6232 ACSL

ACSL 6232 東証G

ACSL Ltd.|独自の自律制御技術を基盤に、国産産業用ドローンの開発、製造、販売と社会実装を手掛ける。防衛・官公庁、北米、物流、インフラ点検を重点領域とする。

※2026年6月21日時点の情報

事業内容

2026年6月19日終値ベースの時価総額は約352億円。終値は1,827円、発行済株式総数は19,277,874株だった。

2013年11月設立。本社は東京都江戸川区臨海町3-6-4、ヒューリック葛西臨海ビル2階。代表取締役Co-CEOは早川研介氏と寺山昇志氏。12月決算で、東京証券取引所グロース市場に上場する。産業用ドローンの製造販売と、自律制御技術を用いた無人化・IoT化ソリューションを提供している。

2025年12月期は売上高2,598百万円、営業損失1,840百万円、経常損失1,075百万円、親会社株主に帰属する当期純損失1,363百万円だった。2026年12月期第1四半期は売上高約6.1億円となり、一部の米国向け出荷遅延で前年同期を下回ったものの、受注残は約14.7億円、売上総利益率は41%、限界利益率は51%まで改善した。会社は売上高4,000百万円、営業損失1,360百万円とする通期予想を据え置いている。

ドローン関連事業全体|用途特化型機体の量産販売へ移行

売上高は2021年12月期の501百万円から2025年12月期の2,598百万円へ拡大した。年度ごとの大型納入案件による変動は大きいが、2025年12月期は用途特化型機体販売が2,046百万円となり、売上高の約79%を占めた。

ドローン関連事業 売上高推移(百万円)

501 1,635 896 2,655 2,598 2021/12 2022/12 2023/12 2024/12 2025/12

ACSLは開示上、ドローン関連事業の単一セグメントである。収益源は、実証実験、プラットフォーム機体販売、用途特化型機体販売、保守・部品・大型案件などを含むその他売上で構成される。

2021年12月期は決算期変更に伴う9か月決算で、売上高は501百万円だった。2022年12月期はSOTENをはじめとする量産機体の販売開始や大型案件の寄与により1,635百万円まで増加した。

2023年12月期は海外案件の計上時期や量産販売の立ち上がりが影響し、売上高は896百万円へ減少した。研究開発費や海外販売体制への投資負担が続き、営業損失は2,071百万円となった。

2024年12月期は売上高が2,655百万円へ増加した。インド向け地上走行ロボットの大型案件がその他売上に含まれており、通常のドローン機体販売だけでは説明できない一時的な売上寄与があった。

2025年12月期の売上高は2,598百万円と前期比2.1%減だったが、売上構成は変化した。実証実験は165百万円、プラットフォーム機体販売は52百万円、用途特化型機体販売は2,046百万円、その他は334百万円だった。

用途特化型機体販売が増えた背景には、防衛・官公庁向け小型空撮機体と北米向けSOTENの納入がある。2024年12月期のその他売上に含まれていた大型案件が縮小する一方、量産機体そのものの売上比率が高まった。

収益構造では、売上規模の拡大だけでなく、材料費や直接経費を控除した限界利益率が重要となる。2026年12月期第1四半期には限界利益率が51%、売上総利益率が41%へ改善しており、量産機体の製品構成と構造改革の効果が確認できる。

一方、国家プロジェクトに係る研究開発費を営業費用として計上するため、営業損益は表面上の赤字が大きくなる。2026年12月期会社予想にはSBIR事業の研究開発費600百万円と助成金収入900百万円が織り込まれている。

業績を判断する際は、売上高、受注残、限界利益率、国家プロジェクト費用を除く営業損益、助成金の計上時期を分けて確認する必要がある。

小型空撮・防衛・北米|SOTENを軸とする高信頼性機体

セキュアな小型空撮ドローンSOTENを防衛・官公庁と北米市場へ展開する。2026年12月期第1四半期時点で防衛分野の受注が積み上がり、北米では20社を超える販売代理店網を構築している。

SOTENは、経済安全保障と情報セキュリティへの配慮を前提に設計された国産小型空撮ドローンである。防衛・警察・消防、災害調査、設備点検、測量など、映像や位置情報の管理が重視される用途を主な対象とする。

