イノバセル 504A 東証G
Innovacell Inc.|便失禁・尿失禁領域を対象に、自家骨格筋由来細胞を用いた再生医療等製品を開発する細胞治療バイオベンチャー。主力パイプラインは切迫性便失禁向けのICEF15で、国際共同第3相試験を進める。
※2026年7月6日時点の情報
事業内容
2026年7月6日の時価総額は約290億円。株価終値は643円、発行済株式数は45,152,144株。
イノバセルは2021年1月5日設立、本社は東京都品川区上大崎3丁目5番11号 目黒ヴィラガーデン5階。代表者は代表取締役Co-CEOのノビック・コーリン氏、シーガー・ジェイソン氏。決算期は12月、上場市場は東京証券取引所グロース市場。事業内容は、便失禁、尿失禁疾患を対象とした再生医療等製品の開発及び製造。2026年2月24日に上場しており、上場企業として期末決算日をまだ迎えていないため、期末株価が存在するのは2026年12月期以降となる。
2026年12月期第1四半期累計は事業収益の計上なし、営業損失723百万円、経常損失952百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失953百万円。通期会社予想は事業収益1,000百万円、営業損失3,337百万円、経常損失3,461百万円、親会社株主に帰属する当期純損失3,463百万円で、ICEF15に係る契約一時金1,000百万円の計上を見込む。
イノバセルは2021年1月5日設立、本社は東京都品川区上大崎3丁目5番11号 目黒ヴィラガーデン5階。代表者は代表取締役Co-CEOのノビック・コーリン氏、シーガー・ジェイソン氏。決算期は12月、上場市場は東京証券取引所グロース市場。事業内容は、便失禁、尿失禁疾患を対象とした再生医療等製品の開発及び製造。2026年2月24日に上場しており、上場企業として期末決算日をまだ迎えていないため、期末株価が存在するのは2026年12月期以降となる。
2026年12月期第1四半期累計は事業収益の計上なし、営業損失723百万円、経常損失952百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失953百万円。通期会社予想は事業収益1,000百万円、営業損失3,337百万円、経常損失3,461百万円、親会社株主に帰属する当期純損失3,463百万円で、ICEF15に係る契約一時金1,000百万円の計上を見込む。
細胞治療・再生医療研究開発事業
イノバセルは細胞治療・再生医療研究開発事業の単一セグメント。2021年12月期から2025年12月期まで事業収益は未計上で、研究開発費を中心とする先行投資により営業損失が継続している。2026年12月期はICEF15に係る契約一時金として事業収益1,000百万円を見込む一方、第3相試験推進と組織体制拡充により営業損失3,337百万円を予想している。
細胞治療・再生医療研究開発事業 業績推移(単位:百万円)
グループの起源は、オーストリアのインスブルック医科大学からスピンアウトした細胞治療研究開発会社にある。日本法人であるイノバセルが親会社となり、オーストリア子会社のInnovacell GmbHを中核に、臨床開発とGMP製造機能を持つ体制を構築している。
同社の技術基盤は、患者自身の筋組織を採取し、筋肉の幹細胞である衛星細胞から筋芽細胞等を調製し、損傷または機能低下した標的筋組織へ注入することで、括約筋などの機能回復を狙う自家細胞治療である。
2026年12月期第1四半期末時点では、ICEF15第3相国際共同治験において、グローバル全体で筋組織の採取が行われた無作為化患者数は222例、移植まで完了した患者数は191例となった。
事業収益はまだ本格的に立ち上がっていない。2026年12月期予想の事業収益1,000百万円は、ICEF15に係る契約一時金を見込むものであり、製品販売収益ではない。投資判断では、ライセンシング契約の締結、ICEF15の患者組入完了、承認申請への時間軸、薬価・償還価格、商業製造体制の確立が中心論点になる。
ICEF15 切迫性便失禁向け自家細胞治療
ICEF15は、イノバセルの最重要パイプライン。切迫性便失禁を対象とし、自家骨格筋由来細胞を外肛門括約筋に注入して機能回復を狙う。2026年7月3日には、米国FDAのIND審査完了および米国組入れ承認取得に関する解説動画が公表されており、国際共同第3相試験の拡張が材料視されやすい。
