4970 東洋合成工業

東洋合成工業 4970 東証S

Toyo Gosei Co., Ltd.|半導体・ディスプレイ向け感光材、先端半導体向け高純度溶剤、香料材料、化学品タンクターミナルを展開する電子材料・化学品メーカー。
※2026年7月5日時点の情報

事業内容

2026年7月5日の時価総額は約1,399億円。2026年7月3日終値17,180円と、2026年3月期末の発行済株式数8,143,390株を基準にした概算値である。

東洋合成工業は1954年9月27日設立、本社は東京都台東区浅草橋1丁目22番16号 ヒューリック浅草橋ビル8階・9階。代表者は代表取締役社長の木村有仁氏、決算期は3月、上場市場は東京証券取引所スタンダード市場。事業内容は、半導体・ディスプレイ向け感光材、ポリマー製品、半導体・電子材料向け高純度合成溶剤、香料向け化学品、液体化学品の保管管理・物流倉庫業。

2026年3月期は売上高41,956百万円、営業利益3,668百万円、経常利益3,592百万円、当期純利益2,692百万円。AI関連半導体デバイス向け需要が下期にかけて拡大し、先端フォトレジスト向け材料と高純度溶剤の販売が増加した。一方、大型設備と生産情報システムの稼働開始に伴う減価償却費、人員増強等の固定費増加により、営業利益は前期比で減少した。2027年3月期会社予想は売上高47,500百万円、営業利益5,000百万円、経常利益4,600百万円、当期純利益3,200百万円。

感光性材料事業

感光性材料事業は、2022年3月期の売上高20,574百万円から2026年3月期の26,417百万円へ拡大した。一方、営業利益は2022年3月期3,297百万円、2023年3月期3,306百万円をピークに、2026年3月期は1,051百万円まで低下した。先端材料の販売は伸びているが、大型設備と生産情報システムの稼働に伴う固定費増が利益を圧迫している。
感光性材料事業 セグメント業績推移(単位:百万円)
29,587 22,190 14,794 7,397 0 2022 2023 2024 2025 2026 20,574 20,854 19,390 23,873 26,417 3,297 3,306 2,156 1,979 1,051 売上高営業利益
感光性材料事業は、半導体回路形成やディスプレイ製造に使われるフォトレジスト用感光性材料を扱う東洋合成工業の中核事業である。

同社は1970年代半ばから半導体回路形成に使用されるフォトレジスト用感光性化合物の基礎研究に着手し、1981年にポジ型感光材とネガ型感光材を商品化した。さらに1997年からは、化学増幅型レジスト用光酸発生剤であるPAGや、化学増幅型レジスト用ポリマーの生産・販売を行っている。

フォトレジストは、半導体ウェーハ上に微細回路を形成するリソグラフィ工程で使われる。露光光源がg線、i線、KrF、ArF、ArF液浸、EUVへ進化するほど、材料には高感度、高解像度、低欠陥、低金属不純物、低パーティクル、安定したロット品質が求められる。東洋合成工業の感光材は、完成フォトレジストそのものではなく、フォトレジストの性能を左右する機能性材料としての性格が強い。

2026年3月期は、AI向け半導体デバイスの強い需要が継続し、先端フォトレジスト向け材料の販売が前期比で増加した。一方、一般半導体向けはやや減少した。ディスプレイ向け感光材は、スマートフォンやTV用パネル生産が一定レベルで保たれたため、堅調に推移した。

利益面では、大型設備と生産情報システムの稼働開始に伴い、期初から減価償却費や人員増強等の固定費が大きく増えた。下期にかけて先端材料の販売が増加し、固定費負担の一部を吸収したものの、2026年3月期の営業利益は1,051百万円、前期比46.9%減となった。

投資判断では、売上高の伸びだけでなく、新設備の稼働率、高付加価値品の販売比率、先端レジスト向け材料の採用拡大、歩留まり要求に対応する分析体制の強化を追う必要がある。Beyond500では、感光材セグメントの戦略として、拡大する需要を満たす生産能力増強投資、先端半導体を支える超高純度合成と生産性向上の両立、顧客品質の実現に向けた研究開発力強化が掲げられている。

