年12月末の連結従業員数は327名。

2026年12月期第1四半期の連結業績は、売上高8,813百万円、営業利益1,959百万円、経常利益1,908百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益1,326百万円。売上高は前年同期比7.0%増加した一方、営業利益は2.0%減少した。ヨウ素の国際市況は堅調だったが、生産能力増強に伴う減価償却費などの増加が利益を圧迫した。通期会社予想は売上高38,000百万円、営業利益8,000百万円、経常利益7,800百万円、当期純利益5,400百万円である。

ヨウ素事業|医療・電子材料を支える主力収益源

セグメント売上高は2021年12月期の16,090百万円から2025年12月期の34,656百万円へ増加し、4年間の年平均成長率は約21.1%。2025年12月期は連結売上高の約88.3%を占めた。
ヨウ素及び天然ガス事業・売上高推移(単位:百万円)
16,090 18,994 22,784 28,082 34,656 2021 2022 2023 2024 2025

ヨウ素は地下900~2,000メートルに存在する古代海水由来の「かん水」から生産される。かん水には天然ガスが溶け込んでおり、地下から汲み上げた後にセパレーターで天然ガスとかん水を分離する。かん水はブローイングアウト法による濃縮工程と精製工程を経て、高純度ヨウ素となる。

同社のヨウ素製品には、球状形状により取り扱いやすさを高めたイセフロー®、ヨウ素クルード、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化水素酸などがある。単に資源を採取するだけではなく、顧客用途に合わせたヨウ素化合物まで展開している点が特徴となる。

最大用途の一つはX線・CT診断用造影剤である。ヨウ素はX線を吸収しやすい性質を持ち、血管や臓器を画像上で確認しやすくする造影剤の原料として利用される。医療用途以外にも、殺菌剤、医薬品、飼料添加物、農薬、反応触媒、食塩添加物など幅広い需要がある。

電子・情報分野では液晶ディスプレー用偏光フィルム、X線検出器、各種電子材料に使用される。公式製品情報では次世代半導体の開発など、電子・情報材料を含む工業技術の革新に寄与する素材として位置付けられている。

世界のヨウ素生産地域は日本やチリなど少数国に限られる。同社公表による生産量シェアは国内30数%、世界10%強であり、供給先は約20カ国に及ぶ。資源の希少性と用途の広さが、ヨウ素事業の収益力を支える。

2025年12月期はヨウ素の国際市況が堅調に推移し、販売数量の増加と円安も寄与した。ヨウ素及び天然ガス事業の売上高は34,656百万円、営業利益は9,465百万円となり、営業利益率は約27.3%に達した。

2026年12月期第1四半期も売上高7,628百万円と前年同期比8.3%増加した。一方、営業利益は1,986百万円と0.1%減少しており、生産能力増強に伴う減価償却費の増加が利益面の負担となった。

天然ガス・米国ヨウ素事業|かん水資源と生産地域の分散

ヨウ素及び天然ガス事業の営業利益は2021年12月期の2,445百万円から2025年12月期の9,465百万円へ拡大。4年間の年平均成長率は約40.3%で、営業利益率は15.2%から27.3%へ上昇した。
ヨウ素及び天然ガス事業・営業利益推移(単位:百万円)
2,445 3,323 5,565 7,746 9,465 2021 2022 2023 2024 2025

天然ガスはヨウ素の原料となるかん水に溶け込んだ水溶性天然ガスである。セパレーターでかん水と分離した後、コンプレッサーとパイプラインを通じてガス事業者や工場へ供給する。

同社が生産する天然ガスはメタン純度約99%で、一酸化炭素や不純物をほとんど含まないとされる。天然ガスを分離した後のかん水をヨウ素生産に使用するため、一つの地下資源から天然ガスとヨウ素を生産する事業構造となっている。

