265A Hmcomm

Hmcomm 265A 東証G

Hmcomm Inc.|音声認識、自然言語解析、異音検知を中核とする「AI×音」サイエンス企業。Voice Contact、Terry2、ZMEETING、FAST-Dを軸に、コンタクトセンターDX、電話応対自動化、設備保全DX、生成AI活用コンサルティングを展開する。

※2026年6月30日時点の情報

事業内容

2026年6月30日の時価総額は約28.5億円。同日の株価終値696円と、2026年12月期第1四半期末の発行済株式数4,097,400株を用いて算出した。前日に四国電力向けの異常音検知AIソリューション「FAST-D」提供開始を公表し、音響AIによるインフラ保全テーマが材料視された。

Hmcommは2012年7月24日設立。本社は東京都港区浜松町2-10-6 PMO浜松町3 4階、代表取締役社長CEOは三本幸司氏。12月決算企業で、2024年10月28日に東京証券取引所グロース市場へ新規上場した。事業内容は、音声認識処理、異音検知、自然言語解析処理を用いたプラットフォーム提供、および音に関するサイバニクス事業の推進である。

2026年12月期第1四半期の業績は、売上高332百万円、営業利益3百万円、経常利益5百万円、四半期純利益0百万円。前年同期の売上高230百万円、営業損失15百万円から、増収かつ黒字転換となった。通期会社予想は売上高1,373百万円、営業利益56百万円、経常利益45百万円、当期純利益22百万円で、AIプロダクトとAIソリューションの双方で成長を見込む。

「AI×音」サイエンス事業|単一セグメントで展開する音声AIプラットフォーム

Hmcommは「AI×音」サイエンス事業の単一セグメント。売上高は2024年12月期946百万円、2025年12月期1,112百万円、2026年12月期会社予想1,373百万円と増収基調が続く。
「AI×音」サイエンス事業・売上高推移(単位:百万円)
1,500 1,000 500 0 946 2024年12月期 1,112 2025年12月期 1,373 2026年12月期予想

同社は決算上、AIプロダクト事業とAIソリューション事業を事業運営上の説明軸として使う一方、開示上の報告セグメントは「AI×音」サイエンス事業のみである。

2025年12月期は売上高が前期比17.5%増となった一方、営業利益は38百万円と前期比59.3%減少した。売上拡大に対して利益が伸び悩んだ背景には、事業譲受に伴うのれん償却、AIプロダクト強化、生成AI関連開発、販売体制拡充などの先行費用がある。

2026年12月期第1四半期は、AIプロダクトとAIソリューションの双方でエンタープライズ向け導入案件が進み、前年同期の営業赤字から黒字転換した。四半期売上高は332百万円で、通期計画1,373百万円に対する進捗率は約24.2%となる。

ビジネスモデルはB2B中心で、音声認識、異音検知、生成AI活用、業務システム連携を顧客課題に合わせて実装する。直接販売が中心だが、Terry2 miniなど販売代理店を活用しやすいプロダクトも拡充している。

AI音声認識・自然言語解析|Voice Contact、Terry2、ZMEETING

AI音声認識・自然言語解析は、Hmcommの主力領域である。コールセンター向けの「Voice Contact」、電話自動応答AI「Terry2」、AI電話応対パッケージ「Terry2 mini」、AI議事録作成サービス「ZMEETING」を展開する。

Voice Contactは、顧客との通話をリアルタイムで自動テキスト化し、通話内容の要約、帳票入力、FAQ検索、VOC分析、品質評価、CRM連携、CTI連携などに広げるコンタクトセンター向けシステムである。

オペレーター不足、通話後処理の長期化、管理者のモニタリング負担、応対品質のばらつきといったコンタクトセンターの構造課題に対して、通話音声をデータ化し、生成AIで要約や業務入力を支援する点が中核となる。

Terry2は、電話応対をAIエージェントが担うボイスボットである。FAQ対応や一次受付にとどまらず、顧客の会話内容に応じた分岐、稼働状況の可視化、会話ログの確認、業務システム連携まで狙う。

Terry2 miniは、よくある質問リストを渡すだけで短期間の導入を目指すパッケージ型サービスで、販売代理店経由で拡販しやすい設計である。深夜、休日、繁忙期の取りこぼし防止や、代表電話の一次対応自動化に向く。

ZMEETINGは、会議や商談の音声をリアルタイムで文字起こしし、議事録作成時間を削減するAI議事録ツールである。対面会議、オンライン会議、音源ファイルに対応し、用語登録や翻訳にも対応する。

2025年12月期はVoice Contactで大手企業への導入が進み、Terry2のリリースにより電話応対の完全自動化領域を拡大した。2026年12月期第1四半期も、既存顧客の基盤拡張、ライセンス更新、大手金融機関向けZMEETING導入開発などが進んだ。