化成品事業

化成品事業は、2022年3月期の売上高12,569百万円、営業利益1,326百万円から、2026年3月期には売上高15,538百万円、営業利益2,617百万円へ拡大した。高純度溶剤の需要拡大とタンクターミナル関連の高稼働が寄与し、2026年3月期は営業利益率16.8%となった。
化成品事業 セグメント業績推移(単位:百万円)
17,403 13,052 8,701 4,351 0 2022 2023 2024 2025 2026 12,569 13,301 12,565 14,792 15,538 1,326 1,661 1,355 2,123 2,617 売上高営業利益
化成品事業は、半導体・電子材料向け高純度溶剤、香料材料、化学品の受託製造、化学品タンクターミナルを含む事業である。決算短信上の報告セグメントでは、ロジスティック事業も化成品事業に含まれる。

電子材料関連では、半導体製造工程で使用される高純度溶剤が中心になる。先端半導体では、薬液中の金属イオン、パーティクル、有機不純物の管理要求が極めて厳しく、わずかな不純物が歩留まりや欠陥率に影響する。東洋合成工業は、創業以来培ってきた合成技術と高純度化技術を基盤に、電子材料分野で高品質な溶剤を供給する。

2026年3月期は、生成AIの普及拡大を背景とするデータセンター投資の活発化、半導体の高性能化・高集積化の進展により、先端プロセス向け材料需要が増加した。高純度溶剤は、先端ロジックおよびメモリ用途を中心に需要が拡大し、販売が好調に推移した。

香料材料関連製品は、米国の関税措置の影響を受け、サプライチェーン上の在庫調整や為替影響により前年同期比で売上が減少した。したがって、化成品事業の増収増益は、電子材料関連とタンクターミナル関連の寄与が大きい。

同社は、国内3工場生産によるBCP体制、豊富な荷姿、オランダ・ロッテルダムの物流倉庫を通じたグローバル市場向けデリバリー体制を掲げている。高純度溶剤は、半導体メーカーや材料メーカーにとってサプライチェーンの安定性が重要なため、品質だけでなく供給継続力も評価対象になる。

Beyond500では、化成品セグメントの事業強化として、先端半導体向け超高純度溶剤の品質・開発・安定供給体制の強化、化学専業タンクターミナルの自動化促進と顧客満足度向上が掲げられている。化成品事業は、感光性材料事業の固定費増による利益圧迫を補う安定収益源としても重要度が高まっている。

ロジスティック事業と化学品タンクターミナル

ロジスティック事業単独の売上高・営業利益は、決算短信上では個別セグメントとして開示されていない。参考として、ロジスティック事業を含む化成品事業全体の推移を見ると、2026年3月期は売上高15,538百万円、営業利益2,617百万円となり、5年間で利益がほぼ倍増している。
ロジスティック事業を含む化成品事業全体の参考推移(単位:百万円)
17,403 13,052 8,701 4,351 0 2022 2023 2024 2025 2026 12,569 13,301 12,565 14,792 15,538 1,326 1,661 1,355 2,123 2,617 売上高営業利益
ロジスティック事業は、化学品メーカーとしての取扱ノウハウを活かしたケミカル・ロジスティック・ターミナル事業である。中心拠点は高浜油槽所で、東京湾岸に位置し、首都圏の化学品流通を支える立地を持つ。

高浜油槽所は、43,000平方メートルの敷地に化学品保税タンク計65基、総容量55,400キロリットルを保有し、1,000キロリットル以上の大容量タンクを36基保有する。うち56基は第一石油類保管対応タンクであり、多様な化学品保管ニーズに対応する。

ロジスティック事業の特徴は、単なる倉庫・タンク賃貸ではなく、化学品メーカーとしての分析・品質保証・安全管理を組み合わせる点にある。常設の分析室では、緊急時の性状分析や品質保証付き出荷にも対応する。顧客にとっては、輸入化学品の保管、品質確認、出荷、輸送を一体で管理できることが価値になる。

2026年3月期は、輸入品に対する保管需要の増加によりタンクの引き合いが旺盛だった。さらに、新たな無機化学品専用タンクの運用開始も寄与し、タンク契約率は高水準で推移した。

この事業は、半導体材料のように急激な価格変動や技術世代交代に左右されにくい一方、契約率、タンク更新、法規制、安全管理、港湾・物流コストの影響を受ける。化成品事業内で安定収益源として機能し、高純度溶剤や感光材と組み合わせたサプライチェーン高付加価値化の役割を担う。

