フジクラ 5803 東証P
Fujikura Ltd.|光ファイバ・光ケーブル、光部品、FPC、各種コネクタ、自動車用ワイヤハーネス、電力ケーブルなどを展開する電線大手。生成AIデータセンター向けの高密度光配線ソリューションが成長ドライバーになっています。
事業内容
フジクラは1885年創業、1910年3月18日設立、本社は東京都江東区木場、代表取締役社長CEOは岡田直樹氏、決算期は3月、上場市場は東証プライムです。光ファイバ・光ケーブルを中心とする情報通信、FPCやコネクタなどのエレクトロニクス、自動車用ワイヤハーネス、電力ケーブル、不動産賃貸などを手がけています。
直近の2026年3月期は、売上高1,182,358百万円、営業利益188,707百万円、経常利益199,481百万円、親会社株主に帰属する当期純利益157,163百万円でした。2027年3月期の会社予想は2026年6月18日に上方修正され、売上高1,462,000百万円、営業利益310,000百万円、経常利益316,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益229,000百万円となっています。
情報通信事業部門
セグメント売上高は2023年3月期291,261百万円、2024年3月期297,229百万円、2025年3月期451,262百万円、2026年3月期652,977百万円と急拡大しました。 セグメント利益も2023年3月期40,600百万円から2026年3月期152,729百万円へ拡大しており、現在のフジクラの利益成長を最も強く牽引している部門です。
主な製品は光ファイバ、光ケーブル、通信部品、光部品、光関連機器、ネットワーク機器、工事関連です。 生成AIの普及でデータセンター内外の通信量が増え、光ファイバケーブルや多心光コネクタ、高密度光配線ソリューションへの需要が強まっています。 フジクラはSWRやWTCといった高密度配線に向く光ファイバケーブル、MTコネクタを含む光接続技術、現場施工や設計を含めたソリューションを組み合わせることで、データセンターの省スペース化、工期短縮、配線密度向上に対応しています。
2027年3月期の業績予想修正では、情報通信事業において当初計画では想定していなかったハイパースケーラーからの光コンポーネント製品のプロジェクト受注、売価アップ、水素不足影響の緩和が増収増益の主因として示されました。 そのため、同部門は単なる通信インフラ需要だけでなく、生成AI向けデータセンター投資の増加を直接取り込む事業として位置づけられます。
エレクトロニクス事業部門
セグメント売上高は2023年3月期197,287百万円、2024年3月期164,676百万円、2025年3月期185,899百万円、2026年3月期172,305百万円でした。 セグメント利益は2023年3月期27,589百万円、2024年3月期16,627百万円、2025年3月期22,902百万円、2026年3月期7,666百万円と変動が大きく、情報通信事業と比べると収益の安定性に課題があります。
主な製品はプリント配線板、電子ワイヤ、ハードディスク用部品、各種コネクタです。 スマートフォン、電子機器、ストレージ、産業機器などの需要動向に左右されやすい一方、フジクラが長年培ってきた高精度・微細加工技術、高密度配線技術を活用できる領域です。
近年はデータセンター向けでHDD用部品やサーマル関連製品の重要性が増しており、単独の民生エレクトロニクス需要だけではなく、情報通信事業と近いデータセンター周辺需要にも接点を持っています。 ただし、FPCや電子部品は顧客の製品サイクル、在庫調整、品種構成の影響を受けやすいため、利益率の改善と事業ポートフォリオの選別が重要になります。
自動車事業部門
セグメント売上高は2023年3月期155,860百万円、2024年3月期179,526百万円、2025年3月期177,055百万円、2026年3月期179,370百万円でした。 セグメント利益は2023年3月期マイナス6,597百万円から、2024年3月期1,175百万円、2025年3月期5,821百万円、2026年3月期6,809百万円へ改善しています。
主な製品は自動車用ワイヤハーネスと電装品です。 自動車用ワイヤハーネスは車内の電力・信号をつなぐ基幹部品で、完成車メーカーの生産台数、車種構成、為替、労務費、物流費などの影響を受けます。
フジクラの自動車事業は、グローバル生産拠点と顧客基盤を持つ一方、労働集約的な工程が多く、採算改善には継続的な生産性向上が必要です。 赤字から黒字化している点は評価できますが、全社利益に対する貢献度は情報通信事業に比べるとまだ限定的です。 今後は次世代車や高度な情報端末化が進む車両向けに、エレクトロニクス事業の高密度配線技術とどのように連携できるかが注目点です。
エネルギー事業部門・不動産事業部門
エネルギー事業部門の売上高は2023年3月期138,345百万円、2024年3月期139,116百万円、2025年3月期145,201百万円、2026年3月期156,983百万円でした。 セグメント利益は2023年3月期4,295百万円、2024年3月期8,705百万円、2025年3月期11,943百万円、2026年3月期18,941百万円へ改善しています。
