ファナック 6954 東証P
FANUC CORPORATION|CNC・サーボを中核とするFA、産業用ロボット、ロボマシン、世界規模の保守サービスを一体展開する製造自動化企業。
※2026年6月21日時点の情報
事業内容
2026年6月19日終値ベースの時価総額は約7兆3,414億円。終値は7,473円で、2026年3月期末の5,382円からは38.8%上昇している。
1972年設立。本社は山梨県南都留郡忍野村、資本金は690億円、代表取締役社長は山口賢治氏、決算期は3月。東証プライム市場に上場し、NCとサーボを基礎技術として、FA、ロボット、ロボマシン、IoT、保守サービスを「one FANUC」で統合している。
2026年3月期は売上高8,578億31百万円、営業利益1,837億63百万円、経常利益2,274億85百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,665億43百万円。売上高は前期比7.6%増、営業利益は15.7%増となった。2027年3月期は売上高9,096億円、営業利益2,122億円、当期純利益1,849億円を見込む。
FA事業 – CNC・サーボ・モーション制御
FA部門売上高の推移(単位:億円)
FA事業は、工作機械や産業機械の動作を制御するCNC、サーボモータ、サーボアンプ、主軸モータ、モーションコントローラを中心とする。CNCが加工プログラムを解釈し、サーボシステムが工作機械の軸を高速かつ高精度に動かす構成で、ファナックの全事業を支える基本技術となっている。
CNCではFANUC Series 0i、30i、31i、32iなどを展開し、旋盤、マシニングセンタ、複合加工機、5軸加工機を含む幅広い工作機械に対応する。CNC、サーボ、主軸モータ、表示・操作機能を一体で提供できるため、機械メーカーは制御系を共通化しやすい。
工作機械メーカーによる標準CNCの採用は、操作体系、加工プログラム、保守部品、販売店教育、ユーザー企業の習熟度に影響する。採用後は同一系列の制御装置が継続採用されやすく、製品販売だけでなく交換部品、改造、保守サービスにもつながる。
サーボモータとアンプは工作機械だけでなく、半導体・電子部品製造装置、包装機械、印刷機械、搬送装置などにも搭載される。生産設備の高速化、高精度化、省エネルギー化が更新需要の中心となる。
デジタル分野では、加工シミュレーション、稼働情報の可視化、AI Servo Monitorなどを通じて、異常兆候の把握や予防保全に対応する。制御装置の販売を起点に、設備稼働後のデータ活用とサービスへ収益機会を広げる構造である。
2026年3月期は中国やインドを含む地域で需要が伸び、FA部門売上高は前期比7.0%増となった。一方で、工作機械や一般産業機械の設備投資サイクルに左右されやすく、2024年3月期のように需要調整が起きると部門売上高の変動が大きくなる。
ロボット事業 – 産業用・協働ロボットとフィジカルAI
ロボット部門売上高の推移(単位:億円)
ロボット事業は、小型・中型・大型の垂直多関節ロボット、スカラロボット、パラレルリンクロボット、協働ロボット、物流ロボット、アーク溶接ロボット、塗装ロボットなどを展開する。搬送、組立、溶接、塗装、加工機へのワーク投入、パレタイジング、検査などが主用途である。
自動車分野では車体溶接、部品搬送、塗装、組立工程に使われる。一般産業では電子部品、食品、医薬品、金属加工、物流などに用途が広がり、自動車設備投資だけに依存しない需要構成を形成している。
協働ロボットCRXシリーズは、人と同じ作業空間で使用する用途を想定し、操作性や安全機能を重視する。従来型の産業用ロボットでは自動化しにくかった少量多品種工程や、人手作業と自動設備が混在する現場が対象となる。
ロボット本体に加え、視覚センサ、力センサ、ロボットシミュレーション、稼働監視、予防保全を組み合わせることで、単体機器からロボットセル全体へ提供範囲を広げている。CNCやロボマシンと連携し、加工機への材料投入から加工後の搬送までを一体化できる点も特徴である。
