6506 安川電機

安川電機 6506 東証P

YASKAWA Electric Corporation|サーボモータ、インバータ、産業用ロボット、システムエンジニアリングを展開するメカトロニクス大手。2026年度から2029年度の中期経営計画「Dash 35」では、i3-Mechatronicsを軸にフィジカルAI市場の開拓を掲げる。
※2026年7月1日時点の情報

事業内容

2026年7月1日の時価総額は約19,474億円。株価終値は7,302円、発行済株式数は266,690,497株。

安川電機は1915年7月16日設立、本社は福岡県北九州市八幡西区黒崎城石2番1号。代表者は代表取締役会長兼社長の小笠原浩氏、代表取締役社長の小川昌寛氏。決算期は2月、上場市場は東京証券取引所プライム市場。主な事業は、サーボモータ、インバータ、産業用ロボット、システムエンジニアリング関連機器の開発、製造、販売、保守サービス。

2026年2月期は売上収益542,122百万円、営業利益47,307百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益35,240百万円。モーションコントロールは利益改善を確保した一方、ロボットは増収ながらプロジェクト構成の影響で減益となった。2027年2月期会社予想は売上収益580,000百万円、営業利益60,000百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益47,000百万円。

モーションコントロール

2022年2月期から2024年2月期にかけて売上収益は2,272億円から2,600億円まで拡大した後、2025年2月期と2026年2月期は2,300億円台で推移。営業損益は2024年2月期まで380億円前後を維持した後、2025年2月期に230億円へ低下し、2026年2月期は244億円へ回復した。
モーションコントロール セグメント業績推移(単位:億円)
2912218414567280 20222023202420252026 22732521260023882361 382362382230244 売上収益営業損益
モーションコントロールは、ACサーボモータ、コントローラ、インバータを中心とする安川電機の基幹事業である。

ACサーボモータとコントローラは、半導体製造装置、電子部品実装機、工作機械、リチウムイオン電池製造設備、スマートフォン関連設備などの位置決め、速度制御、同期制御を担う。

インバータは、空調、ポンプ、ファン、クレーン、繊維機械、エネルギー関連設備などのモータ制御、省エネ制御に使われる。産業設備の自動化投資が強い局面ではサーボとインバータの販売が同時に伸びやすい一方、半導体、電子部品、中国設備投資、EV関連投資が鈍化する局面では受注調整の影響を受けやすい。

2026年2月期は、ACサーボモータ・コントローラでAI関連投資を背景とした電子部品市場や工作機械市場向けが増加した。インバータでは、米国の大型空調、データセンター、PCS向け販売が拡大した一方、中国やアジアでインフラ関連需要が減少し、過去に抱えていた受注残の解消も売上面の重しになった。

2027年2月期以降は、Dash 35でモーションコントロールの売上収益を2029年度に3,000億円、営業利益を520億円、営業利益率を17.3%へ引き上げる目標が示されている。収益性改善の焦点は、高付加価値サーボ、インバータの製品ミックス改善、グローバル生産体制、データ活用型ソリューションとの連携にある。

ロボット

ロボットは2022年2月期の売上収益1,787億円から2026年2月期の2,470億円へ拡大し、5年間で最も売上の伸びが大きいセグメント。営業損益は2023年2月期の261億円をピークに、2026年2月期は204億円となり、売上成長に対する利益率の回復が次の焦点となる。
ロボット セグメント業績推移(単位:億円)
2767207513836920 20222023202420252026 17872238234723742470 172261251238204 売上収益営業損益
ロボットは、MOTOMANブランドの産業用ロボットを中心に、自動車、半導体、電子部品、物流、食品、医薬品、一般産業向けの自動化設備を支える事業である。

安川電機は1977年に日本で初めて全電気式産業用ロボットMOTOMANを販売開始し、溶接、塗装、組立、搬送、パレタイジング、半導体ウエハ搬送などの用途を展開してきた。

2026年2月期は、国内、米国、欧州で自動車向けが伸び悩んだ一方、中国および中国以外のアジアで大型案件が売上に貢献した。一般産業分野ではグローバルで自動化需要を取り込み、売上収益は前期比で増加した。