主な製品は電力ケーブル、通信ケーブル、アルミ線、被覆線です。 電力インフラ、再生可能エネルギー、都市開発、送配電網の更新などに関わる事業であり、情報通信事業ほどの急成長ではありませんが、社会インフラを支える安定的な需要があります。
不動産事業部門は不動産賃貸が中心で、売上高はおおむね10,000百万円台、セグメント利益は4,800百万円から5,000百万円前後で推移しています。 製造業としての成長性を担う部門ではありませんが、全社収益の下支えとして安定性があります。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 670,350 | 806,453 +136,103(+20.3%) |
799,760 △6,693(△0.8%) |
979,375 +179,615(+22.5%) |
1,182,358 +202,983(+20.7%) |
1,462,000 +279,642(+23.7%) |
| 営業損益 | 38,288 | 70,163 +31,875(+83.2%) |
69,483 △680(△1.0%) |
135,519 +66,036(+95.0%) |
188,707 +53,188(+39.2%) |
310,000 +121,293(+64.3%) |
| 経常損益 | 34,089 | 67,897 +33,808(+99.2%) |
69,733 +1,836(+2.7%) |
137,240 +67,507(+96.8%) |
199,481 +62,241(+45.4%) |
316,000 +116,519(+58.4%) |
| 当期純利益 | 39,101 | 40,891 +1,790(+4.6%) |
51,011 +10,120(+24.7%) |
91,123 +40,112(+78.6%) |
157,163 +66,040(+72.5%) |
229,000 +71,837(+45.7%) |
| EPS | 23.64円 | 24.71円 | 30.83円 | 55.05円 | 94.93円 | 138.31円 |
| PER | 4.41倍 | 6.33倍 | 12.32倍 | 16.32倍 | 43.47倍 | 37.31倍 |
| PBR | 0.78倍 | 0.96倍 | 1.84倍 | 3.65倍 | 12.19倍 | ― |
| BPS | 133.29円 | 163.49円 | 206.12円 | 246.16円 | 338.45円 | ― |
| 純資産 | 243,657 | 294,384 +50,727(+20.8%) |
366,582 +72,198(+24.5%) |
435,329 +68,747(+18.8%) |
593,193 +157,864(+36.3%) |
― |
| 営業CF | 40,388 | 58,140 +17,752(+44.0%) |
94,442 +36,302(+62.4%) |
115,908 +21,466(+22.7%) |
132,905 +16,997(+14.7%) |
― |
| 投資CF | 7,840 | △9,733 △17,573 |
△21,488 △11,755 |
△20,912 +576 |
△36,201 △15,289 |
― |
| 財務CF | △36,917 | △33,919 +2,998 |
△36,035 △2,116 |
△57,395 △21,360 |
△111,325 △53,930 |
― |
| 現金及び現金同等物 | 90,428 | 106,560 +16,132(+17.8%) |
147,003 +40,443(+37.9%) |
184,244 +37,241(+25.3%) |
178,906 △5,338(△2.9%) |
― |
2026年4月1日付で1株につき6株の株式分割を実施。EPS、BPS、PER、PBRは比較性を高めるため分割調整後ベースで記載。2023年3月期は訂正後の決算短信数値、2027年3月期会社予想は2026年6月18日公表の上方修正後の数値を使用。2027年3月期予想PERは2026年6月19日終値5,161円で計算。
中期経営計画
2026年から2028年 中期経営計画
フジクラは2026年5月に、2026年度から2028年度までの3カ年を対象とするグループ中期経営計画を公表しました。 同計画では、2028年度の売上高1兆6,000億円、営業利益3,150億円、営業利益率19.7%、3年間累計の営業キャッシュ・フロー6,200億円、配当性向40%目安が掲げられています。
基本方針は、生成AIの普及に伴って拡大する情報通信インフラ需要を取り込み、データセンター向け光配線ソリューション、光ファイバケーブル、多心光コネクタ、エンジニアリングサービスを強化することです。 同時に、HDD用部品やサーマル製品などデータセンターの省エネルギー化・運用効率向上に寄与する製品群も育成対象としています。
事業戦略としては、情報通信を中心に高付加価値製品の供給能力を高め、米国、日本、英国など既存重点市場の深耕に加え、欧州・アジアなどの顧客開拓を進める方針です。 2027年3月期予想の上方修正に見られるように、ハイパースケーラー向けの案件獲得と価格改善が業績拡大の直接要因になっており、中期計画の達成には情報通信事業の成長継続が最重要となります。