AI異音検知|FAST-Dによる設備保全DX

AI異音検知は、設備や機械が発する音をAIで分析し、異常兆候、予兆検知、状態モニタリング、故障予防に活用する領域である。主力プロダクトは異音検知プラットフォーム「FAST-D」である。

FAST-Dは、正常時の稼働音を学習し、稼働中に通常と異なる音を検知する。熟練者の経験や聴覚に依存していた点検判断をAIで標準化し、機械、インフラ、医療、畜産、介護、防犯など幅広い用途に展開できる。

2026年6月29日には、四国電力に対してFAST-Dモニタリングエディションを提供し、発電関連設備の常時監視に活用する取り組みを開始した。2025年度の共同検証を経て、設備異常に起因する異音を人の聴覚や経験に頼らず検知できる可能性と有効性を確認したことが背景である。

同リリースでは、異常兆候の早期発見による設備停止リスクの低減、常時データ蓄積による傾向監視と予兆保全の実現が期待効果として示された。従来の巡視点検や時間基準保全から、状態基準保全への移行を支援するテーマである。

2025年12月期は、LNG気化プラントの設備監視、衛星データと連携した漏水検知システム、インフラ保全業務のDX化などに展開した。2026年12月期第1四半期も、顧客企業での継続評価、新拠点展開に伴う新規受注、守山市との漏水検知社会実装検証プロジェクトが進行している。

音響AIは、画像や振動センサーでは拾いにくい異常兆候を補完できる可能性がある。FAST-Dはコンタクトセンター向け音声AIとは顧客業界が異なるため、Hmcommにとっては収益源の分散にもつながる。

AI活用コンサルティング・AIソリューション|共創からプロダクト転換へ

AI活用コンサルティングは、顧客企業のデータ利活用、AI開発、生成AI導入、BI、CI、DI、業務システム連携を支援する事業である。サービス名として「XI Service」を展開し、顧客課題を起点にAI実装を進める。

具体的には、教育分野の個別最適教材、介護ノウハウのレコメンド、小売・製造のVOC分析、営業改善のレコメンドAI、CRM領域のカスタマー分析、社内データ統合などが対象となる。

HmcommのAIソリューションは、単発の受託開発だけでなく、共創プロジェクトで得た知見をAIプロダクトへ転換する入口として位置付けられる。研究開発、実証実験、社会実装、プロダクト化、保守運用という流れの中で、顧客課題を横展開可能なモデルに変換する狙いがある。

2025年12月期は、DXパートナー事業の譲受による体制強化、生成AIを基盤としたシステム開発案件の増加、ベネッセi-キャリア向けAI自動採点サービス、金融機関とのAIエージェント共同研究などが進んだ。

2026年12月期第1四半期は、大型案件の受注と計画的進行が売上を牽引した。次世代AI実装事業「FDE」、コラボテクノの子会社化、MILIZEとの業務委託基本契約などにより、AI開発・実装人材と営業チャネルの補強も進める。

この領域は、短期的には売上を押し上げやすい一方、利益率や継続収益化が課題となる。中期的な焦点は、AIソリューション案件をTerry2、Voice Contact、FAST-D、生成AIエージェント基盤などのプロダクト収益へどれだけ転換できるかにある。

直近5年業績サマリー

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期 2026年12月期
会社予想
売上高
(百万円)
946 1,112
+166 / +17.5%
1,373
+261 / +23.5%
営業損益
(百万円)
94 38
-56 / -59.3%
56
+18 / +46.5%
経常損益
(百万円)
72 39
-33 / -45.0%
45
+6 / +16.2%
当期純利益
(百万円)
96 18
-78 / -80.7%
22
+4 / +19.9%
EPS
(円)
23.83 4.59
-19.24 / -80.7%
5.45
+0.86 / +18.7%
PER
(倍)
51.03 211.53
PBR
(倍)
2.84 2.33
BPS
(円)
428.15 416.99
-11.16 / -2.6%
純資産
(百万円)
1,726 1,681
-45 / -2.6%
営業CF
(百万円)
-139 277
+416 / 黒字転換
投資CF
(百万円)
11 -271
-282
財務CF
(百万円)
197 -63
-260
現金及び現金同等物
(百万円)
1,375 1,317
-58 / -4.2%
2021年12月期から2023年12月期は上場前のため、株式市場での期末株価が存在しない。EPS、PER、PBR、BPSは、2026年12月期第1四半期末の自己株式控除後株式数4,033,400株を用いて再計算した。PERとPBRの算定株価は、ユーザー提供の期末終値である2024年12月期1,216円、2025年12月期971円を用いた。2026年12月期は期末未到来のためPERとPBRを空欄とした。