ICEF15のターゲット疾患は切迫性便失禁である。切迫性便失禁は、便意を感じてもトイレに行くまで我慢できず、便が漏れてしまう症状で、外肛門括約筋の損傷が原因となることが知られている。会社説明では、日本国内には約500万人の便失禁患者が存在するとされ、便失禁患者のうち半数強が切迫性の症状を持つとされている。生命を直接脅かす疾患ではないが、外出、仕事、人間関係、介護負担、精神面に大きく影響するQOL疾患である。
現行治療では、食生活の改善指導、薬物療法、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法などの保存的療法が用いられ、保存的療法で十分な効果が得られない場合には肛門括約筋形成術などの外科治療が選択肢となる。ただし、外科治療は侵襲性が高く、効果が不十分な場合もあるため、低侵襲で根治を目指す治療へのニーズがある。
ICEF15は、患者自身から採取して製造した自家骨格筋由来細胞を、超音波ガイド下で外肛門括約筋層へ12箇所に分けて注入する。1回の処置で完了する治療設計であり、投与前後に骨盤底電気刺激を実施して細胞の生着を促す。
競争上の焦点は、既存外科治療に対する低侵襲性、効果持続性、安全性、医療機関での導入しやすさ、患者ごとに細胞を製造する自家細胞製品としての製造コストである。第3相試験の有効性・安全性データが明確に示されれば、イノバセルの企業価値評価は大きく変わる可能性がある。
ICEF16 漏出性便失禁向けパイプライン
ICEF16は、漏出性便失禁を対象とする骨格筋由来平滑筋細胞パイプライン。公式ページでは現在前臨床段階とされており、ICEF15で構築した細胞治療・製造・臨床開発ノウハウを別タイプの便失禁へ広げる位置付けとなる。
ICEF16のターゲット疾患は漏出性便失禁である。漏出性便失禁は、切迫した便意がないまま、患者自身が気づかないうちに便が漏れてしまう症状で、内肛門括約筋の機能低下により生じるとされている。ICEF16は、患者自身から採取して培養した骨格筋由来平滑筋細胞を、患者自身の内肛門括約筋へ注入する計画の細胞治療である。内肛門括約筋は平滑筋であるため、骨格筋の衛星細胞から分化・増殖させた細胞をさらに平滑筋へ分化させる点がICEF15と異なる。
ICEF15が外肛門括約筋を対象とするのに対し、ICEF16は内肛門括約筋を対象にする。疾患のメカニズムと投与部位が異なるため、臨床試験設計、評価項目、患者選定、医師教育も別に設計する必要がある。
短期的な業績貢献は見込みにくいが、ICEF15の臨床データと製造技術が確立されれば、便失禁領域の横展開パイプラインとして評価される。投資判断上は、ICEF15一本足のリスクをどこまで補完できるかが重要になる。
ICES13 腹圧性尿失禁向けパイプライン
ICES13は腹圧性尿失禁を対象とする自家骨格筋由来細胞パイプライン。欧州で後期第2相試験を終えた段階とされ、便失禁領域とは異なる失禁市場へ展開する候補となる。
ICES13のターゲット疾患は腹圧性尿失禁である。咳、くしゃみ、運動などによって腹圧が高まった際に、自分の意志とは関係なく排尿してしまう症状であり、主に加齢や出産などによって尿道括約筋を含む骨盤底筋群が弱る、または損傷することが原因とされる。ICES13は、ICEF15と同じく自家骨格筋由来細胞を用いる。患者自身の細胞を培養し、尿道括約筋へ経尿道的に注入することで、損傷した尿道括約筋の機能回復を目指す。
腹圧性尿失禁は患者数が多く、QOLに直結する疾患である。一方で、既存治療として生活指導、骨盤底筋訓練、薬物療法、電気・磁気刺激療法、尿道スリング手術などが存在するため、臨床開発では安全性、低侵襲性、効果持続性、費用対効果を示す必要がある。
ICES13は、ICEF15の商業化が進んだ後に、同じ自家骨格筋由来細胞技術を尿失禁領域へ展開する候補である。成功すれば、イノバセルは便失禁単一パイプライン企業ではなく、失禁領域に特化した再生医療プラットフォーム企業として見られる可能性がある。
GMP製造・グローバルアグリゲーションモデル
製造技術はオーストリアのInnovacell GmbHのGMP製造施設で培われたもの。ICEF15は承認後数年間、子会社であるInnovacell GmbHで商業製造を行い、その後に外部委託先へ移管する計画が示されている。
イノバセルのビジネスモデルは、再生医療・細胞治療領域の有望なシーズを世界各国で探索・発掘し、自社グループのパイプラインへ組み入れ、グローバル市場で商業化するモデルである。細胞治療では、臨床データだけでなく製造・品質・物流が企業価値を左右する。特に自家細胞製品では、患者ごとに細胞を採取し、製造し、品質を確認し、医療機関へ戻して投与する必要があるため、通常の低分子医薬品や抗体医薬品とは異なるオペレーションが求められる。
