フェローテック 6890東証S
Ferrotec Corporation|真空シール、石英、セラミックス、CVD-SiCなどの半導体製造装置部材を中核に、サーモモジュール、パワー半導体用基板、車載用熱制御部品を世界展開する。
※2026年7月23日時点の情報
事業内容
2026年7月23日の時価総額は約4,834億円。同日の終値8,940円と、2026年7月時点の発行済株式総数54,070,000株を基準に算出した。前日の業績予想上方修正と訂正開示を受け、同日はストップ高水準で取引を終えた。
フェローテックは1980年9月27日設立。本社は東京都中央区日本橋二丁目3番4号 日本橋プラザビル5階。代表取締役社長・グループCEOは賀賢漢、上場市場は東京証券取引所スタンダード市場。2025年7月に事業子会社を吸収合併し、商号をフェローテックホールディングスからフェローテックへ変更した。2026年度から決算期を12月へ変更し、2026年12月期は移行期間の9カ月決算となる。
2026年3月期は売上高288,933百万円、営業利益27,561百万円、経常利益26,063百万円、親会社株主に帰属する当期純利益14,886百万円。売上高は前期比5.3%増、営業利益は14.4%増、経常利益は2.0%増、純利益は5.1%減となった。半導体等装置関連と電子デバイスが増収増益となる一方、車載関連は減収減益、持分法投資損失と税負担が純利益を抑えた。
半導体等装置関連事業|AI半導体投資を取り込む中核部材群
半導体等装置関連事業 セグメント業績推移
売上高とセグメント損益を同一縮尺で表示
単位:百万円
半導体等装置関連事業は、真空シール、各種製造装置向け金属加工製品、石英製品、ファインセラミックス、CVD-SiC、シリコンパーツ、石英坩堝、装置部品洗浄、再生ウエーハなどを扱う最大セグメントである。
2026年3月期の売上高は185,139百万円、セグメント利益は16,048百万円。売上高は前期比12.0%増、利益は30.4%増となり、利益率は前期の7.4%から8.7%へ改善した。
2022年3月期から2023年3月期にかけては、半導体設備投資と中国市場の拡大を背景に売上高、利益とも急増した。
2024年3月期は顧客在庫調整や半導体市況の減速を受け、売上高は小幅減、利益は大幅減となった。
2025年3月期は売上高が回復した一方、新増設拠点の立ち上げ費用、太陽光向け石英坩堝の採算悪化などでセグメント利益率が低下した。
2026年3月期は半導体製造装置メーカーの生産増強を取り込み、セラミックス、真空シール、金属加工、石英製品、装置部品洗浄、再生ウエーハが伸長した。
真空シールは、回転軸を大気側から真空側へ貫通させながら気密性を維持する部品で、成膜、エッチング、イオン注入など真空環境を使う装置に組み込まれる。
装置販売時の初期需要だけでなく、装置稼働後の交換、保守、改造需要が発生するため、設置台数と工場稼働率の双方に連動する。
石英製品は高純度、耐熱性、低汚染性が必要な熱処理・成膜工程で使用され、チューブ、ボート、治具などの消耗部材として交換需要を持つ。
ファインセラミックスとCVD-SiCは、プラズマ、腐食性ガス、高温環境にさらされる装置内部で使われる。材料純度、耐食性、寸法精度、表面品質、顧客認定が参入障壁となる。
2026年3月期のCVD-SiCは中国工場の立ち上げ難航でやや減収となり、生産歩留まりと認定進捗が改善余地として残った。
石英坩堝は太陽光パネル製造メーカー向けの出荷抑制を受け、半導体向け部材の好調と異なる市況要因が利益を押し下げた。
部品洗浄は半導体工場の装置稼働に伴う汚染物除去と部材再利用を担うため、装置販売の循環より稼働率との連動性が高い。
マレーシア・クリムでは石英、セラミックス、金属加工の量産を拡大し、日本・欧米顧客の中国外生産ニーズへ対応する。
クリム第2工場は2026年8月の建屋完成、年内稼働開始を計画しており、顧客認定、生産量増加、固定費吸収が収益化の焦点となる。
中国では北京、紹興、武漢で部品洗浄、金属加工、セラミックス、パワー半導体用基板の拠点増強を進め、顧客近接型の供給体制を強化する。