連結セグメント上はヨウ素と天然ガスが一体で開示されており、天然ガス単独の売上高や営業利益は公表されていない。業績を見る際は、ヨウ素価格、販売数量、為替に加え、坑井開発、かん水揚水量、天然ガス販売の動向をまとめて確認する必要がある。

海外では米国オクラホマ州の完全子会社Woodward Iodine Corporationがヨウ素と天然ガスを生産する。日本と米国の二つの生産拠点から製品を輸出できることは、同社が公式に掲げる供給上の強みである。

2026年6月にはSelect Water SolutionsとのIodine Extraction Agreementを締結した。Select社が保有する米国の油田かん水からヨウ素を抽出し、商業化する権利を取得する内容である。

契約期間は初期10年間で、同社のオプションにより最大20年間まで延長できる。設備投資は伊勢化学工業が全額負担し、テキサス州で第1サテライトプラントの建設を開始した後、テキサス州とニューメキシコ州を中心に生産拠点を段階的に展開する。

Select社との契約による追加生産目標は2030年に年間約3,000MT。既存の日本生産約3,800MT、既存米国生産約700MTと合わせ、2030年のグループ生産数量は年間約7,500MTを想定している。

生産数量見通しは、プラントの稼働開始時期、かん水供給量、ヨウ素濃度、抽出収率、稼働率、許認可取得などを前提とする。契約締結時点で当期業績への影響は軽微とされており、短期利益ではなく、中長期的な供給能力拡大を狙う投資案件である。

金属化合物事業|塩化ニッケルと電子部品材料

売上高は2021年12月期の4,263百万円から2025年12月期の4,601百万円へ推移。2022年をピークに顧客の在庫調整や金属相場の影響を受け、2023年と2024年は営業赤字、2025年は18百万円の営業利益へ回復した。
金属化合物事業・売上高推移(単位:百万円)
4,263 6,569 3,628 5,205 4,601 2021 2022 2023 2024 2025

金属化合物事業では、ニッケル、コバルト系の化合物を製造する。主力製品は塩化ニッケルで、電子部品、セラミックコンデンサ、メッキ、触媒、顔料、うわ薬などの原材料として使用される。

同事業は、使用済み航空機エンジンからニッケルとコバルト系化合物を分離・回収したことを起点としている。現在は原料から製品までの品質管理を行い、顧客の用途や品質要求に合わせた製品を供給する。

塩化ニッケルの製造工程では独自の晶析技術を用い、安定生産を図っている。梱包工程を含む製造工程の自動化も進め、生産効率の向上に取り組んでいる。

用途面では、スマートフォン、パソコン、自動車の制御システムなどに搭載される電子部品が中心となる。電子機器の高機能化、小型化、自動車の電子化が需要要因となる一方、顧客側の在庫調整が販売数量を大きく変動させる。

2022年12月期は金属相場の上昇と販売数量の増加により、売上高6,569百万円、営業利益433百万円となった。2023年12月期は顧客の在庫調整で販売数量が大幅に減少し、営業損失269百万円を計上した。

2024年12月期は販売数量が回復したものの、金属相場下落による販売価格低下の影響を受け、営業損失86百万円。2025年12月期は売上高4,601百万円、営業利益18百万円と黒字化したが、営業利益率は約0.4%にとどまった。

2026年12月期第1四半期は販売数量が前年同期を上回った一方、金属相場の影響で販売価格が下落し、売上高1,185百万円、営業損失26百万円となった。ヨウ素事業と比較して市況、操業度、顧客在庫の影響を受けやすく、収益安定化が課題となる。

