QDレーザ 6613 東証G
QD Laser, Inc.|量子ドットレーザ、通信用・加工用半導体レーザ、シリコンフォトニクス向け光源、網膜投影技術を用いた視覚支援・XR向け光学技術を展開。
※2026年6月22日時点の情報
事業内容
2026年6月22日の時価総額は約1,266億円。終値は3,020円で、前営業日比500円高、19.84%上昇のストップ高となった。発行済株式総数41,924,175株を基準に算出している。
2006年4月設立。本社は神奈川県横浜市戸塚区上倉田町206番地1、代表取締役社長は大久保潔。富士通研究所の研究成果を基に創業し、3月決算、東京証券取引所グロース市場に上場する。半導体レーザの結晶成長、量子ドット、回折格子、レーザ設計、モジュール小型化、網膜投影を中核技術とする。
2026年3月期は売上高1,372百万円、営業損失326百万円、経常損失305百万円、当期純損失357百万円。売上高は前期比4.9%増加し、営業損失は119百万円縮小した。2027年3月期は売上高1,850百万円、営業利益3百万円、経常利益3百万円、当期純利益441百万円を予想する。当期純利益には、TDKとの事業協力に伴う特許権の一部譲渡による約500百万円の特別利益を含む。
レーザデバイス事業 – 売上高の5年推移
レーザデバイス事業売上高(単位:百万円)
レーザデバイス事業では、DFBレーザ、小型可視レーザ、高出力FPレーザ、量子ドットレーザ、エピタキシャルウエハなどを開発・販売する。
DFBレーザは、レーザ加工装置、センサ、半導体検査装置などで使用される。発振波長を狭い範囲に制御できるため、精密加工や計測に適する。
小型可視レーザは、バイオ検査装置、フローサイトメータ、顕微鏡、分光・分析装置などの光源として使われる。赤色、緑色、黄色など、用途に応じた波長を小型モジュールとして供給する。
高出力レーザは、産業用センサ、マシンビジョン、LiDAR、照明などが対象となる。顧客装置へ組み込まれる部品であるため、設計認定を受けて量産採用されると継続的な出荷につながる。
2026年3月期は、DFBレーザが加工装置用光源の需要減少により前期比5.9%減、小型可視レーザが顕微鏡用光源の需要減少により5.5%減となった。
一方、高出力レーザは前期比9.4%増、量子ドットレーザは76.3%増となった。量子ドットレーザの伸長が事業全体の増収を支えたが、製品別の売上金額は開示されていない。
2027年3月期は、既存顧客の販売拡大、大口新規顧客の獲得、量子ドットレーザの量産体制構築、小型可視レーザの製造工程安定化を進める。
レーザデバイス事業 – セグメント利益の5年推移
レーザデバイス事業セグメント利益(単位:百万円)
QDレーザは、特定の一波長だけでなく、用途に応じた広い波長帯の半導体レーザを開発から量産まで扱う「セミファブレス総合メーカー」を志向する。
コア技術は、分子線エピタキシーによる半導体結晶成長、量子ドット形成、回折格子形成、レーザ設計、モジュール小型化で構成される。
結晶成長とレーザ設計を社内で担い、後工程の一部を外部企業と連携することで、大規模な一貫製造工場を持たずに複数波長の製品を展開する。
半導体レーザは顧客装置に組み込まれるため、波長、光出力、温度特性、寿命、パッケージ寸法、安全性などの評価に時間を要する。量産認定後は、装置の製品寿命に沿った継続供給が期待できる。
2025年3月期には売上高の増加と製品構成改善によりセグメント利益が141百万円へ拡大した。2026年3月期は増収だったものの、製品構成などの影響で128百万円へ減少した。
全社黒字化には、レーザデバイス事業の利益だけで、本社費用とレーザ・オプティカルソリューション事業の損失を吸収する必要がある。
補助金を活用した結晶成長設備の増強は、量子ドットレーザを含む生産能力拡大を目的とする。受注拡大が設備稼働率の上昇につながるかが、利益率改善の確認点となる。
レーザ・オプティカルソリューション事業 – 売上高の5年推移