一方で、営業損益は大型案件の付加価値構成の影響を受け、前期比で減少した。ロボットは装置単体だけでなく、周辺機器、アプリケーション、システムインテグレーション、保守サービスまで含めた収益設計が重要であり、受注案件の中身によって利益率が大きく変わる。

Dash 35では、AIロボティクスを「モーションと、AIによる認知・判断に基づき自律的に作業を行うロボット」と定義し、MOTOMAN NEXTをその具現化と位置付けている。ロボットセグメントは2029年度に売上収益2,900億円、営業利益450億円、営業利益率15.5%を目指す計画であり、単純な産業用ロボット出荷台数よりも、フィジカルAI領域での実装力が評価の中心になりやすい。

システムエンジニアリング

システムエンジニアリングは2024年2月期に売上収益555億円、営業損益56億円まで拡大した後、2025年2月期以降は売上収益380億円台へ低下。2026年2月期は売上収益387億円、営業損益50億円となり、収益率は比較的高い水準を維持した。
システムエンジニアリング セグメント業績推移(単位:億円)
6214663111550 20222023202420252026 523511555384387 2126564650 売上収益営業損益
システムエンジニアリングは、環境・社会システム、産業用オートメーションドライブ、鉄鋼プラント、社会インフラ向け電機品、ドライブ装置、コントローラ、エンジニアリングを扱う。

モーションコントロールやロボットが工場内の個別設備に深く入り込むのに対し、システムエンジニアリングはプラント、社会システム、鉄鋼、クレーン、エネルギー関連など、顧客設備全体を対象とする案件色が強い。

2026年2月期は、鉄鋼プラント関連と社会システム関連の販売が堅調に推移し、売上収益は前期比で小幅増加した。営業損益は付加価値改善により増益となり、売上規模が大きく縮小した2025年2月期以降も、利益率の底堅さを示している。

この事業は大型案件の検収時期により年度ごとの売上が振れやすい。受注残、案件採算、部材コスト、工事進行、顧客の設備更新周期が業績に影響する。

Dash 35では2029年度に売上収益400億円、営業利益40億円、営業利益率10.0%が目標とされており、急成長よりも安定収益と既存顧客基盤の維持が主眼となる。

その他

その他は物流サービス等を含む区分。売上収益は2023年2月期の289億円をピークに、2026年2月期は203億円へ低下した。営業損益は2026年2月期に20億円となり、売上減少下でも利益水準は改善した。
その他 セグメント業績推移(単位:億円)
324243162810 20222023202420252026 209289255232203 41841620 売上収益営業損益
その他は、報告セグメントに含まれない物流サービス等の事業で構成される。

会社全体の成長ドライバーはモーションコントロールとロボットであり、その他の売上規模は限定的である。ただし、物流、サービス、グループ内支援機能は、製品供給力、納期、保守サービス、グローバル展開を支える基盤となる。