直近5年業績サマリー

業績項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期 2026年12月期
会社予想
売上高
(百万円)
20,354 25,564
+5,210 / +25.6%
26,413
+849 / +3.3%
33,287
+6,874 / +26.0%
39,258
+5,971 / +17.9%
38,000
-1,258 / -3.2%
営業損益
(百万円)
2,709 3,756
+1,047 / +38.6%
5,296
+1,540 / +41.0%
7,659
+2,363 / +44.6%
9,484
+1,825 / +23.8%
8,000
-1,484 / -15.7%
経常損益
(百万円)
2,689 3,657
+968 / +36.0%
5,117
+1,460 / +39.9%
7,437
+2,320 / +45.3%
9,252
+1,815 / +24.4%
7,800
-1,452 / -15.7%
当期純利益
(百万円)
1,773 2,562
+789 / +44.5%
3,672
+1,110 / +43.3%
5,071
+1,399 / +38.1%
6,498
+1,427 / +28.1%
5,400
-1,098 / -16.9%
EPS
(円)
34.53 49.89
+15.36 / +44.5%
71.51
+21.62 / +43.3%
98.75
+27.24 / +38.1%
126.54
+27.79 / +28.1%
105.16
-21.38 / -16.9%
PER
(倍)
11.06 10.74 12.01 32.86 37.06 41.70
PBR
(倍)
0.72 0.94 1.38 4.68 6.01
BPS
(円)
528.32 569.02
+40.70 / +7.7%
621.05
+52.03 / +9.1%
692.66
+71.60 / +11.5%
780.31
+87.65 / +12.7%
純資産
(百万円)
27,130 29,220
+2,090 / +7.7%
31,892
+2,672 / +9.1%
35,569
+3,677 / +11.5%
40,070
+4,501 / +12.7%
営業CF
(百万円)
3,288 2,144
-1,144 / -34.8%
4,369
+2,225 / +103.8%
3,456
-913 / -20.9%
7,528
+4,072 / +117.8%
投資CF
(百万円)
-7,259 -2,112
+5,147 / 70.9%改善
-1,911
+201 / 9.5%改善
-1,780
+131 / 6.9%改善
-6,692
-4,912 / 276.0%支出増
財務CF
(百万円)
-526 -757
-231 / 43.9%支出増
-1,150
-393 / 51.9%支出増
-1,767
-617 / 53.7%支出増
-2,023
-256 / 14.5%支出増
現金及び現金同等物
(百万円)
5,070 4,387
-683 / -13.5%
5,720
+1,333 / +30.4%
5,688
-32 / -0.6%
4,503
-1,185 / -20.8%

中期経営計画

独立した中期経営計画は未公表|2030年のヨウ素生産拡大構想

2026年6月26日時点で、計画期間、連結売上高、営業利益、ROEなどを体系的に定めた独立した中期経営計画資料は公式IRサイトで確認できない。このため、毎期の業績予想と、2026年6月に公表された米国ヨウ素生産拡大構想を中期的な経営方針として確認する必要がある。

2026年12月期予想売上高 38,000百万円
2026年12月期予想営業利益 8,000百万円
2030年新規米国生産目標 約3,000MT
2030年グループ生産構想 約7,500MT

2026年12月期は、売上高38,000百万円、営業利益8,000百万円、経常利益7,800百万円、当期純利益5,400百万円を予想する。2025年12月期比では減収減益予想であり、積極的な設備投資に伴う減価償却費、原燃材料価格、販売数量などを慎重に見込んでいる。

中長期の中心施策はヨウ素供給能力の増強である。Select Water Solutionsとの契約により、米国油田かん水からヨウ素を抽出・商業化する権利を取得した。契約期間は初期10年間、延長オプションを含め最大20年間である。

設備投資は伊勢化学工業が全額負担する。テキサス州で第1サテライトプラントを建設し、その後はテキサス州とニューメキシコ州を中心にサテライトプラントを段階的に展開する方針である。

2030年の生産数量イメージは、日本約3,800MT、既存米国事業約700MT、Select社契約による増分約3,000MTの合計約7,500MT。2026年見通し約4,111MTに対し、約1.8倍の供給規模となる。

ただし、生産見通しはプラント建設、許認可、かん水量、ヨウ素濃度、抽出収率、設備稼働率などを前提とした概算である。投資先行期間は減価償却費とキャッシュアウトが増えやすく、計画進捗と投資採算の継続確認が必要となる。