Innovacell GmbHはGMP製造施設を保有し、ICEF15の臨床試験用製品を供給してきた。会社は、欧州では薬事承認取得後も同社でICEF15の商業製造を行う計画を示しており、グループ内で商業製造を行うことで外部委託より高い収益性を確保できると考えている。
日本では、ICEF15について承認取得までは自社で開発を進める一方、承認取得後のマーケティング・販売機能は外部提携先に委託する計画である。共同販売促進契約が締結されれば、契約一時金、マイルストーン収入、製品卸売収入が収益源となる。
このモデルの強みは、研究開発、GMP製造、ライセンシング、販売提携を組み合わせられる点にある。一方で、承認前の段階では収益が不安定で、研究開発費と治験費用が先行しやすい。2026年12月期予想では研究開発費3,309百万円、その他販売費及び一般管理費1,028百万円を見込んでおり、資金管理が重要になる。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2021年12月期 | 2022年12月期 | 2023年12月期 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 2026年12月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高・事業収益 (百万円) |
0 | 0±0 / ― | 0±0 / ― | 0±0 / ― | 0±0 / ― | 1,000+1,000 / 収益計上見込み |
| 営業損益 (百万円) |
-214 | -356-142 / 赤字拡大 | -1,862-1,506 / 赤字拡大 | -1,873-11 / 赤字拡大 | -2,232-359 / 赤字拡大 | -3,338-1,106 / 赤字拡大 |
| 経常損益 (百万円) |
-292 | -514-222 / 赤字拡大 | -2,001-1,487 / 赤字拡大 | -2,392-391 / 赤字拡大 | -2,854-462 / 赤字拡大 | -3,462-608 / 赤字拡大 |
| 当期純利益 (百万円) |
-1,003 | -515+488 / 赤字縮小 | -2,002-1,487 / 赤字拡大 | -2,392-390 / 赤字拡大 | -2,855-463 / 赤字拡大 | -3,464-609 / 赤字拡大 |
| EPS (円) |
-22.22 | -11.41+10.81 / 赤字縮小 | -44.35-32.94 / 赤字拡大 | -52.99-8.64 / 赤字拡大 | -63.23-10.24 / 赤字拡大 | -76.71-13.48 / 赤字拡大 |
| PER (倍) |
― | ― | ― | ― | ― | ― |
| PBR (倍) |
― | ― | ― | ― | ― | 2.8 |
| BPS (円) |
3.09 | 40.11+37.02 / +1199.7% | -38.49-78.60 / 債務超過 | -43.32-4.83 / 債務超過 | -13.96+29.36 / 債務超過縮小 | 225.781Q実績ベース |
| 純資産 (百万円) |
139 | 1,811+1,672 / +1202.9% | -1,738-3,549 / 債務超過 | -1,956-218 / 債務超過拡大 | -630+1,326 / 債務超過縮小 | 10,1941Q実績ベース |
| 営業CF (百万円) |
― | ― | -1,407 | -1,298+109 / 支出減 | -1,995-697 / 支出増 | ― |
| 投資CF (百万円) |
― | ― | 1,003 | -11-1,014 / 支出転換 | -54-43 / 支出増 | ― |
| 財務CF (百万円) |
― | ― | 511 | 2,143+1,632 / +319.4% | 4,090+1,947 / +90.8% | ― |
| 現金及び現金同等物 (百万円) |
― | ― | 1,097 | 1,961+864 / +78.8% | 4,101+2,140 / +109.1% | 11,6461Q実績ベース |
2021年12月期と2022年12月期は提出会社単体、2023年12月期以降は連結。EPS、BPS、PBRは2026年7月6日時点の発行済株式数45,152,144株を基準に再計算。上場日が2026年2月24日のため、2025年12月期以前の期末株価は存在せず、PER・PBRは空欄。2026年12月期会社予想列のPBRは2026年7月6日終値643円と2026年12月期第1四半期末BPSを使用。赤字のためPERは算出対象外。