2026年7月の業績予想上方修正では、生成AI関連の半導体製造装置向けセラミックス、石英、真空シール、金属加工の需要増が主因として明記された。
短期の確認点は高収益製品の売上構成、マレーシア工場の立ち上げ、中国工場の稼働率、CVD-SiC歩留まり、石英坩堝の赤字縮小、設備投資と減価償却費である。
電子デバイス事業|光トランシーバー向け熱制御が成長軸
電子デバイス事業 セグメント業績推移
2022年3月期・2023年3月期は当時の開示区分、2024年3月期以降は車載用途分離後の区分
単位:百万円
電子デバイス事業は、サーモモジュール、パワー半導体用基板、磁性流体、サーミスタを含むセンサなどを展開する。
2026年3月期の売上高は57,584百万円、セグメント利益は10,465百万円。売上高は前期比14.1%増、利益は26.9%増、利益率は18.2%となった。
2022年3月期と2023年3月期の開示値には、後に車載関連事業へ分離された車載用途のサーモモジュール、パワー半導体用基板、センサが含まれる。
2024年3月期以降のグラフは、車載用途を分離した遡及修正後の区分であり、長期比較では区分変更を考慮する必要がある。
サーモモジュールはペルチェ効果により電流方向に応じて吸熱と発熱を制御し、冷媒を使わず精密な温度調整を行う電子部品である。
用途は半導体製造装置、通信機器、医療・分析機器、家電、車載機器などに広がる。
足元の成長ドライバーは、生成AIデータセンター向け高速光トランシーバーに搭載される小型サーモモジュールである。
光トランシーバー内のレーザーダイオードは発熱し、波長と通信品質を安定させるため精密な温度制御が必要となる。
同社は800G、1.6T、3.2Tへ高速化する通信規格に向け、TEC、サーミスタ、DPC基板を組み合わせて熱制御、温度検知、実装信頼性を支える。
公式製品情報では、レーザーダイオード冷却用TECについて主要顧客内で約70%のシェアを持つとの自社調査値を示している。
入庫、加工、搬送、中間検査、最終検査、梱包、出荷の自動化と量産能力を競争優位として掲げている。
需要が急増する局面では、顧客認定済みの量産能力と短納期供給が、単品性能と同じくシェアを左右する。
パワー半導体用基板は、パワーモジュールの放熱、絶縁、電気接続を担い、産業機器、再生可能エネルギー、データセンター電源、車載インバーターなどに使われる。
DPC基板は微細配線に対応し、光通信、高出力半導体レーザー、LED、LiDARなどで採用される。
サーミスタは温度による抵抗値変化を利用するセンサで、光トランシーバーではレーザーの温度検知に使われる。
2026年3月期は光トランシーバー向けサーモモジュールが売上と利益をけん引し、センサも連結期間差の影響を含め増収となった。
2026年7月の上方修正でも、AIデータセンター用光トランシーバー向けサーモモジュールの需要増が主要因として明記された。
短期の評価では通信速度別の量産移行、顧客内シェア、増産投資、製品ミックス、歩留まり、単価低下の有無を追う必要がある。
車載関連事業|EV・パワー半導体需要の調整局面
車載関連事業 セグメント業績推移
2024年3月期以降の遡及修正・新設区分。2023年3月期以前は独立区分なし
単位:百万円
車載関連事業は、車載用途のサーモモジュール、パワー半導体用基板、センサを対象とする。
2025年3月期から独立した報告セグメントとなり、2024年3月期の数値は変更後の区分で遡及修正された。
2023年3月期以前は電子デバイス事業に含まれており、独立した売上高と利益は開示されていない。
2026年3月期の売上高は29,245百万円、セグメント利益は2,694百万円。売上高は前期比4.0%減、利益は25.1%減となった。
セグメント利益率は2024年3月期の15.7%から2025年3月期の11.8%、2026年3月期の9.2%へ低下している。
主因はEV向けを含むパワー半導体用基板の需要調整と、車載サーモモジュールの苦戦である。
車載用パワー半導体基板は、インバーターや電力変換器で半導体素子の熱を逃がしながら電気絶縁を確保する。