国内では防衛省、自衛隊、官公庁、公共インフラ事業者などへの納入実績を持つ。2024年には防衛省向けにSOTENを納入し、中期経営方針では防衛・安全保障分野を重点戦略の一つに位置付けた。

2026年3月に開示した案件に続き、同年4月には防衛省の入札で約3.5億円と約0.7億円の小型空撮機体案件を受注した。約3.5億円の案件は2026年12月までの納入予定で、通期業績予想に織り込み済みである。

防衛分野では機体販売だけでなく、保守・メンテナンス、操縦者教育、運用支援、他のハードウェアやアプリケーションとのシステム連携へ提供範囲を広げる方針である。

北米では米国子会社ACSL, Inc.を通じてSOTENを販売する。米国の政府調達で重視されるNDAAへの準拠、中国製機体に依存しないサプライチェーン、現地ニーズに合わせた機能改善を訴求する。

販売網は米国のマスターディストリビューターと20社を超える代理店で構成される。電力・通信インフラの点検、警察・消防などのPublic Safety、測量、災害対応を重点市場としている。

北米向けにはスマートコントローラーTAITEN、赤外線カメラSAMO、ポート連携など、機体単体以外の付加価値製品を拡充する。カナダでも販売網を整備し、北米全体での導入拡大を狙う。

2026年12月期第1四半期は米国向け出荷の一部が遅れたものの、北米の機体販売は通期1,000台目標に対して、売上計上済みと受注済みを合わせて約600台まで進捗したと説明している。

中期経営方針では北米売上高を2025年見通し約9億円から2028年に25億円へ、防衛分野を約9億円から15億円へ拡大する目標を掲げる。

防衛・官公庁と北米は、SOTENの量産効果、継続注文、アクセサリー販売、保守サービスを通じて収益性を引き上げられるかが焦点となる。

物流・社会インフラ|PF4とPF2-CAT3による社会実装

物流用マルチユース機体PF4と、レベル4飛行に対応するPF2-CAT3を展開する。第一種型式認証、災害時の物資輸送、郵便・配送実証を社会インフラ分野での参入障壁とする。

ACSLは、離島、山間部、災害地域、工場敷地内など、人手による輸送が非効率または危険な地域を対象に物流ドローンを開発してきた。

PF4は物流を中心としたマルチユース機体で、荷物搭載能力、航続距離、運航の安定性、量産時のコスト低減を重視した製品である。2025年10月に量産を開始した。

PF2-CAT3は、有人地帯上空を補助者なしで目視外飛行するレベル4に対応する機体である。2023年3月に日本で初めて第一種型式認証を取得し、2026年3月には認証更新を完了した。

第一種型式認証の維持には、機体設計だけでなく、製造工程の均一性、量産能力、設計変更管理、品質保証体制が求められる。認証取得と更新の経験は、後発企業が短期間で模倣しにくい運用上の蓄積となる。

PF2-CAT3は最大離陸重量9.8kg、最大飛行時間17.5分、最大1.0kgの荷物搭載に対応する。非常用パラシュートを備え、複数のレベル4飛行実証に使用されている。

日本郵便との郵便局間輸送、長崎県や福島県での配送、能登半島地震における医薬品輸送や被害状況調査など、実際の社会課題に接続した運航実績を持つ。

インフラ点検では、送電線上空のドローン航路、河川、砂防、道路、プラント設備などへの導入を想定する。SOTENによる空撮とPF4による輸送・巡視を組み合わせ、平時と災害時の双方で利用できる体制を目指す。

物流市場では機体性能だけでなく、航空法への対応、機体認証、運航管理、現地オペレーター、保険、保守体制を含む運用設計が必要となる。ACSLは機体メーカーとして事業者との連携を深める方針である。

中期経営方針では、社会インフラ維持・管理分野の売上高を2025年見通し約4億円から2028年に10億円へ拡大する目標を設定している。

商用化の速度は規制、自治体やインフラ事業者の予算、飛行ルートの整備に左右されるが、第一種型式認証と実運用データは案件獲得時の評価材料となる。

自律制御・PoC・点検|AP3、Visual SLAM、AIを自社開発

ドローンの姿勢を制御する「小脳」と、周辺環境を認識する「大脳」を自社開発する。PoCから特注設計、量産供給までを一貫して支援し、非GPS環境や閉鎖空間へ用途を広げる。