中期経営計画
専用の中期経営計画資料は確認できず。2026年12月期方針とIRメッセージを代替参照
イノバセルのIRサイトでは、専用タイトルの中期経営計画資料は確認できない。代替として、2026年12月期業績予想、2026年12月期第1四半期決算短信、IR内の「株主・投資家の皆様へ」を参照する。2026年12月期の会社予想は、事業収益1,000百万円、営業損失3,337百万円、経常損失3,461百万円、親会社株主に帰属する当期純損失3,463百万円。事業収益はICEF15に係る契約一時金を見込むものであり、製品販売の本格化前の収益計上である。
2026年12月期の主な事業方針は、日本における共同販売促進契約の交渉・締結、ICEF15第3相国際共同治験の推進、患者組入完了、その他パイプラインの臨床試験準備または開始である。研究開発費は3,309百万円、その他販売費及び一般管理費は1,028百万円を見込む。
IRメッセージでは、患者さま第一の姿勢、グローバルな視座、複数地域で治療を前進させる体制整備とパートナーシップ構築、中長期的な成長のための資本と経営資源の効率的活用が示されている。
IRメッセージへ
競合他社
1. サンバイオ(4592)
2026年7月6日時点の時価総額は約824億円、株価は1,055円。サンバイオは、再生細胞薬を中核とするバイオベンチャーであり、中枢神経系疾患を対象に、疾病や外傷により失われた神経機能の再生を目指す細胞医薬品を開発している。イノバセルとの疾患領域は異なるが、再生医療等製品の承認、薬価、医療機関導入、製造、品質管理、販売後安全性管理という事業構造で競合する。サンバイオは慢性期外傷性脳損傷に伴う運動麻痺向けの再生医療等製品「アクーゴ脳内移植用注」で承認・販売開始段階に進んでおり、商業化面でイノバセルより先行している。
2027年1月期第1四半期は事業収益の本格計上前で、営業損失9.53億円、経常損失7.79億円、親会社株主に帰属する四半期純損失8.36億円。再生医療等製品の販売立ち上げ、供給体制、投与施設拡大は、イノバセルがICEF15承認後に直面する課題の先行事例となる。
2. Heartseed(219A)
2026年7月6日時点の時価総額は約392億円、株価は1,715円。Heartseedは、iPS細胞由来心筋細胞を心臓に移植する心筋再生医療を開発するバイオベンチャーである。主力パイプラインはHS-001、次世代パイプラインはカテーテル投与型のHS-005である。イノバセルとは疾患領域も細胞ソースも異なるが、細胞を投与して組織機能の再生を狙う点で共通する。Heartseedは他家iPS細胞由来心筋球、イノバセルは自家骨格筋由来細胞を用いるため、製造コスト、品質規格、投与手技、提携戦略、臨床データの見せ方で比較されやすい。
2026年12月期第1四半期は売上高4.65億円、営業損失0.75億円。提携・マイルストン収入が業績に影響しやすい点はイノバセルと共通し、細胞治療バイオとして研究開発費と資金調達余力のバランスが重要になる。
3. ヘリオス(4593)
2026年7月6日時点の時価総額は約340億円、株価は252円。ヘリオスは、体性幹細胞再生医薬品とiPSC再生医薬品を研究・開発・製造するバイオベンチャーである。ARDS、脳梗塞急性期、外傷、iPSC由来再生医薬品、がん免疫療法などを対象とする。イノバセルとの直接の疾患重複は限定的だが、細胞医療の製造プラットフォーム、GMP製造、品質保証、コスト管理、資金調達、提携先獲得で競合する。ヘリオスは三次元培養、細胞大量生産、細胞供給、培養上清、CDMO的機能まで視野に入れており、細胞医療のインフラ構築力が比較対象となる。
2026年12月期第1四半期は売上収益0.08億円、営業損失11.3億円、研究開発費7.98億円。研究開発費先行、商業化前の赤字、手元資金の維持という点で、イノバセルと投資判断軸が重なる。
強みと将来性
失禁領域に特化した自家細胞治療とGMP製造基盤
イノバセルの強みは、便失禁・尿失禁というQOL疾患に特化し、自家骨格筋由来細胞を用いた再生医療等製品を開発している点にある。国内上場の再生医療企業は、中枢神経、心不全、ARDS、がん免疫など重篤疾患を対象にする企業が多い。その中で、イノバセルは便失禁・尿失禁という日常生活に大きな制約を与える疾患を対象にしており、競争の軸が異なる。