EVの普及、急速充電、高電圧化、SiCパワー半導体の採用拡大は中長期需要の基盤となる一方、自動車メーカーの生産計画と在庫調整の影響を受ける。
車載サーモモジュールは、シート空調、バッテリー温調、センサ温度制御などの用途を持つ。
車載部品は採用までの認定期間が長く、一度採用されるとモデル期間中の継続供給が見込める一方、量産立ち上げ遅延やモデル変更の影響も大きい。
センサは温度検知を中心に車載電装と熱管理で使われ、品質保証、長期信頼性、トレーサビリティが競争条件となる。
同社はパワー半導体用基板の材料内製化、生産拠点拡充、自動化によって原価競争力を高める方針を示している。
マレーシア・ジョホール工場はパワー半導体用基板の中国外生産拠点として、地政学リスク分散と顧客供給網の複線化を担う。
中国では紹興工場でパワー半導体用基板の能力増強を計画しており、中国顧客への近接供給を狙う。
車載関連はAI需要で急伸する半導体等装置関連、電子デバイスとは需要局面が異なり、連結業績の分散要因となる。
一方、設備稼働率が低下すると固定費負担が利益率へ直接表れるため、売上回復前の増産投資には注意が必要である。
確認点はEV・産業向け基板の受注、車載サーモモジュールの採用車種、センサ売上、工場稼働率、材料内製化効果、価格競争である。
その他事業|事業ポートフォリオと資産効率の見直し
その他事業 セグメント業績推移
売上高とセグメント損益を同一縮尺で表示
単位:百万円
その他事業には、ソーブレード、工作機械、表面処理、太陽電池用シリコン製品など、報告セグメントに含まれない事業が計上されてきた。
2026年3月期の売上高は16,964百万円、セグメント損失は297百万円。売上高は前期比39.8%減となり、前期の843百万円の利益から赤字へ転じた。
2022年3月期と2023年3月期は小幅な黒字だった。
2024年3月期は1,197百万円の損失となり、太陽光関連や周辺事業の採算変動が全社利益の抑制要因となった。
2025年3月期は売上高28,194百万円、利益843百万円へ回復したが、2026年3月期は事業構成の変化と需要減速により再び赤字となった。
ソーブレードと工作機械は製造業の設備投資、補修、加工需要に連動する。
太陽電池用シリコン製品は太陽光パネルの供給過剰、価格下落、メーカーの稼働調整による影響を受けやすい。
半導体向け高付加価値部材と比べ、汎用品や市況商品は価格競争と在庫評価の影響が大きい。
同社は成長分野への資本配分を優先し、資産売却と事業ポートフォリオの見直しを中期計画に組み込んでいる。
2026年3月期から2027年12月期にかけてグループ資産500億円の売却を想定しており、低収益資産の圧縮と財務改善を進める方針である。
その他事業の縮小は売上高を押し下げても、赤字事業の整理と資本効率改善につながる場合がある。
一方、売却損益、減損、連結範囲変更は純利益と純資産を変動させるため、本業の営業利益と区別して評価する必要がある。
投資判断ではセグメント赤字の継続性、資産売却価格、売却資金の使途、撤退費用、残存事業の採算を確認する。
全社消去・本社費用は別途調整額として営業利益へ反映されるため、各セグメント利益の合計と連結営業利益は一致しない。
1.会社予想と実績
2023年3月期から2026年3月期は、前期末決算短信で公表された期初の通期会社予想と通期実績を比較しています。2026年12月期は、2026年7月22日公表の訂正版による最新予想です。
達成率=実績÷会社予想×100。対象年度の会社予想は単一値で、レンジ予想はありません。レンジ予想がある場合は中央値を使用します。2026年12月期は決算期変更に伴う9か月予想で、実績未発表のため達成率は表示していません。
2.達成・未達理由
半導体製造装置・マテリアル、5G通信、EV向けパワー半導体基板の需要が期初想定を上回り、増産設備も寄与しました。円安に伴う為替差益約54億円が経常利益を押し上げ、純利益も大幅超過しました。