レーザ・オプティカルソリューション事業売上高(単位:百万円)
2026年4月から、従来の「視覚情報デバイス事業」を「レーザ・オプティカルソリューション事業」へ名称変更した。報告セグメントの名称変更であり、過年度の比較数値への影響はない。
中核となるVISIRIUMテクノロジーは、微弱なレーザ光を網膜へ直接投影して映像を表示する技術である。
網膜上へ映像を投影するため、一般的なディスプレイとは異なる光学構成を持つ。視覚支援、カメラ用ビューファインダ、眼の健康チェック、スマートグラス、XRグラスなどへの応用を進めてきた。
事業モデルは、自社完成品の販売だけでなく、開発受託、光学ユニット供給、技術ライセンス、共同事業化へ範囲を広げている。
2025年3月期は、次世代網膜投影型アイウェア向け開発受託が増加した一方、RETISSA NEOVIEWERなどの網膜投影製品販売が減少し、事業売上高は前期比39.9%減少した。
2026年3月期は、網膜投影製品の売上高が前期比97.1%減少した一方、開発受託が28.0%増加し、事業全体では増収となった。
完成品在庫を抱える販売モデルから、企業向けの技術・部品・開発支援を中心とする事業構造へ転換している。売上規模だけでなく、固定費と開発費を抑えられるかが重要となる。
レーザ・オプティカルソリューション事業 – 損益改善とTDK協業
レーザ・オプティカルソリューション事業損益(単位:百万円)
2026年6月1日、QDレーザとTDKは、網膜投影技術を用いたXRグラス向け次世代RGB光源モジュールおよび光学エンジンの事業協力契約を締結した。
両社は共同開発を継続し、QDレーザが持つ網膜投影技術と特許群、TDKが持つRGBモジュールの開発・製造技術を組み合わせる。
対象製品は、XRグラス向けのRGB光源モジュールと光学エンジンである。小型化、低消費電力、ピントフリーという網膜投影方式の特徴を生かし、スマートグラスメーカーへの供給を目指す。
QDレーザはTDKに網膜投影技術に関する特許権の一部を移転する一方、ビジョンサポート、ヘルスケア、医療分野では引き続き対象特許を活用する。
また、光学設計、電気設計、映像システム設計、アイセーフティなどに関する技術支援を行い、TDK側の量産体制構築を支援する。
共同開発では、試作機の評価、ビジネスモデルの検討、展示を通じた市場開拓を進め、早期量産化を視野に入れる。
特許権の一部譲渡により、2027年3月期に約500百万円の特別利益を計上する予定である。ただし、共同開発製品の量産開始時期、販売数量、継続的な収益配分は開示されていない。
当期純利益の黒字化と、事業本体の営業黒字化は分けて見る必要がある。営業利益予想は3百万円であり、実質的な採算改善余地は小さくない。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,101 | 1,159 +58 / +5.3% | 1,247 +88 / +7.6% | 1,308 +61 / +4.9% | 1,372 +64 / +4.9% | 1,850 +478 / +34.8% |
| 営業損益 | -931 | -556 +375 / 赤字縮小 | -604 -48 / 赤字拡大 | -445 +159 / 赤字縮小 | -326 +119 / 赤字縮小 | 3 +329 / 黒字転換 |
| 経常損益 | -893 | -546 +347 / 赤字縮小 | -600 -54 / 赤字拡大 | -443 +157 / 赤字縮小 | -305 +138 / 赤字縮小 | 3 +308 / 黒字転換 |
| 当期純損益 | -880 | -550 +330 / 赤字縮小 | -642 -92 / 赤字拡大 | -445 +197 / 赤字縮小 | -357 +88 / 赤字縮小 | 441 +798 / 黒字転換 |
