アルプスアルパイン 6770 東証P
事業内容
アルプスアルパインは1948年11月1日設立。本社は東京都大田区雪谷大塚町1-7、代表者は代表取締役社長CEOの泉英男。決算期は4月1日から翌年3月31日で、東証プライム市場に上場している。
2026年3月期の連結業績は、売上高1,019,459百万円、営業利益42,043百万円、経常利益49,141百万円、親会社株主に帰属する当期純利益26,879百万円。2027年3月期会社予想は、売上高1,045,000百万円、営業利益48,500百万円、経常利益45,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益30,000百万円。
コンポーネント事業
コンポーネント事業は、スイッチ類、アクチュエーター、haptic reactor、入力デバイスなどを扱う電子部品セグメントである。 車載、モバイル、民生、ゲーム、産業機器など、顧客業界が分散している点が特徴となる。
2026年3月期は、モバイル市場、民生市場、車載市場向け製品がいずれも増加し、外部顧客への売上高は358,365百万円となった。 一方で営業利益は30,168百万円となり、製品構成の変化や資材価格の上昇により前期比で小幅に減少した。
このセグメントはApple Inc.向けの売上高236,625百万円を含む重要な収益源であり、スマートフォンやモバイルデバイス向けの需要変化を業績に反映しやすい。 ただし、同時に車載スイッチ、アクチュエーター、触覚デバイスなどを持つため、単純なスマートフォン部品メーカーではない。
投資視点では、売上規模よりも利益率の維持が重要になる。 2026年3月期の営業利益率は約8.4%で、3セグメントの中では最も安定した利益源となっている。 地金など原材料費の上昇を価格転嫁できるか、製品ミックスを高付加価値品へ寄せられるかが、今後の利益率を左右する。
センサー・コミュニケーション事業
センサー・コミュニケーション事業は、センサー、通信デバイス、無線モジュールなどを扱う。 車載、民生、産業機械、モバイル市場向けに、検知、制御、通信を組み合わせたデバイスを提供する領域である。
2026年3月期は、車載市場向けで従来型キーレスエントリーシステムからデジタルキー製品への置き換えによる端境期があり、パワーインダクター製品の事業譲渡の影響も受けた。 一方で、モバイル市場向けの小型フォトプリンターが伸長し、売上高は85,260百万円となった。
営業損失は3,538百万円で、赤字幅は前期の3,360百万円からやや拡大した。 センサー領域は中期経営計画2027で「次の主力事業仕込み」の中心に置かれており、磁気センサー、ミリ波センサー、通信デバイス、クラウド活用型ソリューションの商用化速度が焦点になる。
このセグメントは、短期的には赤字の解消が最重要だが、中長期では車室内センシング、デジタルキー、産業機器向けセンシング、IoT関連デバイスへの展開余地がある。 研究開発負担を吸収できる売上規模を早期に確保できるかが、企業価値評価の分岐点となる。
モビリティ事業
モビリティ事業は、2026年3月期から従来のモジュール・システム事業の名称を変更したセグメントである。 車載モジュール、インフォテインメント、ディスプレイ、サウンド、デジタルキャビン関連製品を扱う。
2026年3月期は、前期に中国市場で主要顧客の日本、北米、欧州自動車メーカー向けが減産影響を受けた後、販売がやや持ち直した。 新製品の発売も加わり、外部顧客への売上高は555,054百万円となった。
営業利益は14,162百万円へ改善した。 販売回復と新製品寄与に加え、不採算製品の縮小、製品ポートフォリオの見直し、価格適正化の効果が反映されている。 ただし、2026年3月期にはサウンド製品に係る事業用資産などで減損損失を計上しており、低収益製品から高収益製品への転換はまだ完了していない。
中期経営計画2027では、モビリティ事業の高収益製品への転換が最重要テーマとなっている。 キャビンドメインコントローラー、キャビンモニタリング、車室内センシング、HMI、サウンド、ディスプレイを組み合わせたデジタルキャビン領域で受注を積み上げられるかが、株価評価に直結する。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 802,854 | 933,114前期比 +130,260百万円 / +16.2% | 964,090前期比 +30,976百万円 / +3.3% | 990,407前期比 +26,317百万円 / +2.7% | 1,019,459前期比 +29,052百万円 / +2.9% | 1,045,000前期比 +25,541百万円 / +2.5% |