Beyond500では、タンクターミナル事業、超高純度精製能力、高純度合成力の連携を強化し、機能性化学品の安定供給とサプライチェーン高付加価値化を実現する方針が示されている。感光材と高純度溶剤の供給拡大を支える基盤として、ロジスティック事業の戦略的な意味は大きい。

直近5年業績サマリー

業績項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期
会社予想・直近指標
売上高
百万円
33,144 34,156+3.1% 31,956△6.4% 38,665+21.0% 41,956+8.5% 47,500+13.2%
営業損益
百万円
4,624 4,968+7.4% 3,512△29.3% 4,103+16.8% 3,668△10.6% 5,000+36.3%
経常損益
百万円
4,794 5,122+6.8% 3,393△33.8% 3,997+17.8% 3,592△10.1% 4,600+28.1%
当期純利益
百万円
3,457 3,827+10.7% 2,396△37.4% 3,279+36.9% 2,692△17.9% 3,200+18.9%
EPS
円・最新発行済株式数で再計算
424.52円 469.95円 294.23円 402.66円 330.57円 392.96円
PER
25.75倍 19.15倍 32.73倍 13.16倍 30.46倍 43.72倍2026年7月3日終値17,180円基準
PBR
5.54倍 3.73倍 3.59倍 1.74倍 2.99倍 5.10倍2026年3月期BPSと7月3日終値基準
BPS
円・最新発行済株式数で再計算
1,972.27円 2,411.89円 2,680.09円 3,049.22円 3,371.08円
純資産
百万円
16,061 19,641+22.3% 21,825+11.1% 24,831+13.8% 27,452+10.6%
営業CF
百万円
5,808 3,659△2,149 4,572+913 6,795+2,223 7,490+695
投資CF
百万円
△3,415 △3,274+141 △7,593△4,319 △11,974△4,381 △4,874+7,100
財務CF
百万円
△2,563 △406+2,157 3,596+4,002 5,193+1,597 △2,546△7,739
現金及び現金同等物
百万円
3,269 3,252△0.5% 3,645+12.1% 3,597△1.3% 3,683+2.4%

中期経営計画

5カ年中期経営計画 Beyond500

東洋合成工業は、2023年3月期を初年度とする5カ年の中期経営計画「Beyond500」を策定している。計画のテーマは、売上高500億円の達成に向けた5カ年計画である。

中期経営計画のコンセプトは、需要拡大が見込まれる電子材料分野において、長年培ってきた高純度合成・精製技術にさらに磨きをかけ、顧客品質を満たす安定供給体制を強化し、人・組織・事業の成長を果たし、世界No.1ダントツ企業として持続可能な脱炭素社会の実現に貢献すること。

2027年3月期の数値計画は、売上高500億円以上、営業利益80億円以上、営業利益率16%以上、設備投資額300億円である。2027年3月期会社予想は、売上高475億円、営業利益50億円であり、Beyond500の目標に対しては売上高・営業利益ともに未達計画となっている。

全社戦略では、人材育成、技術戦略の強化、経営基盤の強化を掲げる。技術戦略では、顧客品質と生産性の両立を狙った研究開発と製造技術の強化、世界随一の高純度製造技術、工程管理のDXによるリアルタイム見える化、生産性向上を重視している。

セグメント別戦略では、感光材セグメントで拡大需要を満たす生産能力増強投資、先端半導体を支える超高純度合成と生産性向上の両立、顧客品質の実現に向けた研究開発力強化を掲げる。化成品セグメントでは、先端半導体向け超高純度溶剤の品質・開発・安定供給体制の強化、化学専業タンクターミナルの自動化促進と顧客満足度向上を進める。

足元の課題は、2024年完成の感光材開発分析棟と先端分野向け材料の大規模新規生産設備を、どれだけ高稼働へ引き上げられるかである。2026年3月期は固定費増が先行したが、2027年3月期は売上高47,500百万円、営業利益5,000百万円への回復が会社予想として示されている。

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競合他社

1 信越化学工業 4063
時価総額は約12.94兆円。株価は2026年7月2日時点で6,958円。

信越化学工業は、塩化ビニル、シリコンウェーハ、半導体材料、シリコーン、電子材料などを展開する日本最大級の化学メーカーである。東洋合成工業と競合・隣接する中心領域は、電子材料セグメントの半導体リソグラフィ材料である。