ACSLの技術基盤は、自社開発のAP3制御技術である。機体の姿勢と飛行を制御するフライトコントローラーを「小脳」、周囲の状況を認識して飛行計画を判断する機能を「大脳」と位置付ける。

小脳部分では、一定条件下を前提とする一般的なPID制御だけに依存せず、機体モデルを基にした非線形制御を採用する。風や機体重量などの条件変化に対応し、飛行姿勢を安定させる。

大脳部分ではVisual SLAM、AI、LiDARなど複数のセンサー情報を融合する。GPS信号を取得しにくい建物内部、煙突、倉庫、プラント設備でも、自機位置を推定しながら飛行できる技術を開発する。

インフラ点検では、作業員が立ち入りにくい高所、狭所、暗所、粉じん環境へのドローン導入を進める。閉鎖空間点検機Fi4など、現場環境に応じた機体と撮影・解析システムを組み合わせる。

ビジネスモデルには段階的な概念検証型アプローチを採用する。最初にPoCで技術的・経済的な成立性を確認し、次に特注システムを設計、試験運用を経て量産機体の販売と実業務への導入へ移行する。

この方法は新規用途の技術リスクを抑えられる一方、個別開発が長期化すると量産販売に至らず、研究開発費だけが先行する可能性がある。標準機体と共通ソフトウェアの比率を高めることが採算改善の条件となる。

2026年以降はPreferred Networksとの連携を通じ、生成AIによる飛行計画の自動作成、AI物体認識による障害物回避、機体異常の兆候検知をK Programの研究テーマとして進める。

中期経営方針では、2026年中盤から後半に小型・軽量で飛行時間と耐環境性能を高めた次世代小型空撮機体を投入し、2028年前半にはAI自律制御やメッシュネットワークに対応する次々世代機体を計画する。

自律制御技術を機体単体に閉じず、地上局、クラウド、運航管理、画像解析、デジタルツインと接続できれば、ハードウェア販売後の継続収益を拡大できる余地がある。

直近5年業績サマリー

業績項目 2021年12月期
9か月
2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期 2026年12月期
会社予想
売上高 5019か月決算 1,635+1,134 / +226.3% 896-739 / -45.2% 2,655+1,759 / +196.3% 2,598-57 / -2.1% 4,000+1,402 / +54.0%
営業損益 -1,188 -2,203赤字拡大 1,015 / 85.4% -2,071赤字縮小 132 / 6.0% -2,293赤字拡大 222 / 10.7% -1,840赤字縮小 453 / 19.8% -1,360赤字縮小 480 / 26.1%
経常損益 -1,213 -2,174赤字拡大 961 / 79.2% -2,102赤字縮小 72 / 3.3% -2,188赤字拡大 86 / 4.1% -1,075赤字縮小 1,113 / 50.9% -650赤字縮小 425 / 39.5%
当期純利益 -1,225 -2,591赤字拡大 1,366 / 111.5% -2,543赤字縮小 48 / 1.9% -2,371赤字縮小 172 / 6.8% -1,363赤字縮小 1,008 / 42.5% -700赤字縮小 663 / 48.6%
EPS -63.54円 -134.40円-70.86円 / -111.5% -131.91円+2.49円 / +1.9% -122.99円+8.92円 / +6.8% -70.70円+52.29円 / +42.5% -36.31円+34.39円 / +48.6%
PER 算出不可EPS赤字 算出不可EPS赤字 算出不可EPS赤字 算出不可EPS赤字 算出不可EPS赤字 算出不可予想EPS赤字
PBR 7.46倍 11.71倍+4.24倍 / +56.8% 7.69倍-4.02倍 / -34.3% 78.90倍+71.21倍 / +926.1% 9.90倍-69.00倍 / -87.5%
BPS 281.10円 152.40円-128.70円 / -45.8% 117.44円-34.96円 / -22.9% 10.06円-107.38円 / -91.4% 91.04円+80.97円 / +804.6%
純資産 5,419 2,938-2,481 / -45.8% 2,264-674 / -22.9% 194-2,070 / -91.4% 1,755+1,561 / +804.6%
営業CF -1,345 -2,148-803 / -59.7% -2,572-424 / -19.7% -1,902+670 / +26.0% -1,246+656 / +34.5%
投資CF -751 -271+480 / +63.9% -94+177 / +65.3% -46+48 / +51.1% -6+40 / +87.0%
財務CF 2,965 1,013-1,952 / -65.8% 2,809+1,796 / +177.3% 1,691-1,118 / -39.8% 2,020+329 / +19.5%
現金及び現金同等物 2,759 1,356-1,403 / -50.9% 1,499+143 / +10.5% 1,243-256 / -17.1% 2,018+775 / +62.3%
単位は百万円。EPS・BPSは円、PER・PBRは倍。
2021年12月期は決算期変更に伴う2021年4月1日から12月31日までの9か月決算。
EPS、BPS、PER、PBRは比較条件をそろえるため、2026年4月22日現在の発行済株式総数19,277,874株で再計算した。期末株価は2021年12月期2,098円、2022年12月期1,784円、2023年12月期903円、2024年12月期794円、2025年12月期901円を使用。全期間でEPSが赤字のためPERは算出不可。
2024年12月期は純資産が194百万円まで減少し、PBRが一時的に大幅上昇した。2025年12月期以降は増資及び新株予約権行使による株式数増加に注意が必要。