| 営業損益 | 35,208 | 33,595前期比 -1,613百万円 / -4.6% | 19,711前期比 -13,884百万円 / -41.3% | 34,106前期比 +14,395百万円 / +73.0% | 42,043前期比 +7,937百万円 / +23.3% | 48,500前期比 +6,457百万円 / +15.4% |
| 経常損益 | 40,286 | 34,940前期比 -5,346百万円 / -13.3% | 24,809前期比 -10,131百万円 / -29.0% | 30,521前期比 +5,712百万円 / +23.0% | 49,141前期比 +18,620百万円 / +61.0% | 45,500前期比 -3,641百万円 / -7.4% |
| 当期純利益 | 22,960 | 11,470前期比 -11,490百万円 / -50.0% | -29,814前期比 -41,284百万円 / -359.9% | 37,837前期比 +67,651百万円 / +226.9% | 26,879前期比 -10,958百万円 / -29.0% | 30,000前期比 +3,121百万円 / +11.6% |
| EPS | 117.67 | 58.79前期比 -58.89円 / -50.0% | -152.80前期比 -211.59円 / -359.9% | 193.92前期比 +346.72円 / +226.9% | 137.76前期比 -56.16円 / -29.0% | 153.76前期比 +16.00円 / +11.6% |
| PER | 10.29 | 21.59 | - | 7.83 | 15.25 | 13.76 |
| PBR | 0.61 | 0.62 | 0.60 | 0.72 | 0.92 | 0.92 |
| BPS | 1,995.88 | 2,040.40前期比 +44.51円 / +2.2% | 2,004.50前期比 -35.89円 / -1.8% | 2,121.80前期比 +117.30円 / +5.9% | 2,293.68前期比 +171.88円 / +8.1% | 2,293.68前期比 +0.00円 / +0.0% |
| 純資産 | 425,308 | 399,782前期比 -25,526百万円 / -6.0% | 392,824前期比 -6,958百万円 / -1.7% | 415,515前期比 +22,691百万円 / +5.8% | 449,401前期比 +33,886百万円 / +8.2% | - |
| 営業CF | 34,304 | 15,413前期比 -18,891百万円 / -55.1% | 89,173前期比 +73,760百万円 / +478.6% | 65,817前期比 -23,356百万円 / -26.2% | 95,926前期比 +30,109百万円 / +45.7% | - |
| 投資CF | -45,507 | -54,205前期比 -8,698百万円 / -19.1% | -55,095前期比 -890百万円 / -1.6% | -1,683前期比 +53,412百万円 / +96.9% | -58,402前期比 -56,719百万円 / -3370.1% | - |
| 財務CF | -13,539 | -742前期比 +12,797百万円 / +94.5% | -1,808前期比 -1,066百万円 / -143.7% | -37,299前期比 -35,491百万円 / -1963.0% | -41,131前期比 -3,832百万円 / -10.3% | - |
| 現金及び現金同等物 | 138,489 | 82,893前期比 -55,596百万円 / -40.1% | 122,298前期比 +39,405百万円 / +47.5% | 147,464前期比 +25,166百万円 / +20.6% | 153,390前期比 +5,926百万円 / +4.0% | - |
