菊池製作所 3444 東証S
KIKUCHI SEISAKUSHO CO., LTD.|設計、試作、金型、精密加工、成形、量産、組立までを一括で支援。ロボット、アシストスーツ、ドローンなどの事業化支援にも取り組む総合ものづくり企業。
※2026年6月22日時点の情報
事業内容
2026年6月22日の時価総額は約132億円。終値は1,072円で、前営業日比150円高のストップ高となった。官民によるフィジカルAI分野への投資方針が報じられ、ロボット関連銘柄として買いが集中した。2026年4月期末株価1,525円と比べると29.7%低い水準である。
1970年4月設立。本社は東京都八王子市美山町2161番地21、代表取締役社長は菊池功氏、資本金は1,303百万円、連結従業員数は359名、決算期は4月。東証スタンダード市場に上場し、試作品、金型、精密板金、プレス、切削、樹脂成形、鋳造、量産、組立、医療・介護用ロボットなどを手掛ける。
2026年4月期は売上高6,093百万円、営業損失248百万円、経常損失113百万円、親会社株主に帰属する当期純利益103百万円。時計、事務機器などの精密電子機器、ホビー関連、試作品、金型、量産品の受注が増加した一方、ロボット・装置関連製品は計画を下回った。2027年4月期は売上高6,177百万円、営業利益177百万円、経常利益227百万円、当期純利益137百万円を見込む。
金属製品加工事業 – 試作から量産までの一括一貫体制
金属製品加工事業の売上高推移(単位:億円)
菊池製作所グループは、会計上「金属製品加工事業」の単一セグメントである。顧客企業の製品開発段階から参加し、設計支援、試作品製作、金型設計、少量生産、量産、組立、検査までを一括で受注する。
一般的な試作会社が特定の加工方法に限定されるのに対し、同社は精密板金、プレス、切削、機械加工、樹脂成形、鋳造、溶接、接合、金型など複数の加工方法を社内外で組み合わせる。
顧客は開発初期に、部品形状、材料、加工方法、コスト、耐久性、量産性を検討する必要がある。同社は図面や三次元データを基に、試作品を実際に製造し、設計変更や加工方法の見直しを支援する。
試作品の評価後は、量産用金型の製作、プレス加工、樹脂成形、部品組立へ移行できる。試作だけで案件を終了せず、量産まで受注範囲を広げられれば、顧客当たり売上高と工場稼働率が上昇する。
主要顧客分野は、時計、事務機器、デジタルカメラ、自動車部品、通信機器、医療機器、産業機器などである。近年は半導体製造装置やホビー関連の受注開拓も進めている。
2026年4月期は、精密電子機器メーカーの研究開発と生産活動に緩やかな回復が見られた。ホビー関連も安定した受注となり、試作品、金型、量産品の受注・生産が前期を上回った。
売上総利益は1,216百万円で前期比21.5%増加し、営業損失は520百万円から248百万円へ縮小した。増収による固定費吸収と粗利益の改善が進んだが、本業の営業黒字には至っていない。
2027年4月期は、生産部門の組織統合、製造と販売の連携、設備投資、購買ネットワークの強化、量産案件の拡大によって営業黒字へ転換する計画である。
試作・金型・量産支援 – 製品開発初期から製造工程へ接続
試作業務では、顧客の設計データを基に、外観確認用のモデルから機能評価用の部品までを製作する。製品仕様が確定していない段階でも、材料や工法を比較しながら開発を進める。
精密板金では、レーザー加工、曲げ、溶接、表面処理などを組み合わせ、薄板部品や筐体を製作する。少量の試作品から量産部品まで対応できることが、開発期間短縮につながる。
プレス加工では、金型を用いて金属板を連続的に成形する。試作段階では簡易金型や少量向け工法を使い、設計確定後は量産金型へ移行する。
金型部門では、製品形状、材料特性、成形条件、耐久性を考慮してプレス金型や樹脂成形金型を設計する。試作時に得た加工データを量産金型へ反映できる点が、一括受注の利点となる。
切削・機械加工では、マシニングセンタ、旋盤、研削などを利用し、複雑な形状や高い寸法精度が必要な部品を製造する。金型部品、精密機器部品、ロボット部品にも利用される。
樹脂成形では、試作型、量産型、射出成形、金属部品とのインサート成形などへ対応する。金属部品と樹脂部品を同時に扱えるため、製品全体の組立性やコストを考慮した提案が可能となる。
鋳造やマグネシウム加工は、軽量化が必要な精密機器、モビリティ、ロボット部品で利用される。試作時に切削で製作した部品を、量産時に鋳造や成形へ変更する提案も行える。