中国ローカル装置メーカー、石英坩堝、CVD-SiC、光トランシーバー、パワー半導体基板が売上を支えました。一方、半導体在庫・設備投資の調整、減価償却費と販管費の増加、為替差益の縮小が利益を圧迫しました。
生成AIサーバー投資、中国需要、欧米半導体需要の回復で売上は大幅超過しました。増産投資に伴う償却・固定費、製品構成、石英坩堝の採算悪化、車載用DCB基板の競争激化、持分法投資損失が利益未達の主因です。
生成AI向け光トランシーバー、半導体装置部品・マテリアル、工場稼働率と製品構成の改善が増収増益を支えました。EV需要調整とAMB基板の販価下落で営業利益はわずかに未達。経常利益は投資有価証券評価益で達成しましたが、税負担増と固定資産処分損等で純利益は下振れしました。
7月22日の訂正版で、5月予想から売上8.6%、営業利益57.9%、経常利益52.8%、純利益43.5%を上方修正しました。生成AI関連の装置部品・マテリアルと光トランシーバー向けサーモモジュールの急増、高採算製品の構成比上昇を織り込んでいます。
3.事業セグメントの自信度
2025年3月期から「車載関連事業」が独立しました。2022年3月期から2024年3月期の車載動向は、当時の「電子デバイス事業」に含まれる関連コメントを追跡しています。最新修正予想ではセグメント別数値は開示されていません。
半導体等装置関連事業
製造装置メーカーからの強い増産要請を受けていること
設備投資と高稼働率を背景に、翌期の増産・拠点貢献を明確に見込んでいました。実績は売上82,122百万円、営業利益15,886百万円。
欧米の大手製造装置メーカーの需要減少に直面するなか、中国メーカーへの需要開拓、深耕を進める
メモリ調整と輸出規制を警戒し、欧米減を中国・坩堝・東南アジアで補う構図でした。
需要は回復基調にあると考えています。
回復を見込む一方、製品別に時期差があると認識。実績は売上130,072百万円、営業利益16,260百万円。
米中半導体摩擦の影響から中国への販売が抑えられるとの見立て
マレーシア・中国ローカル需要に期待しつつ、WFE全体は前年並み、石英坩堝は減収想定でした。
半導体前工程製造装置需要(WFE)の予想値が上方修正されており、半導体関連企業への需要の増進が期待されます。
生成AI・メモリ投資を背景に回復確度が上昇。実績は売上185,139百万円、営業利益16,048百万円。
需要も急速に高まっていること、また収益性が高い製品の売上が増加していること
7月上方修正の中心事業。セラミックス、石英、真空シール・金属加工の需要増を反映しています。
需要増だけでなく高採算品の構成比上昇まで織り込んだ点が強い一方、増産投資の立上げ・償却負担が達成条件です。
電子デバイス事業
パワー半導体の需要成長が見込めることから、大きく売上を伸ばすことができると考えております。
5G、医療、EV向けを成長軸とし、実績は売上27,023百万円、営業利益6,689百万円。
本年も大きく成長できるものと見込んでおります。
通信向けサーモモジュールと中国EV向けAMB基板に強い成長期待。実績は売上53,024百万円。
生成AIで注目される大容量通信タイプの光トランシーバー向けの拡販を見込んでおり
生成AIを新たな中核用途として明示。電子デバイス実績は売上67,600百万円、営業利益10,890百万円。
生成AIサーバー投資増大に伴う大容量通信タイプの光トランシーバー向けの拡販を引き続き見込んでおり
光トランシーバーとセンサの通期化を成長源と認識。実績は売上50,487百万円、営業利益8,250百万円。
旺盛な生成AIサーバー投資を背景に大容量通信タイプの光トランシーバー向け拡販を引き続き見込んでおります。
実績でも光トランシーバー向けが利益に大きく貢献し、売上57,584百万円、営業利益10,465百万円。
AIデータセンター用の光トランシーバー向けサーモモジュールの需要が増加している
7月上方修正のもう一つの中心。利益予想の増額幅が売上を大幅に上回る根拠の一部です。
AIデータセンター投資の恩恵が直接的で、会社の表現も一段強まりました。需要集中と顧客投資サイクルの反転が主なリスクです。
