東京機械製作所 6335 東証S
TOKYO KIKAI SEISAKUSHO, LTD.|新聞用輪転機を中核に、保守・改造、FA・AGV、自律走行ロボット、加工組立へ事業領域を広げる機械メーカー。
※2026年6月25日時点の情報
事業内容
2026年6月25日の時価総額は約55億円。終値は631円。 発行済株式総数8,728,920株を基準とした時価総額は約55億800万円となり、同日は値幅制限上限まで上昇した。
東京機械製作所は1874年創業、1916年設立。本社は東京都港区三田に置き、代表取締役社長は都並清史、資本金は44億3,500万円、決算期は3月、上場市場は東証スタンダードである。新聞用・商業用輪転機、デジタル印刷機、自動化・省力化システム、印刷関連機器、FA、加工組立などを展開する。連結決算上の報告セグメントは「印刷機械関連」の単一セグメントであり、FAや加工組立を含む各事業別の売上高・利益は開示されていない。
2026年3月期は売上高84億5,600万円、営業利益7億2,100万円、経常利益7億7,700万円、親会社株主に帰属する当期純利益10億5,700万円。売上高は前期比14.2%増、営業利益は12.4%増となった。次世代型新聞輪転機の受注と進行案件、FA・加工組立などの拡大が寄与した一方、当期純利益には訴訟関連収入4億5,200万円が含まれる。2027年3月期の会社予想は売上高109億6,000万円、営業利益7億円、当期純利益5億6,000万円である。
印刷機械関連セグメント|5年間の業績・受注推移
単一報告セグメントのため、連結売上高・営業損益と印刷機械関連の受注高・受注残高を表示。
東京機械製作所の連結財務諸表では、新聞用・商業用輪転機、デジタル印刷機、FA、保守、加工組立などを「印刷機械関連」の単一セグメントとして開示している。このため、各新規事業が連結売上高や利益に占める比率は財務資料だけでは判別できない。
業績の特徴は、輪転機の新台案件によって受注高、売上高、営業キャッシュフローが大きく変動する点にある。大型設備は受注から設計、製造、据付、検収まで長期間を要し、案件の進捗や引き渡し時期によって年度間の数値が振れやすい。
2022年3月期は売上高68億5,800万円、営業損失6億600万円だったが、2023年3月期は売上高87億6,900万円、営業利益6億7,600万円まで改善した。その後も営業利益は2024年3月期6億1,400万円、2025年3月期6億4,100万円、2026年3月期7億2,100万円と黒字を確保している。
2026年3月期は受注高が155億2,300万円、期末受注残高が117億5,100万円に増加した。2025年3月期末の受注残高46億8,500万円に対し、約2.5倍の水準である。2027年3月期会社予想の売上高109億6,000万円は、この受注残を順次売上へ転換する計画を反映している。
一方、2027年3月期の営業利益予想は7億円で、2026年3月期の7億2,100万円を下回る。売上高の大幅増に対して営業利益率は2026年3月期の8.5%から約6.4%へ低下する計算となり、受注残の量だけでなく、採算、製造負荷、据付工程、コスト管理の確認が重要になる。
新聞用輪転機・保守サービス|ECOWIDE IIIと既存設備基盤
新聞用輪転機は、巨大なロール紙へ高速かつ連続的に印刷し、折り、裁断、排出までを一体運用する設備である。印刷精度だけでなく、毎日の発行時刻に間に合わせる安定稼働、故障時の復旧、損紙削減、省エネルギー、作業員の安全性が競争力を左右する。
東京機械製作所は、タワー型輪転機「COLOR TOP」シリーズを展開する。既存機種の「COLOR TOP ECOWIDE II」は、従来型4×2機と比べて刷版使用量と製版コストを半減し、消費電力を約25%削減するとしている。最高印刷速度は毎時16万部である。
新製品「COLOR TOP ECOWIDE III」は、読売新聞東京本社および宮崎日日新聞社との共同開発により完成した次世代型標準輪転機である。印刷品質を維持しながら設備・運用コストを抑え、省人化・省力化へ対応する位置付けとなる。