| EPS | -20.99円 | -13.12円 +7.87円 | -15.31円 -2.19円 | -10.61円 +4.70円 | -8.52円 +2.09円 | 10.52円 +19.04円 |
| PER | – 赤字・期末株価1,338円 | – 赤字・期末株価640円 | – 赤字・期末株価551円 | – 赤字・期末株価544円 | – 赤字・期末株価1,216円 | 287.10倍 基準株価3,020円 |
| PBR | 15.66倍 | 6.04倍 | 4.08倍 | 4.37倍 | 10.40倍 | – |
| BPS | 85.46円 | 105.88円 +20.42円 / +23.9% | 135.17円 +29.29円 / +27.7% | 124.49円 -10.68円 / -7.9% | 116.88円 -7.61円 / -6.1% | – |
| 純資産 | 3,583 | 4,439 +856 / +23.9% | 5,667 +1,228 / +27.7% | 5,219 -448 / -7.9% | 4,900 -319 / -6.1% | – |
| 営業CF | -700 | -515 +185 / 流出縮小 | -443 +72 / 流出縮小 | -506 -63 / 流出拡大 | -481 +25 / 流出縮小 | – |
| 投資CF | -90 | -22 +68 | -138 -116 | -568 -430 | -886 -318 | – |
| 財務CF | 377 | 1,298 +921 | 1,835 +537 | -9 -1,844 | 355 +364 | – |
| 現金及び現金同等物 | 2,821 | 3,581 +760 / +26.9% | 4,836 +1,255 / +35.0% | 3,754 -1,082 / -22.4% | 2,741 -1,013 / -27.0% | – |
新株予約権の行使などにより発行済株式総数が変化しているため、EPS、BPS、PER、PBRは2026年6月22日時点の発行済株式総数41,924,175株で再計算した。期末株価は2022年3月期1,338円、2023年3月期640円、2024年3月期551円、2025年3月期544円、2026年3月期1,216円を使用した。
2027年3月期予想PERは2026年6月22日終値3,020円を基準とする。会社予想がない純資産、BPS、PBR、キャッシュ・フロー、現金及び現金同等物は空欄。2027年3月期の当期純利益予想には、特許権の一部譲渡による約500百万円の特別利益を含む。2026年3月期決算短信に継続企業の前提に関する重要な注記は記載されていない。
中期経営計画
2027年3月期の営業黒字化と「10 by 10 to 100」
中期経営計画は2025年3月期から2027年3月期を対象とし、レーザデバイス事業の成長と、旧視覚情報デバイス事業の構造転換を通じて、2027年3月期の全社営業黒字化を目標とする。
2027年3月期は売上高を前期比34.8%増の1,850百万円とし、営業損失326百万円から営業利益3百万円への黒字転換を計画する。
主力のレーザデバイス事業では、既存顧客の販売拡大に加え、大口新規顧客の獲得、量子ドットレーザの量産体制構築、製造工程の安定化、歩留まり改善、コスト低減を進める。
量子ドットレーザは、AIデータセンター、シリコンフォトニクス、光電融合、高度医療、次世代自動車などを対象市場とする。高温特性、低消費電力化、戻り光への耐性を生かし、光配線向け光源としての採用拡大を目指す。
レーザ・オプティカルソリューション事業では、自社完成品の販売比率を下げ、開発受託、コア部品、光学ユニット、技術ライセンス、共同事業化を中心とする構造へ転換する。
TDKとの事業協力では、XRグラス向け次世代RGB光源モジュールと光学エンジンの共同開発、試作評価、市場開拓、量産体制構築を進める。