車載関連事業
自動車関連もEV、自動運転システムなどへの移行が徐々に進むと考えており、関連需要が伸長すると見込んでおります。
EV普及を長期成長要因とみて、AMB基板の増産投資を進めていました。
中国EV車向けの量産、及び他地域のEV車への採用等で本年も大きく成長できるものと見込んでおります。
中国量産と地域拡大の両面で強気でした。
自動車関連もEV、自動運転システムなどの需要が伸びると見込んでおります。
EV・自動運転の拡大を前提に成長継続を見込んでいました。
パワー半導体基板が高い供給力を背景にEV車向けAMB基板、DCB基板ともに増収を見込んでおります。
供給力には自信を示した一方、実績はDCB競争激化で採算低下。売上30,463百万円、営業利益3,599百万円。
EV車市場の需要回復を予想し、パワー半導体基板向けAMB基板、DCB基板ともに増収を見込んでおります。
回復前提の計画ですが、実績はEV調整とAMB販価下落で売上29,245百万円、営業利益2,694百万円。
7月の上方修正理由は半導体等装置関連と電子デバイスに集中し、車載固有の追加説明はありません。従来のEV需要回復が達成条件です。
長期需要には期待できるものの、直近実績は数量・価格とも弱い状態です。最新上方修正の主役ではありません。
その他
今期は主として半導体製造装置向けの工作機械が大きく売上を伸ばし利益貢献いたしました。
工作機械の伸長で黒字転換。売上24,674百万円、営業利益315百万円。
第2四半期連結会計期間より連結化した東洋刃物株式会社の売上、利益が、第3四半期連結会計期間よりソーブレードに含まれております。
増収はM&A寄与が中心で、需要の強さを示す表現は限定的でした。
工作機械は前年同期比で出荷が減少しました。
営業損失1,197百万円へ悪化し、明確に弱い局面でした。
工作機械、業務用洗濯機が前年同期比で増加しましたが、太陽電池用シリコン製品の出荷は減少しました。
改善と減少が混在。営業利益843百万円へ黒字回復しました。
工作機械が前期比で大きく減収、太陽電池用シリコン製品も減収となりました。
売上16,964百万円、営業損失297百万円で再び弱含みました。
最新上方修正では「その他」固有の改善材料は示されていません。全社成長への寄与は限定的と推理します。
工作機械・太陽電池関連の弱さが続き、最新修正の主因にも含まれません。
4.最新予想信頼度
最新予想は2026年7月22日に足元の需要を踏まえて上方修正され、同日公表の訂正版では売上高380,000百万円、営業利益60,000百万円、経常利益55,000百万円、親会社株主帰属純利益33,000百万円となりました。期初予想より情報の鮮度は高い一方、利益の増額幅が非常に大きく、製品構成と稼働率への依存度も高まっています。
達成できると判断する理由
- 7月の修正は期初計画ではなく、足元の受注・需要と高採算製品の販売増を踏まえたものです。
- 生成AI関連の半導体装置部品・マテリアルと、AIデータセンター向けサーモモジュールという二つの主力領域が同時に拡大しています。
- 売上高は2023年3月期から2026年3月期まで4年連続で期初予想を達成しており、数量面の計画精度は比較的高い実績があります。
- 2026年3月期は工場稼働率、新工場採算、製品構成が改善し、営業利益が前期比14.4%増となりました。
- 最新修正は売上より利益の増額率が大きく、高付加価値品の構成比が会社想定どおりなら利益の上振れ余地があります。
達成できないと判断する理由
- 営業利益60,000百万円は直前12か月実績27,561百万円の約2.18倍で、営業利益率も9.5%から15.8%へ大幅改善する計画です。
- 営業利益は過去4年度の期初予想に対して3年度未達で、償却費、固定費、製品構成、立上げ遅延の影響を受けやすい傾向があります。
- 車載関連ではEV需要調整とAMB基板の販価下落が続き、全事業が一様に好調なわけではありません。
- 増産に伴う設備立上げ、材料・エネルギー・物流費、為替変動が、高採算品の増加効果を相殺する可能性があります。
- 上方修正幅が大きいため、AI投資やメモリ設備投資の時期ずれが発生すると利益計画への感応度が高くなります。
収益計上・利益偏重を見る際の注意点
2026年12月期は決算期変更の経過期間で、親会社の対象期間は2026年4月から12月までの9か月です。一方、連結子会社は12月決算のため、子会社の2026年1月から12月までの売上・損益が連結されます。このため、直前の12か月実績との単純比較や、四半期進捗率の機械的な年率換算は適切ではありません。
最新の移行期実績は未発表のため進捗率は掲載していません。今後進捗率を用いる場合も、あくまで実績÷会社予想の単純進捗率であり、連結対象期間の違いを調整した数値ではない点に注意が必要です。
最終判断
生成AI関連需要が会社想定どおり継続し、セラミックス・石英・真空部品と光トランシーバー向けサーモモジュールの高採算品比率が上昇するなら、最新予想は達成可能と判断します。反対に、設備立上げ遅延、AI・メモリ投資の時期ずれ、EV関連の価格下落、材料・物流コスト増が重なる場合は、売上よりも営業利益・純利益が未達となる可能性が高まります。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022/3 | 2023/3 | 2024/3 | 2025/3 | 2026/3 | 2026/12 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 133,821 | 210,810+76,989 / +57.5% | 222,430+11,620 / +5.5% | 274,390+51,960 / +23.4% | 288,933+14,543 / +5.3% | 380,000+91,067 / +31.5% |
| 営業損益 | 22,600 | 35,042+12,442 / +55.1% | 24,872-10,170 / -29.0% | 24,089-783 / -3.1% | 27,561+3,472 / +14.4% | 60,000+32,439 / +117.7% |
| 経常損益 | 25,994 | 42,448+16,454 / +63.3% | 26,537-15,911 / -37.5% | 25,558-979 / -3.7% | 26,063+505 / +2.0% | 55,000+28,937 / +111.0% |
| 当期純利益 | 26,659 | 29,702+3,043 / +11.4% | 15,154-14,548 / -49.0% | 15,692+538 / +3.6% | 14,886-806 / -5.1% | 33,000+18,114 / +121.7% |
| EPS | 493.05円 | 549.32円+56.28円 / +11.4% | 280.27円-269.06円 / -49.0% | 290.22円+9.95円 / +3.6% | 275.31円-14.91円 / -5.1% | 610.32円+335.01円 / +121.7% |
| PER | 5.58倍 | 6.04倍 | 10.55倍 | 9.21倍 | 22.81倍 | 14.65倍 |
| PBR | 1.14倍 | 0.98倍 | 0.78倍 | 0.61倍 | 1.31倍 | - |
| BPS | 2,423.19円 | 3,397.98円+974.79円 / +40.2% | 3,780.45円+382.47円 / +11.3% | 4,380.08円+599.63円 / +15.9% | 4,787.63円+407.55円 / +9.3% | - |
| 純資産 | 160,957 | 249,656+88,699 / +55.1% | 278,166+28,510 / +11.4% | 323,549+45,383 / +16.3% | 362,075+38,526 / +11.9% | - |