フィジカルAI分野では、Python、ROS、外部から動作を指令するストリームモーションなどへの対応を進めている。GoogleのAI技術を用いたロボットシステム、NVIDIA Isaac Simとの連携、生成AIを使った作業指示など、外部AIプラットフォームとの接続性を高めている。
オープンプラットフォーム化は、ファナックがロボット本体と制御装置を提供し、顧客やシステムインテグレーターがAI、カメラ、アプリケーションを組み合わせる開発形態を可能にする。研究用途だけでなく、生産現場への導入速度を高められるかが成長性を左右する。
2026年3月期は米州と中国を中心に売上高が増加した。自動化投資、人手不足対応、AIを活用した工程高度化が中長期需要になる一方、顧客企業の設備投資延期や自動車生産計画の変更が短期業績に与える影響は大きい。
ロボマシン事業 – ロボドリル・ロボショット・ロボカット
ロボマシン部門売上高の推移(単位:億円)
ロボマシン事業は、小型切削加工機ロボドリル、電動射出成形機ロボショット、ワイヤ放電加工機ロボカットの3製品群を中心とする。いずれも自社CNCとサーボ技術を搭載し、工作機械・成形機として販売する。
ロボドリルは、電子部品、自動車部品、精密機械部品などの切削加工に使用される。高速工具交換や省スペース性を生かし、複数台を並べた加工ラインや、ロボットによる自動ワーク搬送と組み合わせたセル生産に適する。
ロボショットは、サーボモータで射出工程を制御する電動射出成形機である。樹脂部品の成形精度、省エネルギー性、再現性が重視され、電子部品、精密部品、自動車部品、医療関連部品などが対象となる。
ロボカットは、電極ワイヤと放電を利用して金属を高精度に加工するワイヤ放電加工機で、金型、精密部品、工具部品などに用いられる。長時間の自動運転や加工安定性が生産性を左右するため、CNC、サーボ、保守サービスとの一体運用が重要となる。
ファナック製ロボットを各ロボマシンの前後工程に接続し、材料投入、加工、取り出し、洗浄、検査を自動化できる。機械本体だけでなく、自動化パッケージとして提案できることが、単純な工作機械販売との差別化要素となる。
部門業績はスマートフォン、電子部品、半導体関連、自動車部品などの設備投資に影響される。特定製品の大型投資が一巡した場合には受注が急減しやすく、4部門の中でも年度ごとの変動が比較的大きい。
2026年3月期はロボドリルやロボショットの地域別需要に差が生じ、部門全体では減収となった。2027年3月期の回復には、電子部品・精密加工向け投資と、ロボットを組み合わせた加工自動化案件の獲得が重要となる。
サービス事業 – 生涯保守・予防保全・稼働支援
サービス部門売上高の推移(単位:億円)
サービス事業は、CNC、サーボ、ロボット、ロボマシンの修理、点検、保守部品供給、予防保全、改造、技術支援を担う。ファナックは、顧客が商品を使用する限り保守を継続する生涯保守を掲げている。
世界280以上のサービス拠点を通じて100カ国以上をカバーし、日本国内ではCS24による24時間対応を実施する。自動車や電子部品の量産ラインでは設備停止による損失が大きいため、復旧速度と部品供給体制が機器選定の重要条件となる。
保守契約、定期点検、修理、部品販売に加え、稼働状態を監視して故障兆候を把握する予防保全サービスを展開する。故障後の修理だけでなく、停止時間を未然に減らすサービスへ範囲を広げている。
ロボットのZDTやサーボ系の状態監視、会員サイトMyFANUC、保守部品のインターネット販売など、デジタル接点を通じた継続サービスも強化している。納入済み機器の稼働台数が拡大するほど、保守対象となる設置基盤も増える。
新規設備投資が減速した局面でも、稼働中設備の修理や部品交換は必要となる。このため、サービス売上高は新品機器販売より安定しやすく、過去5期の連続増収は全社収益の下支えとなっている。
一方、サービス網の維持には技術者、在庫、物流拠点、旧型製品の技術情報を長期間保有する必要がある。拠点数の拡大だけでなく、稼働率、部品在庫の効率、遠隔診断による生産性向上が利益率を左右する。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 733,008 | 851,956 +118,948 / +16.2% | 795,274 △56,682 / △6.7% | 797,129 +1,855 / +0.2% | 857,831 +60,702 / +7.6% | 909,600 +51,769 / +6.0% |