2026年3月期までに読売新聞東京本社から追加4セット、宮崎日日新聞社から1セット、下野新聞社から2セットを受注した。新聞発行部数が長期減少するなかでも、老朽設備の更新、工場統合、省人化、保守部品の確保などを理由とする設備更新需要は残る。
新台需要は恒常的に発生するわけではなく、年度ごとの案件規模も大きく異なる。そのため、納入済みの新聞用・商業用輪転機に対する診断、修理、調整、改造、部品供給は、顧客との接点を維持し、設備のライフサイクル全体から収益を得るうえで重要となる。
新聞印刷工場は長時間停止が許容されにくく、顧客ごとに工場レイアウト、紙面構成、印刷速度、後工程設備が異なる。東京機械製作所は、個別仕様に対応する設計力と、納入後の保守体制を一体化できる点を中期経営計画上の強みとしている。
受注残の拡大は売上成長の可視性を高める一方、複数の大型案件が同時進行する局面では、部材調達、製造人員、外注先、据付要員を含む生産能力が制約となる。会社は輪転機更新需要の集中に対応する生産体制の構築を重点施策に掲げている。
FA・AGV・自律走行ロボット|輪転機制御技術の横展開
FA事業は、新聞輪転機で培った機械設計、モーター制御、センサー制御、搬送、運行管理の技術を、印刷業界以外の工場や建設現場へ展開する事業である。
主力製品のAGVは、工場内の部材、製品、重量物を無人搬送する。顧客の床面、搬送物、既存コンベヤ、エレベーター、安全設備、運行ルートに合わせた個別設計を行い、標準品だけでは対応しにくい現場を対象とする。
中期経営計画では、最大2.5トン級の重量物、油分のある環境、濡れた床面、屋外、塩害、高温、他社設備との接続などをカスタマイズ例として挙げている。新聞輪転機が大量の紙を高精度に搬送する設備であるため、その派生技術との親和性がある。
公式サイトには、食品製造、化学、建設、ロボット関連企業などへの対応事例が掲載されている。製品単体の販売だけでなく、搬送方法の設計、運行管理、周辺設備との連携まで含めた案件化が前提となる。
自律走行清掃ロボット「一望打塵」は、西尾レントオールとの外部協業により開発された。建設現場や大規模施設などでの清掃作業の省人化を狙う製品で、2024年8月の完成後、会社は拡販を成長施策に掲げている。
2026年3月期には、全天候型AMRと「一望打塵」を展示会へ出展したほか、防衛省関連の搬送・保管設備の自動化・省力化案件を受注した。会社は、この実績を基に防衛分野での受注領域拡大を目指すとしている。
ただし、FA事業の売上高、営業利益、受注残は単独開示されていない。新規事業が連結利益へ与える寄与度は、案件リリース、納入実績、連結売上高、利益率の変化を継続的に照合する必要がある。
加工組立・デジタル印刷|大型精密機械の製造能力を外販
加工エリアは80メートル×90メートルで、大型マシニング、大型旋盤、研削盤、中型マシニング、歯車加工など5ライン、58台の生産設備を保有する。工場内は高精度加工を目的とした空調設備を備える。
対応範囲は、鋳物長尺部品、鋼材円柱形状部品、歯車、研削工程などである。大型門型マシニングセンタ、大型複合旋盤、CNC旋盤、ホブ盤、ブローチ盤、円筒研削盤などを使用し、大型かつ高精度な部品加工を行う。
自社設備だけでなく、200社を超えるサプライチェーンを活用し、熱処理、表面処理、板金、製缶、精密部品加工を組み合わせる。顧客が複数工程を個別に手配する負担を減らし、材料加工から組立まで一括で請け負うことを狙う。
組立エリアには20メートル×50メートルのラインを4本設け、最大30トンのクレーンを保有する。大型ユニットから小型ユニットまで対応し、電気配線や試運転も受託できる。
この事業は、新聞輪転機向けに蓄積した設備と技能を他産業へ転用できる点に意味がある。輪転機の新台生産が少ない期間でも、工場稼働率を高め、固定費を回収する手段となる可能性がある。
一方、受託加工は案件ごとに素材、加工難度、精度、納期、外注工程が異なる。受注量の増加が利益増加へ直結するとは限らず、設備稼働率、段取り時間、不良率、外注費、加工単価の管理が収益性を左右する。