競合他社

① Sociedad Química y Minera de Chile S.A.(NYSE:SQM)

株価:約73.11米ドル
時価総額:約208.8億米ドル、約3兆3,790億円
主な競合領域:ヨウ素、ヨウ素誘導体、医療用造影剤原料、電子材料向けヨウ素

SQMはチリを主要生産拠点とする総合資源・化学会社で、ヨウ素に加え、リチウム、特殊肥料、カリウム、工業化学品を展開する。時価総額にはヨウ素以外の事業価値も含まれるため、伊勢化学工業との企業規模の単純比較には注意が必要である。

2026年12月期第1四半期は売上高17.60億米ドル、売上総利益7.79億米ドル、純利益3.65億米ドル、調整後EBITDA8.37億米ドル。大幅な増収増益にはリチウム事業の回復が寄与したが、ヨウ素事業も販売数量が前年同期比7%増加し、平均販売価格も1%上昇した。

2026年3月末までの直近12カ月におけるヨウ素・ヨウ素誘導体事業は、売上高約10.64億米ドル、売上総利益約5.66億米ドル。SQM推計の世界市場シェアは約37%で、世界最大級のヨウ素供給企業に位置する。

伊勢化学工業とは、X線・CT造影剤、医薬品、殺菌剤、偏光フィルム、工業触媒などの用途で直接競合する。世界規模の供給能力、大口顧客との長期契約、価格交渉力、在庫供給力がSQMの強みとなる。

SQMは2026年に15,000MTを超えるヨウ素生産を計画しており、伊勢化学工業の2026年生産見通し約4,111MTを大きく上回る。伊勢化学工業が2030年に約7,500MTまで増産しても、規模の差は残る。

一方、伊勢化学工業は日本と米国に生産地域を分散し、高純度品や顧客別の品質対応を行う。供給地域、製品品質、顧客対応力による差別化が重要になる。

② K&Oエナジーグループ(1663)

株価:約3,905円
時価総額:約1,107億円
主な競合領域:千葉県のかん水由来ヨウ素、水溶性天然ガス、造影剤・殺菌剤・電子材料向けヨウ素

K&Oエナジーグループは、千葉県を中心に水溶性天然ガス、都市ガス、ヨウ素を展開する。国内でかん水から天然ガスとヨウ素を同時生産する事業構造が伊勢化学工業と共通しており、最も直接的な国内競合の一社である。

2026年12月期第1四半期の連結業績は、売上高25,453百万円、営業利益3,667百万円、経常利益3,923百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益2,404百万円。営業利益は前年同期比8.1%増加した。

ヨウ素事業の売上高は3,889百万円、セグメント利益は2,286百万円。ヨウ素事業の利益率が高く、天然ガス・都市ガス事業とともにグループ収益を支える。

両社は千葉県のかん水資源、坑井開発技術、採取設備、操業人材、造影剤・殺菌剤・偏光フィルム・触媒向け顧客で競合する。品質、純度、安定供給、価格、長期契約条件が競争要因となる。

K&Oエナジーグループは天然ガス・都市ガス販売による収益基盤を持ち、ヨウ素市況が変動した場合の事業分散が効きやすい。伊勢化学工業はヨウ素の構成比が高いため、ヨウ素価格上昇時の利益感応度が大きい反面、価格下落時の影響も受けやすい。

国内資源開発では、坑井の新設・更新、かん水の安定確保、環境対応、設備保全が共通課題となる。両社の設備投資と生産能力の推移は、国内ヨウ素市場の供給環境を判断する材料となる。

③ Iofina plc(LSE:IOF)

株価:約55.00ペンス
時価総額:約234億円
主な競合領域:米国油田かん水由来ヨウ素、ヨウ素誘導体、サテライト型抽出プラント

Iofinaは米国の石油・天然ガス生産に伴って発生する油田かん水からヨウ素を回収する企業である。独自のIOsorb技術を用いた抽出設備を展開し、回収したヨウ素の一部を自社でヨウ素誘導体へ加工する。