信越化学工業は、i線、KrF、ArF、EUVに対応するフォトレジスト、フォトマスクブランクス、多層材料、EUVレジストなどを展開する。東洋合成工業は、完成フォトレジストではなく、PAC、PAG、化学増幅型レジスト用ポリマーなどの中間材料・機能材料に強みを持つため、両社の競争は完成レジストとレジスト材料という垂直方向の競争を含む。

2026年3月期の信越化学工業の連結業績は、売上高2兆5,739億円、営業利益6,352億円、経常利益7,083億円、親会社株主帰属純利益4,745億円。電子材料セグメントは売上高1兆157億円、営業利益3,445億円となった。

信越化学工業が完成レジスト、フォトマスクブランクス、関連材料を内製・最適化するほど、東洋合成工業のような高純度感光材メーカーの供給機会と競合する可能性がある。時価総額、研究開発、量産能力、グローバル供給体制の面で最大級の競争圧力となる。
2 富士フイルムホールディングス 4901
時価総額は約4.33兆円。株価は2026年7月2日時点で3,621円。

富士フイルムホールディングスは、ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングを展開する総合化学・精密材料企業である。東洋合成工業と競合・隣接する中心領域は、エレクトロニクス部門の半導体材料事業である。

富士フイルムは、ブロードバンド、g線、i線、KrF、ArF、ArF液浸、電子線、EUV対応材料、ネガ型現像レジストシステムなど、幅広いフォトレジストを展開する。さらに、現像液、洗浄液、薄膜形成材料、高純度プロセス薬液、CMPスラリー、ポストCMP洗浄液、ポリイミドなども扱う。

2026年3月期の富士フイルムホールディングスの連結業績は、売上高3兆3,570億円、営業利益3,502億円、親会社株主帰属純利益2,767億円。売上高、営業利益、純利益はいずれも過去最高となった。エレクトロニクス部門では、生成AI向け先端半導体材料の需要拡大が寄与した。

富士フイルムは、フォトレジストから高純度薬液、CMP材料まで半導体製造工程の広い範囲をカバーする。東洋合成工業が感光材と高純度溶剤に強みを集中するのに対し、富士フイルムは材料群を組み合わせた総合提案ができる点で競争力が高い。
3 東京応化工業 4186
時価総額は約1.30兆円。株価は2026年7月2日時点で10,855円。

東京応化工業は、フォトレジストを中核とする半導体材料メーカーであり、電子機能材料、高純度化学薬品、半導体・ディスプレイ向け装置を展開している。東洋合成工業と最も直接的に競合・隣接する日本企業の一社である。

東京応化工業は、g線、i線、KrF、ArF、ArF液浸、EUV、電子線、パッケージ・MEMS向け厚膜レジスト、RDL・バンプ形成用レジスト、高純度化学薬品、現像液、洗浄液、シンナーを展開する。完成フォトレジストの世界的メーカーであり、東洋合成工業のPAG、ポリマー、感光性化合物、高純度溶剤とサプライチェーン上で近い位置にある。

2025年12月期の東京応化工業の連結業績は、売上高2,370億円、営業利益474億円、経常利益493億円、親会社株主帰属純利益333億円。生成AI関連製品の需要増、先端半導体材料の拡大、高純度化学薬品の成長により、売上高と利益は2年連続で過去最高となった。

東京応化工業がEUV、ArF、KrFフォトレジストや高純度薬液を拡大する局面では、東洋合成工業の感光材・化成品事業にとって直接的な競争圧力となる。一方、完成レジストメーカーと中間材料メーカーという関係もあるため、顧客・用途によってはサプライチェーン上の隣接関係も持つ。

強みと将来性

フォトレジスト材料の高純度合成・精製技術と先端半導体需要
東洋合成工業の強みは、フォトレジスト用感光性材料に特化した高純度合成・精製技術である。半導体の微細化が進むほど、材料中の金属不純物、パーティクル、残留イオン、分子構造のばらつきが歩留まりに影響しやすくなる。完成レジストの性能を支える中間材料の品質は、露光・現像工程の安定性に直結する。

同社は、PAC、ネガ型感光材、PAG、化学増幅型レジスト用ポリマーを長年扱ってきた。EUVを含む先端リソグラフィ材料では、材料メーカー単独の技術だけでなく、レジストメーカー、半導体メーカー、装置メーカーとの評価・改良の積み重ねが重要になる。東洋合成工業は、顧客の開発初期から品質要求に応える体制を重視しており、これが参入障壁になる。