デジタル印刷分野では、高速インクジェット印刷機を含むデジタル化需要が競争領域となる。新聞・出版物の小ロット化、可変印刷、印刷工程の自動化が進むほど、従来型オフセット輪転機とデジタル印刷機をどのように組み合わせるかが製品戦略上の課題になる。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6,858 | 8,769 +1,911 +27.9% | 9,315 +546 +6.2% | 7,401 -1,914 -20.5% | 8,456 +1,055 +14.2% | 10,960 +2,504 +29.6% |
| 営業損益 | -606 | 676 +1,282 黒字転換 | 614 -62 -9.2% | 641 +27 +4.4% | 721 +80 +12.4% | 700 -21 -2.9% |
| 経常損益 | -384 | 824 +1,208 黒字転換 | 650 -174 -21.1% | 751 +101 +15.5% | 777 +26 +3.4% | 730 -47 -6.0% |
| 当期純利益 | -850 | 558 +1,408 黒字転換 | -83 -641 赤字転落 | 345 +428 黒字転換 | 1,057 +712 +205.9% | 560 -497 -47.0% |
| EPS | -97.50円 | 64.01円 +161.51円 黒字転換 | -9.55円 -73.56円 赤字転落 | 42.13円 +51.68円 黒字転換 | 130.97円 +88.84円 +210.9% | 69.36円 -61.61円 -47.0% |
| PER | 算定不能 | 7.87倍 | 算定不能 | 9.56倍 | 3.65倍 | 9.10倍 |
| PBR | 1.09倍 | 0.58倍 | 0.50倍 | 0.39倍 | 0.41倍 | 0.54倍 |
| BPS | 805.78円 | 863.61円 +57.83円 +7.2% | 925.85円 +62.24円 +7.2% | 1,010.90円 +85.05円 +9.2% | 1,159.60円 +148.70円 +14.7% | ― |
| 純資産 | 8,000 | 8,527 +527 +6.6% | 9,111 +584 +6.8% | 9,270 +159 +1.7% | 10,519 +1,249 +13.5% | ― |
| 営業CF | -2,233 | 5,472 +7,705 プラス転換 | 2,283 -3,189 -58.3% | -870 -3,153 マイナス転換 | 1,078 +1,948 プラス転換 | ― |
| 投資CF | 245 | -33 -278 支出転換 | -20 +13 支出39.4%減 | -72 -52 支出260.0%増 | -322 -250 支出347.2%増 | ― |
| 財務CF | 937 | -1,469 -2,406 支出転換 | -14 +1,455 支出99.0%減 | -14 増減なし 横ばい | -14 増減なし 横ばい | ― |
| 現金及び現金同等物 | 2,269 | 6,241 +3,972 +175.1% | 8,491 +2,250 +36.1% | 7,533 -958 -11.3% | 8,276 +743 +9.9% | ― |
期末株価は2022年3月期885円、2023年3月期504円、2024年3月期472円、2025年3月期403円、2026年3月期479円。過去5期のPER・PBRは各期末株価に基づく会社開示値を採用した。赤字期のPERは算定不能。
2027年3月期予想PERは2026年6月25日終値631円を会社予想EPS69.36円で除して算出。予想PBRは同終値を2026年3月期BPS1,159.60円で除した参考値であり、会社予想BPSではない。
発行済株式総数は5期を通じて8,728,920株で変動なし。2025年3月期以降は自己株式の増加により期中平均株式数が減少している。
2026年3月期の当期純利益には訴訟関連収入452百万円を含む。2027年3月期の配当予想額は未定。
中期経営計画
TKSグループ中期経営計画|2023年3月期から2027年3月期
経営理念は「顧客の課題に向き合い、柔軟なカスタマイズ力により新たな価値を創造し、課題解決をサポートする」。新聞輪転機専業メーカーとして蓄積した設計、制御、加工、組立技術を、新規事業へ展開し、事業構造を再構築する方針である。