2027年3月期の当期純利益441百万円には、TDKへの特許権の一部譲渡による約500百万円の特別利益が含まれる。営業利益は3百万円であり、営業黒字化の達成余地は極めて小さい。
長期ビジョン「10 by 10 to 100」では、今後10年間で売上高を100億円超へ拡大する方針を示した。量子ドットレーザを中心に、グローバルパートナーとの共創と生産能力増強を成長の中核に据える。
中小企業成長加速化補助金の交付決定額は500百万円。結晶成長設備などへの投資を進めるほか、りそな銀行から総額710百万円の無担保融資を確保し、設備投資と運転資金に充当する。
IR情報へ競合他社
① 浜松ホトニクス(6965)
2026年6月22日終値は2,825.5円、時価総額は約9,021億円。東証プライム上場で、比較3社では最大規模となる。
半導体レーザ、レーザダイオード、量子カスケードレーザ、DFBレーザ、高出力レーザ、光センサ、光電子増倍管、イメージセンサ、医療・分析装置などを展開する総合光技術企業である。
QDレーザとは、分析・バイオ・医療機器用光源、センサ用半導体レーザ、産業用レーザモジュール、単一波長レーザ、半導体検査用光学製品で競合する。
浜松ホトニクスは発光素子だけでなく、受光素子、検出器、光源、計測装置まで一括提供できる。顧客が光源と受光部を組み合わせて導入する案件では、総合提案力が優位となる。
2026年9月期中間期は売上高112,496百万円、営業利益10,023百万円、経常利益12,484百万円、親会社株主に帰属する中間純利益9,224百万円。売上高は前年同期比5.4%増、営業利益は7.0%減となった。
半導体製造・検査装置向けの需要が増加した一方、レーザ事業の先行投資、開発費、生産体制強化費用が利益を圧迫した。
QDレーザは企業規模、販売網、品質保証体制、研究開発費では大きく劣る一方、量子ドットレーザ、特定波長の小型光源、網膜投影技術との組み合わせで差別化する。
② ウシオ電機(6925)
2026年6月22日終値は4,765円、時価総額は約3,979億円。東証プライム上場。
産業用・医療用光源、半導体製造装置用光源、固体レーザ、エキシマレーザ、映像用光源、投影・光学装置を展開する。
QDレーザとは、産業用レーザ、医療・分析用光源、半導体製造・検査、映像表示、光学モジュールなどで競合する。
ウシオ電機は、高出力光源、大型産業装置、露光・洗浄・改質用途、シネマプロジェクタなどに強い。装置本体と光源を組み合わせた提供能力を持つ。
2026年3月期は売上高179,211百万円、営業利益11,959百万円、経常利益13,346百万円、親会社株主に帰属する当期純利益7,995百万円。
2027年3月期は売上高210,000百万円、営業利益14,000百万円を計画する。生成AI関連の半導体需要や買収効果を成長要因とする。
ウシオ電機が高出力・大型装置を含む幅広い光源市場を対象とするのに対し、QDレーザは小型、特定波長、量子ドット、網膜投影、シリコンフォトニクス向け光源へ集中する。
③ santec Holdings(6777)
2026年6月22日終値は30,150円、時価総額は約3,606億円。東証スタンダード上場。
波長可変レーザ、光測定器、光パワーメータ、光スペクトラムアナライザ、光モニタ、光フィルタ、医療・眼科向け光学製品を展開する。
QDレーザとは、光通信、シリコンフォトニクス、光デバイスの研究開発・生産検査、分析機器、医療・眼科分野で競合または補完関係となる。
santec Holdingsは波長を連続的に変化させる波長可変レーザと光測定器に強く、QDレーザは量子ドットレーザや特定波長の固定光源に強い。
シリコンフォトニクスの開発現場では、QDレーザの光源とsantec Holdingsの測定器が同一評価環境で使われる可能性があり、製品機能は異なるものの顧客の研究開発予算を巡る競争が生じる。
2026年3月期は売上高31,507百万円、営業利益10,325百万円、経常利益10,958百万円、親会社株主に帰属する当期純利益7,667百万円。営業利益率は32.8%となった。