2026年3月期には、AI関連半導体デバイス向け需要が市場成長を牽引し、特に下期にかけて先端半導体向け材料の需要が拡大した。先端フォトレジスト向け材料と高純度溶剤の販売が好調だったことは、同社の主要製品が生成AI・データセンター・高性能半導体の投資サイクルと連動していることを示す。

もう一つの強みは、感光性材料と高純度溶剤の両方を持つことにある。半導体材料の品質要求は、素材単体だけでなく、合成、精製、充填、保管、輸送、タンク管理まで広がる。化成品事業とロジスティック事業を組み合わせることで、機能性化学品の安定供給とサプライチェーン高付加価値化を提案しやすい。

Beyond500で掲げる売上高500億円以上、営業利益80億円以上の目標は、2027年3月期会社予想の売上高475億円、営業利益50億円に対してなお高い水準である。ただし、2024年に完成した感光材開発分析棟と先端分野向け材料の大規模新規生産設備が高稼働に近づけば、固定費負担が吸収され、利益率が改善する余地がある。

将来性の焦点は、EUV、ArF液浸、先端ロジック、HBMを含むメモリ、生成AI向け半導体、国内外の半導体投資の拡大がどこまで続くかである。材料認定には時間がかかるが、一度採用された高純度材料は品質・供給面の信頼性が重視されるため、顧客との関係が継続しやすい。これが同社の長期的な収益基盤になり得る。

弱みとリスク要因

大型投資後の固定費負担、半導体市況、大手材料メーカーとの競争
最大のリスクは、大型投資後の固定費負担である。2026年3月期は、先端半導体向け材料の販売が増加したにもかかわらず、営業利益は3,668百万円と前期比10.6%減少した。感光性材料事業では、売上高が26,417百万円へ増加した一方、営業利益は1,051百万円まで低下した。大型設備と生産情報システムの稼働開始に伴う減価償却費、人員増強、固定費増が利益を圧迫している。

設備投資型の材料メーカーでは、需要が想定より早く立ち上がらない場合、固定費が先行して利益率が悪化する。Beyond500の達成には、新設備の稼働率上昇、高付加価値品の比率改善、歩留まり改善、生産性向上が必要になる。2027年3月期会社予想は営業利益5,000百万円であり、中期計画の営業利益80億円以上とは差がある。

半導体市況への依存も大きい。AI向け先端半導体は強いが、一般半導体、ディスプレイ、車載・産業機器向け材料には需要の濃淡がある。2026年3月期も一般半導体向けはやや減少した。半導体メーカーや材料メーカーの在庫調整が長引くと、感光材と高純度溶剤の販売が下振れしやすい。

競争面では、信越化学工業、富士フイルムホールディングス、東京応化工業などの大手材料メーカーが強い。これらの企業は、完成フォトレジスト、EUV材料、高純度薬液、フォトマスク関連材料、CMP材料など幅広い製品を持ち、研究開発費、顧客接点、グローバル供給体制で優位性がある。顧客が材料の内製化や一括調達を進める場合、東洋合成工業の供給機会が圧迫される可能性がある。

化成品事業では、高純度溶剤の需要拡大が追い風である一方、香料材料は為替、関税、サプライチェーン在庫調整の影響を受ける。ロジスティック事業は安定収益源になり得るが、化学品タンクには安全管理、法規制、設備更新、災害リスクが伴う。

財務面では、2026年3月期末の純資産は27,452百万円まで増加したが、総資産66,949百万円に対する自己資本比率は41.0%である。設備投資と借入返済、配当、運転資金のバランスを見ながら、機動的な投資を継続できるかが重要になる。原材料価格、物流費、エネルギー価格、為替変動、地政学リスクも収益に影響する。

株価面では、2026年3月期末終値10,070円から2026年7月3日終値17,180円へ大きく上昇している。会社予想EPSを基準にした予想PERは43倍台となり、将来の高成長を織り込む水準である。業績回復や新設備の稼働率改善が遅れる場合、バリュエーション調整リスクが高まりやすい。

出典

本ページは、企業が公表する決算短信、公式IR資料、公式事業ページ、提供された期末株価情報をもとに作成した分析情報であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。掲載情報は作成時点の確認内容に基づくものであり、将来の業績、株価、配当、企業価値を保証するものではありません。投資判断は必ず最新の会社公表資料、取引所開示、各種リスク情報を確認したうえで行ってください。

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