2026年2月期は売上収益が203億円、営業損益が20億円となった。売上は前期比で減少したものの、その他収益の増加などもあり営業損益は改善した。

投資判断上は、その他単独よりも、主力3セグメントの生産、物流、サービス体制を支える機能として見るべき区分である。

直近5年業績サマリー

業績項目 2022年2月期 2023年2月期 2024年2月期 2025年2月期 2026年2月期 2027年2月期
会社予想
売上高
(百万円)
479,082 555,955+76,873 / +16.0% 575,658+19,703 / +3.5% 537,682-37,976 / -6.6% 542,122+4,440 / +0.8% 580,000+37,878 / +7.0%
営業損益
(百万円)
52,860 68,301+15,441 / +29.2% 66,225-2,076 / -3.0% 50,156-16,069 / -24.3% 47,307-2,849 / -5.7% 60,000+12,693 / +26.8%
経常損益 IFRS非開示 IFRS非開示 IFRS非開示 IFRS非開示 IFRS非開示 IFRS非開示
当期純利益
(百万円)
38,354 51,783+13,429 / +35.0% 50,687-1,096 / -2.1% 56,987+6,300 / +12.4% 35,240-21,747 / -38.2% 47,000+11,760 / +33.4%
EPS
(円)
146.72 198.07+51.35 / +35.0% 193.87-4.20 / -2.1% 218.62+24.75 / +12.8% 135.88-82.74 / -37.8% 181.21+45.33 / +33.4%
PER
(倍)
31.1 27.1 31.6 18.5 40.4 40.3
PBR
(倍)
4.1 4.0 4.0 2.4 2.9 3.9
BPS
(円)
1,114.08 1,329.02 1,527.79 1,662.60 1,864.31
純資産
(百万円)
298,100 355,075+56,975 / +19.1% 408,018+52,943 / +14.9% 439,610+31,592 / +7.7% 493,615+54,005 / +12.3%
営業CF
(百万円)
49,233 -2,209-51,442 54,619+56,828 56,505+1,886 52,170-4,335
投資CF
(百万円)
-24,165 -19,694+4,471 -29,346-9,652 -21,287+8,059 -44,216-22,929
財務CF
(百万円)
-22,475 7,197+29,672 -29,416-36,613 -15,673+13,743 -8,626+7,047
現金及び現金同等物
(百万円)
55,151 42,274-12,877 / -23.3% 40,279-1,995 / -4.7% 59,028+18,749 / +46.5% 61,223+2,195 / +3.7%
PERは各2月期末最終営業日の終値をEPSで除して算出。使用株価は、2022年2月期4,570円、2023年2月期5,360円、2024年2月期6,119円、2025年2月期4,050円、2026年2月期5,495円。会社予想列のPERとPBRは、2026年7月1日終値7,302円をもとに算出。安川電機はIFRS任意適用会社のため、連結の経常損益は開示されていない。

中期経営計画

中期経営計画「Dash 35」(2026年度から2029年度)

安川電機は2026年5月22日、中期経営計画「Dash 35」を公表した。2026年度から2035年ビジョン実現に向けた活動を開始し、i3-Mechatronicsを中心に事業活動を強化する方針を掲げている。

全社の数値目標は、2029年度に売上収益6,500億円、営業利益1,000億円、営業利益率15.4%。2025年度実績の売上収益5,421億円、営業利益473億円、営業利益率8.7%から、収益性を大きく引き上げる計画である。

セグメント別では、モーションコントロールを2029年度に売上収益3,000億円、営業利益520億円、営業利益率17.3%へ、ロボットを売上収益2,900億円、営業利益450億円、営業利益率15.5%へ、システムエンジニアリングを売上収益400億円、営業利益40億円、営業利益率10.0%へ引き上げる目標が示されている。

事業戦略の中心は、フィジカルAI市場の開拓である。Dash 35ではAIロボティクスを、モーションとAIによる認知・判断に基づいて自律的に作業を行うロボットと定義し、MOTOMAN NEXTをその具現化と位置付けている。安川電機の競争軸は、単体機器販売から、サーボ、インバータ、ロボット、制御、データ活用を組み合わせた自律化ソリューションへ移っていく。
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競合他社

1 三菱電機(6503)
2026年7月1日の時価総額は約127,511億円、株価は6,034円。

三菱電機は、FAシステム、サーボ、インバータ、PLC、数値制御装置、電力、社会インフラ、空調、ビルシステム、半導体デバイスなどを展開する総合電機大手である。安川電機とは、サーボ、インバータ、制御機器、FAシステム、産業オートメーション領域で競合する。

2026年3月期は売上高5兆8,947億円、営業利益4,330億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,077億円。FAシステム事業は売上高7,982億円、営業利益766億円で、工場自動化領域の総合力と顧客基盤が厚い。
2 ファナック(6954)
2026年7月1日の時価総額は約72,836億円、株価は7,415円。

ファナックは、FA、ロボット、ロボマシン、サービスを展開する産業オートメーション大手。CNC、サーボ、産業用ロボットで世界的な競争力を持ち、安川電機とは産業用ロボット、サーボ、工場自動化領域で競合する。

2026年3月期は売上高8,578億31百万円、経常利益2,274億85百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,665億43百万円。ロボット部門の売上高は3,786億10百万円、FA部門は2,084億78百万円、ロボマシン部門は1,296億円、サービス部門は1,411億43百万円である。
3 オムロン(6645)
2026年7月1日の時価総額は約12,379億円、株価は6,002円。