| 営業損益 | 183,240 | 191,359 +8,119 / +4.4% | 141,919 △49,440 / △25.8% | 158,846 +16,927 / +11.9% | 183,763 +24,917 / +15.7% | 212,200 +28,437 / +15.5% |
| 経常損益 | 213,395 | 231,327 +17,932 / +8.4% | 181,755 △49,572 / △21.4% | 196,738 +14,983 / +8.2% | 227,485 +30,747 / +15.6% | 257,000 +29,515 / +13.0% |
| 当期純利益 | 155,273 | 170,587 +15,314 / +9.9% | 133,159 △37,428 / △21.9% | 147,557 +14,398 / +10.8% | 166,543 +18,986 / +12.9% | 184,900 +18,357 / +11.0% |
| EPS | 158.06円 | 173.65円 +15.59円 / +9.9% | 135.55円 △38.10円 / △21.9% | 150.20円 +14.65円 / +10.8% | 169.53円 +19.33円 / +12.9% | 188.22円 +18.69円 / +11.0% |
| PER | 27.39倍 期末株価4,329円 | 27.41倍 期末株価4,760円 | 30.87倍 期末株価4,185円 | 26.96倍 期末株価4,050円 | 31.75倍 期末株価5,382円 | – |
| PBR | 2.74倍 | 2.87倍 | 2.39倍 | 2.29倍 | 2.81倍 | – |
| BPS | 1,577.67円 | 1,656.74円 +79.07円 / +5.0% | 1,750.03円 +93.29円 / +5.6% | 1,771.09円 +21.06円 / +1.2% | 1,916.71円 +145.62円 / +8.2% | – |
| 純資産 | 1,549,879 | 1,627,555 +77,676 / +5.0% | 1,719,200 +91,645 / +5.6% | 1,739,890 +20,690 / +1.2% | 1,882,947 +143,057 / +8.2% | – |
| 営業CF | 125,581 | 99,505 △26,076 / △20.8% | 171,764 +72,259 / +72.6% | 255,273 +83,509 / +48.6% | 250,896 △4,377 / △1.7% | – |
| 投資CF | △53,929 | △77,998 増減 △24,069 | △13,563 増減 +64,435 | △134,084 増減 △120,521 | △56,437 増減 +77,647 | – |
| 財務CF | △89,154 | △127,924 増減 △38,770 | △122,514 増減 +5,410 | △136,618 増減 △14,104 | △98,598 増減 +38,020 | – |
| 現金及び現金同等物 | 574,655 | 476,953 △97,702 / △17.0% | 526,881 +49,928 / +10.5% | 502,091 △24,790 / △4.7% | 615,075 +112,984 / +22.5% | – |
2023年4月1日付で普通株式1株を5株に分割。EPS、BPS、PER、PBRは、比較条件をそろえるため最新の発行済株式総数982,383,493株で再計算した。2022年3月期の期末株価は分割調整後の4,329円を使用している。