中期経営計画

ACSL Accelerate FY26|2026年度~2028年度

基本方針は「世界中の安全・安心を支える人が頼れるメーカーへ」。独自の自律制御技術と国産小型無人機の量産能力を基盤に、防衛・安全保障、北米、社会インフラ維持・管理を成長分野として集中投資する。

年平均売上成長率 20%以上
中長期粗利率 40%以上
北米売上高 2028年 25億円
防衛売上高 2028年 15億円
社会インフラ売上高 2028年 10億円
営業損益 3年以内に黒字化

重点戦略は、先端技術による機体進化、強靭なサプライチェーンの構築、北米事業の本格拡大、防衛・安全保障分野への貢献、社会インフラ維持・管理の国産化、持続的な財務基盤の強化の6項目である。

機体戦略では、2026年中盤から後半に次世代小型空撮機体を開発・量産し、2028年前半にはAI自律制御、メッシュネットワーク、第三者上空飛行への対応を想定した次々世代機体を計画する。

北米ではNDAA準拠機体の代替需要を取り込み、電力インフラ点検とPublic Safetyを重点領域とする。代理店網の拡大に加え、現地パートナーとの協業、赤外線カメラ、スマートコントローラー、ポート連携を進める。

防衛ではSOTENの量産納入を起点に、保守、教育、運用支援、ソフトウェア、複数機体や他装備とのシステム連携へ事業範囲を広げる。社会インフラではPF4、PF2-CAT3、SOTENを物流、点検、災害対応に展開する。

財務面では助成金、増資、新株予約権、借入など複数の資金調達手段を活用し、黒字化までの資金を確保する方針である。国家プロジェクトを除く営業損益と営業キャッシュ・フローの改善が計画達成の重要指標となる。

中期経営計画資料へ

競合他社

① Terra Drone(278A)

2026年6月19日終値は7,920円。時価総額は約772億円。

測量、石油・ガス施設や大型インフラの点検、農業、海外事業、ドローン運航管理システムを展開する。機体製造だけでなく、現場オペレーション、データ解析、UTMを含むサービス基盤に強みを持つ。

2025年1月期は売上高4,435百万円、営業損失627百万円。2026年1月期は売上高4,782百万円、営業損失1,143百万円となり、海外事業と運航管理分野への先行投資で営業赤字が続いた。

ACSLが国産小型機体の製造・販売と自律制御技術を軸にするのに対し、Terra Droneは測量・点検サービス、海外拠点、UTMを含む運用側のプラットフォームを広く持つ。

インフラ点検、土木測量、プラント点検、防衛、海外案件では顧客層が重なる。機体性能だけでなく、運用実績、現地人員、解析システム、グローバルネットワークを含む総合提案で競合する。

② Liberaware(218A)

2026年6月19日終値は840円。時価総額は約165億円。

屋内狭小空間に特化した小型ドローンIBISシリーズを開発し、下水道、ボイラー、配管、発電設備、鉄道施設などの点検に展開する。取得した画像や点群データをBIM、デジタルツイン、空間データ基盤へ接続する。

2025年7月期は売上高1,406百万円、営業損失1,588百万円。2026年7月期第3四半期累計は売上高1,216百万円、営業損失1,969百万円となり、国家プロジェクトや研究開発への先行投資負担が大きい。