2025年12月期は売上高6,650万米ドル、売上総利益1,800万米ドル、調整後EBITDA1,180万米ドル、営業利益870万米ドル、税引前利益840万米ドルとなった。

結晶ヨウ素の年間生産量は743MTで、前期比17%増加した。結晶ヨウ素の売上高は3,500万米ドル、ヨウ素誘導体の売上高は1,780万米ドルだった。

2026年第1四半期の結晶ヨウ素生産量は178.9MTとなり、前年同期比44%増加した。新規プラントの稼働とかん水条件が増産に寄与している。

伊勢化学工業もSelect Water Solutionsとの契約により、テキサス州とニューメキシコ州を中心に油田かん水由来ヨウ素を増産する。今後は、高濃度かん水資源の確保、石油・ガス事業者との供給契約、プラント立地、抽出収率、技術者の確保、米国内顧客の獲得で競争が強まる。

Iofinaは現在の生産規模では伊勢化学工業を下回るが、複数の小型プラントを段階的に設置する事業モデルと、ヨウ素誘導体まで手掛ける垂直統合体制を持つ。

伊勢化学工業が2030年の新規米国生産目標3,000MTを実現した場合、Iofinaの現在の年間生産規模を大きく上回る。米国油田かん水市場では、伊勢化学工業の増産計画そのものがIofinaに対する競争圧力となる。

強みと将来性

希少資源、高収益構造、日米二極生産を基盤とする供給能力

最大の強みは、世界でも生産地域が限られるヨウ素資源を国内外で保有し、世界トップクラスの供給量を持つことである。公式公表値では国内生産量シェア30数%、世界シェア10%強に達する。

日本は地下資源に乏しい国だが、ヨウ素は世界有数の生産量を持つ輸出資源である。限られた地域の地下かん水から生産されるため、新規参入企業が短期間で同等の資源、生産設備、採取技術を確保することは容易ではない。

ヨウ素の用途は造影剤、殺菌剤、医薬品、飼料添加物、農薬、触媒、液晶偏光フィルム、電子材料などに分散している。単一の最終製品だけに依存せず、医療、農業、電子、工業の複数市場へ供給できる。

特に造影剤は医療診断に使用される。電子材料では液晶、X線検出器、次世代半導体などの技術領域に関係する。人口動態、医療診断需要、電子機器の高機能化といった複数の需要要因を持つ。

同社はヨウ素原料だけでなく、イセフロー®、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化水素酸などの製品を展開する。高純度化、形状制御、化合物化によって顧客用途に対応できる点は、単純な資源販売との差別化要因となる。

2025年12月期のヨウ素及び天然ガス事業は、売上高34,656百万円、営業利益9,465百万円、営業利益率約27.3%。連結営業利益のほぼ全額を同事業が生み出しており、ヨウ素価格が堅調な局面では高い利益創出力を示す。

財務面では、2025年12月末の純資産40,070百万円、自己資本比率78.5%。2025年12月期の営業キャッシュ・フローは7,528百万円であり、大規模設備投資を進めるための財務基盤を持つ。

日本と米国の二つの生産拠点から輸出できることも重要である。供給元を地理的に分散することで、顧客の地域別需要や物流条件に対応しやすくなる。

2026年6月のSelect Water Solutionsとの契約は、この日米二極体制を米国内でさらに拡張するものとなる。Select社の油田かん水ネットワークを利用し、複数のサテライトプラントを段階的に設置する。

新規契約による2030年の追加生産目標は約3,000MT。グループ全体では約7,500MTを想定しており、2026年見通し約4,111MTから大幅な能力拡大となる。

増産が計画どおり進めば、既存顧客への供給量拡大、新規顧客獲得、供給契約の長期化、米国内での物流効率向上につながる余地がある。ただし、会社は契約締結時点の当期業績への影響を軽微としており、収益寄与は設備稼働後に段階的に現れる案件である。