2027年3月期の当初数値目標
- 売上高:100億円
- 営業利益:7億円から8億円
- 営業利益率:7%から8%
- ROE:6%から8%
- 2027年3月期までの復配
- 新規事業の売上高・限界利益構成比:30%
2027年3月期の最新会社予想は売上高109億6,000万円、営業利益7億円。売上高は当初目標100億円を上回る一方、営業利益は目標レンジの下限である。ROEは2026年3月期に12.06%となったが、訴訟関連収入を含む当期純利益の影響があり、持続的な収益力としては翌期以降の確認が必要となる。
事業戦略では、輪転機事業、新規事業、ICTプラットフォーム事業を軸に事業構造を転換する。輪転機では「COLOR TOP ECOWIDE III」の販売と更新需要の取り込みを進め、集中する生産案件へ対応する製造体制を構築する。
新規事業では、個別仕様へ対応するAGV、自律走行清掃ロボット「一望打塵」、大型精密部品の加工組立を拡大する。自社で不足する技術や販売網は外部企業との協業で補完し、輪転機派生技術を活用できる追加事業への参入も継続検討する。
資本政策では、2027年3月期の期末配当実施を予定しているが、配当方針と1株当たり配当額は検討中である。2026年5月21日から6月2日までに自己株式152,900株を取得し、株主還元と資本効率の向上へ動いた。
会社はPBRが継続的に1倍を下回る要因として、輪転機需要の漸減、新規事業の成長性が十分に示せていないこと、無配の継続を挙げる。今後は収益性、成長性、株主還元、IR活動を同時に改善し、市場評価の引き上げを目指す。
中期経営計画資料へ競合他社
① SCREENホールディングス(7735)
SCREENホールディングスは、半導体製造装置を主力とする総合装置メーカーである。東京機械製作所との競合領域は、グラフィックアーツ事業の高速ロール式インクジェット印刷機となる。
2026年3月期の連結売上高は約6,057億円、営業利益は約1,225億円。前期比では減収減益となったが、半導体製造装置を中心に高い利益規模を維持した。連結時価総額や利益の大部分は半導体製造装置事業によるもので、印刷事業だけの規模ではない。
印刷分野では「Truepress JET 520」シリーズや「Truepress JET 560HDX」などを展開する。ロール紙へ高速で連続印刷し、出版物、帳票、ダイレクトメール、カタログ、可変データ印刷などに対応する。
東京機械製作所の高速デジタル印刷機とは、新聞・出版物の小ロット化、オフセット印刷からデジタル印刷への移行、印刷前後工程の自動化で競合する。SCREENはインク、画像処理、カラーマネジメント、世界的な販売・保守網で優位性を持つ。
東京機械製作所は新聞印刷工場の運用、既存輪転機、給紙・搬送・後加工設備を含めた一体提案で差別化を図る必要がある。デジタル印刷への設備転換が加速する場合、競合度はさらに高まる。
② 小森コーポレーション(6349)
小森コーポレーションは、商業用・出版用・パッケージ用印刷機、デジタル印刷機、証券印刷機、印刷工程管理システムを展開する国内大手印刷機械メーカーである。
2026年3月期の売上高は1,186億1,100万円、営業利益は94億400万円。売上高は前期比6.8%増となり、東京機械製作所を大きく上回る事業規模と海外販売網を持つ。
オフセット印刷機の「SYSTEM」シリーズ、デジタル印刷機「J-throne」「Impremia」、印刷工程を可視化・自動化する「KP-Connect」などが競合製品となる。
新聞輪転機への直接的な競合度は海外メーカーより限定的だが、商業印刷、出版、小ロット印刷、デジタル化、工場自動化では競合する。印刷会社が設備投資予算をオフセット輪転機、枚葉機、デジタル機、工程自動化のどこへ配分するかという点でも競争関係にある。
小森コーポレーションは販売地域、製品群、研究開発規模で優位に立つ。東京機械製作所は、新聞工場に特化した設備統合、顧客別カスタマイズ、保守サービスを軸に競合を回避しながら案件を獲得する必要がある。
③ Koenig & Bauer AG(SKB)