顧客が複数の加工会社へ個別に発注する場合、図面管理、納期調整、品質基準の統一が必要になる。同社が工程をまとめて管理することで、発注先の集約と製品立ち上げ期間の短縮を狙う。
収益性を高めるには、単発の試作受注を金型、少量生産、量産、組立へ移行させる必要がある。受注件数だけでなく、量産移行率と設備稼働率が重要な確認項目となる。
精密加工・品質保証 – 多様な工法を同一案件で組み合わせる
製品開発では、試作品を一度製作して完了するとは限らない。強度不足、寸法誤差、組立不良、成形時の変形、コスト超過などを確認し、設計と製造条件を繰り返し修正する。
同社は三次元CAD・CAM、加工シミュレーション、試作設備、金型設備、成形設備、測定機器を組み合わせ、設計変更から再製作までを支援する。
異なる工法を保有することで、試作時には切削加工、量産時にはプレスや樹脂成形を採用するなど、生産数量に応じて工法を変更できる。
精密機器や医療関連製品では、寸法だけでなく、材料証明、工程管理、製造記録、検査記録、トレーサビリティが求められる。品質管理体制は、価格だけでは比較できない参入条件となる。
医療機器分野では、製品の安全性と品質マネジメントが重視される。開発試作だけでなく、認証や量産管理を考慮した製造支援へ進めれば、継続受注につながる可能性がある。
時計やカメラなどの精密電子機器で培った微細加工、外観品質、組立精度は、ロボット、センサー、モビリティ、半導体製造装置などの新分野でも利用できる。
一方、設備の種類が多い事業構造は、受注が少ない時期に固定費負担が大きくなる。各工場へ案件を適切に配分し、設備と技術者の稼働率を高める必要がある。
2026年4月期は営業キャッシュ・フローが505百万円の収入へ転換した。売上債権の減少も寄与しているため、継続的な収益力の改善は営業利益と粗利益率で確認する必要がある。
ロボット・装置関連 – スタートアップへの包括事業化支援
菊池製作所は、自社で完成品を大量販売するロボットメーカーとは異なり、ロボット・スタートアップの開発、試作、部品調達、量産、販売、保守、運用を支援する事業モデルを掲げる。
支援対象には、装着型アシストスーツ、介護・医療関連機器、自動搬送ロボット、モビリティ、農業・物流・防衛分野のドローンなどが含まれる。
スタートアップは製品アイデアや制御技術を持っていても、量産設計、金型、部品調達、品質保証、製造拠点、保守網を持たない場合がある。同社は既存の加工設備と製造ノウハウを提供する。
試作品が動作しても、量産段階では部品点数、組立時間、耐久性、調達価格、故障対応を見直す必要がある。製品化初期から関与することで、量産製造の受注へつなげる構造である。
産学官連携による研究開発や、公的機関から受託する研究開発も実施している。助成金を利用して技術開発を進められる一方、研究成果を補助期間終了後の商用売上へ変換する必要がある。
関係会社や提携先が持つ顧客網を共有し、製品を相互販売するクロスセルも推進する。製造だけでなく販売、保守、運用サービスまで含めた支援へ広げる方針である。
2026年4月期は、農業、物流、防衛向けドローン、アシストスーツ、自動搬送ロボットなどの販売が計画未達となった。市場の成長期待と実際の受注・量産時期には差がある。
株価はロボットやフィジカルAIの政策材料に反応しやすいが、会社業績では従来型の試作、金型、量産品が主な収益基盤である。ロボット関連の評価では、実証件数ではなく製品販売、受託製造、保守収入を確認する必要がある。
2027年4月期は案件ポートフォリオの精査、適正価格での販売、調達コスト削減、スタートアップとの連携強化によって収益改善を目指す。
直近5年業績サマリー
| 業績項目 | 2022年4月期 | 2023年4月期 | 2024年4月期 | 2025年4月期 | 2026年4月期 | 2027年4月期 会社予想 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,045 | 5,096 +51 / +1.0% | 5,209 +113 / +2.2% | 5,456 +247 / +4.7% | 6,093 +637 / +11.7% | 6,177 +84 / +1.4% |
| 営業損益 | △596 | △631 △35 / 赤字拡大 | △649 △18 / 赤字拡大 | △520 +129 / 赤字縮小 | △248 +272 / 赤字縮小 | 177 +425 / 黒字転換 |