ICEF15は国際共同第3相試験まで進んでいる。2026年12月期第1四半期末時点で無作為化患者数は222例、移植完了は191例であり、患者組入の進捗が企業価値評価の中心になる。2026年7月には米国FDAのIND審査完了および米国組入れ承認取得に関する情報も公表されており、欧州、日本に加え、米国での開発余地が材料になりやすい。
製造面では、オーストリアのInnovacell GmbHがGMP製造機能を持つ。自家細胞治療では、細胞採取、培養、品質検査、保管、物流、投与までの工程が製品価値そのものであり、グループ内に製造ノウハウを持つ点は重要である。
将来性は、ICEF15の承認取得だけでなく、販売提携と商業製造体制の確立にかかっている。会社は、日本で共同販売促進契約を締結した場合に、契約一時金、マイルストーン収入、製品卸売収入を得る計画を示している。2026年12月期予想の事業収益1,000百万円は、こうした契約一時金の計上を前提にしている。
さらに、ICEF16とICES13が後続パイプラインとして存在する。ICEF15が有効性・安全性・商業化の道筋を示せば、同じ細胞治療基盤を漏出性便失禁、腹圧性尿失禁へ拡張するシナリオが生まれる。
上場に伴う資金調達により、2026年12月期第1四半期末の現金及び預金は11,646百万円まで増加し、純資産は10,194百万円へ改善した。赤字バイオベンチャーとしては、当面の研究開発を進めるための手元資金を確保している点も強みである。
弱みとリスク要因
第3相試験・承認・製造・商業化の不確実性
イノバセルの最大のリスクは、ICEF15の第3相試験結果に企業価値が大きく依存している点である。現時点で事業収益は本格化しておらず、2026年12月期も営業損失3,337百万円を見込む。臨床試験の遅延、有効性未達、安全性論点、規制当局との追加協議が発生した場合、株価と資金計画への影響は大きい。自家細胞製品特有の製造リスクもある。患者ごとに筋組織を採取し、細胞を培養して品質を確認し、医療機関へ戻す必要がある。ロットごとのばらつき、製造不適合、物流遅延、品質規格、GMP維持、製造コストが収益化の壁になる。
3つ目のリスクは、承認後の商業化である。再生医療等製品は、承認を得ても、薬価・償還価格、投与施設の選定、医師トレーニング、患者導線、販売後安全性管理、製造供給能力が整わなければ売上が拡大しにくい。サンバイオのように承認・販売開始段階へ進んだ企業でも、販売浸透と供給運用には時間がかかる。
4つ目のリスクは、資金調達と希薄化である。2026年12月期第1四半期末の財務基盤は上場により改善したが、研究開発費は高水準で推移する。ICEF15以外のパイプラインを進める場合、追加資金調達、提携契約、ライセンス収入の確保が重要になる。
5つ目のリスクは、ロックアップや上場直後の株価変動である。2026年2月24日の上場初日に1,248円を記録した後、6月26日に377円まで下落し、7月6日は643円まで急反発している。上場直後のバイオ株として、臨床進捗、IR動画、提携期待、需給要因によって値動きが大きくなりやすい。
同一疾患の直接競合が少ないことは強みに見える一方、便失禁・尿失禁の再生医療等製品がどの程度医療現場に受け入れられ、どの価格で償還され、どの患者層へ普及するかはまだ確認されていない。臨床的価値、医療経済性、患者受容性を承認後に証明し続ける必要がある。
出典
- イノバセル株式会社 公式サイト
- イノバセル株式会社 会社概要
- イノバセルのビジネスモデル
- ターゲット疾患領域の特徴
- 製造技術
- パイプライン
- ICEF15
- ICEF16
- ICES13
- イノバセル株式会社 IR情報
- 株主・投資家の皆様へ
- イノバセル株式会社 決算短信
- 東京証券取引所グロース市場への上場に伴う当社決算情報等のお知らせ
- 上場に伴う当社決算情報等のお知らせの一部訂正について
- 2026年12月期 第1四半期決算短信
- 新規上場申請のための有価証券報告書(1の部)
- ICEF15国際共同第3相治験に関する米国FDAのIND審査完了および米国組入れ承認取得についての解説動画
本ページは公開情報をもとに作成した企業分析記事であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載情報は作成時点の内容であり、業績、株価、開示資料の更新により変動する可能性があります。投資判断は最新の会社開示資料と取引所情報を確認したうえで行ってください。

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