Koenig & Bauerはドイツの大手印刷機械メーカーで、新聞、商業、デジタル、パッケージ、紙幣・セキュリティ印刷など幅広い装置を展開する。
2025年の売上高は13億240万ユーロで前期比2.2%増。営業EBITは3,660万ユーロ、EBITは3,130万ユーロとなり、前年の損失から改善した。期末受注残高は9億7,060万ユーロである。
新聞印刷分野の「Commander CL」「Commander CT」「Cortina」、高速デジタル印刷分野の「RotaJET」などが東京機械製作所の輪転機・デジタル印刷機と競合する。
新聞用オフセット輪転機そのものを世界市場で供給するため、3社のなかでは東京機械製作所との製品競合が最も直接的である。海外案件だけでなく、国内新聞社が海外製設備を比較対象とする場面でも競合する。
Koenig & Bauerは製品群、海外拠点、パッケージ・紙幣印刷への分散で優位性を持つ。一方、東京機械製作所は国内新聞社との長期関係、日本語による迅速な保守、既存国内設備との連携で対抗する。
強みと将来性
大型精密機械の統合技術と受注残を、事業構造転換へつなげられるか
最大の強みは、単一の部品やソフトウエアではなく、大型機械の設計、制御、加工、組立、据付、保守までを一体で実行できる点にある。
中期経営計画では、最大総重量600トン超、約10万点の部品で構成される機械を、1,000分の1ミリメートル級で制御する技術を強みとして掲げている。大型構造物、回転体、モーター、センサー、搬送、電気制御を統合する能力は、短期間で模倣しにくい。
新聞輪転機は顧客ごとの仕様差が大きく、受注生産を前提とする。東京機械製作所は、長期間にわたり新聞社の印刷工場へ設備を納入し、稼働後の保守を担ってきたため、設備更新時に必要となる工場条件や運用上の制約を把握しやすい。
この顧客基盤は、単なる過去の納入実績ではなく、ECOWIDE IIIの共同開発にもつながっている。新聞社と共同で製品仕様を作り、完成後に複数セットを受注した流れは、顧客課題を製品化する能力を示す事例となる。
2026年3月期末の受注残高117億5,100万円は、同年度売上高84億5,600万円を上回る。大型輪転機の売上計上には時間を要するものの、2027年3月期の売上高109億6,000万円予想に対する案件基盤は形成されている。
将来性の中心は、輪転機の技術を新聞市場以外へ転用できるかにある。AGV、自律走行清掃ロボット、搬送・保管設備、加工組立は、機械設計、制御、重量物搬送、大型加工、組立という既存能力を利用できる。
特にAGVは、標準製品を大量販売する競争ではなく、重量、床面、屋外環境、既存設備との連携など、顧客ごとの難条件へ対応する戦略を取る。大手FAメーカーの標準品で解決できない案件に対象を絞ることで、企業規模の差を補える可能性がある。
加工組立事業も、既存の大型設備と技能を外販できれば、輪転機案件の谷間における工場稼働率の改善につながる。設備を新規に一から取得する事業ではなく、保有資産を異なる市場へ転用できる点が特徴となる。
財務面では、2026年3月期末の現金及び現金同等物は82億7,600万円、純資産は105億1,900万円、自己資本比率は58.4%。2026年6月25日の時価総額約55億円を上回る純資産を保有しており、PBRは1倍を大きく下回る。
低PBRは市場評価の低さを表す一方、収益力の安定、受注残の利益化、新規事業の数値開示、復配が進めば、評価見直しの材料となる。会社は自己株式取得、2027年3月期の配当予定、機関投資家との対話強化を公表しており、従来より資本効率を意識した経営へ移行している。
2027年3月期の売上高予想は中期経営計画の100億円目標を上回る。今後の焦点は、売上規模ではなく、営業利益率7%から8%の定着、新規事業の構成比拡大、特別利益に依存しないROEの維持、配当の継続性となる。
弱みとリスク要因
新聞市場の構造縮小、受注変動、利益の質、生産能力が主要な監視点
最大の弱みは、主力顧客である新聞業界が構造的な縮小市場にあることだ。インターネットへの広告・購読需要の移行により新聞発行部数は長期的に減少し、印刷工場の統廃合や設備台数の削減が続く。
輪転機は更新時の受注金額が大きい反面、毎年均等に需要が発生しない。2022年3月期から2026年3月期までの受注高は57億9,100万円から155億2,300万円まで大きく変動しており、単年度の売上高やキャッシュフローを予測しにくい。
2026年3月期の受注急増は成長機会である一方、複数案件の設計、部材調達、製造、据付が重なる。人員、外注先、主要部材、工場設備の不足により納期が遅れた場合、売上計上時期や顧客の印刷計画へ影響する可能性がある。
大型受注では、契約当初の原価見積もりと実際の材料費、外注費、設計工数に差が生じるリスクがある。受注残が増えても、原価率が上昇すれば利益への寄与は限定される。
2027年3月期は売上高が前期比29.6%増の109億6,000万円となる一方、営業利益は2.9%減の7億円を予想する。営業利益率は8.5%から約6.4%へ低下する計算で、中期計画の7%から8%を下回る。
2026年3月期の当期純利益10億5,700万円には訴訟関連収入4億5,200万円が含まれる。会社予想では2027年3月期の当期純利益が5億6,000万円へ47.0%減少するため、2026年3月期のPER3.65倍だけで継続的な利益水準を判断することはできない。
連結決算上は単一報告セグメントであり、FA、加工組立、保守、新台輪転機の売上高と利益が分離されていない。このため、新聞関連事業への依存度がどの程度低下したか、新規事業が採算化したかを外部から定量的に検証しにくい。
AGVや自律走行ロボットの市場には、大手FAメーカー、物流機器メーカー、ロボットベンチャーが参入している。東京機械製作所のカスタマイズ力が評価されても、開発工数の増加、案件ごとの仕様差、販売網の不足によって量的拡大が利益拡大へつながらない可能性がある。
加工組立事業は既存設備を活用できる反面、設備維持費、人件費、電力費、外注費などの固定費負担を伴う。受注量が不足した場合や低採算案件が増えた場合、工場稼働率の改善だけでは利益率を確保できない。
2025年3月期末以降は自己株式が約65万株へ増加し、その後も自己株式取得を実施した。資本効率改善には寄与する一方、現金の使途は株主還元、新規事業投資、生産能力増強の間で適切に配分する必要がある。
2027年3月期は期末配当を予定しているものの、配当方針と金額は未定である。復配が実現しても、輪転機の受注変動が大きい状況では、配当を安定的に継続できる利益基盤が求められる。
PBRが1倍を下回る背景について会社自身も、輪転機需要の漸減、新規事業の成長性不足、無配、市場からの低い評価を挙げている。低い評価指標は自動的な割安を意味せず、事業構造転換が数値で確認できなければ低PBRが長期化する可能性がある。
時価総額が比較的小さく、材料公表時に株価が急変しやすい。2026年6月25日はストップ高となったが、受注発表、訴訟、資本政策、配当方針などの開示を受けて値動きが拡大するリスクを考慮する必要がある。
出典
- 東京機械製作所 会社概要
- 東京機械製作所 決算情報
- 東京機械製作所 適時開示情報
- 2023年3月期 決算短信
- 2024年3月期 決算短信
- 2025年3月期 決算短信
- 2026年3月期 決算短信
- TKSグループ中期経営計画
- 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について
- 東京機械製作所 新聞用輪転機
- 東京機械製作所 輪転機保守サービス事業
- 東京機械製作所 FA事業
- 東京機械製作所 加工組立事業
- SCREENホールディングス IRライブラリ
- SCREEN Truepress JET製品情報
- 小森コーポレーション IR情報
- Koenig & Bauer Annual Report 2025
本ページは、企業が公表した決算短信、有価証券報告書、適時開示、中期経営計画、公式製品情報などを基に作成した情報提供目的の資料であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価、時価総額、為替換算額、業績予想などは基準日時点の情報であり、その後変更される場合があります。投資判断は最新の開示資料を確認したうえで行ってください。

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