| 経常損益 | △852 | △927 △75 / 赤字拡大 | △977 △50 / 赤字拡大 | △450 +527 / 赤字縮小 | △113 +337 / 赤字縮小 | 227 +340 / 黒字転換 |
| 当期純利益 | △669 | △1,101 △432 / 赤字拡大 | △818 +283 / 赤字縮小 | 43 +861 / 黒字転換 | 103 +60 / +139.8% | 137 +34 / +32.8% |
| EPS | △54.22円 | △89.24円 △35.02円 | △66.30円 +22.94円 / 赤字縮小 | 3.49円 +69.79円 / 黒字転換 | 8.35円 +4.86円 / +139.3% | 11.10円 +2.76円 / +33.0% |
| PER | – 赤字・期末株価550円 | – 赤字・期末株価399円 | – 赤字・期末株価344円 | 79.5倍 期末株価277円 | 182.7倍 期末株価1,525円 | 96.5倍 6月22日終値1,072円 |
| PBR | 1.16倍 | 1.06倍 | 0.97倍 | 0.63倍 | 3.00倍 | – |
| BPS | 475.86円 | 374.62円 △101.23円 / △21.3% | 355.58円 △19.05円 / △5.1% | 438.01円 +82.43円 / +23.2% | 507.96円 +69.95円 / +16.0% | – |
| 純資産 | 5,871 | 4,622 △1,249 / △21.3% | 4,387 △235 / △5.1% | 5,404 +1,017 / +23.2% | 6,267 +863 / +16.0% | – |
| 営業CF | △281 | △658 増減 △377 | △493 増減 +165 | △663 増減 △170 | 505 増減 +1,168 / 黒字転換 | – |
| 投資CF | 56 | △75 増減 △131 | 181 増減 +256 | 833 増減 +652 | △63 増減 △896 | – |
| 財務CF | 294 | 742 増減 +448 | 210 増減 △532 | 574 増減 +364 | △429 増減 △1,003 | – |
| 現金及び現金同等物 | 1,463 | 1,499 +36 / +2.5% | 1,478 △21 / △1.4% | 2,212 +734 / +49.7% | 2,274 +62 / +2.8% | – |
発行済株式総数は直近5期を通じて12,337,700株。EPS、BPS、PER、PBRは比較条件をそろえるため、自己株式を控除せず、2026年6月22日時点の発行済株式総数で再計算した。会社開示の1株当たり数値とは異なる。
PER・PBRに用いた期末株価は、2022年4月期550円、2023年4月期399円、2024年4月期344円、2025年4月期277円、2026年4月期1,525円。2021年4月期の期末株価818円は直近5期の対象外。
2027年4月期予想のPERは2026年6月22日終値1,072円を使用。予想BPS、PBR、純資産、キャッシュ・フローは会社予想がないため空欄。
営業損失の継続により、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象が存在する。会社は現金及び現金同等物、上場有価証券、資金調達余力を踏まえ、重要な不確実性は認められないと判断している。財務制限条項付きタームローンは2025年6月末に全額返済済み。
中期経営計画
中期経営計画2026 – 計画期間終了後は2027年4月期の営業黒字化が焦点
「中期経営計画2026」は2026年4月期を最終年度とし、総合ものづくり支援企業から包括的事業化支援企業への転換を掲げた。既存の試作・金型事業に加え、製品化、量産、販売、保守、運用まで支援範囲を広げる方針だった。
最終年度の計画値は売上高7,430百万円、営業利益320百万円、当期純利益200百万円だった。実績は売上高6,093百万円、営業損失248百万円、当期純利益103百万円となり、売上高と営業利益は計画を下回った。
既存事業では、営業活動量の増加、製造部門と販売部門の連携、原価管理、工場稼働率の改善、製造拠点の効率化、量産案件の獲得を重点課題としてきた。