オムロンは、制御機器、ヘルスケア、社会システムなどを展開する。安川電機とは、制御機器、センサ、FA機器、製造現場の自動化領域で競合する。ロボット単体よりも、制御機器と現場データを軸にした自動化ソリューションで重なる部分が大きい。

2026年3月期は、継続事業ベースで売上高7,674億円、営業利益599億円、当社株主に帰属する当期純利益285億円。IAB制御機器事業は売上高4,095億円、営業利益428億円で、生成AI関連需要を取り込んだ。

強みと将来性

サーボ、インバータ、ロボットを同時に持つメカトロニクスの中核性
安川電機の強みは、モーションコントロールとロボットを同一グループ内で持ち、機械を動かす技術、電力を変換する技術、ロボットで作業を実行する技術を一体で扱える点にある。

サーボモータ、コントローラ、インバータは、半導体、電子部品、工作機械、EV、リチウムイオン電池、空調、データセンター、省エネ設備など、複数の設備投資テーマに接続している。ロボットは、自動車、一般産業、半導体、物流、食品、医薬品など、人手不足と自動化需要の影響を受けやすい。

単体製品だけで見ると、サーボでは三菱電機、ロボットではファナックや海外大手、制御機器ではオムロンなど強力な競合が存在する。ただし、安川電機はモーション、ロボット、システム、データ活用をi3-Mechatronicsとして結び付ける戦略を継続しており、装置メーカーと最終ユーザーの双方に対し、現場実装に近い提案ができる。

Dash 35ではフィジカルAI市場の開拓が掲げられた。AIロボティクスは、従来の教示型ロボットから、認知、判断、動作を組み合わせた自律作業へ評価軸が変わる領域である。MOTOMAN NEXTのような自律化ロボットが実際の製造現場で採用されれば、ロボット本体だけでなく、サーボ、制御、周辺装置、保守、データ活用まで含めた収益機会が広がる。

2029年度目標は営業利益1,000億円、営業利益率15.4%。2026年2月期実績の営業利益473億円、営業利益率8.7%からの改善幅は大きい。株式市場では、この目標に対して、受注回復、ロボット利益率改善、モーションコントロールの高収益化、フィジカルAIの受注実績が順に確認されるかが注目点となる。

弱みとリスク要因

設備投資循環、地域需要、案件採算に左右されやすい収益構造
安川電機の主力事業は、製造業の設備投資サイクルに強く連動する。半導体、電子部品、工作機械、EV、リチウムイオン電池、自動車、一般産業の投資が減速すると、サーボ、インバータ、ロボットの受注に影響が出やすい。

2026年2月期の営業利益は47,307百万円で、売上収益が前期比で小幅増加したにもかかわらず減益となった。ロボットは増収だったが、大型案件の付加価値構成が利益を押し下げた。売上の伸びだけでは利益率が改善しない点は、投資判断上の重要なリスクである。

中国、米国、欧州、アジアの地域需要も業績に影響する。中国ではEV、電子部品、新エネルギー投資が成長要因になる一方、インフラ関連や一般産業の調整局面では販売の重しになる。米国では大型空調、データセンター、PCS向けが支えになり得るが、関税政策、為替、設備投資マインドの変化が採算に影響する。

フィジカルAIやAIロボティクスは将来性の高い領域だが、量産採用、顧客現場での実装、費用対効果、保守体制、ソフトウエア更新、データ連携まで含めて事業化難度が高い。中期計画の営業利益率15.4%目標は、製品ミックス改善と案件採算改善が前提となる。受注回復が遅れる、競合が価格攻勢を強める、顧客の自動化投資が後ろ倒しになる、AIロボティクスの収益化に時間がかかる場合、株価の評価倍率は圧縮されやすい。

PERは2026年2月期末ベースで約40.4倍、2026年7月1日の会社予想EPSベースで約40.3倍。将来成長を一定程度織り込む水準であり、Dash 35の進捗が四半期決算で確認できない局面では、バリュエーション調整が起きやすい。

出典

本ページは公開情報に基づく銘柄分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想、計画、株価指標は作成時点の情報をもとにしており、将来の業績や株価を保証するものではありません。投資判断は各自の責任で行ってください。

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