| 営業CF | 17,833 | 43,024+25,191 / +141.3% | 28,720-14,304 / -33.2% | 26,066-2,654 / -9.2% | 29,255+3,189 / +12.2% | - |
| 投資CF | -29,399 | -68,760-39,361 / -133.9% | -92,400-23,640 / -34.4% | -39,627+52,773 / +57.1% | -66,856-27,229 / -68.7% | - |
| 財務CF | 30,601 | 68,718+38,117 / +124.6% | 60,419-8,299 / -12.1% | 18,965-41,454 / -68.6% | 38,798+19,833 / +104.6% | - |
| 現金及び現金同等物 | 52,579 | 95,905+43,326 / +82.4% | 96,806+901 / +0.9% | 108,899+12,093 / +12.5% | 113,960+5,061 / +4.6% | - |
中期経営計画
2026年3月期決算説明・中期経営計画|Ex-ChinaとAI需要へ重点配分
2026年5月公表の中期経営計画は、2025年計画をローリング更新し、2026年12月期から2028年12月期を対象とする。日本・欧米顧客の中国外生産ニーズへ対応するマレーシア量産拠点、中国顧客への近接供給、AI・データセンター関連、半導体関連、電子デバイス、車載関連の拡大を基本方針とする。
2026年7月22日の業績予想訂正後、2026年12月期予想は中期計画の初年度目標を上回った。会社は中期計画の数値目標を今後の業績動向を確認したうえで改めて検討・公表するとしている。
数値目標
訂正後の2026年12月期会社予想は、売上高380,000百万円、営業利益60,000百万円、経常利益55,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益33,000百万円。移行期の9カ月決算だが、連結子会社は1月から12月までの12カ月分を取り込むため、連結業績への期間短縮影響は限定的としている。
現行中期計画は2027年12月期に売上高400,000百万円、営業利益48,000百万円、純利益30,000百万円、2028年12月期に売上高450,000百万円、営業利益57,000百万円、純利益38,000百万円を掲げる。2028年12月期の営業利益率は12.7%、自己資本比率は各年度40%を計画する。
基本方針
事業成長ではマレーシア・クリムとジョホールの生産能力を拡大し、Ex-China需要を取り込む。同時に中国では北京、紹興、武漢の拠点を増強し、国産化需要と高付加価値品の販売を拡大する。
収益性向上では工場の生産効率、グループ横断のコスト管理、デジタル化、自動化、AI活用、研究開発、品質管理を強化する。高収益製品の構成比上昇と新工場の固定費吸収が営業利益率改善の条件となる。
財務・株主還元
設備投資は2026年12月期65,000百万円、2027年12月期55,000百万円、2028年12月期40,000百万円を計画する。2026年3月期から2027年12月期にグループ資産50,000百万円の売却を想定し、有利子負債と資本効率の改善へ充当する。
株主還元はDOE下限3.5%、総還元性向50%を目指す。2026年12月期から2028年12月期に25,000百万円の自己株式取得を行う方針で、成長投資、財務規律、配当、自社株買いの配分が評価軸となる。
中期経営計画資料へ競合他社
① 信越化学工業(4063)
信越化学工業はシリコンウエハー、フォトレジスト、マスクブランクス、合成石英、半導体封止材料などを世界規模で供給する総合化学・電子材料企業である。
フェローテックとは、高純度石英、シリコン関連材料、半導体製造工程向け部材で競合する。
信越化学は材料開発から量産、世界供給までを一体運営し、シリコンウエハーと露光関連材料で規模、顧客基盤、研究開発力を持つ。
フェローテックは真空シール、金属加工、石英加工、セラミックス、CVD-SiC、装置部品洗浄を横断して提供できる装置部材ポートフォリオで差別化する。