新規事業では、ロボット・スタートアップへの出資だけでなく、受託開発、受託製造、販売、保守、運用までを支援し、各事業を独立して収益化することを目指した。
2026年4月期は試作、金型、量産品の受注が回復したものの、ロボット・装置関連の販売が計画を下回った。中期計画で想定した新規事業の収益化には遅れが残る。
2027年4月期の基本方針は、生産組織の統合、製販連携、設備投資による生産力増強、合理化、短納期化、量産製品分野の拡大である。
ロボット分野では案件ポートフォリオを精査し、採算性の低い開発案件を抑えながら、適正価格での販売と調達コスト削減を進める。
関係会社とスタートアップの顧客網を共有し、製品を相互に販売するクロスセルも進める。研究開発成果を自社製品や受託製造へつなげられるかが重要となる。
2027年4月期は売上高の伸びを1.4%に抑えながら、営業損益を248百万円の赤字から177百万円の黒字へ改善する計画である。増収よりも原価、固定費、案件採算、工場稼働率の改善が前提となる。
2026年6月22日時点で、新たな複数年度数値目標を示す中期経営計画は確認できない。当面は2027年4月期の営業黒字化予想が、収益構造改善を評価する基準となる。
中期経営計画資料へ競合他社
① 黒田精工(7726)
2026年6月22日終値は1,547円、時価総額は約88.8億円。精密プレス金型、モーターコア用金型、精密部品加工、研削、測定分野で競合する。
黒田精工は、精密ボールねじ、ボールねじアクチュエータ、精密金型、平面研削盤、ゲージ、測定装置などを展開する精密機器メーカーである。
金型システムでは、モーターコア用金型、精密プレス金型、電動車や産業機器向けの精密部品を扱う。菊池製作所の金型設計、プレス加工、量産部品と競合する。
黒田精工は、長期量産で要求される金型耐久性、寸法精度、モーターコア加工、研削・計測技術に専門性を持つ。
菊池製作所は、板金、切削、樹脂、鋳造、金型を組み合わせ、製品設計の初期段階から試作へ対応する点で差別化する。
2026年3月期は売上高19,501百万円、営業利益32百万円、経常利益11百万円、親会社株主に帰属する当期純損失96百万円。増収となったが、採算悪化と費用負担で大幅な減益となった。
2027年3月期は売上高25,800百万円、営業利益770百万円、当期純利益330百万円を計画する。金型システムの大型案件と駆動システムの回復を見込む。
電動車用モーターや高精度量産部品では黒田精工が強く、複数工法を比較する短納期試作では菊池製作所が優位になりやすい。
② SOLIZE Holdings(5871)
2026年6月22日終値は1,315円、時価総額は約78.9億円。製品開発受託、三次元設計、解析、3Dプリント試作、少量生産で直接競合する。
SOLIZEグループは、三次元CAD、CAE、設計・解析エンジニアリング、製造業コンサルティング、3Dプリンターによる試作品・最終製品製造を展開する。
自動車、輸送機器、産業機器、医療機器などの開発段階から参加し、設計データの作成、解析、試作品製作、開発期間短縮を支援する。
菊池製作所とは、新製品開発、短納期試作、スタートアップの製品化、多品種少量生産で顧客と受注時期が重なる。
SOLIZEはデジタル設計、シミュレーション、エンジニア人材、積層造形に強い。設計変更をデータ上で高速に繰り返し、金型を使わず少量部品を製造できる。
菊池製作所は、試作品の製作後に金型、プレス、樹脂成形、組立、量産へ移行できる実加工体制で対抗する。
2025年12月期は売上高25,779百万円、営業利益85百万円、経常利益82百万円、親会社株主に帰属する当期純損失36百万円。売上高は過去最高となったが、体制強化費用などで利益が減少した。
2026年12月期は売上高30,500百万円、営業利益500百万円、当期純利益300百万円を計画する。第1四半期は売上高7,407百万円、営業利益346百万円となった。
設計・解析から3Dプリントで完結する案件ではSOLIZEが有利で、量産方法や金型、組立まで検証する案件では菊池製作所の対応範囲が広い。
③ J-MAX(3422)
2026年6月22日終値は489円、時価総額は約58.0億円。自動車用プレス金型、車体部品、電動車向け部品、溶接・組立、量産プレスで競合する。
J-MAXは、自動車用大型プレス金型、車体骨格部品、電動車関連部品を製造し、金型からプレス、溶接、組立までの一貫生産を行う。
菊池製作所とは、自動車メーカー・部品メーカー向けの試作品、プレス金型、金属部品、電動化・軽量化部品で競合する。
J-MAXは大型プレス設備、量産能力、海外生産拠点を持ち、仕様確定後の車体部品や構造部品の大量生産に強い。
菊池製作所は、開発初期の試作、多品種少量生産、樹脂や切削を含む複数工法の比較に強みを持つ。
2026年3月期は売上高51,919百万円、営業利益1,858百万円、経常利益1,140百万円となり、経常損益は前期の赤字から黒字へ転換した。
中国での電動化部品増産、金型販売、価格転嫁、海外拠点の収益改善が業績に寄与した。
2027年3月期は売上高50,000百万円、営業利益2,400百万円、経常利益1,600百万円、当期純利益1,000百万円を計画する。
試作段階では両社が競合するが、菊池製作所が開発試作、J-MAXが大型量産を担当する分業関係となる可能性もある。
強みと将来性
複数工法を束ねる一括一貫体制と、製品化まで踏み込む支援力
菊池製作所の最大の強みは、単一の加工技術ではなく、設計、試作、金型、金属加工、樹脂成形、量産、組立、検査を同じ案件の中で組み合わせられる点にある。
顧客の製品開発初期では、最適な材料や製造方法が決まっていない場合が多い。同社は複数工法を比較し、形状、強度、コスト、納期、量産性を考慮した提案を行える。
試作時には切削や板金で短期間に部品を製作し、量産時にはプレス、鋳造、樹脂成形へ変更できる。開発段階と量産段階を別企業へ発注する場合に比べ、情報の引き継ぎを減らせる。
金型を社内で設計・製作できるため、試作結果を量産金型へ直接反映できる。形状変更や不具合が発生した場合も、設計、金型、成形部門が連携して修正できる。
精密電子機器、自動車、医療、産業機器、ホビー、半導体製造装置など、複数の顧客分野へ対応する。特定市場が低迷した際に、新規分野の受注で補う余地がある。
2026年4月期は、半導体製造装置やホビー関連の開拓が進み、売上高は前期比11.7%増加した。従来の時計、事務機器、カメラへの依存を下げられれば、受注基盤の安定性が高まる。
売上総利益は前期比21.5%増加し、売上高の伸びを上回った。工場稼働率がさらに上昇すれば、固定費吸収によって営業利益が改善する余地がある。
ロボット分野では、完成品メーカーとしてだけでなく、スタートアップの量産支援企業として関与できる。製品が市場投入されれば、部品製造、組立、修理、保守、追加生産の受注が期待できる。
スタートアップ側は製造設備を持たず、菊池製作所側は販売力やソフトウェア技術を補完したいという関係になる。双方の機能を組み合わせれば、単純な加工受託より深い取引へ進める。
アシストスーツ、自動搬送ロボット、農業・物流・防衛向けドローンは、人手不足、安全性、省力化への需要と接点を持つ。
政策面でロボットやフィジカルAIへの投資が拡大しても、同社が恩恵を受けるには、研究開発案件を実際の量産受注へ移行させる必要がある。
2026年4月期末の自己資本比率は65.4%、現金及び現金同等物は2,274百万円。有利子負債の返済も進み、過去に比べ財務面の余力は改善した。
2026年4月期の営業キャッシュ・フローは505百万円の収入へ転換した。営業利益が黒字化すれば、設備更新や新製品開発を内部資金で進めやすくなる。
2027年4月期は営業利益177百万円を計画する。黒字化が実現すれば、長期間続いた赤字体質からの転換を示す最初の段階となる。
確認すべき指標は、売上総利益率、工場稼働率、量産案件数、ロボット・装置関連売上高、研究開発費、営業キャッシュ・フロー、営業利益である。
弱みとリスク要因
営業赤字の長期化、固定費負担、ロボット事業化の遅れと株価変動
最大の弱みは、売上高が増加しても営業黒字を確保できていない点である。2022年4月期から2026年4月期まで5期連続で営業損失を計上した。
2026年4月期の営業損失は248百万円まで縮小したが、本業の利益は依然として赤字である。当期純利益103百万円には、助成金、受取配当金、投資有価証券売却益、補助金収入などが影響している。
営業利益が赤字の状態で最終利益だけが黒字となっているため、投資有価証券の売却や助成金を除いた収益力を確認する必要がある。
多種類の加工設備、工場、技術者を保有する事業構造は、受注増加時には利益が拡大しやすい一方、稼働率が低下すると減価償却費、人件費、維持費が利益を圧迫する。
試作案件は顧客の研究開発予算や新製品計画に左右される。製品開発の延期、中止、仕様変更が発生すると、受注時期と売上計上が変動する。