中期経営計画

中期展望(成長戦略)|時価総額100億円を見据えた再定義

Hmcommは、2026年12月期第1四半期決算説明資料で「中期展望(成長戦略)」を再定義している。東証グロース市場改革への対応を見据え、既存事業のオーガニック成長に加え、M&Aや資本提携を含むインオーガニック成長を組み込む方針である。

基本方針は、既存顧客のLTV最大化、新規顧客獲得、新規AIプロダクト開発、生成AI活用による生産性向上、M&Aの実施、PMIによる付加価値向上、継続的な成長投資である。音声AI技術を核に、隣接領域と新市場への展開を進める。

2026年12月期会社予想 売上高13.7億円
2026年12月期会社予想 経常利益0.4億円
中期展望 5年後時価総額100億円
FY29目標 販売代理店9社

事業戦略は、共創プロジェクトの積み上げ加速、AIプロダクトへのコンバージョン加速、AIプロダクトのクロスセル、販売代理店の拡大、あらゆるフェーズでの生成AI活用強化の5つで構成される。

AIソリューションで顧客課題を捕捉し、実証や受託開発で得たモデルをVoice Contact、Terry2、FAST-DなどのAIプロダクトに転換する流れが、同社の収益性向上の核心である。2026年12月期は、AIプロダクトとAIソリューションの双方で20%超の伸長を見込む。

インオーガニック戦略では、音ノウハウの隣接領域展開、IT開発企業の事業再生、人材・ケイパビリティ獲得、採用基盤強化を対象方針として掲げる。2025年度にM&A/PMI推進室を設置し、案件発掘からPMIまでを一貫して推進する体制を整備している。

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競合他社

1. PKSHA Technology(3993)

時価総額:約851億円 / 株価:2,665円(2026年6月30日 15:30時点)

PKSHA Technologyは、AI SaaS、自然言語処理、機械学習、AIエージェント領域を幅広く展開する東証プライム上場企業である。

2026年9月期第2四半期累計は、売上収益187.12億円、事業利益34.01億円と大幅な増収増益となった。AI SaaSとAI Powered Worker領域が成長を牽引している。

競合領域は、コンタクトセンターAI、ボイスボット、音声認識、FAQ、チャットボット、問い合わせ自動化である。PKSHA VoiceAgentは、電話自動応答、入電分析、振り分け、自動応答を行うため、HmcommのTerry2と直接競合する。

PKSHA Speech Insightは、通話音声の書き起こし、要約、FAQ検索、オペレーター支援を提供する。これはHmcommのVoice Contactが狙う通話テキスト化、生成AI要約、CRM連携、応対品質向上と重なる。

PKSHAは、チャット、FAQ、音声、AIエージェントを一体で提案できるため、大手企業や大規模コンタクトセンター案件では、Hmcommより広いAI SaaS群を持つ総合競合になりやすい。

2. アドバンスト・メディア(3773)

時価総額:約189億円 / 株価:1,029円(2026年6月30日 15:30時点)

アドバンスト・メディアは、AI音声認識「AmiVoice」を核に、コンタクトセンター、医療、建設、議会、会議、API、SDKなどへ音声認識ソリューションを展開する東証グロース上場企業である。

2026年3月期通期は、売上高70.63億円、営業利益14.4億円、経常利益15.58億円、親会社株主に帰属する当期純利益17.39億円。AI音声認識の需要拡大を背景に、売上高、経常利益、純利益が過去最高となった。

最も直接的に競合するのは、コンタクトセンター向け音声認識「AmiVoice Communication Suite」である。通話音声のテキスト化、応対品質管理、VOC分析、通話要約、オペレーター支援で、HmcommのVoice Contactと機能が重複する。

アドバンスト・メディアは音声認識専業としてのブランド力、導入実績、オンプレミス対応、セキュリティ要件の厳しい大手企業への対応力が強い。金融、通信、公共性の高いコンタクトセンターでは、Hmcommにとって強力な比較対象となる。

3. モビルス(4370)

時価総額:約19.5億円 / 株価:317円(2026年6月30日 15:30時点)

モビルスは、コンタクトセンター向けSaaS「MOBIシリーズ」を展開する東証グロース上場企業である。チャット、ボイスボット、FAQ、有人対応支援、生成AI活用支援を組み合わせる。

2026年8月期第2四半期累計は、売上高10.08億円、営業損失0.73億円、経常損失0.83億円、親会社株主に帰属する中間純損失0.37億円。SaaSサービスとプロフェッショナルサービスは成長しているが、投資負担により赤字が続く。ARRは14.72億円まで拡大している。