ACSLの閉鎖空間点検機や非GPS自律飛行ソリューションに対して、Liberawareは狭く暗い屋内での点検能力とデータ処理を強みとする。プラント、下水道、煙突、天井裏、設備保守の案件で直接競合しやすい。

Liberawareは点検後のデータ活用まで一体化したサービス比率が高い。ACSLには汎用的な自律制御技術と複数の量産機体があるため、顧客が機体性能を重視するか、データ解析を含む業務全体を重視するかで競争軸が変わる。

③ ブルーイノベーション(5597)

2026年6月19日終値は1,382円。時価総額は約56億円。

ドローンやロボットを遠隔・自動運用するBlue Earth Platformを中核に、インフラ点検、物流、防災、教育・人材育成などのソリューションを展開する。

2025年12月期は売上高1,051百万円、営業損失548百万円。2026年12月期第1四半期は売上高421百万円、営業損失72百万円となり、売上拡大と赤字縮小を進めている。

ACSLと比較すると、ブルーイノベーションは自社機体の量産よりも、複数メーカーのドローンやロボットを接続する運用システム、ドローンポート、遠隔監視、導入支援に重点を置く。

物流、送電設備、プラント、倉庫、災害対応で顧客領域が重なる。ACSLが機体と自律制御技術を供給し、ブルーイノベーションが運用基盤を提供する協業余地がある一方、システム全体の主導権を巡って競合する可能性もある。

強みと将来性

国産小型無人機の量産能力と自律制御技術を、防衛・北米・社会インフラへ横展開

最大の強みは、産業用ドローンの制御技術、機体設計、量産、品質保証、実運用支援を一社で保有する点にある。

ドローンの姿勢制御を担うフライトコントローラーと、Visual SLAM、AI、LiDARによる環境認識を自社開発している。単に市販部品を組み合わせるだけでなく、用途に合わせて制御特性を調整できる。

非GPS環境、風、磁場、障害物、通信制約など、産業現場固有の条件に合わせて機体とソフトウェアを改良できることは、汎用空撮機との差別化要因となる。

SOTENは経済安全保障を重視する政府・防衛・公共インフラ市場に適合しやすい。中国製機体の使用制限が強まる北米では、NDAA準拠と中国製部品への依存を抑えたサプライチェーンが販売機会につながる。

小型屋外ドローンを国内で量産できる企業は限られる。ACSLはSOTENの納入実績、生産設備、品質管理、サプライヤー管理を蓄積しており、試作段階の企業よりも大量調達案件に対応しやすい。

国内では防衛省、自衛隊、官公庁、郵便・物流事業者、インフラ企業など幅広い顧客基盤を持つ。北米では20社を超える代理店網を構築し、現地販売をゼロから始める段階を越えている。

防衛分野は単発の機体納入だけでなく、交換部品、保守、訓練、運用支援、ソフトウェア更新、システム連携を継続収益へ転換できる余地がある。

PF2-CAT3の第一種型式認証取得と更新実績も参入障壁となる。認証には設計安全性だけでなく、製造工程の均一性、量産能力、変更管理、品質保証が必要であり、書類上の申請だけでは取得できない。

物流、点検、防災は法規制や運航体制の整備に時間がかかる一方、一度採用された機体や運用手順は安全性の観点から継続利用されやすい。実証から商用運航までのデータ蓄積が長期的な競争力になる。

2026年12月期第1四半期には、前年同期の低採算案件の影響がなくなり、限界利益率が51%、売上総利益率が41%へ改善した。会社が中期目標とする粗利率40%以上に達しており、製品構成が維持されれば損益分岐点は低下する。

受注残14.7億円と第1四半期売上を合わせると20億円を超え、国内案件の多くが売上計上済みまたは受注済みとなっている。受注した機体を計画どおり納入できれば、年度後半の売上進捗を読みやすくなる。

Preferred Networksとの生成AI、自律回避、異常検知の研究は、操縦者の技能依存を下げる可能性がある。自然言語から飛行計画を作成し、複数機が自律協調できれば、警備、災害、防衛、広域点検の運用効率が高まる。

次世代小型空撮機体が飛行時間、耐環境性能、価格、操作性を改善できれば、SOTENで構築した販売網へ追加製品を投入できる。新規顧客獲得コストを抑えながら売上を積み上げられる可能性がある。