研究開発では、ヨウ素、天然ガス、金属化合物で蓄積した技術を「エネルギー・環境」「情報・エレクトロニクス」分野へ応用する。営業、製造、開発部門の連携により、製造プロセス技術と付加価値製品の開発を進めている。

資源権益、生産技術、高純度化技術、顧客品質対応、日米の供給網、強固な自己資本を同時に持つ点が、同社の総合的な競争力となる。

弱みとリスク要因

ヨウ素依存度、増産投資の先行負担、市況・資源条件の変動

最大の弱みはヨウ素及び天然ガス事業への収益集中である。2026年12月期第1四半期は同事業の売上高が7,628百万円となり、連結売上高の約86.6%を占めた。

同期間のセグメント営業利益は1,986百万円で、金属化合物事業は26百万円の営業損失だった。実質的に連結利益の全額をヨウ素及び天然ガス事業が稼ぐ構造であり、ヨウ素市況の変化が連結業績へ直結する。

ヨウ素販売価格は国際需給、競合企業の生産量、在庫水準、為替相場などの影響を受ける。SQMなど大規模生産者が供給を増やした場合、需給緩和と価格下落が利益率を押し下げる可能性がある。

海外販売の比率が高いため、円安は円換算売上高の増加要因となる一方、急速な円高は減収・減益要因となる。原燃材料や海外設備の調達コストも為替変動の影響を受ける。

造影剤、偏光フィルム、電子材料などの大口顧客が在庫調整や生産調整を行うと、ヨウ素販売数量が一時的に減少する。2023年や2024年にも、販売先の在庫調整がヨウ素製品の販売数量に影響した。

地下かん水を利用する事業では、坑井の生産性、かん水量、ヨウ素濃度、天然ガス量、設備稼働率が生産量を左右する。既存坑井の能力低下を補うため、新規坑井開発と設備更新を継続する必要がある。

生産設備の事故、故障、自然災害、停電、操業停止が発生した場合、製品供給と業績へ影響する。供給量が大きい企業ほど、顧客側の調達計画に与える影響も大きくなる。

Select社との米国契約では、設備投資を伊勢化学工業が全額負担する。許認可取得やプラント建設が遅延した場合、資金流出と減価償却費が先行し、売上高の増加が遅れる可能性がある。

2030年の追加生産目標3,000MTは、かん水供給量、ヨウ素濃度、抽出収率、稼働開始時期、稼働率を前提とした概算である。資源条件が事前想定を下回れば、生産量と投資採算が悪化する。

米国油田かん水の確保では、Iofinaなど既存事業者と競合する。石油・天然ガス生産会社との契約条件、採算性の高い地域、技術者、建設業者、設備調達を巡る競争が強まる可能性がある。

金属化合物事業は、ニッケル相場、販売数量、顧客在庫、工場操業度の影響を受けやすい。2023年と2024年は営業損失を計上し、2025年の営業利益も18百万円にとどまった。

2026年12月期会社予想は、売上高が前期比3.2%減、営業利益が15.7%減、当期純利益が16.9%減となる。設備投資による減価償却費の増加と、過去数年間に急拡大した利益の反動を織り込んでいる。

2026年6月26日終値を用いた会社予想PERは、最新発行済株式総数による再計算で約41.7倍。2025年末BPSを同じ株式数で再計算したPBRは約5.6倍となり、将来の増産と高収益継続への期待が株価へ織り込まれている。

増産計画の進捗遅延、ヨウ素価格の下落、円高、販売数量減少が重なった場合、利益の下振れに加えて株価評価の調整が大きくなるリスクがある。

出典

本ページは、企業が公表した決算短信、適時開示、公式サイト等を基に作成した情報提供資料であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。掲載数値や計算結果の正確性、完全性を保証するものではなく、将来の業績や株価を保証するものでもありません。投資判断は公式IR資料を確認した上で、利用者自身の責任において行ってください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました