6754 アンリツ

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アンリツ 6754 東証P

ANRITSU CORPORATION|通信計測機器を主力に、PQA、環境計測、センシング&デバイス関連事業を展開する測定ソリューション企業。5G/6G、データセンター高速化、食品・医薬品向け品質保証、EV・電池試験などの検査・測定需要を取り込む。
※2026年6月17日時点の情報

事業内容

2026年3月31日終値ベースの時価総額は約3,504億円。期末終値2,738円に、2026年3月期末の自己株式控除後株式数127,991,904株を掛けた概算である。
アンリツは1895年創業、本社は神奈川県厚木市恩名5-1-1、代表者は濱田宏一氏、決算期末は3月31日。東京証券取引所プライム市場に上場する。
2026年3月期は、売上収益117,462百万円、営業利益14,828百万円、税引前利益16,147百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益11,677百万円。データセンター高速化、PQA需要、環境計測の取り込みなどを背景に増収増益となった。

通信計測事業

2026年3月期の外部顧客向け売上収益は68,774百万円、セグメント利益は10,782百万円。アンリツ最大の中核事業であり、2027年3月期会社予想では売上収益85,000百万円、セグメント利益16,500百万円を見込む。

主な製品は、デジタル通信・IPネットワーク用測定器、光通信測定器、モバイル通信測定器、RF・マイクロ波・ミリ波帯の汎用測定器、サービスアシュアランス関連ソリューションである。製品カテゴリーとしては、Bluetooth・WLAN用測定器、ケーブル・アンテナ・アナライザ、コンフォーマンステストシステム、シグナルアナライザ、ネットワークテスタなどが含まれる。

需要領域は、モバイル端末、通信チップセット、基地局、ネットワークインフラ、光デバイス、データセンター、通信キャリアの保守・監視など幅広い。2026年3月期は、クラウドサービスの高度化や生成AIの普及拡大に伴うデータ・トラフィック増加を背景に、800GEネットワーク、1.6TE光トランシーバー、PCIe Gen6、光海底ケーブル、オール光化などのテーマが事業環境として示されている。

モバイル領域では、5Gスマートフォン市場、Wi-Fi 7、NTN、Release 18、eRedCap、6Gの研究開発が測定需要につながる。5Gスマートフォン向け開発投資は成熟局面にある一方で、次世代通信規格や高速ネットワーク投資が新たな測定機会となる。

PQA事業

2026年3月期の外部顧客向け売上収益は31,033百万円、セグメント利益は3,318百万円。2027年3月期会社予想では売上収益33,000百万円、セグメント利益4,000百万円を見込む。

PQAはProducts Quality Assuranceの略で、食品、医薬品、化粧品などの製造ラインにおける品質保証を支える事業である。主な製品は、自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機、品質管理・制御システムである。

食品メーカーの人手不足を背景に、X線を用いた異物混入検査や包装品質検査など、品質保証プロセスの自動化・省人化に係る投資が継続している。日本市場では計量制度改正を背景とした自動重量選別機の需要も好調に推移している。

通信計測と比べると市場テーマは地味だが、食品・医薬品・日用品の製造ラインで継続的な検査需要がある点が特徴である。製品の安全性、品質安定、トレーサビリティ要求が高まるほど、PQA事業の役割は大きくなりやすい。

環境計測事業

2026年3月期の外部顧客向け売上収益は10,787百万円、セグメント利益は850百万円。2027年3月期会社予想では売上収益16,000百万円、セグメント利益1,000百万円を見込む。

主な製品・サービスは、EV・電池試験設備、電力計測器、データ収集システム、道路・ダム・河川などの監視ソリューションである。中期経営計画GLP2026では、EV・電池を重点開拓領域の一つとして掲げている。

2026年3月期は、電力計測器や電池充放電試験システムを手掛ける高砂製作所、データ収集システムや制御機器を提供するDEWETRON GmbHの取り組みが環境計測事業の拡大に寄与した。EV・電池領域では、バッテリー性能、充放電、安全性、電力変換効率の測定需要が見込まれる。

一方で、EV市場の投資判断は各国の政策、補助金、関税、完成車メーカーの生産計画に左右されやすい。成長余地は大きいが、通信計測やPQAに比べて事業拡大のスピードが外部環境に影響されやすい点には注意が必要である。

その他・センシング&デバイス等

2026年3月期の外部顧客向け売上収益は6,867百万円、セグメント利益は1,972百万円。2027年3月期会社予想では売上収益6,000百万円、セグメント利益1,500百万円を見込む。

その他区分には、センシング&デバイス、物流、厚生サービス、不動産賃貸などが含まれる。通信計測、PQA、環境計測に比べると売上規模は小さいが、アンリツグループの技術基盤や事業運営を支える領域である。

中期経営計画GLP2026では、ナノセンシング、光センシング、光デバイス、医薬品・メディカルなども将来領域として示されている。通信計測で培った高周波・光・信号処理の技術を、非通信領域へ展開できるかが将来性の焦点となる。

既存事業の周辺領域から収益化できれば、通信計測サイクルへの依存を和らげる効果がある。ただし、新規領域は市場形成や顧客開拓に時間がかかるため、短期的な業績寄与よりも中長期の選択肢として見る必要がある。

直近5年業績サマリー

項目(連結・百万円) 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期
会社予想
売上収益 105,387 110,919
+5,532 / +5.2%
109,952
△967 / △0.9%
112,979
+3,027 / +2.8%
117,462
+4,483 / +4.0%
140,000
+22,538 / +19.2%
営業損益 16,499 11,746
△4,753 / △28.8%
8,983
△2,763 / △23.5%
12,124
+3,141 / +35.0%
14,828
+2,704 / +22.3%
20,000
+5,172 / +34.9%
税引前損益
(IFRS)
17,150 12,438
△4,712 / △27.5%
9,951
△2,487 / △20.0%
12,737
+2,786 / +28.0%
16,147
+3,410 / +26.8%
20,000
+3,853 / +23.9%
親会社所有者帰属
当期純損益
12,796 9,272
△3,524 / △27.5%
7,675
△1,597 / △17.2%
9,257
+1,582 / +20.6%
11,677
+2,420 / +26.1%
15,000
+3,323 / +28.4%
EPS(一株利益) 93.98円 69.98円 58.29円 70.42円 91.20円 117.19円
PER
(期末日株価ベース)
16.5倍 17.4倍 21.2倍 19.1倍 30.0倍
PBR
(期末日株価ベース)
1.84倍 1.37倍 1.30倍 1.40倍 2.64倍
BPS 846.15円 890.75円 952.66円 963.38円 1,036.92円
純資産 114,442 117,516 125,525 124,268 132,717
営業CF 16,031 6,114
△9,917 / △61.9%
16,573
+10,459 / +171.1%
21,071
+4,498 / +27.1%
17,881
△3,190 / △15.1%
20,000
+2,119 / +11.8%
投資CF △8,706 △5,216 △3,643 △3,916 △14,681
財務CF △13,395 △11,409 △6,578 △12,257 △6,405
現金及び現金同等物 45,689 36,833 45,657 50,094 49,314
単位は百万円。EPS・BPSは円、PER・PBRは倍。
PER・PBRは各決算期末の終値を用いて算出。2027年3月期会社予想のPER・PBR・BPS・投資CF・財務CF・現金及び現金同等物は、期末株価または予想値が未公表のため空欄。2026年3月期末の発行済株式数は135,870,594株、自己株式控除後株式数は127,991,904株。継続企業の前提に関する注記は該当事項なし。

中期経営計画

中期経営計画 GLP2026

アンリツは、2024年度から2026年度までの3か年計画として「中期経営計画 GLP2026」を策定している。計画最終年度の2026年度に、売上収益140,000百万円、営業利益20,000百万円、営業利益率14%、当期利益15,000百万円、ROE12%を目指す方針である。

セグメント別では、通信計測で売上収益90,000百万円、営業利益15,000百万円、PQAで売上収益30,000百万円、営業利益3,600百万円、環境計測で売上収益13,000百万円、営業利益1,400百万円を掲げている。2026年3月期決算時点の2027年3月期会社予想は、売上収益140,000百万円、営業利益20,000百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益15,000百万円であり、GLP2026の全社数値目標に沿う水準である。

基本方針は、通信計測を軸としながら、6G、EV・電池、工業計測、医薬品・メディカルなどの新領域を育成することである。成長投資400億円以上、GLP2026期間の営業キャッシュフロー500億円以上、連結配当性向50%以上などを掲げ、通信以外の事業で営業利益の25%を構成することを目標にしている。
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競合他社

① Keysight Technologies(KEYS)

時価総額は約622.96億米ドル。通信計測、RF・マイクロ波、ネットワーク解析、プロトコル解析、5G/6G、データセンター試験でアンリツと競合する世界的な電子計測大手である。

Keysightの2026年度第2四半期は、売上高17.2億米ドル、GAAP純利益3.49億米ドル、非GAAP純利益4.97億米ドル。Communications Solutions Groupの売上は12.31億米ドル、前年同期比35%増となり、通信、防衛、データセンター関連の需要を取り込んでいる。

アンリツとは、5G/6G、モバイル端末、通信チップセット、基地局、ネットワークインフラ向けの通信計測で直接競合する。スペクトラムアナライザ、信号発生器、ネットワークアナライザ、プロトコルアナライザなど、研究開発から製造・検証までの測定器群でも比較対象になりやすい。

② VIAVI Solutions(VIAV)

時価総額は約130.41億米ドル。ネットワーク試験、光ファイバー試験、サービスアシュアランス、通信インフラ監視でアンリツと競合する企業である。

VIAVIの2026年度第3四半期は、売上高4.068億米ドル、前年同期比42.8%増。GAAP営業利益率は6.1%、非GAAP営業利益率は21.0%である。Network and Service Enablementの売上は3.215億米ドル、前年同期比54.4%増となった。

アンリツとは、通信キャリア、ネットワーク機器メーカー、データセンター事業者向けのネットワーク試験・監視領域で競合する。特に、光ファイバー・光通信ネットワークの構築、保守、認証試験、サービス品質管理で案件が重なりやすい。

③ Ralliant Corporation(RAL)

時価総額は約78.67億米ドル。Fortiveから分離した精密技術企業で、傘下にTektronix、Keithley Instrumentsなどの計測関連ブランドを持つ。

Ralliantの2026年第1四半期は、売上高5.35億米ドル、前年同期比11%増、純利益4,400万米ドル、調整後EBITDAマージン18.6%。Test & Measurement事業の売上は2.10億米ドル、前年同期比12%増となった。

アンリツとは、電子機器・通信機器の研究開発、検証、製造試験に使われる電子計測機器で競合する。通信計測そのものの専業色はKeysightやVIAVIほど強くないが、オシロスコープ、プローブ、ソースメジャーユニット、計測・解析ソフトウェアなどは、研究開発部門や品質保証部門の設備投資で比較対象になりやすい。

強みと将来性

6G・データセンター高速化を捉える通信計測技術と、新領域への展開力

アンリツの強みは、通信計測で培った測定技術を、モバイル、光通信、IPネットワーク、RF・マイクロ波・ミリ波、サービスアシュアランスまで広げている点である。通信規格の世代交代では、商用化より前にチップセット、端末、基地局、光デバイス、ネットワーク機器の検証需要が発生するため、測定器メーカーは研究開発サイクルの上流に位置する。