中期経営計画
中期経営計画2027
アルプスアルパインは、ビジョン2035として「人の感性に寄り添うテクノロジーで未来をつくる」を掲げている。 その実現に向けた中期経営計画2027では、資本コストと株価を意識した経営を明確に打ち出している。
基本方針は、高付加価値の追求、次の主力事業仕込み、経営基盤の強化。 高付加価値の追求では、モビリティ事業の収益改善を最重要テーマとし、デジタルキャビン領域を中心に高収益製品へのシフトを進める。 次の主力事業仕込みでは、センサー領域への資本投資と人的投資を強化し、磁気、ミリ波、通信、センシングを軸とした新製品投入を狙う。 経営基盤の強化では、生産拠点再編、人的資本投資、ROICを基軸とした投資判断を重視する。
中期経営計画2027の最終年度にあたる2028年3月期の財務目標は、売上高10,750億円、営業利益710億円、当期純利益450億円、ROE10%、PBR1倍以上。 事業別では、コンポーネント事業の売上高3,500億円、営業利益350億円、センサー・コミュニケーション事業の売上高1,050億円、営業利益50億円、モビリティ事業の売上高6,000億円、営業利益300億円を計画している。
2027年3月期会社予想は売上高10,450億円、営業利益485億円、当期純利益300億円。 中期目標へ向けた中間地点として、センサー・コミュニケーション事業の黒字化、モビリティ事業の利益率改善、原材料費上昇への価格適正化が確認点となる。
中期経営計画資料へ競合他社
① 村田製作所(6981)
時価総額は約21兆7,108億円、株価は11,060円。 村田製作所は、積層セラミックコンデンサー、インダクタ、EMI除去フィルタ、高周波部品、通信モジュール、センサーを展開する世界的な電子部品メーカーである。
2026年3月期は売上収益18,309億円、営業利益2,818億円、親会社所有者帰属利益2,339億円。 サーバー向けを中心に積層セラミックコンデンサーが増加し、インダクタやEMI除去フィルタもサーバー、モビリティ向けで増加した。
アルプスアルパインとの競合領域は、センサー、通信モジュール、車載・民生向け電子部品。 村田製作所は電子部品専業として利益率が高く、アルプスアルパインはHMI、サウンド、ディスプレイ、車載システム統合との組み合わせで差別化する構図となる。
② TDK(6762)
時価総額は約7兆1,242億円、株価は3,665円。 TDKは、磁性技術を源流とする総合電子部品メーカーで、受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品、エナジー応用製品を展開する。
2026年3月期の売上高は2兆5,048億円、営業利益は2,724億円。 2027年3月期会社予想は売上高2兆5,800億円、営業利益2,950億円で、増収増益を見込む。
アルプスアルパインとの競合領域は、センサー、ハプティック、受動部品、車載・ICT向け部品。 TDKは材料技術、磁性技術、二次電池、センサーで厚い事業ポートフォリオを持ち、アルプスアルパインは車載HMI、車室内空間価値、システムインテグレーションで対抗する。
③ ミネベアミツミ(6479)
時価総額は約2兆427億円、株価は4,783円。 ミネベアミツミは、ボールベアリング、モーター、センシングデバイス、半導体デバイス、機構部品、車載アクセス製品を展開する総合精密部品メーカーである。
2026年3月期は売上高1兆6,643億8,700万円、営業利益1,039億7,900万円、親会社所有者帰属当期利益990億3,400万円。 プレシジョンテクノロジーズ、モーター・ライティング&センシング、セミコンダクタ&エレクトロニクス、アクセスソリューションズが主要セグメントとなる。
アルプスアルパインとの競合領域は、スイッチ、センサー、モーター、車載アクセス部品、電子部品。 ミネベアミツミは精密加工と量産力、車載・産業向け部品の広がりが強みであり、アルプスアルパインは電子部品と車載情報システムを組み合わせた提案力で差別化を狙う。
強みと将来性
車載HMIと電子部品を同時に持つ事業構造
アルプスアルパインの強みは、電子部品のデバイス技術と、車載情報システムのシステムインテグレーションを同時に持つ点にある。 コンポーネント、センサー・コミュニケーション、モビリティの3事業は、それぞれ独立した部品事業ではなく、車室内空間価値、入力、検知、通信、音、表示、触覚を横断する技術基盤としてつながっている。