競合製品は、AI電話自動応答の「MOBI VOICE」、有人対応支援の「MOBI AGENT」、チャットボットの「MOBI BOT」である。電話自動応答、一次受付、FAQ対応、問い合わせ自動化で、HmcommのTerry2と競合する。

モビルスは電話だけでなく、Web、チャット、LINE、FAQを含むマルチチャネル対応を提案しやすい。Hmcommは音声AIの深さとFAST-Dの異音検知を持つ一方、モビルスはカスタマーサポート運用全体のSaaSとして比較されやすい。

強みと将来性

音声AIを起点に「聞く、理解する、判断する、実行する」まで広げる技術基盤

Hmcommの強みは、音声を起点としたAI技術を自社で保有し、音声認識、自然言語解析、感情解析、異音検知、LLM連携、業務システム連携まで一体で設計できる点にある。

単なる外部LLMのラッパーアプリケーションではなく、創業以来の音響解析、音声認識、ノイズ抑制、リアルタイム音AI技術を土台にしている。高騒音環境下での音声認識、コンタクトセンター現場での通話処理、FAST-Dによる異音検知など、音に関するデータ処理経験が蓄積されている。

2026年12月期第1四半期決算説明資料では、正社員51名のうちエンジニア比率が71%、エンジニア36名のうち音・音声AIアルゴリズム開発人材が56%と示されている。小規模企業ながら、AIアルゴリズムと実装の両面を社内に持つ体制である。

産総研からの技術移転、NEDO関連の研究、音声認識プロダクト、異音検知プロダクト、社会インフラ向け実証などの沿革も、同社の技術ストーリーを支える。音声認識だけでなく、漏水、発電設備、鉄道、畜産、自治体防災など、音の用途を横展開できる余地がある。

将来性の焦点は、AIソリューションで生まれた個別案件を、いかに標準化してAIプロダクト収益へ変換できるかである。共創プロジェクトを通じて顧客課題を掘り起こし、Terry2、Voice Contact、FAST-D、生成AIエージェント基盤へ転換できれば、売上の継続性と利益率の改善が期待できる。

四国電力向けFAST-Dは、音響AIが社会インフラ保全に入り込む具体例である。巡視点検、予兆保全、状態基準保全は、電力、水道、鉄道、製造設備などで共通性が高い。実証から本導入、多拠点展開へ進めば、同社の事業領域はコンタクトセンターAIにとどまらない。

さらに、Terry2 miniや販売代理店戦略により、従来の個別開発型から、導入しやすいパッケージ型への転換も進む。直接販売中心の体制に加えて代理店を拡大できれば、営業レバレッジが効きやすくなる。

弱みとリスク要因

小規模AI企業としての利益変動、技術コモディティ化、大手競合との競争

最大のリスクは、売上規模に対して先行投資と固定費の影響が大きく、利益が変動しやすい点である。2025年12月期は増収であったにもかかわらず、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも大きく減少した。

AIプロダクト強化、生成AI開発、人材採用、販売代理店開拓、事業譲受、M&Aは中期成長に必要な投資である一方、短期的にはのれん償却、外注費、人件費、開発費、PMI負担として利益を圧迫する。売上成長が想定を下回る局面では、赤字転落リスクも残る。

技術面では、生成AI、音声認識、LLMエージェント、チャットボット、ボイスボットのコモディティ化が進む。外部LLMや大手クラウドの機能強化により、単純な文字起こし、要約、FAQ応答だけでは差別化が難しくなる。

競合はPKSHA Technology、アドバンスト・メディア、モビルスに加え、クラウドベンダー、SIer、生成AIスタートアップ、コンタクトセンターBPO企業まで広い。特に大手企業向け案件では、導入実績、セキュリティ、運用支援、既存システム連携、保守体制が重視されるため、技術力だけでは勝ち切れない。

Hmcommの中期展望資料では、弱みとして事業ノウハウや人材の領域偏重、上場後の採用アプローチ見直しが示されている。コンサルティング領域は強化中だが、マーケティング、資本提携、海外展開、ロビー活動などの専門人材は相対的に限られる。

M&A戦略もリスクを伴う。IT開発企業の事業再生、人材獲得、隣接AI領域への拡張は成長加速につながる一方、PMIの失敗、のれんの減損、買収先の収益悪化、統合コストの増加が発生すれば、財務と株価に影響する。

また、同社は2024年10月上場の新興企業であり、上場後の市場データはまだ短い。2021年から2023年までは市場株価が存在せず、PERやPBRの長期推移を比較しにくい。流動性の低い局面では、材料株として株価が大きく振れやすい点にも注意が必要である。

出典

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