中期経営計画資料へ競合他社
① 住友電気工業(5802)
時価総額は約107,063億円、株価は13,485円。 住友電工は電線・非鉄金属業界の最大手級で、自動車用ワイヤーハーネス、情報通信、電力インフラ、産業素材など幅広い領域を持つ総合電線メーカーです。
フジクラとは、光ファイバケーブル、光部品、自動車用ワイヤーハーネス、電力ケーブルの各分野で競合します。 フジクラが生成AIデータセンター向けの光配線で高収益化を進めているのに対し、住友電工は電力インフラ、自動車、通信を横断する総合力が強みです。 業績面では売上規模が非常に大きく、景気変動に対する分散力を持ちます。
② 古河電気工業(5801)
時価総額は約37,708億円、株価は53,360円。 古河電工は光ファイバ、光ケーブル、電力ケーブル、融着接続機、電子部品、機能製品などを展開する大手電線メーカーです。
フジクラとは、データセンター向け光ファイバケーブル、光部品、融着接続機の分野で直接競合します。 フジクラのSWRやWTCに対し、古河電工もリボン型光ファイバケーブルなどを展開しており、生成AIデータセンター向けの通信インフラ需要を巡る競争相手です。 近年は情報通信分野の改善に加え、データセンター関連の水冷・熱対策製品も注目されています。
③ SWCC(5805)
時価総額は約4,430億円、株価は14,370円。 SWCCは旧昭和電線ホールディングスで、電力ケーブル、電線、免震・制振、通信関連製品などを手がける電線メーカーです。
フジクラとは、電力ケーブル、通信ケーブル、インフラ向け電線の分野で競合します。 情報通信の光配線での競合度は住友電工や古河電工に比べると限定的ですが、電力インフラ更新、再生可能エネルギー、都市インフラ向けでは比較対象になります。 業績面では、インフラ関連需要と価格転嫁の進展が収益改善の重要テーマです。
強みと将来性
生成AIデータセンター需要を直接取り込む光配線技術
フジクラの最大の強みは、生成AIの普及に伴って拡大するデータセンター向け通信インフラ需要を、情報通信事業で直接取り込める点です。 2026年3月期の情報通信事業は、売上高652,977百万円、セグメント利益152,729百万円まで拡大し、全社営業利益の中心になりました。
光ファイバ、光ケーブル、光部品、光関連機器、ネットワーク機器を一体で持つため、単品販売だけではなく、データセンターの高密度配線、工期短縮、省スペース化、運用効率向上を組み合わせた提案ができます。 この点は、価格競争になりやすい一般的な電線事業とは異なり、技術力と供給能力が収益性に結びつきやすい領域です。
2027年3月期予想の上方修正では、ハイパースケーラー向けの光コンポーネント製品のプロジェクト受注、売価アップ、水素不足影響の緩和が明示されました。 これは、フジクラの製品が単なる市況上昇だけでなく、顧客の大型投資案件に組み込まれていることを示す材料です。
財務面でも、2026年3月期の自己資本比率は57.8%、営業キャッシュ・フローは132,905百万円と高い水準です。 情報通信事業の利益成長が継続すれば、設備投資、研究開発、株主還元を同時に進めやすい財務体質になっています。
弱みとリスク要因
情報通信事業への期待集中と高バリュエーション
現在のフジクラは、情報通信事業の急成長に市場の期待が集中しています。 2026年3月期の情報通信事業は非常に高い伸びを示しましたが、生成AIデータセンター向け投資は顧客の投資計画、サーバー需要、部材供給、競合技術の変化に左右されます。 大型顧客の発注タイミングがずれた場合、短期的な業績変動が大きくなる可能性があります。
2027年3月期予想の上方修正では、水素不足影響の緩和も増益要因として挙げられています。 裏を返せば、原材料や副資材、エネルギー、物流などの供給制約が再び強まった場合、成長需要があっても供給面が制約になるリスクがあります。
エレクトロニクス事業は、売上高と利益の変動が大きく、2026年3月期のセグメント利益は前期比で大きく減少しました。 自動車事業は黒字化していますが、利益率はまだ高くありません。 情報通信事業以外の部門が十分に稼げない場合、全社業績は主力部門への依存度が高くなります。
株価面では、2026年3月期末の分割調整後株価4,127円に対する実績PERは43.47倍、PBRは12.19倍となっています。 成長期待を織り込んだ水準であるため、業績上方修正が続く間は評価されやすい一方、受注鈍化、価格改善の一巡、競合激化、設備投資負担の増加が見えた場合には、株価の調整幅も大きくなりやすい点に注意が必要です。
出典
- 株式会社フジクラ 会社概要
- 株式会社フジクラ 製品情報
- 株式会社フジクラ 研究開発
- 株式会社フジクラ 決算公表資料
- 株式会社フジクラ 2026年から2028年 中期経営計画公表のお知らせ
- 株式会社フジクラ 2026年から2028年 中期経営計画資料
- 株式会社フジクラ 2027年3月期第2四半期及び通期連結業績予想の修正に関するお知らせ

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