8058 三菱商事株式会社
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事業内容と業績
2026年度の組織改編で8グループから7グループ体制へ変更。比較対象は2027年3月期中間短信の組替再表示による2026年3月期中間と、2027年3月期中間。セグメント利益は社内金利賦課制度見直し反映後の親会社帰属利益、収益との比率は独自計算の参考値です。棒グラフの収益と利益は別尺度で描画しています。
エネルギー&パワーソリューション
天然ガス、LNG、発電・電力販売、再生可能エネルギー、総合エネルギー事業を広く展開するグループ。2026年度に旧「地球環境エネルギー」と旧「電力ソリューション」が統合された。ガス田などの上流開発と輸送・LNG製造・販売を結び付け、電力発電・小売から再エネ、低炭素事業までのバリューチェーンを運営する。米国シェールガス、北米LNG、欧州総合エネルギー事業等への投資が収益の重要な柱。原油・ガス・電力市況、販売数量、為替に加え、新規投資・権益の稼働状況が業績を左右する。
マテリアルソリューション
製造業、建設、インフラを支える素材の流通・加工・製造・販売を手掛ける。鉄鋼製品分野ではメタルワンを通じた製品の流通・加工やサプライチェーン管理を行い、資源素材分野では硅砂、セメント、生コンクリート、炭素材などを扱う。化学品、樹脂建材、機能素材に加え、素材産業の脱炭素化、循環型資源利用、DXを通じた供給網強化も推進している。素材需要と市況、原材料コスト、海外製造事業の採算や減損損失の有無が利益を左右し、単純な販売量だけでは実力を測りにくい。
金属資源
豪州の原料炭をはじめ、チリ・ペルーなどの銅、鉄鉱石、アルミ、ニッケル、リチウムといった金属資源への投資・開発・鉱山経営を行う。原料炭と銅は中核分野で、鉱山から需要家までの取引・物流・販売に加え、金属価格変動に対するヘッジサービスも展開する。電化や再生可能エネルギー普及を背景に銅・重要鉱物需要の増加を見込む一方、利益は資源価格と生産量、操業コスト、持分法損益、資産売買に左右される。新規鉱山開発や資源ポートフォリオの入れ替えにも取り組んでいる。
社会インフラ
都市開発、産業インフラ、産業機械、データセンター、船舶・宇宙航空機、水処理、プラント関連事業などを展開する。国内外の不動産開発・運営から大型インフラ事業への参画まで、投資と事業運営を組み合わせた収益モデルが中心。インドネシア都市開発、米国データセンター、産業機械関連投資などを進めている。大型プロジェクトでは工事損失引当や契約改定による損益の振れが大きく、千代田化工建設の連結範囲変更や持分法適用による数値への影響にも注意が必要となる。
モビリティ
自動車の製造・販売・販売金融・部品・アフターサービスを中心としたグローバル事業。ASEAN市場で長年蓄積した販売・流通網を活用し、三菱自動車やいすゞ関連事業、タイ・インドネシアなどの販売・生産事業に関わる。車両の電動化とともに、EV関連サービス、モビリティサービス、物流・金融など付加価値領域も開拓する。利益は新車需要、為替、競争環境、現地の自動車市場に加え、持分法適用先の業績・減損、保有株式の再評価損益などに影響される。
食品産業
食料、食品素材、水産、農畜産、食品製造・流通にわたるグローバルな事業を手掛ける。世界各地からの食料安定調達と加工・販売、食品企業への事業投資を行い、サーモン養殖事業Cermaqなど水産分野も重要な柱となる。飼料・穀物・食品素材の調達や消費者市場に密着した食品事業を組み合わせ、食の安全・安定供給に取り組む。サーモン市況・養殖生産量・疾病リスク、食品原料市況、為替に加え、事業売却・買収による一時利益の有無が損益を大きく動かす。
S.L.C.
Smart Life Creationを掲げ、小売、生活関連消費財、アパレル、食品流通・物流、ヘルスケア、金融、デジタルサービスなど消費者に近い分野で事業を構築する。ローソンや食品流通事業などを通じて多様な生活者接点を持ち、物流・デジタル・金融を活用して事業基盤を高付加価値化する。消費者購買動向や小売店舗の採算のほか、関連会社への投資、株式売却・再評価益、税効果などによる年度間の利益変動も大きい。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年3月期 実績 |
2023年3月期 実績 |
2024年3月期 実績 |
2025年3月期 実績 |
2026年3月期 実績 |
2027年3月期 中間実績 | 2027年3月期 通期予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 収益 | 17兆2,648.28億円 |
21兆5,719.73億円 前年対比 +24.9% |
19兆5,676.01億円 前年対比 -9.3% |
18兆6,176.01億円 前年対比 -4.9% |
18兆9,159.95億円 前年対比 +1.6% |
10兆4,104.23億円 |
— |
| 営業損益 | — | — | — | — | — | — | — |
| 経常損益 | — | — | — | — | — | — | — |
| 税引前利益 | 1兆2,931.16億円 |
1兆6,806.31億円 前年対比 +30.0% |
1兆3,625.94億円 前年対比 -18.9% |
1兆3,934.25億円 前年対比 +2.3% |
1兆960.94億円 前年対比 -21.3% |
8,158.38億円 |
— |
| 当期純利益(親会社帰属) | 9,375.29億円 |
1兆1,806.94億円 前年対比 +25.9% |
9,640.34億円 前年対比 -18.4% |
9,507.09億円 前年対比 -1.4% |
8,004.6億円 前年対比 -15.8% |
6,196.96億円 |
1兆2,000億円 |
| EPS | 211.69円 |
269.76円 前年対比 +27.4% |
230.1円 前年対比 -14.7% |
236.97円 前年対比 +3.0% |
210.92円 前年対比 -11.0% |
169.21円 |
330.43円 |
| 1株配当金 | 50円 |
60円 前年対比 +20.0% |
70円 前年対比 +16.7% |
100円 前年対比 +42.9% |
110円 前年対比 +10.0% |
62円 |
125円 |
| 純資産(親会社帰属持分) | 6兆8,802.32億円 |
8兆710.21億円 前年対比 +17.3% |
9兆438.67億円 前年対比 +12.1% |
9兆3,687.14億円 前年対比 +3.6% |
9兆4,405.67億円 前年対比 +0.8% |
9兆7,956.45億円 |
— |
| 営業CF | 1兆558.44億円 |
1兆9,301.38億円 前年対比 +82.8% |
1兆3,473.8億円 前年対比 -30.2% |
1兆6,583.49億円 前年対比 +23.1% |
1兆4,900.41億円 前年対比 -10.1% |
9,912.76億円 |
— |
| 投資CF | △1,675.5億円 |
△1,774.66億円 前年対比 -5.9% |
△2,057.61億円 前年対比 -15.9% |
△2,739.45億円 前年対比 -33.1% |
△4,485.84億円 前年対比 -63.7% |
△1兆1,280.21億円 |
— |
| 財務CF | △6,933.96億円 |
△1兆7,666.38億円 前年対比 -154.8% |
△1兆862.33億円 前年対比 +38.5% |
△1兆5,307.03億円 前年対比 -40.9% |
△8,046.84億円 前年対比 +47.4% |
△2,104.6億円 |
— |
| フリーCF | 8,882.94億円 |
1兆7,526.72億円 前年対比 +97.3% |
1兆1,416.19億円 前年対比 -34.9% |
1兆3,844.04億円 前年対比 +21.3% |
1兆414.57億円 前年対比 -24.8% |
△1,367.45億円 |
— |
IFRS連結決算では営業損益・経常損益が短信の主要利益指標として開示されていないため「—」。比較用に税引前利益を併記。フリーCF=営業CF+投資CF(単純合算)。2022・2023年3月期のEPS・配当は2024年1月の1:3株式分割を反映した比較値。最新中間期は半年間の累計、通期予想は会社が開示した指標のみ表示。
旧8グループの年度別利益推移(2024〜2026年3月期・参考)
2024年3月期から2026年3月期までの旧8区分は通期の親会社帰属利益。2027年3月期の新7区分とは組織・内部金利制度が異なるため直接連結しません。2022〜2023年はさらに旧10グループ構成であり、現7区分へ恣意的な遡及換算はしていません。
| 旧セグメント名 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|
| 地球環境エネルギー | 2,388.04億円 | 1,986.46億円 | 1,608.62億円 |
| マテリアルソリューション | 738.77億円 | 682.7億円 | 263.48億円 |
| 金属資源 | 2,955.24億円 | 2,278.12億円 | 2,045.23億円 |
| 社会インフラ | 509.21億円 | 398.02億円 | 851.24億円 |
| モビリティ | 1,414.34億円 | 1,123.54億円 | 576.09億円 |
| 食品産業 | △253.15億円 | 924.38億円 | 832.57億円 |
| S.L.C. | 1,026.64億円 | 1,850.41億円 | 910.07億円 |
| 電力ソリューション | 979.07億円 | △156.07億円 | 434.08億円 |
1.会社予想と実績
通期の「親会社帰属当期利益」と「基本的EPS」の会社予想について、各前年度の決算短信公表時点の初期予想と実績を比較。三菱商事の通期予想は売上高・営業利益・経常利益を開示していないため、その比較グラフは作成しません。
2023年3月期|親会社帰属利益
前年度決算時点の初期会社予想達成率 138.9%(超過額 3,306.94億円)
2024年3月期|親会社帰属利益
前年度決算時点の初期会社予想達成率 104.8%(超過額 440.34億円)
2025年3月期|親会社帰属利益
前年度決算時点の初期会社予想達成率 100.1%(超過額 7.09億円)
2026年3月期|親会社帰属利益
前年度決算時点の初期会社予想達成率 114.4%(超過額 1,004.6億円)
2027年3月期|最新予想
2026年5月1日の会社予想 1兆1,000億円から、2026年11月4日に 1兆2,000億円へ9.1%上方修正。2027年3月期中間の親会社帰属利益は 6,196.96億円、通期予想に対する単純進捗は 51.6%。予想EPSは330.43円であり、最新中間EPSは169.21円です。
2.達成・未達理由
2023年3月期|初期予想超過の背景
前年度に示された初期予想8,500億円に対し実績は1兆1,806.94億円。決算短信では天然ガス関連取引利益・配当の増加、資源関連利益等が増加要因として示された。
2024年3月期|初期予想超過の背景
初期予想9,200億円に対し実績9,640.34億円。旧区分では天然ガス部門の利益増加が見られる一方、豪州原料炭の市況下落など逆風もあった。
2025年3月期|初期予想超過の背景
初期予想9,500億円に対し実績9,507.09億円とほぼ計画どおり。ローソンの持分法適用化に伴う再評価益や食品事業の売却益が寄与した一方、電力ソリューションの減損などが重しとなった。
2026年3月期|初期予想超過の背景
初期予想7,000億円に対して実績8,004.60億円。社会インフラで千代田化工建設の契約改定等に伴う採算改善がプラス、金属資源・モビリティ・S.L.C.等では減益要因があった。
3.事業セグメントの自信度
会社の決算短信に掲載された原文と、当時の環境を基にした自信度評価。組織再編で旧区分と現行区分が異なるため、年度・区分を明記します。
決算短信原文:「豪州原料炭事業における市況下落による影響」
資源価格下落の利益影響を明示しており、翌期への収益耐性には警戒が必要と読む。
決算短信原文:「国内電力事業(洋上風力発電事業における減損損失等)」
国内電力の資産価値見直しを伴う減益であり、当該事業の採算見通しは弱い。
決算短信原文:「千代田化工建設(前年度米国ゴールデンパスLNGプロジェクト関連損失の反動・当年度契約改定等による採算改善)」
好転の背景に戻入・契約改定が含まれ、利益の継続性を過大評価しない評価。
決算短信原文:「市況の追い風をとらえたエネルギー&パワーソリューションや金属資源セグメントなどでの増益を見込み」
11月4日に通期利益計画を9.1%引き上げており、市況追い風を将来予想へ明示的に織り込んだ強気評価。
4.最新予想信頼度
最新中間の親会社帰属利益は6,196.96億円で、通期会社予想1兆2,000億円に対する単純進捗率は51.6%。前年同期比+74.2%で、会社が通期予想を1,000億円引き上げたことはプラス材料です。一方、残り半年に必要な利益は前年下期を約30.5%上回り、市況・資産売却関連益の寄与を織り込んだ達成寄りの「中程度」と判定します。
達成できると判断する理由
通期必要残額は5,803.04億円。直近中間実績6,196.96億円を下回る金額です。中間のエネルギー&パワーソリューション利益は1,901.24億円、金属資源は1,358.28億円で前年同期の組替後利益を大幅に上回りました。会社は11月4日に通期予想を1兆1,000億円から1兆2,000億円へ引き上げ、市況の追い風を明示しています。
達成できないと判断する理由
必要な下期利益5,803.04億円は2026年3月期下期の親会社帰属利益4,446.64億円を約30.5%上回ります。中間にはエム・シー・ヘルスケアホールディングス株式売却関連益や千代田化工建設の再評価益等が含まれ、全てが下期に再発するわけではありません。資源価格や為替の反転、買収後の費用増、資産評価損も主なリスクです。
収益計上時期と前年下期比較
2026年3月期は中間利益3,557.96億円、通期利益8,004.60億円で、下期実績は4,446.64億円でした。2027年3月期の中間利益6,196.96億円に対し、現行計画達成のためには下期5,803.04億円が必要です。前年下期比で約30.5%増が必要な一方、中間期の大型売却・再評価関連の一時損益を区別して評価する必要があります。51.6%は季節性等を補正しない単純進捗率です。
最終判断と予想PER
達成寄りの中程度。エネルギーと金属資源の高水準利益と通期上方修正は計画達成を支えますが、下期に前年下期を約30.5%上回る利益が必要で、一時利益の再現性には注意が必要です。
TradingViewで取得した株価 5,148円 を使った計算上の通期予想PERは 15.58倍(株価5,148円 ÷ 会社予想EPS330.43円)。株価取得時点の値であり、チャート閲覧時の株価と一致するとは限りません。
資料・一次情報
三菱商事株式会社が公開した決算短信・公式IR・公式事業紹介のみを掲載。
分析対象:2022〜2026年3月期決算短信、2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信(2026年11月4日)。
最高益見通しと利益の「質」から読み解く、総合商社の成長シナリオ
投資家向けサマリー
三菱商事の「経営戦略2027」は、営業収益キャッシュフロー(CF)の平均成長率10%以上、2027年度ROE12%以上を掲げる。2026年11月4日の上方修正によりROE目標は1年前倒しの達成見通しとなった。ただし、2026年度の利益には資源市況や資産・事業リサイクル等の影響も含まれる。2027年度の評価軸は、足元の資源価格に依存せず、巡航利益を積み上げられるかにある。
「2027年度1.2兆円以上」は会社資料上の連結純利益イメージであり、正式な年度業績予想と区別して扱う。
01|中期経営戦略の主要目標
| 指標 | 会社が掲げる数値・方針 | 対象・注意点 |
|---|---|---|
| 営業収益CF | 平均成長率10%以上 | 経営戦略2027の中核成長指標/会社独自定義のCF |
| ROE | 2027年度 12%以上 | 親会社所有者帰属持分に基づく資本効率 |
| 連結純利益 | 2027年度 1兆2,000億円以上のイメージ | 2026年11月4日の説明資料に掲載/正式な通期予想ではない |
| 営業収益CF(3年間累計) | 3.7兆円以上 | 2025〜2027年度の資金配分計画/2026年11月に更新 |
| Net DER | 0.6倍程度が上限目処 | 財務健全性のガードレール |
| 株主還元 | 累進配当+機動的な自己株式取得 | 2025〜2027年度:自己株式取得2.0兆円以上、配当1.5兆円以上を資金配分計画に計上 |
出典:2025年4月3日「経営戦略2027」、2026年11月4日「2026年度第2四半期 決算説明会資料」(p.4, 7–8)。
02|最新決算と通期業績見通し
直近の通期実績は2025年度=2026年3月期(2026年5月1日公表)。最新の2026年度予想は2026年11月4日修正。いずれも連結ベース。収益・利益はIFRS、営業収益CFは三菱商事が定義する補助指標。
| 指標 | 2025年度 通期実績 | 2026年度 上期実績 | 2026年度 通期会社予想 | 2025年度比 |
|---|---|---|---|---|
| 連結純利益 | 8,005億円 | 6,197億円 | 1兆2,000億円 | +3,995億円/+49.9% |
| 営業収益CF | 1兆481億円 | 7,281億円 | 1兆3,800億円 | +3,319億円/+31.7% |
| ROE | 8.5% | — | 12.7% | +4.2ポイント |
| 巡航利益(会社定義) | 7,037億円 | 5,391億円 | 9,300億円 | +2,263億円/+32.2% |
| 1株当たり年間配当 | 110円 | — | 125円 | +15円 |
上期進捗率は連結純利益52%、営業収益CF53%。同時に、2026年度予想には資産・事業リサイクル関連損益1,900億円および特殊要因800億円が含まれる。当期純利益の増加を、そのまま恒常的な利益の増加とみなさないことが重要。
業績水準の視覚比較|実績→会社予想
利益とCFはそれぞれ自系列の予想値を100%として表示。異なる指標間でバーの長さを比較する図ではない。
03|目標達成時の業績上昇余地
基準は2025年度通期実績(2026年5月1日開示)、比較先は2027年度の会社目標・参考イメージ。IFRS連結で比較できる連結純利益・ROEと、同一定義で比較できる営業収益CFを分けて計算する。
| 比較可能指標 | 2025年度 実績 | 2027年度 比較値 | 増減額・差 | 上昇率 | CAGR(2年) |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結純利益 IFRS/親会社所有者帰属 | 8,005億円 | 1兆2,000億円以上 会社の「利益イメージ」 | +3,995億円以上 | +49.9%以上 | +22.4%以上 |
| 営業収益CF 会社定義/連結 | 1兆481億円 | 1兆2,719億円以上 3年累計目標から逆算した条件付き必要額 | +2,238億円以上 | +21.4%以上 | +10.2%以上 |
| ROE 連結 | 8.5% | 12%以上 会社正式目標 | +3.5ポイント以上 | 比率指標のため参考外 | 算出対象外 |
営業収益CFの「2027年度必要額」はどう求めたか
37,000億円(3年累計計画の下限)−10,481億円(2025年度実績)−13,800億円(2026年度予想)=12,719億円。
12,719億円は会社が単年度目標として発表した数値ではない。2026年度予想どおりに着地し、3年累計3.7兆円以上を達成するための計算上の最低必要額。実際の2026年度実績が変われば必要額も変わる。別途、会社は平均成長率10%以上という目標も掲げており、この必要額だけで全目標の達成を保証しない。
増減率=(2027年度比較値÷2025年度実績−1)×100。CAGR=(2027年度比較値÷2025年度実績)^(1/2)−1。両者とも増減が正の場合の計算。連結純利益の比較値は正式な2027年度業績予想ではなく、会社資料に示された1.2兆円以上のイメージに基づく条件付き比較。
売上高・営業利益・税引前利益・EPSについては2027年度の同一定義の中計目標が確認できないため、上昇率・CAGRを算出しない。
04|達成ロードマップ:磨く・変革する・創る
既存事業の収益力を底上げ
LNGカナダの本格稼働、原料炭事業の生産性・コスト競争力改善、電力事業の価値向上など。収益基盤とCF創出力を改善する。
ポートフォリオと資本効率を刷新
三菱食品の完全子会社化、低収益投資先へのフォローアップ、事業売却・資本再編。LNGカナダ液化インフラ保有会社の一部売却で資金回収と成長投資の両立を狙う。
新しい利益源を組み立てる
米国ヘインズビルのシェールガス事業、フィリピンのデジタル金融GCash、Ayala Corporation追加出資計画など、既存の産業知見を横断する新規案件で成長を取り込む。
次の成長基盤を仕込む
米国銅鉱山開発、LNGカナダ拡張などは2030年前後〜2030年代初頭の利益貢献が中心。経営戦略2027の期間中の利益と混同しない。
案件別の確認ポイント
- 米国シェールガス事業:2027年度の利益貢献見込み500〜600億円(持分75%ベース)。天然ガス価格・操業コスト・資本回収を検証。
- LNGカナダ拡張:2026年9月に最終投資決定。会社負担分の総事業費は約5,000億円、稼働は2030年代初頭予定。2027年度の増益額へ先取り計上しない。
- 新規・資本再編案件:投資した資本がどの時期に巡航利益・営業収益CFとして回収されるかが中期的な評価軸。
05|資金配分の最新版:どこへ資金を回すか
2026年11月4日の更新計画。対象期間は2025〜2027年度の3年間。いずれも計画下限であり、毎年の実行確約額ではない。
| 区分 | 2026年5月の計画 | 2026年11月最新版 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 営業収益CF(累計) | 3.6兆円以上 | 3.7兆円以上 | +0.1兆円 |
| 売却による投資回収 | 2.1兆円以上 | 2.6兆円以上 | +0.5兆円 |
| 更新投資 | 1.3兆円以上 | 1.3兆円以上 | 変更なし |
| 「磨く・変革する」投資 | 2.0兆円以上 | 2.0兆円以上 | 変更なし |
| 「創る」投資 | 1.3兆円以上 | 1.5兆円以上 | +0.2兆円 |
| 自己株式取得 | 1.0兆円以上 | 2.0兆円以上 | +1.0兆円 |
| 配当 | 1.5兆円以上 | 1.5兆円以上 | 変更なし |
資金配分のポイント:キャッシュ創出見通しと投資回収が上方修正され、追加の自社株買い1兆円と新規成長投資の拡大を両立する計画。投資額合計は4.8兆円以上、配当・自社株取得は計3.5兆円以上。会社はNet DER0.6倍程度を上限目処とするレバレッジ活用も想定している。
2026年度上期末のNet DERは0.42倍。投資の実行時期と資金調達条件は今後変わり得る。
06|実現性を点検する4つの論点
① ROE 12% ─ 前倒し達成が視野
2026年度予想12.7%は2027年度目標12%以上を超える。ただし自己株式取得と利益水準の双方が効くため、利益だけでなく資本構成の変化にも注目する。
② 利益1.2兆円 ─ 2026年度予想と2027年度イメージは同水準
2026年度は資源市況の追い風を含む。2027年度はその追い風に依拠しない利益の積み増しが要求される。2026年度の最高益予想だけをもって2027年度の到達を確定できない。
③ 営業収益CF3.7兆円 ─ 2027年度に必要な額は約1.27兆円
2025年度実績と2026年度会社予想を前提とした逆算値。2026年度の営業収益CF予想は1.38兆円なので、2027年度に営業CFが横ばいであることまでは要求しないものの、3年間の累計水準と平均成長率10%以上は別々に確認が必要。
④ 成長投資 ─ 2028年度以降の収益寄与と時間差
LNG拡張・銅鉱山開発等は操業開始時期が先。先行資金流出や事業実行リスクを踏まえ、投資回収の進捗を継続確認する。
07|会社資料から確認できる達成リスク
資源価格・為替変動
足元の資源市況の追い風が2026年度予想を押し上げる一方、会社は2027年度の利益イメージで価格・為替前提の変化を織り込む。市況が計画前提からずれると利益が変動する。
天然ガス事業の市場・操業条件
米国シェールガス事業はHenry Hub価格や生産量・コストに影響される。2026年11月資料も天然ガス価格の影響を利益増減要因として明記。
地政学・インフレ
2026年11月資料では中東情勢に伴うコスト増・インフレの影響を説明。会社は連結純利益への影響を期初想定の▲300億円の範囲内と見込むが、前提は変動する。
投資執行・ポートフォリオ改革
新規投資・案件の利益貢献時期、事業売却による回収タイミング、収益性に課題がある投資先の立て直しが資金配分の成否を左右する。
08|株価の割安度:PER一定の試算条件
現時点で2027年度の会社予想EPSと、2027年度末までの自己株式取得後の株式数が確認できないため、同じPERを適用した2027年度理論株価・株価上昇余地は算定しない。
2026年度の1株当たり予想利益と2027年度の連結純利益イメージを直接組み合わせると、買い戻しによる発行済株式数の変化等を無視することになり、根拠のない株価目標となる。連結純利益の上昇率49.9%以上は株価上昇率を意味しない。
09|結論:中期経営計画の読み方
目標達成への進捗は、2026年度の通期予想修正によって明確に改善した。ROE12%の目標は1年前倒し達成見込みとなり、営業収益CFの累計計画も上方修正されている。
ただし、投資判断で重視したいのは単年度の最高益ではなく、①巡航利益の持続性、②資源市況に左右されない案件貢献、③成長投資後の営業収益CF、④資本効率である。2027年度の連結純利益1.2兆円以上は会社が示すイメージであり、正式な通期予想ではない。
この分析は会社の目標が達成された場合の条件付き比較であり、将来の業績・株価の実現予想や保証ではない。
一次資料・参照先
- 三菱商事「経営戦略2027」(2025年4月3日、公表資料:p.8–15)
- 三菱商事「2025年度決算及び2026年度見通し」(2026年5月1日、通期比較の基準)
- 三菱商事「2027年3月期 第2四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年11月4日)
- 三菱商事「2026年度第2四半期 決算説明会資料」(2026年11月4日、最新版:p.3–8, 16–23)

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