高収益な光測定器事業とグローバル販売網を持つ点が大きな強みである。QDレーザは光源部品の量産採用と独自技術のライセンス収益を確立できるかが競争上の焦点となる。
強みと将来性
量子ドットの量産技術と、半導体レーザから網膜投影までをつなぐ技術基盤
最大の強みは、量子ドットを活性層に使用した半導体レーザを量産製品として供給してきた技術と実績である。
量子ドットは、半導体結晶内に電子を三次元的に閉じ込める微細構造である。QDレーザは分子線エピタキシーによる結晶成長工程で量子ドットを形成し、レーザ素子として動作させる。
量子ドットレーザは、高温環境での動作安定性、低消費電力化、戻り光への耐性が特徴として示されている。データセンター内の光配線では、消費電力と温度管理の負担を抑える光源が求められる。
シリコンフォトニクスは、シリコン基板上へ光回路を集積する技術である。電子回路だけで処理する構成から光通信を組み合わせることで、通信速度、消費電力、実装密度の改善を狙う。
QDレーザの量子ドットレーザは、シリコン側で発光しにくいという課題を補う外部光源または集積光源としての採用を目指す。
AIデータセンター、スーパーコンピュータ、光電融合、自動運転車内の光配線などでシリコンフォトニクスの採用が進めば、量子ドットレーザの対象市場は拡大する。
2026年3月期の量子ドットレーザ売上高は前期比76.3%増加した。製品別金額は非開示だが、開発段階だけでなく量産用途への出荷拡大が全社成長へ寄与するかが注目点となる。
第二の強みは、半導体レーザの結晶成長からレーザ設計、回折格子形成、モジュール小型化までを横断して扱える点である。
顧客が必要とする波長、出力、変調速度、温度特性、パッケージ寸法に応じて設計を変えられるため、単純な汎用品価格競争を避けやすい。
レーザデバイス事業は過去5期すべてでセグメント黒字を確保した。技術開発型企業でありながら、主力事業では量産売上と利益を生み出している点は重要である。
第三の強みは、光源技術だけでなく、網膜投影、光学設計、映像システム、アイセーフティまで保有することである。
TDKとの事業協力では、QDレーザの網膜投影技術と、TDKのRGBモジュール開発・製造技術を組み合わせる。QDレーザ単独では負担の大きい量産、生産管理、グローバル顧客対応を大手企業と分担できる。
特許の一部移転後も、ビジョンサポート、医療、ヘルスケア分野で網膜投影技術を使用できる。XR向け量産と社会課題向け用途を並行して展開する構造となる。
開発受託、特許、技術支援、光学ユニットなどへ収益源を広げれば、完成品販売だけに依存せず、開発段階から量産段階まで複数の収益機会を持てる。
中長期では、結晶成長設備の増強と製造工程の安定化により、量子ドットレーザの受注増加へ対応できるかが成長速度を左右する。
将来性を業績として評価するには、量子ドットレーザの製品別売上高、量産顧客数、設備稼働率、TDKとの光学エンジンの量産開始時期、継続収益の条件が具体化する必要がある。
弱みとリスク要因
長期営業赤字、資金流出、量産採用の不確実性と高い株価評価
最大の弱みは、上場後も全社営業赤字が継続していることである。2022年3月期から2026年3月期までの累計営業損失は2,862百万円となる。
レーザデバイス事業は黒字であるものの、その利益規模ではレーザ・オプティカルソリューション事業の損失、本社費用、研究開発費を吸収できていない。
2027年3月期は営業利益3百万円を計画するが、売上高1,850百万円に対する営業利益率は約0.2%にとどまる。売上の期ずれ、製品構成悪化、開発費増加が生じるだけで赤字へ戻る可能性がある。
当期純利益441百万円は、TDKへの特許権の一部譲渡による約500百万円の特別利益が主因である。この一時利益を除くと、最終損益も赤字となる計画である。
営業キャッシュ・フローは過去5期すべてマイナスとなった。2026年3月期も481百万円の資金流出が続いている。