2027年3月期予想のPER、PBR、BPS、純資産、キャッシュ・フローは会社予想がないため空欄。2026年3月期決算短信では、継続企業の前提に関する重要な注記は記載されていない。
中期経営計画
独立した中期計画は非公表 – 2027年3月期予想と経営方針を確認
2026年6月21日時点で、計画期間を定めた独立した数値目標型の中期経営計画資料は確認できない。中期的な方向性は、毎期の業績予想、経営方針、研究開発方針、設備投資、株主還元方針から判断する必要がある。
2027年3月期は、FA、ロボット、ロボマシンで堅調な需要が続くとの前提から増収増益を計画している。想定為替レートは1米ドル150円、1ユーロ170円である。
基本方針は、FA、ロボット、ロボマシン、IoT、サービスを一体運営する「one FANUC」である。CNCとサーボの共通基盤を各製品へ展開し、製品単体ではなく製造工程全体の自動化を狙う。
商品開発では「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」を重視する。高信頼性、予防保全、生涯保守を組み合わせ、顧客設備の停止時間削減を競争力とする。
成長領域は、産業用ロボットのオープンプラットフォーム化、フィジカルAI、生成AI、視覚・力制御、デジタルツイン、工場設備の稼働監視である。GoogleやNVIDIAなど外部技術との接続を進め、ロボットをAIアプリケーションの実行基盤として活用する方針が明確になっている。
供給面では、部品の複数調達、生産拠点・サービス拠点の分散、地域別の供給体制を進める。地政学リスクや関税、物流停滞が起きても、顧客への製品供給と保守サービスを継続できる体制の構築が重要となる。
株主還元は連結配当性向60%を基本とし、機動的な自己株式取得を組み合わせる。保有自己株式は発行済株式総数の5%を上限とし、超過分は原則として消却する方針である。
IR情報へ競合他社
① 三菱電機(6503)
2026年6月19日終値は6,051円、時価総額は約12兆7,870億円。比較3社では最大だが、時価総額にはFA以外のインフラ、空調、ビルシステム、防衛・宇宙、半導体なども含まれる。
ファナックとはCNC、サーボ、モーション制御、産業用ロボット、工場制御の領域で競合する。工作機械向けCNCのM800V・M80Vシリーズは、ファナックの30i・31i・32i、0iシリーズと採用競争になる。
サーボ分野ではMELSERVO、産業用ロボットではMELFAを展開する。工作機械、電子部品製造装置、包装機械、組立・搬送工程などで顧客層が重なる。
三菱電機はMELSECのPLC、表示器、インバータ、サーボ、ロボット、ネットワークを一括提供できる。ファナックがCNCとロボットを中心とするのに対し、工場制御機器全体を広く供給できる点が競争上の特徴である。
2026年3月期は売上高5兆8,947億円、営業利益4,330億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,077億円。全社ベースでは増収増益となったが、ファナックとの比較ではFAシステム事業の受注と利益率を分けて確認する必要がある。
② 安川電機(6506)
2026年6月19日終値は7,128円、時価総額は約1兆9,010億円。産業用ロボット、ACサーボ、モーション制御でファナックと直接競合する。
産業用ロボットはMOTOMANブランドを展開し、アーク溶接、スポット溶接、搬送、組立、塗装、パレタイジングなどでファナックのロボット製品と競合する。自動車に加え、半導体、電子部品、食品、物流などの一般産業も対象となる。
ACサーボモータ、サーボアンプ、マシンコントローラは、ファナックのサーボシステムやモーション制御製品と重なる。工作機械だけでなく、半導体・液晶製造装置や一般産業機械で採用競争が生じる。
安川電機は「i3-Mechatronics」を掲げ、サーボ、インバータ、ロボット、制御ソフトを組み合わせた生産設備のデータ活用を進める。ロボット本体の性能だけでなく、工場全体の制御・データ連携を含む提案で競合する。