時計、カメラ、事務機器などの市場は成熟しており、顧客企業による新製品開発件数が減少する可能性がある。半導体製造装置、ホビー、医療、ロボットなどへの顧客分散が必要となる。
自動車部品の量産では、大型プレス設備、海外拠点、購買力を持つ大手部品メーカーと競争する。試作受注を獲得しても、本格量産を他社へ移管される場合がある。
3Dプリントを利用した試作では、SOLIZEなどデジタル設計と積層造形に強い企業との競争がある。金型を使用しない少量生産が増えると、従来型金型需要の一部が減少する可能性がある。
精密金型やモーター部品では、黒田精工など特定技術へ集中する企業が高い量産精度と専門性を持つ。加工技術の幅だけでなく、各工法の品質と採算を維持する必要がある。
ロボット・装置関連は、研究開発から量産販売までの期間が長い。スタートアップの資金調達、認証、販売網、製品不具合、顧客導入の遅れによって商用化が延期される。
2026年4月期は、農業・物流・防衛向けドローン、アシストスーツ、自動搬送ロボットなどの販売が計画を下回った。市場テーマとして注目されても、短期的な業績貢献が確定しているわけではない。
投資先や持分法適用会社の業績が悪化すると、持分法投資損失、投資有価証券評価損、減損損失が発生する可能性がある。2026年4月期も持分法投資損失や投資事業組合運用損を計上した。
助成金や公的研究開発案件は、技術開発費を補う一方、採択、対象経費、検査、受領時期に左右される。補助期間が終了した後に商用受注が残らなければ、継続収益にはならない。
原材料、エネルギー、物流、人件費の上昇を販売価格へ転嫁できない場合、増収でも粗利益が改善しない。少量・個別案件では、見積もり時点と製造時点のコスト差が生じやすい。
熟練技術者の高齢化と技能承継も課題となる。金型調整、溶接、成形条件、精密測定などは経験への依存度が高く、人材不足が生産能力を制限する可能性がある。
海外子会社や取引では、為替、現地需要、地政学、関税、物流停滞、品質管理のリスクがある。顧客の海外生産縮小や調達方針変更も受注へ影響する。
会社は営業赤字の継続により、継続企業の前提に関する重要な疑義が存在すると開示している。現金や上場有価証券を保有し、資金繰りに重要な懸念はないとしているが、営業赤字が再拡大すれば財務余力を消費する。
2027年4月期は営業利益177百万円を見込む。売上高の伸び率は1.4%にとどまるため、黒字転換には原価低減、稼働率向上、案件選別が計画通り進む必要がある。
2026年4月期末株価1,525円を再計算EPS8.35円で割ったPERは182.7倍だった。2026年6月22日終値1,072円を2027年4月期予想EPS11.10円で割っても約96.5倍となる。
株価にはロボット、ドローン、フィジカルAIへの成長期待が大きく反映されやすい。営業黒字化の遅れ、ロボット販売の未達、政策テーマの後退が起きた場合、評価調整が大きくなる可能性がある。
2026年4月期末の1,525円から6月22日終値1,072円まで約29.7%下落しており、材料発表や需給による値動きが大きい。
確認すべき指標は、本業の営業利益、売上総利益率、量産移行件数、工場稼働率、ロボット関連の商用売上高、助成金を除いた経常損益、投資有価証券、営業キャッシュ・フローである。
出典
- 株式会社菊池製作所 公式サイト
- 株式会社菊池製作所 会社概要
- 株式会社菊池製作所 事業内容
- 株式会社菊池製作所 技術情報
- 株式会社菊池製作所 IR情報
- 株式会社菊池製作所 IRニュース
- 株式会社菊池製作所 決算短信・IRライブラリ
- 株式会社菊池製作所 2026年4月期決算説明資料
- 株式会社菊池製作所 中期経営計画2026
- 黒田精工株式会社 IR情報
- SOLIZE Holdings株式会社 IR情報
- 株式会社J-MAX IR情報
本ページは企業が公表した決算短信、IR資料、事業・技術情報などに基づく企業分析であり、特定の有価証券の売買を推奨するものではありません。業績予想、中期計画、ロボット・ドローン製品、研究開発、助成事業、スタートアップ連携の成果は確定した将来業績を示すものではありません。株価指標は発行済株式総数、自己株式、期末株価の扱いにより他媒体と異なる場合があります。投資判断は最新の決算短信、有価証券報告書、適時開示を確認したうえで、自己責任で行ってください。

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