現金及び現金同等物は2024年3月期の4,836百万円から2026年3月期の2,741百万円へ2年間で2,095百万円減少した。
2026年3月期の投資キャッシュ・フローはマイナス886百万円である。結晶成長設備などへの投資が将来の売上増加へつながらなければ、減価償却費と資金負担が先行する。
同社は過去に新株予約権を活用して資金調達を行っており、発行済株式総数は2022年3月期末の35,755,180株から2026年6月22日時点の41,924,175株へ増加した。
新株予約権の行使は資金を確保できる一方、1株当たり利益と1株当たり純資産を希薄化させる。設備投資や営業赤字が続けば、追加調達の可能性を確認する必要がある。
半導体レーザは、顧客装置の設計認定から量産開始まで長期間を要する。技術評価が順調でも、顧客製品の発売延期、仕様変更、市場縮小によって売上計上が遅れる場合がある。
量子ドットレーザの売上高は大幅に伸びたが、製品別の金額、顧客数、量産数量は開示されていない。高い成長率が小規模な比較基準から生じている可能性を排除できない。
AIデータセンターやシリコンフォトニクスは大きな市場テーマだが、最終的に採用される光源構造は複数存在する。量子ドットレーザ以外の半導体レーザ、外部レーザ、異種材料接合などとの技術競争が続く。
網膜投影製品は技術的な独自性を持つ一方、自社完成品販売では十分な規模と採算を確立できなかった。事業モデルを開発受託、部品、ライセンスへ転換しているが、安定した継続収益になるかは未確定である。
TDKとの協業は量産能力と販路を補完するが、光学エンジンの量産時期、販売数量、利益配分は開示されていない。共同開発が長期化した場合、開発費だけが先行する可能性がある。
2026年6月22日終値3,020円を再計算BPS116.88円で割った実績PBRは約25.84倍。2027年3月期予想EPS10.52円に対する予想PERは約287.10倍となる。
時価総額約1,266億円は、2026年3月期売上高13.72億円の約92倍、2027年3月期予想売上高18.50億円の約68倍に相当する。
株価は現在の利益水準より、量子ドットレーザ、AIデータセンター、XRグラス、TDK協業などの将来期待を強く織り込んでいる。量産開始の遅延や黒字化未達が発生した場合、バリュエーション調整の影響が大きくなる。
2026年6月22日はストップ高となり、短期間で値幅が拡大した。業績進捗と材料への期待、短期需給を分けて評価する必要がある。
出典
- 株式会社QDレーザ 公式サイト
- 株式会社QDレーザ ミッション
- 株式会社QDレーザ コアテクノロジー
- 株式会社QDレーザ 会社情報
- 株式会社QDレーザ シリコンフォトニクス事業領域
- 株式会社QDレーザ IR情報
- 株式会社QDレーザ IRライブラリ
- 株式会社QDレーザ 2026年3月期決算短信
- 株式会社QDレーザ 中期経営計画
- 株式会社QDレーザ 100億宣言・10 by 10 to 100
- 株式会社QDレーザ・TDK XRグラス向け光学エンジン事業協力
- 株式会社QDレーザ TDKとの事業協力及び特別利益の発生
- 株式会社QDレーザ 2027年3月期業績予想の修正
- 浜松ホトニクス株式会社 株主・投資家情報
- ウシオ電機株式会社 投資家情報
- santec Holdings株式会社 IRライブラリ
本記事は、企業が公表した決算短信、適時開示、IR資料、製品・技術情報などを基に作成したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想、事業計画、共同開発、量産時期、株価指標は前提条件や市場環境の変化により変動します。投資判断は最新の開示資料を確認したうえで、自身の責任で行ってください。

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