2026年2月期は売上収益5,421億22百万円、営業利益473億7百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益352億40百万円。2027年2月期は売上収益5,800億円、営業利益600億円を計画している。
③ 不二越(6474)
2026年6月19日終値は6,050円、時価総額は約1,508億円。企業規模はファナックを大きく下回るが、産業用ロボット、工作機械、機械工具、自動化設備で競合する。
産業用ロボットではMZシリーズをはじめ、小型・中型ロボット、搬送・溶接用途の製品を展開する。省スペース性を重視する工程や、自動車部品・機械部品の搬送工程でファナックの小型・中型ロボットと競合する。
工作機械、工具、ベアリング、油圧機器、特殊鋼も展開しており、加工工程に必要な機械・部品を複数供給できる。ファナックのCNC、ロボット、ロボマシンを組み合わせた自動化提案とは異なる製品構成で、加工現場への総合提案を行う。
2026年11月期第1四半期は売上高約602億円、営業利益約27億円。通期計画は売上高2,430億円、営業利益121億円である。自動車、建設機械、工作機械などの需要と、原材料価格、操業度が利益を左右する。
ファナックとの競争では、ロボット単体の性能だけでなく、工具・工作機械・ベアリングを含む既存顧客基盤が強みとなる。一方、グローバルなロボット製品群とサービス拠点の規模では差がある。
強みと将来性
CNC・サーボ・ロボット・加工機・保守を自社技術で接続する統合力
最大の強みは、CNCとサーボという制御技術を基礎に、産業用ロボットとロボマシンを同一グループ内で開発し、稼働後の保守まで一体提供できる点にある。
CNCが工作機械の動作を制御し、サーボが軸を動かし、ロボットが材料を搬送し、ロボマシンが加工する。各製品が共通技術を使用するため、個別機器の販売にとどまらず、加工セルや生産ライン全体の自動化へ提案範囲を広げられる。
共通する制御技術と操作体系は、顧客の教育負担、保守部品、設備立ち上げ、システム連携の複雑さを抑える。工作機械メーカーや生産設備メーカーに採用された後は、後継機種や追加ラインでも同一系列が選ばれやすい。
「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」という商品設計と、世界280以上のサービス拠点による生涯保守は、設備停止を避けたい量産工場に対する重要な価値となる。
サービス部門売上高は過去5期すべてで増加し、2026年3月期には1,411億43百万円へ拡大した。新品需要が調整する局面でも、納入済み設備から点検、修理、部品、予防保全の需要が生じるため、事業ポートフォリオの安定性を高めている。
ロボットは可搬質量3kgの小型機から2.3tの大型機まで扱い、協働、溶接、塗装、物流、組立、搬送など用途が広い。特定用途だけに依存せず、自動車から一般産業まで同じ制御基盤を展開できる。
フィジカルAIでは、ロボット制御を外部AIから利用しやすくするオープンプラットフォーム化を進めている。Python、ROS、ストリームモーション、シミュレーション環境との接続は、AI開発企業やシステムインテグレーターがファナック製ロボットを選択する入口となる。
Googleの生成AI・クラウド技術やNVIDIAのシミュレーション・ロボット技術との連携は、すべてのAI機能を自社開発するのではなく、自社のロボット制御・安全性・信頼性と外部のAI技術を組み合わせる戦略である。AI技術の変化が速い中でも、複数の開発環境へ対応しやすい。
2026年3月期末の現金及び現金同等物は6,150億75百万円、純資産は1兆8,829億47百万円、自己資本比率は89.2%である。設備投資循環による業績変動を吸収しながら、研究開発、生産能力、サービス網へ継続投資できる財務余力がある。
連結配当性向60%と自己株式取得を組み合わせる資本政策も明確である。事業成長だけでなく、利益成長が1株当たり利益と株主還元へ反映されるかが株価評価の焦点となる。
中長期では、労働力不足、熟練者不足、品質の安定化、危険作業の代替、生産拠点の再配置が自動化投資を支える。従来型の反復作業に加え、AIによる認識・判断を必要とする工程までロボット化できれば、対象市場が拡大する。