2026年3月期は売上高2兆5,739億円、営業利益6,352億円、経常利益7,082億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,744億円。
営業利益は前期比約14%減となったが、営業利益率は24.7%で、フェローテックを大きく上回る。
半導体材料全般の価格、先端ロジック・メモリー需要、顧客設備投資、供給能力が両社比較の主要変数となる。
石英加工部材では材料純度に加え、加工精度、納期、交換需要への対応、顧客認定が競争条件となる。
② SUMCO(3436)
SUMCOは半導体用シリコンウエハーの専業大手で、300mmウエハーを中心に先端ロジック、DRAM、NANDなどへ供給する。
フェローテックとの製品重複は限定的だが、シリコンパーツ、石英坩堝、再生ウエーハ、装置部材の需要を左右する半導体投資サイクルの比較対象となる。
AI・データセンター向け先端ロジックとメモリー需要が好調な一方、非先端ロジックと200mm以下では在庫調整と最終需要停滞が続く。
2026年12月期第1四半期は売上高101,402百万円、営業損失5,273百万円、経常損失7,965百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失8,469百万円。
先端品の需要増だけでは全社固定費を吸収できず、成熟品の稼働率と価格が損益を左右している。
フェローテックも新工場投資と減価償却負担を抱えるため、設備稼働率、長期契約、価格交渉力、先端品比率の比較が重要となる。
SUMCOのウエハー出荷と在庫動向は、半導体工場の稼働率、装置部品洗浄、交換用石英・セラミックス需要を読む先行・同時指標となる。
③ MARUWA(5344)
MARUWAはセラミック部品、電子部品・デバイス、半導体製造装置関連部材、照明機器を展開する。
半導体製造装置向けの超高純度SiC部材、窒化アルミニウム部品、石英ガラス、セラミック気密端子で、フェローテックのファインセラミックス、CVD-SiC、石英製品と直接競合する。
競争条件は材料純度、耐プラズマ性、耐食性、熱伝導性、絶縁性、寸法精度、表面粗さ、大型部材対応、歩留まり、顧客認定である。
2026年3月期は売上高74,476百万円、営業利益24,976百万円、経常利益26,321百万円、親会社株主に帰属する当期純利益18,163百万円。
営業利益率は33.5%、自己資本比率は90.5%で、高収益なセラミック部品と強固な財務体質を持つ。
車載関連の弱含みと汎用メモリー向け回復の期ずれで通期減益となった一方、次世代高速通信関連は高水準で推移した。
フェローテックは製品群の幅、真空シール、金属加工、装置部品洗浄、日中マレーシアの量産体制で対抗する。
MARUWAは最も直接的な製品競合であり、両社のセラミックス・SiC受注、利益率、設備投資、顧客認定の比較が重要となる。
出典
- フェローテック 公式サイト
- フェローテック 会社概要
- フェローテック 主力製品
- フェローテック 半導体等装置関連事業
- フェローテック 電子デバイス事業
- フェローテック 車載関連事業
- フェローテック 光トランシーバー向け電子デバイス技術
- フェローテック IR情報
- フェローテック 中長期経営方針資料
- フェローテック 2026年3月期決算説明・中期経営計画
- フェローテック 2026年12月期通期連結業績予想修正の訂正
- 信越化学工業 IR情報
- SUMCO IR情報
- MARUWA 投資家情報
本ページは公開情報を基に作成した企業分析であり、特定の有価証券の売買を推奨または勧誘するものではありません。業績予想、株価、時価総額、投資指標、製品需要、中期経営計画及び設備投資計画は変更される可能性があります。投資判断は最新の適時開示、決算資料及び製品情報を確認したうえで、自身の責任で行ってください。

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