中期的には、機体売り切り型から、アクセサリー、保守、ソフトウェア、クラウド、運航支援を含む継続収益型へ移行できるかが企業価値拡大の鍵となる。

弱みとリスク要因

継続赤字、案件変動、希薄化、量産品質とガバナンス再構築

最大の弱みは、売上規模に対して研究開発費と固定費が大きく、上場後も営業赤字と営業キャッシュ・フローのマイナスが続いている点である。

2021年12月期から2025年12月期まで5期連続で営業損失を計上した。2025年12月期は営業損失が1,840百万円まで縮小したが、売上高2,598百万円に対して赤字額は依然として大きい。

2026年12月期も会社予想は営業損失1,360百万円であり、通期ベースの黒字転換は見込んでいない。国家プロジェクト費用を除く損益が改善しても、研究開発費を含む連結損益と営業キャッシュ・フローの改善には時間を要する。

旧中期経営方針では2025年の売上高100億円、利益10億円を掲げていたが、2025年12月期実績は売上高25.98億円、純損失13.63億円だった。会社自身も目標未達を認めており、新中期方針についても受注と実績の継続確認が必要である。

売上高は大型案件の検収時期に左右される。2024年12月期にはインド向け地上走行ロボットの大型案件が寄与し、2025年12月期は防衛・北米向け機体販売が中心となったため、年度間の比較では製品構成が大きく異なる。

官公庁や防衛案件は予算年度、入札、検収、政策変更の影響を受ける。受注があっても、納入条件の変更や検収の遅れにより売上計上が翌期へずれる可能性がある。

2026年12月期第1四半期では米国向け出荷遅延が発生した。北米売上高25億円目標の達成には、製造だけでなく輸出許可、物流、現地在庫、代理店の販売能力、アフターサービスを同時に整備する必要がある。

防衛・安全保障市場は成長余地がある一方、輸出管理、調達要件、機密情報、認証、政治判断の影響が大きい。国際関係や制度変更により、対象市場や使用部品が制限される可能性がある。

中国製部品への依存低減は販売上の強みになるが、調達先を国内や同盟国に限定すると、部品価格、調達期間、最低発注数量が上昇する可能性がある。小規模生産では大手海外メーカーとの価格差が残りやすい。

機体事故、墜落、通信障害、位置情報の誤認識、サイバー攻撃、データ漏えいが発生した場合、製品回収、損害賠償、認証停止、顧客離れにつながる。特に防衛、物流、第三者上空飛行では安全性への要求が高い。

第一種型式認証は強みである一方、認証仕様の変更管理や量産品の均一性維持には継続的な費用がかかる。次世代機体の開発が遅れた場合、既存製品の陳腐化と追加開発費の双方が発生する。

競争相手にはDJIなどの海外大手、機体開発に特化する国内企業、点検・データ解析を強みとするLiberaware、運航管理や海外サービス網を持つTerra Droneなどが存在する。機体価格だけでなく、運用ソフトウェアと販売網を含む競争となる。

資金面では増資、新株予約権、転換社債、借入、助成金を活用している。発行済株式総数は2022年12月末の12,380,835株から2026年4月22日には19,277,874株へ増加しており、1株当たり価値の希薄化に注意が必要である。

助成金は開発費を補完するが、交付条件、検査、収益計上時期によって経常損益とキャッシュ・フローが変動する。研究開発費と助成金収入が異なる期に計上されると、表面上の利益変動が大きくなる。

2025年には元代表取締役による実態のない不適切な取引が判明し、特別調査委員会が設置された。調査報告書では、代表取締役のコンプライアンス意識、業務執行のブラックボックス化、契約・支出プロセスの脆弱性が指摘された。

会社は社外取締役を過半数とする体制、指名・報酬委員会、契約・支出承認の強化など再発防止策を進めているが、自治体案件の判断や取引先からの信用に影響した実績がある。再発防止策が形式だけでなく実務に定着するかを確認する必要がある。

株価は将来の防衛・北米成長を先行して織り込みやすい。黒字化時期、納入台数、粗利率が計画を下回った場合、赤字企業としての財務数値と市場評価の差が急速に縮小するリスクがある。

出典

コメント

タイトルとURLをコピーしました