2026年3月期は通信計測事業の外部顧客向け売上収益が68,774百万円と前年から減少した一方、セグメント利益は10,782百万円に増加した。5Gスマートフォン向けの投資が成熟する中でも、データセンター高速化、800GE、1.6TE、PCIe Gen6、Wi-Fi 7、NTN、6Gなどの開発テーマが複数存在する点は、同事業の将来性を支える。

PQA事業は、食品・医薬品・化粧品の製造ラインにおける品質保証需要を取り込む事業であり、通信投資サイクルとは異なる需要構造を持つ。2026年3月期のPQA事業は売上収益31,033百万円、セグメント利益3,318百万円となり、安定的な成長領域として全社を支えている。

環境計測事業も、EV・電池、電力計測、データ収集、社会インフラ監視など、通信以外の成長分野を担う。2026年3月期の売上収益は10,787百万円となり、2027年3月期会社予想では16,000百万円まで伸びる見通しである。通信計測だけに依存しない事業ポートフォリオを作ろうとしている点は、中長期の評価材料である。

財務面では、2026年3月期末の資本合計は132,717百万円、親会社所有者帰属持分比率は76.6%であり、自己資本の厚みがある。営業キャッシュフローも17,881百万円を確保しており、GLP2026で掲げる成長投資、6G先行投資、EV・電池関連投資を進める余力を一定程度持っている。

2027年3月期会社予想は、売上収益140,000百万円、営業利益20,000百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益15,000百万円。通信計測の回復、PQAの安定成長、環境計測の拡大が同時に進む場合、全社の利益率改善につながる可能性がある。

弱みとリスク要因

通信投資サイクル依存、海外競合、EV投資の不透明感

最大のリスクは、主力の通信計測事業が通信業界の研究開発・設備投資サイクルに左右されやすいことである。通信計測事業の売上収益は、2022年3月期の73,320百万円から2026年3月期の68,774百万円へ低下している。5Gスマートフォン開発投資、基地局投資、通信キャリアの設備投資、チップセット・端末メーカーの開発計画が鈍ると、受注、売上、利益に影響が出やすい。

競争環境も厳しい。Keysightは通信計測、RF・マイクロ波、ネットワーク解析、5G/6G、データセンター試験まで広範に展開しており、アンリツと重なる領域が広い。VIAVIは光ファイバー試験、ネットワーク監視、サービスアシュアランスに強く、通信キャリアやデータセンター向けで競合しやすい。RalliantもTektronixやKeithleyを通じて電子計測・開発検証機器の領域で隣接競合となる。

海外売上比率が高い点も注意点である。2026年3月期の地域別売上収益は、日本39,885百万円に対し、米州28,627百万円、EMEA17,348百万円、アジア他31,601百万円である。為替変動、輸出規制、地政学リスク、各国の通信投資政策は、業績や受注環境に影響を与える可能性がある。

環境計測事業は成長領域だが、EV・電池関連投資は完成車メーカーや電池メーカーの投資判断に左右される。EV需要の調整、関税政策、補助金制度の変更、電池工場の投資延期が起きると、環境計測事業の成長ペースが鈍化する可能性がある。

キャッシュフロー面では、2026年3月期の営業キャッシュフローは17,881百万円と黒字を維持したが、投資キャッシュフローは△14,681百万円となった。子会社取得や有形固定資産取得を伴う成長投資は将来の事業拡大につながる一方、投資回収が遅れた場合はフリーキャッシュフローの重荷になる。

株価面では、2026年3月期末株価2,738円ベースのPERは30.0倍、PBRは2.64倍まで上昇している。2027年3月期会社予想の達成、通信計測の回復、環境計測の拡大が株価に織り込まれている場合、受注鈍化や利益率低下に対する株価感応度は高まりやすい。

出典

本ページは公開情報をもとに作成した個別銘柄分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。掲載内容は作成時点の情報に基づきます。投資判断は必ず最新の会社開示資料を確認し、ご自身の責任で行ってください。

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