弱みとリスク要因
設備投資循環、地域需要、技術競争と株価評価の高さ
売上高の中心は製造業向け設備であり、顧客の設備投資計画に業績が左右される。受注から売上計上まで時間差があるため、景気悪化や投資延期が数四半期後の売上高と利益率に表れる場合がある。
2024年3月期は売上高が前期比6.7%減、営業利益が25.8%減となった。需要減少時には工場、人員、研究開発、サービス網などの固定費負担が残り、売上高の減少率以上に利益が落ち込む可能性を示している。
中国は工作機械、電子部品、電気自動車、一般産業向けの重要市場である。中国企業による設備投資の減速、現地メーカーとの価格競争、現地調達政策、輸出規制がFA、ロボット、ロボマシンの受注に影響する。
自動車産業では、車種変更、電動化投資、工場再編、関税政策により設備投資の地域と時期が変わる。大型ロボットや溶接用途は自動車設備投資の影響を受けやすく、案件延期が部門売上高の変動要因となる。
米国の関税、輸出管理、経済安全保障政策、地域間の貿易摩擦は、部品調達と完成品販売の双方に影響する。現地生産や複数調達を進めても、供給網の再構築には時間と費用を要する。
海外売上高の比率が高く、円換算業績は為替変動の影響を受ける。円安は売上高・利益の押し上げ要因になり得る一方、輸入部材費や海外拠点費用も変動する。会社予想の1米ドル150円、1ユーロ170円から大きく変動した場合は業績予想との差が生じる。
CNCでは三菱電機、産業用ロボットでは安川電機のほか、海外の大手ロボットメーカーや中国メーカーとも競合する。性能、価格、納期、制御ソフト、AI連携、保守体制の複数項目で競争が激しくなる。
フィジカルAIは成長余地がある一方、技術標準や収益モデルが確立途上である。実証実験や展示会での評価が、量産設備への継続採用と利益貢献へ直結するとは限らない。
ROS、Python、生成AI、シミュレーション環境への対応を進めるほど、外部ソフトウェアとの互換性、更新対応、サイバーセキュリティ、動作安全性の管理範囲が広がる。産業機器ではAIの誤認識や通信障害が生産停止や安全上の問題につながり得る。
サービス事業は安定性が高いが、世界規模の拠点、人員、旧型部品在庫を維持する必要がある。保守対象機種の増加や製品寿命の長期化は収益機会になる一方、在庫効率と技術者配置が悪化すればコスト要因となる。
2026年3月期末株価5,382円を基準とした再計算PERは31.75倍で、2026年6月19日終値7,473円を2027年3月期予想EPS188.22円で割ると約39.7倍となる。AI・ロボット成長への期待が株価に織り込まれている場合、受注や利益が予想を下回った際の評価調整幅が大きくなる。
自己資本比率が高く多額の現金を保有するため財務安全性は高いが、資本効率の改善も求められる。研究開発、設備投資、買収、配当、自己株式取得への配分が成長率とROEを高められるかを継続して確認する必要がある。
出典
- ファナック株式会社 公式サイト
- ファナック株式会社 会社概要
- ファナック株式会社 商品紹介
- ファナック株式会社 サービスのご案内
- ファナック株式会社 決算発表・IR資料一覧
- ファナック株式会社 2026年3月期 決算短信
- ファナック株式会社 Googleとの協業によるフィジカルAI社会実装
- ファナック株式会社 フィジカルAI・オープンプラットフォーム
- 三菱電機株式会社 2026年3月期 決算短信
- 株式会社安川電機 2026年2月期 決算短信
- 株式会社不二越 決算資料一覧
- 株式会社不二越 2026年11月期 第1四半期決算短信
本記事は、企業が公表した決算短信、IR資料、商品・サービス情報などを基に作成したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想、事業計画、株価指標は前提条件や市場環境の変化により変動します。投資判断は最新の開示資料を確認したうえで、自身の責任で行ってください。

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