モビリティ領域では、自動車の競争軸が単なる走行性能から、デジタルキャビン、HMI、車室内センシング、ソフトウェア連携へ広がっている。 アルプスアルパインは、サウンド、ディスプレイ、インフォテインメント、車載モジュール、操作入力デバイスを持つため、完成車メーカーやTier1顧客に対して複数製品を束ねた提案が可能になる。
2026年3月期のモビリティ事業は営業利益142億円まで改善した。 2022年3月期は83億円の損失だったため、低採算案件の見直し、価格適正化、新製品投入、販売回復が進んだことが確認できる。 中期計画が目標とする営業利益300億円に向けて、利益率改善の余地は残る。
コンポーネント事業は、売上規模と利益の安定性が強い。 2026年3月期の営業利益は301億円で、全社営業利益の重要な柱となった。 スマートフォン向けの変動はあるが、車載、民生、ゲーム、産業機器向けも含むため、量産部品としてのグローバル顧客基盤が評価対象となる。
将来性の中心は、センサー領域の再成長と、モビリティ事業の高付加価値化である。 センサー・コミュニケーション事業は現時点では赤字だが、中期経営計画2027では次の主力事業として投資対象になっている。 磁気、ミリ波、通信、クラウド活用型ソリューションを量産ビジネスへ育成できれば、現在のPBR1倍割れを修正する材料になり得る。
財務面では、2026年3月期の自己資本比率は57.1%、現金及び現金同等物は153,390百万円。 成長投資、株主還元、構造改革を同時に進めるための財務余力は一定程度ある。 DOE3%を目安とする株主還元方針も、資本効率を意識した経営姿勢として株式市場が注視するポイントとなる。
弱みとリスク要因
モビリティ収益性、センサー赤字、顧客依存、原材料費が主要リスク
最大の弱みは、売上規模に対して全社営業利益率がまだ低い点である。 2026年3月期の売上高営業利益率は4.1%で、競合の村田製作所やTDKと比較すると収益性の差が明確に残る。 PBR1倍以上を目指すには、利益率の改善とROEの安定が不可欠となる。
モビリティ事業は黒字化が進んだものの、過去には低収益製品や不採算製品が利益を圧迫してきた。 2026年3月期にはサウンド製品に係る事業用資産などで減損損失を計上しており、事業モデル転換の途中段階にある。 デジタルキャビン関連の新製品が計画通りに立ち上がらない場合、営業利益300億円への道筋は弱くなる。
センサー・コミュニケーション事業は、中期的な成長候補である一方、足元では赤字が続く。 2026年3月期の営業損失は35億円。 新製品開発、量産移行、顧客採用、価格適正化のどこかで遅れが出ると、投資先行による損益悪化が継続する可能性がある。
顧客集中も無視できない。 2026年3月期のApple Inc.向け売上高は236,625百万円で、コンポーネント事業の収益に対する重要度が高い。 大手スマートフォンメーカーの販売台数、モデルチェンジ、部品採用方針、価格交渉が変化すれば、短期業績に大きく影響する。
車載市場では、日本、北米、欧州の自動車メーカー向け販売戦略の見直し、中国市場での競争激化、米国通商政策、地政学リスクが需要変動要因となる。 2027年3月期会社予想でも、完成車メーカーの販売数量と製品構成の変化による不確実性が示されている。
コスト面では、メモリなど特定部品の数量不足や価格上昇、地金など原材料価格の上昇が原価率を悪化させる可能性がある。 顧客との価格適正化交渉が遅れる場合、売上は維持しても利益率が圧迫される。 そのため、四半期ごとの営業利益率、セグメント利益、価格転嫁の進捗は継続的に確認すべき指標となる。
出典
- アルプスアルパイン公式サイト
- アルプスアルパイン 企業概要
- アルプスアルパイン 事業紹介
- アルプスアルパイン 株主・投資家情報
- アルプスアルパイン 決算短信
- アルプスアルパイン 価値創造プロセスと中期経営計画
- アルプスアルパイン 中期経営計画2027
- 村田製作所 財務ハイライト
- TDK 個人投資家の皆さまへ
- ミネベアミツミ 2026年3月期 決算サマリー

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